ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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のんびりとした旅行も良い物です。……友人は大変そうですが

「……ほぅ。フェンリルの息子が一匹負けたか」

 

ロキは感心したような口振りで呟く。その目前にはボロボロになっているバラキエル、朱乃、フリードの姿があった。

 

「おいコラ、舐めてんじゃねぇぞ!!」

 

「ふんっ!」

 

フリードは両手にガトリングを出現させロキに向かって乱射する。だが、ロキは片手を前に向け、防御用の魔法陣で全て防いでしまった。、フリードの神器は聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)で禁手は亜種聖輝騎士の(ナイトマス・)武器庫(ディポット)。聖なるオーラを放つ兵器を作り出すという強力な物だが、神であるロキには効果が薄かった。神殺しの武器を作り出すにはまだ熟練度が足りず、フリードは異空間に仕舞っている切り札を使おうとし首を振る。

 

「(いや、まだ俺には使いこなせねぇ。下手すりゃ味方ごと……)」

 

柳が開催したイベントで手に入れた異世界のエクスカリバー。恐らくロキを倒せるほどに強力だが、その強力さ故に危険が伴う。未だ扱うには力が足りないフリードでは何処に居るかも分からない他の仲間や、近くに居る朱乃達まで巻き込みかねないのだ。

 

 

「朱乃っ!」

 

「……分かっていますわ」

 

バラキエルの合図に朱乃は渋々従い同時に雷光を放つ。ロキは再び障壁で防ごうとするもフリードの放った弾丸が障壁に突き刺さり次の瞬間に爆発する。その爆発は障壁を砕くには至らないものの大きくヒビをいれ、そのヒビが入った場所に二人の雷光が直撃した。

 

「ぐぉぉぉぉっ!」

 

多少威力を落としたものの雷光はロキを貫く。先程まで余裕の表情を浮かべていたロキだが、今の彼の顔からは余裕も慢心も消え去っていた。

 

「……徹甲榴弾か。そこの小娘がちゃんと合わせておけば今ので決まっていたかもしれんな」

 

「はっ! 神のクセに人間の兵器を知っているのかよ」

 

「当然だ。俺はヘビィボウガン使いだからなっ!」

 

「モン○ンで知ったのかよっ!?」

 

ロキの手には最新式の携帯ゲーム機が握られている。そこからは様々な猿型のモンスターを倒す大人気狩猟アクションゲーム『モンキーハンター』略してモン○ンの音が流れていた。

 

「ふむ、柳に勧められたのでな」

 

「……あいつ、神に対してなんつぅ物勧めてるんだよ。いや、面白いけどよ」

 

「すきやk……隙有り!」

 

フリードが呆れる中、ロキは無数の魔法陣を出現させ。其処から眩い光が放たれた……。

 

 

 

 

京都に向かう新幹線の中、他の乗客の注目を集める者達がいた。目付きが鋭いドレス姿の白髪の美女に妖艶な笑みを浮べている有名お嬢様学校の制服を着た美女。そして目がイっている以外は魅力的な白髪の美女。男性達の視線は自然と三人に注がれ、次に最後の一人の少年に嫉妬を込めた視線を送った。

 

この一行、ご存知柳一家である。この世界の京妖怪の姫の娘である九重から、母である八坂京妖怪の客将であり柳の友人でもある言彦救出の依頼を受けた一行は京都を目指していた。本当なら転移で一瞬で行けるのだが、ゼノンやミラや羽衣程の実力者が転移してくると空間に影響を与え、八坂を捕える程の実力者ならそれを察知可能だと判断して新幹線で向かう事となった。

 

「柳、口を開けろ。……あ~ん」

 

「ふむ、こうしてノンビリするのも良い物じゃな」

 

「……けっ!」

 

柳の正面に座ったゼノンは七味唐辛子の瓶を数個振りかけ、すっかり真っ赤になった駅弁を柳に差し出し、羽衣は柳の腕に抱きついて肩に頭を置く。ジャンケンに負けて斜め前の席になったミラは舌打ちしながら五十個目の駅弁を食べ終えた。

 

「ジュースに、お茶。お菓子にお弁当……」

 

「お菓子とお弁当全部!」

 

そして車内販売の食べ物を買い尽くし再び食べる。濁った目は柳と二人のやり取りを見る度に益々濁り出した。

 

「……それにして言彦が捕まるとはな。我からすれば雑魚とは言え、羽衣と同等であろう?」

 

「私からしても雑魚ですが、羽衣さんとなら良い戦いが出来ますよね?」

 

「……覚えておれよ、貴様ら」

 

言彦こと志々目言彦は三人と同様に神器によって異世界から呼び出された存在で、その戦闘能力は凄まじいの一言に尽きる。異能を相手の体ごと破壊し、並の攻撃では攻撃とすら認識されない。本人曰く、昔は不可逆の破壊と呼ばれる能力も持っていたが、極めて普通の少年に負けた際に失ったそうだ。

 

「まぁ、あの人はあくまで肉体労働専門ですから、人質を取られたら大人しくするしかありませんよ。元英雄らしいですし、目の前に居なかったら助ける事もできませんしね」

 

柳は弁当:七味唐辛子の割合が3:7という異常な数値にも関わらず、ゼノンが差し出すまま口に運ぶ。そのまま美味しそうに嚥下するとミラの方に顔を向けた。

 

「それで、ミラ。今日はどうします」

 

「……へ?」

 

「いや、今晩の事ですよ。ホテルはツインを二つ予約してますし、私達が相部屋ですよ。今晩はミラが相手してくれる番でしょ? 今日は貴女が望むヤリ方で良いですよ」

 

「……あっ! そうでした! え~と、やっぱり正面から抱きしめて愛を囁きながら口付けを…えへへ~♪」

 

ミラの機嫌は直ぐに治り、鼻歌まで歌いだす。なお、四人の会話は羽衣の妖術によってバカップルの会話にしか聞こえておらず、柳は突き刺さるような嫉妬の視線を感じて苦笑いしていた。

 

 

「よく来てくださったのじゃ羽衣狐様! 柳! ゼノン殿! ……すまぬ、其方の方は……? それにミラが居らぬが……」

 

妖怪の隠れ里までやってきた四人をキツネ耳に巫女服の幼女が出迎える。彼女が依頼主の九重だ。やはり格上の同族だからか羽衣の扱いが一番良く、ゼノンも実力から敬意を払われている。柳は死んだ妹を可愛がるように九重に接していたのでなつかれており呼び捨てだ。そして、仲が比較的良かったミラは姿が変貌したために誰か分からなかったようだ。

 

「ミラですよ、九重」

 

「……えぇ!? あの私と同じでチビのツルペタストンのミラが、ヤンデレ後輩ぽくなったじゃとぉ!?」

 

「誰がヤンデレですか。私は柳さんを二人と共有するなら兎も角、他のに盗られるなら監禁して飼う、くらいしか考えてませんよ」

 

「……いや、それ十分ヤンデレですから。……とりあえず詳しい話を聞かせて下さい」

 

これ以上続けたら拙いと判断した柳は何があったか九重から聞き出した。

 

事の始まりは数日前に遡る。用事で外出する八坂の護衛に言彦が着くはずだったが、九重が前々から遊ぶ約束をしていたと我が儘を言って他の者が護衛につき、何者かに八坂が攫われた。そして翌日、言彦一人で指定する場所まで来なければ八坂を殺す、という脅迫文が届いたのだ。

 

「……お願いじゃ。私の魂を支払っても良いから二人を……」

 

九重は泣きじゃくりながら柳に縋りつき、柳はそっと彼女の頭を撫でて言った。

 

 

 

 

「大丈夫。貴女達は友人ですから報酬なんて……大幅に割引します」

 

「……その容赦の無さ、流石です! それは兎も角、今夜が楽しみです♥ 今夜は寝かせませんよ?」

 




オリジナルの連載はじめました。最終的に男一人に女五人のパーティの予定ですが絶対に恋愛にはなりません。その訳は……(笑)

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