ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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今回は展開が思いつかなかったので繋ぎ的な話です 短め


これから不安です いや、マジで

グツグツとテーブルの上の三つの鍋が煮えている。蟹や河豚などの海鮮物、肉団子などが入っておりご飯が進むチャンコ鍋。そして今回の仕事の留守番組が用意した食材を使った龍鍋。中でもゼノンが次元の狭間まで出向いて手に入れた真っ赤な龍の尻尾の肉は舌がとろけそうなほど美味だった。

 

「軽い運動後の酒は美味い」

 

「全くじゃな」

 

少しも汗を滲ませない程度の運動を済ませたゼノンは大酒を煽り、戦闘狂の邪龍の肉を持ち帰った羽衣は盃と箸を交互に口に運ぶ。こちらも大した手間もなく肉を持ち帰ってきた。美味い鍋に神の美酒、それらを味わう今の時間は至福の筈なのだが二人の目は笑っておらず一点に注がれている。

 

「はい、あ~ん♪」

 

其処には成長した姿のミラが足を揃えた横向きの姿勢で柳の膝に座っている姿があった。椀に継がれた鍋の具を柳の口に運ぶ時の目は蕩けており、時折椀を置いては首に腕を絡め抱きついては甘えている。長年甘えられ慣れてきた柳もそれを受け入れており、プライドが邪魔して普段は甘えれない二人からすれば面白くないようだ。

 

「……おのれ。前から甘えていたから普通に甘えられておる」

 

「まぁ、仕方ないだろう。……しかし成長したな」

 

ゼノンの視線は断崖絶壁だった少女形態の時とは違い肉付きが大違いだ。二人とはサイズが違う為に付けてはおらず、動くたびに色々と揺れている。……先程着替えを手伝わされた柳によると、

 

 

「柔らかさと重量感を兼ね揃えていました」

 

 

だそうだ。やがて食事も終わり、二匹の龍のプライドと尻尾を犠牲にして四人の腹は満たされる。既に柳の体の調整は済んでおり添い寝は順番となっている為、今晩は自室での就寝となっているゼノンと羽衣はさっさと風呂に入って眠る。そして、風呂掃除の当番があるので柳は最後に風呂に入っていた。

 

 

 

 

 

「……今日は楽しかったですね。久々にロキさんともお会いしましたし」

 

 

 

 

 

体も温まったのでそろそろ上がり掃除に取り掛かろうとしたその時、浴室の戸が開いてバスタオル一枚のミラが入ってきた。幼い姿の時よりも意識するようになったのか顔を赤らめ目を逸している。

 

 

 

「……先程入りましたよね? どうかしましたか?」

 

「……分かっていますよね? それとも私の口から言わせたいんですか?」

 

バスタオルがハラリと床に落ち、ミラは柳が入っている浴槽にゆっくりと身を入れ、正面から抱きついた。その目は惚けきっており、柳の手を取って掴ませた胸からは速くなった鼓動が伝わって来る。

 

 

「この状態になってから変なんです。羽衣さんに相談したら発情期だって言っていました」

 

「ああ、あの人が年中かかっている状態ですね。痛ッ!」

 

ミラの言葉を柳が話を逸した時、彼の首筋に軽い痛みが走る。ミラが犬歯で首筋に付けた傷口からは軽く血が滲んでおり、ミラはそれをペロリと舐める。

 

 

 

 

 

「……話を逸らさないでくださいよぉ。お二人とは何度もしているでしょぉ? なら、私にも平等に……。 ふふ、柳さんの血、美味しいですね♪」

 

「りょ、了解しました」

 

狂気的な笑みを向けるミラに命の危険を感じた柳は話を逸らすのを辞めて欲望に身を任した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労じゃったな」

 

「龍は桁違いだから少々疲れたようだな」

 

次の日の朝、半裸で寝室から出てきた柳に二人は労いの言葉をかける。その顔は少々疲れたのか窶れているようにも見えた。

 

 

「……まさか一晩中相手をするとは。というより、あの形態になったら怖くなったんですが……」

 

「そりゃまぁ、元が元じゃからなぁ。忘れてるようじゃが邪龍じゃぞ?」

 

柳は忘れがちだがミラボレアスは他の存在を認めていない。忘れられがちだが……。

 

「それに、今までは子供の姿で歯がゆい思いをしていたからな。独占欲でも出たのではないか? 今はどうしている?」

 

「合う寝巻きがなかったので私のを羽織って寝てますよ。……体、もつかなぁ」

 

柳が爆発しろと言われるような悩みを呟いている中、アザゼルは客人に出す茶を入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、くそ。朝帰りの所をアナに見られるとはな。……よし、雑巾玉露完成だ」

 

アーサーに出すお茶にだけ雑巾の絞り汁を入れたアザゼルはお盆に湯飲みを乗せるとリビングに運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな。……テメェも飲んでけや」

 

アザゼルはアーサーを明白に睨みつけながら湯呑を彼の前に起き、最後にアナスタシアの前にそっとお茶菓子と共に湯呑を置いた。

 

「……んで、何が目的だ?」

 

「もぅ、迷惑かけてるからお詫びだって言ったじゃない。……それにロキに変に動かれると困るのよ。お父さん達を蘇らせるまではね……」

 

アナスタシアはそう言って寝室のドアに目をやる。今そこではグリシアがアザゼルのベットの上で眠っていた。

 

「……私は別に良いのよ。もう、後戻りはできないから。でもあの子は違う。あの子には両親が必要なのよ……」

 

「……グリシアに必要なのはお前もだ。いや、お前が一番あいつに必要なんだろうが! そんなこともわからねぇのか!!」

 

「……わかっているわよ! でも、仕方ないじゃない。あの子にテロリストの姉なんか必要ないのよ……」

 

アナスタシアは涙ぐみながらそう言い、アザゼルは無言でその体を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……完全に置いてきぼりだぜぃ」

 

「……白音に会いたいにゃ」

 

「……なんか腹が痛くなってきたんですが。ト、トイレ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサーは慌ててトイレに急ぐ。それを見たアザゼルがニヤリと笑ったのに誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……か、紙が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アナスタシア!」

 

「やぁ、ヴァーリさん」

 

「……お前か、アーサー」

 

アザゼルから連絡を受けたヴァーリは大急ぎでアザゼルのアパートに向かい、アーサーと対面する。部屋に険悪な空気が漂ってきた時、ヴァーリに小さな影が抱きついてきた。

 

 

 

 

 

 

「ヴァーリ兄ちゃん!」

 

「グリシアか。久しぶりだね」

 

ヴァーリは一転して柔和な笑みをグリシアに向け、その小さな体を抱き上げる。彼にとってもグリシアは弟のような存在であり、未来の義弟と思って可愛がっていたのだ。故に死んだ時は彼も落ち込み、立ち直ってアナスタシアを励ますまでに時間がかかった程だ。

 

 

「ねぇ、サイン頂戴!」

 

「サイン? どうしてだい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって、ヴァーリ兄ちゃんってケツ龍皇なんでしょう?」

 

「『ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』」




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