ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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彼女達は怖すぎます

―――――グシャリ。その音と共にディオドラ・アスタロトの生涯は呆気なく幕を閉じた。大貴族の次期当主の座を約束され、欲望のままに教会関係者の女性を囲い、親兄弟さえ裏切ってテロリストに加担し、最後は自分が死んだ事にさえ気付く暇もなくゼノンに頭を握り潰されて息絶えた。これが羽衣だったら楽しそうに甚振って殺しただろう。ミラだったら体の端からジワジワ食い殺しただろう。だが、ゼノンは違う。彼女にとって目の前で行われる裏切りは何よりも癪に障る。一秒でも長く相手が生きているのが、どうしても我慢できないほどに……。

 

「……下らぬ」

 

 頭を失い、血を床にぶちまけながら転がるディオドラの死体を一瞥もせずにそう呟いたゼノンの目にミリキャスの姿が映った。その幼い顔立ちと赤い髪を見た時、柳達と出会う前に出会った者達の顔が彼女の頭を過ぎる。

 

 

 

 

『姫様は一人ぼっちなんかじゃないですー! ぼくを家来にしてくれたじゃないですかー!』

 

ゼノンを捨て、ロザリンドとなった時、家来になった少年を可愛がっていた。

 

『わたしたち……、友達でしょ!?』

 

年の離れた少女と友人となり、一緒に遊んだ。

 

『俺は、お前を守ると約束した……。だから、お前と戦う気はない』

 

ロザリンドとなった時、初めて恋をした相手は彼の様な赤い髪をしていた。

 

 

 

 

 

そして、ゼノンは彼らを全て殺した。彼女がロザリンドに戻った時には時すでに遅し。過ちに気付いたのは全てが終わった後だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ゼノンは無言でミリキャスを拘束している怪物の像を見上げる。厳しい顔つきに巨体。そして、無数の腕の全てに『龍の手』が嵌められいる。そして、もう直ぐその全てがミリキャスに対して発動する事にゼノンは気付く。もしそんな事になればミリキャスが死んでしまうという事にも……。

 

 

 

 

「……チッ!」

 

ゼノンは不快げに舌打ちをすると像に近づき、拳を振るう。像は粉々に砕かれ、拘束されていたミリキャスはゼノンによって抱きとめられ、ゼノンはそのまま彼を連れて転移して行った。

 

 

 

 

 

だから、彼女は気づかなかった。床に散らばった『龍の手』が輝き、光が収まった時には一つの神器になっていた事に。そして、その神器はどこかへと転送されていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……認めてあげます、ギャー君。貴方がナンバーワンです」

 

「……小猫、行き成りどうしたの?」

 

「……いえ、何故かそう言わなければいけない気がしまして」

 

「……そう」

 

もはや眷属の奇行に反応する気も起きないほど疲れ果てたリアスはそれ以上詮索する気も起きず、先に進むのに集中した。小猫の放った技によって悪くなった足場に気をつけながら一行が先に進むと、ディオドラの『女王』と『僧侶』二人の姿が目に入った。……正確に言うと小猫の技の余波で気絶している『女王』と『僧侶』二人の姿が目に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「……先を急ぐわよ!」

 

「「はい!」」

 

リアスは見なかった事にしてそう叫び、一誠と祐斗もそれに続く。後ろから、『あらあら、一応動けなくしておきませんと』や『……両足の骨でも折っておきます?』、更には『無駄無駄無駄無駄ァーーーーッ!』や『フハハハハハハ、愉快だっ!』という声と共に轟音や悲鳴なんて絶対に聞こえない。まだマトモな三人は自分にそう言い聞かせ、現実逃避しながら先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っていましたよ、皆さん」

 

「随分早かったな。それに無傷とはアイツ等何をやってたんだ……」

 

奥の神殿で待っていたのは残りの『騎士』二人。彼女らはリアスと一誠と祐斗が若干窶れている以外は特に怪我のない一行を見て訝しげな顔をするも、仲間の力量不足のせいだと判断して武器を構える。すると、殺る気満々という顔しながらゼノヴィアと朱乃が前に進み出た。

 

「ここは私が出よう。昨日ヴァーリに今日のゲームで活躍したらデートしてくれというメールを100件送ったんだ。断りのメールが帰ってこなかったからOKという事だろう。っという訳で、貴様らさっさと死ね!」

 

ゼノヴィアはそう言うとデュランダルとアスカロンを構える。隣の朱乃も体に雷光を纏わせ、威圧感を出しながら微笑んでいる。

 

「私も実はフリードさんとデートの約束をしてますの。という訳で、早く消えて下さいません?」

 

彼女はそう言うなり雷光で『騎士』二人の足を打ち抜く。スピードが持ち味の『騎士』でも雷光は避けきれず足に重傷を負い、もはや動ける状態ではない。そして、そんな事など知るかとでも言う様にゼノヴィアはふた振りの聖剣をクロスさせる。デュランダルの波動をアスカロンに流し込ませた。途端、聖なるは相乗効果によって大きく膨れ上がった。天井は吹き飛ばされ、大穴が空いている。剣から発せられるオーラだけで空間が歪み、周りに居る者達も聖なるオーラだけで肌にチリチリとした痛みを感じていた。

 

「ふふふっ。私にはデュランダルの制御は無理だと悟ったのでな、破壊力と切れ味のみを追求させてもらったよ。さぁ、行こう! アスカロンとデュランダルよ! ヴァーリの貞操を奪う為、私の思いに応えてくれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

彼女がそう叫んだ後、数秒の間を置いてオーラがさらに膨れ上がる。だが、ゼノヴィアはそれを見ても不満そうな顔をしていた。まるで、まだ力が足りないとでも言いたそうな表情だ。

 

「……もっと、もっと力を!」

 

その途端、彼女の体に黒い模様が現れる。それはまるで龍に掴まれた様な模様をしており、そこから吐き気を催すほどの邪気が溢れ出し、聖剣のオーラを侵食した。どす黒い色に変色したオーラからは先程までとは比べ物にならない程の威圧感が放たれ、ゼノヴィアはそれを動けない『騎士』達に向かって放つ。オーラが消えた後には何も残らず、ゲームの為に作られた空間さえも一部が消え去っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧魔王と現魔王との覇権を争う戦争時、ベルゼブブ家に予期せぬ事態が起きた。

 

 

シャルバ・ベルゼブブの死。それは士気を下げるのに十分であり、下手をすれば瓦解にも繋がりかねない。困った家臣達はとある人物を利用する事にした。先代が使用人に産ませて捨てたシャルバの弟。一応されていた調査ではシャルバに瓜二つな彼を影武者に仕立て上げよう。そう決めた家臣達は彼の村を焼き払い、妻子を人質にして彼に戦場に出ることを強要した。日に日に窶れていっ彼だったが、妻子の為にと奮い立たせ、家臣達は万が一でも妻子を連れて逃げないようにと常に見張りを置いていた。最終決戦でサーゼクスに追い詰められるまでは……。

 

 

彼の圧倒的な力に恐れをなした彼らは我先にと逃亡。彼と人質を残したまま……。




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