ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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そろそろ限界のようです

「はははははっ! 簡単なもんだね。彼女らは今頃死んでるだろうし、もし生きていても僕の眷属が殺すだろうさ。それで、本当に後でアーシアを攫ってきてくれるのかい?」

 

怪物の像に拘束されたミリキャスの前でディオドラは心底可笑しそうに笑いながら目の前の男に問いかける。男の見た目は30代ほどであり、右手が義手になっている。そして、目からは生気が感じられなかった。

 

「……ああ。今は厄介な奴らが守っているが、学校なら攫う機会があるだろう。その時に攫ってくる。じゃあ、後は任せた」

 

そう言うと男は逃げるかのように転移していく。だが、ディオドラはその様な事などには気づかず、下劣な妄想にふけっていた。

 

「ああ、楽しみにしているよ。あの男に復讐できないのは残念だけど、アーシアを好きにできるのなら別に良いや」

 

彼の元にゼノンが到着するまで、あと5秒……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やばかったな。あの小僧は気付いていなかったが、あの化物がすぐ其処まで来ていた。俺には気付いているようだったが、ターゲットがアイツだったから助かったようだな」

 

先ほどの男は転移した先でゲオルクに計画の報告していた。結果は失敗。柳達が居る場所に襲撃を掛けてしまったら三人の従者達に組織が全滅させられる。故にリアス達の抹殺だけに止めようとしたのだが、何故か従者の一人が乱入、刺客を皆殺しにした。ディオドラは自信があるようだがリアス達には恐らく勝てない。故に彼には捨て駒になって貰う事となった。

 

 

遠くから聞いていた話によるとディオドラが気に入らなかったからの様なので、彼を殺すことで少しでも溜飲を下げて貰い、自分達への被害を抑えよう。それが今回の決定だ。故にディオドラは知らない。作戦がとうに失敗に終わっている事に……。

 

「まぁ、良い。仕掛けが発動すればサーゼクスの息子は死ぬ。小僧達が死んで、バアルとグレモリーの血を引く者の魂が手に入れば目的は果たせる。おっと、アスタロトの魂もだな。貴様も息子を失って悲しみに暮れるサーゼクスとグレイフィアの顔が見れれば満足だろう? なぁ、シャルバ」

 

「……俺をその名で呼ぶな! 俺はシャルバなどではない! 俺から家族を奪った奴らの名で俺を呼ぶんじゃない!」

 

シャルバと呼ばれた男はゲオルクの言葉に激昂して胸ぐらに掴みかかる。ゲオルクは面倒臭そうにその手を振り払った。

 

「そうだったな、失念していたよ。……だが、言っておく。貴様がシャルバでないと知られたら面倒だ。名前の事は我慢しろ」

 

「……分かった。おい、お前の目的が達成されれば本当にアイツ等を生き返らせてくれるのか?」

 

「当然だ。夢幻と無限、そして旧魔王四人と残っている72柱の血筋の魂を俺が吸収した時、俺は全知全能の存在となる。死者蘇生など容易い事だ。実際に俺が魂を吸収して力を伸ばしたのを貴様も知っているだろう?」

 

ゲオルクはそう言うと、頷く相手の姿を見て満足げに微笑む。それはとても歪んだ笑みであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼノンさん、マジギレしてますねぇ。ミラ、今日の夕食は彼女の好物にしてあげてください」

 

「はい、分かりました。……精力のつくメニューにしておいた方が良いですか? どうせ今晩は甘えてくるでしょうし。……私も早く大きくなりたいなぁ。あっ、柳さんの好物がまだ残っていますのでお取りしますね」

 

ミラは持ってきた重箱に手を伸ばし。その手は空を切る。横に置いていたはずの重箱は消え去り、何時の間にか柳の膝の上に座っていたオーフィスの手の中に移動していた。オーフィスは重箱の中をすべて食べ尽くすとミラに重箱をそっと差し出す。

 

「ミラ、お代わり」

 

「あっ、はい、今すぐ……って! なんで貴女が居るんですか、オーフィス! それは柳さんの為に作った物ですし、其処は私の場所です!」

 

「何時もミラが座ってる。今日、我の番。柳の膝、座り心地が良い」

 

ミラは怒りをあらわにしながらオーフィスに食ってかかる。だが、オーフィスは少しも気にした様子もなく柳の膝に深く座り直す。ミラの顔が更に怒りに歪み、邪気が溢れ出した。

 

「……退け」

 

ミラの姿が突然ぶれ、次の瞬間にはオーフィスに拳を叩き込んでいた。オーフィスは壁を幾枚もぶち抜きながら飛んで行き、殴り飛ばしたミラはスッキリとした顔で柳の膝の上に座る。サーゼクス達は唖然とした後、彼女に話しかけようとするも、ミラに睨まれて黙り込む。

 

「……何か? アイツは貴方方と敵対しているテロ集団のボスですよ? 殴り飛ばして何の問題が……」

 

ミラは面倒臭そうに振り返って口を開き、言葉の途中で吹き飛ばされる。今度は戻って来たオーフィスの手によってミラが殴り飛ばされた。オーフィスの腹にはミラの拳の跡が残っており、無表情ながらその顔には怒りが感じられる。発せられるオーラに羽衣とミラ以外が冷や汗を流した。オーフィスはミラに馬乗りになると拳を振るい、ミラも負けじと拳を突き出す。その戦いは見た目は少女同士の殴り合いだが、下手すれば世界が終わりかねない戦いだ。羽衣も拙いと感じたのか柳を抱き寄せ、10本の尻尾で包み込む。

 

「安心せい。妾がしっかり守ってやるぞ。んっ」

 

羽衣はそう言うなり柳の唇を奪い、柳も他の者達が必死に結界を張っていて自分達を見る余裕がない事を良い事に羽衣の背中に手を回し、抱き寄せていた。

 

「……にしても、オーフィスをよく削れるな。普通の奴ならダメージを与えれても、無限を削れないってのによ」

 

アザゼルの目の前では互いに血を流しながらも殴り合うミラとオーフィスの姿があった。二人から感じる力はアザゼルには正確な量は計測不能だが、ほぼ同格に感じている。今の所、龍殺しの力を持つミラがやや有利だが、このままでは勝負が終わるより前に冥界が終わってしまうだろう。それを感じている面々はふたりを確実に止められるであろうゼノンの帰還を心より願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、二人共、お菓子ありますけど食べますか?」

 

「食べます!」

 

「食べる」

 

だが、二人の勝負は柳の一言であっさりと終わりを告げる。喧嘩の被害はアザゼル達の健闘によって建物の半壊で済み、彼らはホッと胸をなでおろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、リアス・グレモリーとその眷族の皆! 中止になったゲームの代わりを提案するよ。お互いの駒を出し合って、試合をしていくんだ。一度使った駒は僕の下に着くまで、二度と使えないのがルールだよ。第一試合、僕は『兵士』八名と『戦車』二名を出させてもらう。ああ、兵士は全員『女王』になっているから」

 

リアス達が幾つも続いている神殿を抜けた時、ディオドラの声が響いてきた。その言葉と同時にディオドラの眷属の女性達が現れ、戦闘の構えを取る。それに対し、リアスは高々と宣言した。

 

「良いわ。貴方のお遊びに付き合ってあげる。私の眷属の強さ、その身に刻みつけてあげるわ!」

 

本来なら相手の遊びに付き合う必要はない。しかし、ミリキャスが人質に取られている為に従うしかなかったのだ。そしてリアスが自分の眷属に指示を出そうとした時、小猫とギャスパーが前に進み出る。二人からは尋常でないオーラが溢れ出していた。

 

「……此処は私達に任せてください」

 

小猫は既にソーナとのゲームで見せた気と魔力の合成によって黄金のオーラを纏い、

 

「あの程度の敵! この僕の敵ではない!」

 

ギャスパーからは、ドドドドド、という謎の音が聞こえてくる

 

 

 

 

 

「……良いわ。貴方達の好きになさい……」

 

なんか頼もしく見えたし、ツッコミを入れるのも疲れそうだったから……、この時二人に任せた理由を聞かれたリアスはそう語ったという。

 

 

 

 

WRYYYYYYY(ウリィィィィィィ)ッ!!」

 

ギャスパーが声高々にそう叫ぶとディオドラの眷属達の影から手が伸び、彼らを拘束する。そして、ギャスパーの背後により逞しい腕が現れ、ギャスパーが彼女らに殴りかかると同時に

 

「行くぞ! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーッ!!」

 

ディオドラの眷属達をギャスパーの影から出た逞しい腕が殴打し、ギャスパーの拳によって起こるペチペチ」という音を自動車の衝突事故のような轟音がかき消す。拘束されている事によって動けない彼女らは逃げることも吹き飛ばされる事も出来ずに殴打を浴び続け、最後に放った一撃と共に拘束が解かれ、一纏めにされて吹き飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ギャー君。見事なラッシュです。無駄無駄ラッシュと呼ばせて頂きましょう。そして、これが私の新必殺技!」

 

天井高く飛んだ小猫は両腕を大きく広げ、両手の掌にオーラを集中させる。そして、その光が最高点に達した時、ディオドラの眷属目掛けて放つ。

 

最終(ファイナル)・・・・・・猫閃光(フラァァァァァァァァシュ)ッ!!」

 

ディオドラの眷属達を飲み込んだ光は彼女ら達だけでなく神殿すら飲み込み、光が消え去った後には神殿の壁や床は消え去り、先にある神殿も半壊していた。小猫は其れを確認すると床に降り立ち、額の汗を拭う。ギャスパーも同じ様に満足げな顔をしていた。

 

「ふぅ……。やりました」

 

「やるだけの事はやりました」

 

「凄いぞ二人共! 私も頑張らなくては!」

 

「あらあら、私も負けていられませんわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……幾ら何でも、やりすぎよ」

 

リアスは思わずツッコミを入れたが、二人をゼノヴィアと朱乃の賞賛する声によってかき消され、二人の耳に届く事はなかった……。

 

 




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