ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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体育館裏のホーリー
友人達に会いました


此処はとある森の小さな教会。其処では今まさに結婚式が執り行われている真っ最中。式の主役は花嫁であるアーシア・アルジェントだ。彼女は純白の花嫁衣装に身を包み、幸せそうな表情を浮かべている。これから彼女と人生を共に歩む新郎は柳。彼は神父の言葉に従い指輪を交換した後、彼女と口付けを交わす。

 

「貴女は私が幸せにしますよ。此れからも宜しくお願いします」

 

「はい! 宜しくお願いします!」

 

その時のアーシアの表情はまさに幸せの絶頂と言えるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて式も終わり、新婚初夜がやって来た。柳はアーシアが着ているバスローブに手を掛けゆっくりと脱がし、アーシアは顔を紅潮させながらもそれを受け入れる。そして、一糸纏わぬ姿になった彼女をベットに押し倒し、自分も着ているものを脱いだ。

 

「綺麗ですよ、アーシアさん。……愛していますよ」

 

そして柳の顔はゆっくりとアーシアの顔に近づいて行き―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私も愛しています! ……あるぇ~?」

 

アーシアはそう言ってベットから飛び起きる。彼女が寝ていた場所は神田家の客間であり、彼女は寝間着をしっかりと着ていた。

 

「夢かぁ……。どうせならもう少し見ていたか……はっ! わ、私ったら、何を!?」

 

アーシアは自分が呟いた言葉に赤面しつつも先程の夢を思い出す。聖女時代はそんな知識など獲れるはずがなかったが、グリゴリに所属してからは同年代の友人達から借りた少女漫画やそういう雑誌によって知識だけは得ていた。もっとも、当初は少し読んだだけでオーバーヒートしてしまっていたが……。残念そうに溜息を吐いたアーシアはふと時計に目をやり、

 

「ち、遅刻ですぅ!」

 

既に起きなければならない時間を過ぎていた事に気付き、慌てて階段を駆け下りる。降りた先にあるリビングでは羽衣とゼノンが優雅にワインを飲んでいた。

 

「寝坊じゃの、小娘。……むぅ、こんな体勢も有るのじゃな」

 

「ククク、どうした? 髪が跳ねておるぞ。今日は休みとはいえ、だらしがない。……今度このヤリ方を強請ってみるか。いや、今晩にでも……」

 

ただし、リビングに設置されたテレビの画面にAVを大写しにしながら……。

 

「あっ、そうでした。今日は休みでしたね。って、朝から何を見ているんですか!?」

 

アーシアは顔を真っ赤にしながらそう言うが、二人は気にした様子もなく画面を見続ける。

 

「見て分からんか? AVじゃ。しかも、アザゼルが用意した堕天使が主演のな。奴らは誘惑も得意だから、中々の体つきじゃ。柳が隠せている気で居るのを持ってきた。……朝からという事は、昼からなら良いのじゃな?」

 

「貴様も観るか? ……柳の嗜好を知る機会だぞ」

 

「……観ます」

 

暫くの間迷っていたアーシアであったが、ゼノンの言葉によって観る事を決意。テレビの前に正座し、赤面しながらも画面を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あんな事まで!? あわわわわわわ! や、柳さんもああいう事を貴女達にして貰ったのですか!?」

 

「ああ、してやったぞ。しかし、他人の情事に興味深々とは……。純情そうなふりをして、貴様も中々だな。まぁ、興味だけだろうがな。ウブな貴様ではなぁ」

 

そう言ってゼノンはアーシアに挑発的な目を向ける。それは、お前には無理だろう?、とでも言いたげな目で、アーシアはそれを感じ取って立ち上がった。

 

「わ、私だってあのくら、はぅ!?」

 

「のわっ!?」

 

「落ち着かんか、小娘。ゼノンも純情な小娘をからかってやるな」

 

羽衣は自分にハリセンで叩かれて痛む頭を押さえて蹲っているアーシアとゼノンを見て呆れた様にため息を吐く。反論しようとしたゼノンであったが羽衣に一睨みされて黙り込んだ。

 

「では、次のを観るとしようぞ。妾はこの和服ものが……」

 

「いや、我はこの鬼畜攻めが……」

 

「あ、あの~、私はコレが……。あれ、そういえば柳さんとミラちゃんは?」

 

アーシアが赤面しながら手に取っているDVDのパッケージにはシスター服を半脱ぎにした女性の姿が映っていた。

 

「……成る程、脳内で自分と柳に置き換える気じゃな? 二人なら出かけておるぞ。オンラインゲームのオフ会とか言っておったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処はとあるお好み焼き屋。其処の座敷席では若者を中心に人気のオンラインゲームのオフ会が開かれていた。参加しているのは柳とミラ、そしてほぼ半裸の大男とファンタジーの世界に出て来そうな服装をした銀髪の中年男性だ。どう見ても異様な集団だが、注文を取りに行った店員は注文を取っていた。

 

「ご注文はお決まりでしょうかにょ?」

 

「激辛ジョロキア焼きそばを大盛りで」

 

「おお! 聞いた事のないメニューだな。げげげげげ、新しい! 儂も其れにするぞ! 儂は二皿頼む!」

 

「うひゃひゃひゃ! 君、柳ちゃんと同じもの頼むなんて勇気あるねぇ♪ 俺は豚玉を二つと生ビール大ジョッキで!」

 

「私はこのメニュー欄にあるのを全部お願いします」

 

「かしこまりましたにょ。少々お待ちくださいにょ」

 

異様な集団に対し、店員は注文を取ると直ぐに向かっていった。その姿を見た中年男性は小声で柳に話し掛ける。

 

「まさか、オフ会の相手が二人共知り合いだったとは……気不味い」

 

「……ねぇ、あの店員も異世界の人? グレートレッドより強いのがゴロゴロ居るとか、あんなのが居るとか、異世界ってありえねぇ……。ゼノンちゃんに連れてって貰って以来、異世界に興味が湧いたけど……、異世界侵攻辞めよっかな……。あっ、そういえば、こっちのお兄さんは初対面だったね。俺はリゼヴィム・リヴァン・ルシファー。柳くんとは興味本位で喧嘩売って、従者にボッコボコにされた事が縁で仲良くなったんだ♪ 今は現政府から隠れながら生活してるよ」

 

「儂の名は獅子目言彦。大昔に柳と同じ神器を持った陰陽師に呼び出され、今は京妖怪の屋敷に世話になっている。柳達とは京都に旅行に来た時に知り合った。・・・・・・信じたくはないが、アレはこの世界の者だ」

 

「ありゃりゃ、君もかぁ。って、言うか、君強そうだなぁ。ミラちゃん達はあくまで神器で呼び出されただけだから攻撃を俺の力で無効化できないし、禍の団に誘われてるけど入るの辞めようかなぁ。死者蘇生の力ってのに興味あったんだけどなぁ。って、マジで!? 普通の人間!?」

 

リゼヴィムの話に出てきた死者蘇生という言葉に柳は一瞬眉を動かし、ミラはそれを見て心配そうに彼を見つめる。もし彼がそれを求めるのなら自分たちは協力するが、彼が家族を取り戻した時、自分達の居場所はあるのか、そう考えたからだ。それを知ってか知らずかリゼヴィムは柳に提案してきた。

 

「なぁ、柳ちゃん達も一緒に入んねぇ? 確か君の家族も死んでたよね。蘇って欲しくないの? 君が来てくれたら楽しそうなんだけど。ほら、一応友達じゃん?」

 

「いきなり何を……」

 

「興味ありません」

 

リゼヴィムの提案を聞き、彼を殺そうとしたミラだったが柳はあっさりと提案を拒否する。その事にミラだけでなく、リゼヴィムも驚いた様な顔をしている。ただ、言彦だけは予想通りといった顔だった。断られたリゼヴィムは少し不満そうにしており、子供みたいに頬を膨らませていた。

 

「えぇ~!? いいじゃん、別に。なんで断るのさぁ~?」

 

「私は自分の家族の命を他人の手に握られるのはまっぴらゴメンですし、……昔の家族を求めるという事は、今の家族を否定する事になります。それだけは絶対に出来ません」

 

「柳さん……」

 

ミラは柳の顔を嬉しそうに見上げ、リゼヴィムはまだ不満そうだ。そんな時、言彦が口を開いた。

 

「そういう事だ、諦めろ。貴様はまだ人間と言うものが分かっていなかった様だな」

 

言彦も横から柳を支援し、リゼヴィムはしぶしぶと言った様子で諦めた。

 

「ちぇ、しゃーないか。おっ、来た来た♪」

 

「お待たせしましたにょ」

 

ちょうど話が一段楽した時、注文の品が全てやって来た。店員はその巨体を生かして全ての料理をこぼさずに運び、丁寧にテーブルに置いて行く。そしてお好み焼きを柳が焼きだし、言彦が焼きそばを一口食べた途端に『この刺激、新しい!!』と叫んだ後、悶えながら熱せられた鉄板に顔から突っ込んだ事以外は特に何も無く、順調にお好み焼きは出来上がっていった。

 

しかし、リゼヴィムが自分の注文の品を皿に取り、ミラがそれに手を延ばした瞬間、お好み焼きが消失した。ミラが気配を感じ、横を見るとよく知った相手が口元にソースを付けながら、もきゅもきゅと口を動かしていた。

 

「指揮者、お代わり」

 

「あっ、もう正体が広まったので、柳で良いですよ、オーフィス。今日は何の御用ですか?」

 

「分かった。柳、お代わり。今日は、強い力感じたから協力して貰いに来た」

 

「はいはい、その話はまた今度聞きますよ。帰れって言っても聞かないでしょうし、追加で注文しましょう。あっ、ソースが付いてますよ」

 

柳はオーフィスの口元を拭くと追加の注文をする。そして、オーフィスの皿にお好み焼きが乗せられたその瞬間、ミラがオーフィスの頭を踏みつけた。オーフィスの頭はテーブルをぶち抜いて床に突き刺さり、お好み焼きは宙を舞う。ミラはそのお好み焼きを手に持った皿でキャッチし、勝ち誇った笑みをオーフィスに向けつつお好み焼きを口にした。

 

「先程のお返しです♪ 龍が餌を取り合うんですから、この程度は当然ですよね?」

 

「……殴る」

 

オーフィスはミラに飛びかかり、二人は乱闘を始める。流石に店がヤバイと感じた柳はとりあえずの措置として禁手の中に送り、席に戻っていった。

 

「店員の記憶操作はお願いしますね、リゼヴィムさん」

 

「了解、了解♪ あっ、さっきから思ってたんだけど、柳ちゃんって人間辞めた?」

 

「・・・・・・ギリギリ四捨五入で人間です」

 

それは要するに既に半分近く人間を辞めているという事なのだが、リゼヴィムはあえてコメントするのを止め、料理を口に運ぶのに集中し出す。そんな時、漸く言彦が復活した。

 

「むぅ! この舌の痛み、新しい!」

 

「・・・・・・貴方ってそればっかですね。そういえば聞いてくださいよ。グリゴリに友人が居るんですが、最近ストーカーに悩まされてまして、アザゼル前総督への借りとして暫く面倒を見る事になったんですよ」

 

「うわっ! ミラちゃん達怒らなかった? おっと、そろそろ俺は帰る時間だ~わ。ばいび~♪」

 

「むぅ! 儂もそろそろ帰らねば。九重に本を読んでやる約束をしていたのを思い出した。では、また会おう!」

 

リゼヴィムと言彦は帰って行き、其処には柳と大量の料理だけが残された。後ろからは店員が『お残しは許さないにょ』と言わんばかりのオーラを放っており、食べつくす事が出来るミラとオーフィスが喧嘩を止めるのを柳は戦々恐々と待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、冥界のとある屋敷の一室では一人の男が大量の写真を切り裂いていた。それらの写真はサーゼクスとグレイフィア、そして、ミリキャスの三人が『家族』として写っている写真ばかりだ。それを男が憎悪に満ちた顔で切り裂いていると、一人の男が部屋に入ってきた。見た目は十代後半。服装は魔術師を思わせるローブ姿だ。部屋に居た男は入ってきた男を睨めつけながら口を開く。

 

「……何だ? 貴様ごときに用は無いぞ」

 

「……俺は一応副総統なのだがね。まぁ、敬意を払えとは言わないさ。次のゲームの時、君の目的を果たすチャンスをやろう」

 

男はそう言うと部屋から出ていく。部屋に居た男はその背中を見て呟いた。

 

「……死にぞこないの化物が。だが、構わない。サーゼクスに絶望を味わわせれるのなら、化物だろうが無限の龍神だろうが利用してやる! たとえ、その後で俺が死んだとしても構わない……」




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新連載はじめました 気が向いたら更新する作品ですが良かったら見てください

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