「……なんというか、グレモリー眷属は個性的じゃのう」
「まだ凄いのが居ますよ。女性の服を弾き飛ばすことに全ての才能を使った阿呆とかが」
ギャスパーの自爆劇やゼノヴィアの狂気を目の当たりにしたオーディンは冷や汗を流しながら考えていた。
(……うん。こんなの敵に回したくない。できれば関わりたくないけど、会わないようにすれば良かろうな……)
「やはり類は友を呼ぶと言いますし、主であるリアス・グレモリーはどんな変態っぷりを見せて下さるんでしょうね」
「私の妹は変態じゃないからね!? 多分……」
柳の言葉に反応したサーゼクスだったが、自信が無くなったのか言葉尻が萎んでいた……。
「……ちっ! ゼノヴィア先輩に先制されましたか。さて、騎士と女王で計十二個。先輩もやられましたし、私は無事で終わるとして、最低でも十一個分は殺りたい所ですね」
人化を解いて耳と尻尾を出している小猫は忌々しそうに呟く。耳と尻尾が不機嫌そうにピクピク動いていた。
「こ、小猫ちゃん!? なんかキャラ変わってない!?」
「知らないんですか? 恋は女を変えますよ。……先輩!」
一誠と共に進んでいた小猫は家具売り場まで進んでいた時に聞こえてきたアナウンスから、敵の『騎士』と『女王』を倒したのがゼノヴィアだと野生の……恋する乙女のカンで察知、静かに闘志を燃やしていた。そんな小猫の態度に一誠が引いている中、小猫の耳がピクリとも動き、いきなり一誠の襟首を掴んで引っ張った。すると、先程まで一誠が居た場所をラインで天井に張り付いていた匙と『兵士』が通り過ぎていく。匙は不意打ちが失敗したと見るやいなや着地して向き直った。
「先手必勝ッ!!」
「おわっ!?」
その途端、飛んできた棚によって匙と『兵士』は分断される。二人に棚を投げた小猫は足に気を貯め、一気に『兵士』に接近して鳩尾に拳を叩き込んだ。
「先輩はそっちを! 私はコッチを片付けます!」
「小猫ちゃん、サンキュ!」
本来なら駒を四個消費した匙の方が手柄としては大きい。だが、一誠が彼と必ず自分が勝つと誓い合ったことを知っている小猫は一誠に譲ったのだ。一誠は小猫にお礼を言うと匙に向かって駆け出した。
「行くぜぇ、匙!!」
「来ぉい、兵藤!!」
二人は同時に拳を振りかぶり、お互いの顔に同時に叩き込んだ。
「同じ一年の貴女には負けません!」
「……さっさと此奴を倒して次の獲物を。さっさと此奴を倒して次の獲物を……」
小猫に対して闘志を燃やす『兵士』に対し、小猫は焦点の合っていない目でブツブツと呟く。その態度に『兵士』が恐怖を感じた時、小猫が一気に接近した。
「……一気に決める」
小猫は仙術によって身体能力を大幅に底上げし、両手を腰だめに構えながら『兵士』の懐に潜り込む。まず左手が肝臓の部分にヒットし、衝撃と同時に送り込まれた気によって肝臓に甚大なダメージを与える。続いて放たれた右手が胸に当たって肺の中の空気を全て外に出した。そして、酸欠と肝臓へのダメージで意識が朦朧としている『兵士』の足を払うと上空へと蹴り上げ、今度は自分が飛び上がって両腕を合わす事で戦槌の様にして腹部に叩き込む。床に叩きつけられた『兵士』は血を撒き散らしながら消えていった。難なく着地した小猫はその様子を見て静かに呟く。
「……
その時の彼女は覇王の風格を漂わせていた……。
「……え~と、ヒロインのモデル候補……なんですよね?」
「……あの馬鹿共。もうイメージを払拭できねえぞ。……いや、キャラ自体は……」
柳がゼノヴィアと小猫の戦いに軽く引いている中、アザゼルは二人のキャラの使い道を模索し、ヴァーリは軽く震えていた。
「……ヤンデレ怖い」
そして、匙と一誠の熱い男の戦いも終わり、匙は消えていった。一誠の腕に一本のラインを残したまま……。
禁手による物か、ダメージからか、妙なフラツキを覚えながら一誠は本陣を目指す。既に先に来ていたのはリアスと朱乃。先ほど『戦車』撃破のアナウンスが流れたので祐斗の合流もすぐだろう。そして、中央広場まで来た時、一誠は目を見開く。
「ごきげんよう、兵藤一誠君、塔城小猫さん。なるほど、それが貴方の神器ですか。恐ろしい姿ですね」
其処に居たのはソーナだった。冷静な口調で挨拶をする彼女は結界に覆われ、結界を創り出している『僧侶』二人の片方に向かってラインが伸びていた。
「余裕ね、ソーナ。『王』自らがこんな所まで来るなんて」
「それは貴方もでしょう」
「ええ、もうすぐクライマックスでしょうから。でも、こちらの読みとは大きく変わっている様だけど」
リアスは悔しそうにし、厳しい表情を取った。本来ならば佑斗とゼノヴィアで『王』を取る予定だった。しかし、その作戦は読まれていた。策士としてはソーナの方が数枚上手だった様だ
そして、一誠の体がフラつく。慌ててリアスがフェニックスの涙を使うが、全く収まる様子がなかった。そして、それを見たソーナが微かに笑った。
「彼の様なタイプは敵に回したら一番厄介な相手です。いくら傷ついても仲間の為に何度でも立ち上がれる。そして、それこそが彼を強くしていった」
ソーナは一誠を見つめながら淡々と語る。
「でも、これはゲームです。私達が倒す必要はありません」
その時、『僧侶』の一人が持っていたバックを開ける。その中には一誠の腕のラインとつながった赤いパックが入っていた
「気づいたようですね。人間は血の大半を失えば死んでしまう。彼はもう限界まで失いました。ゲームでは瀕死の重傷を負うと強制退場させられる、もう終わりです!リアス、貴方はこのゲームに何を賭けるつもりでしたか?私は命を賭けるつもりでした」
ソーナはそう淡々と語る
「兵藤君、匙は貴方に劣等感を持っていました。貴方に伝説のドラゴンが宿っているなのに自分には何もないと。だから私は彼に伝えたかった。そんな物が無くても強くなれると。貴方を倒したのは匙です!覚えておきなさい、最強の座を目指す『兵士』は貴方だけではありません!」
それを聞いた一誠は一瞬黙り込み、
「……仕方ねえか。部長、スイマセン。次こそは最後まで残ってみせます」
リアスに笑いかけながら消えていった。一誠の思いがけないリタイア。その事態にリアス達が固まる中、小猫が前に歩み出る。
「小猫! 先走ったら危ないわ! 引きなさい!」
リアスはそう言って静止するも小猫は軽く首を振ってそれを拒否。両手に気を纏いながら叫びだした。
「引かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! 仲間がやられたんです、この私が十倍にして返してみせる!」
小猫は拳を振り上げ、全体重を乗せた拳が爆音を上げながら結界に衝突する。しかし、その衝撃によって辺が揺れはしたものの結界にはヒビ一つ入っていなかった。静かに自分の拳を見つめる小猫に対し、ソーナが冷静に告げる。
「無駄です。その結界の強度は桁違い。たとえ貴女の仙術を持ってしても破壊不能です」
そう、その結界は確かに強固だ。結界の強度が石なら先程の小猫の攻撃の威力は滴り落ちる水に過ぎない。だが、たとえ水の雫でも何度も繰り返せば何時は石に穴を穿つ。一撃で壊せないのなら壊れるまで攻撃を叩き込めばいい。威力が足りないのなら威力を上げればいい。簡単な事だ。
「……左手に魔力。右手に気」
小猫はそっと深呼吸をすると目を見開き、左手に魔力、右手に気を纏わせて一気に両手を合わせる。彼女の手が強く輝いた。
「……合成!」
小猫の腕から放たれるのは繊細ながら荒々しい力の波動。小猫は右手を振りかぶり、力の限り叫んだ。
「私のこの手が光って唸るぅ!! 敵を倒せと、輝き叫ぶぅっ!」
そして、小猫の腕から放たれた一撃は結界を安安と破壊すると『僧侶』一名を巻き込んで建物の壁を破壊する。巻き起こった土煙が晴れた時、そこにはソーナの姿がなかった。
「……部長。あの会長は幻だったようです。本物の気配が屋上からします。……最後に一つ聞かせてください。ゼノヴィア先輩より私の方がヒロイン向きですよね? だってロリですから……」
『リアス・グレモリー様の『戦車』 フィールドの大規模破壊によって失格』
非情なるアナウンスと共に小猫は消えていく。あまりにも酷すぎる最後の言葉にリアスと合流してきた祐斗が胃痛を覚える中、朱乃が怪しい笑みを浮かべながら前へ歩み出た。
「あらあら、うふふふふ。ここは私もド派手に決めないと印象が薄そうですわね」
「あ、朱乃!? まさか貴女まで……」
そして、リアスの嫌な予感は的中する。朱乃は見事にトラウマを克服し雷光を放った。そのとてつもない威力は店内を破壊失くして『僧侶』を吹き飛ばす。彼女はあっけなく消えて行き、朱乃の体も消えていった。
『リアス・グレモリー様の『女王』 フィールドの大規模破壊によって失格』
その後、キリキリ痛む胃を抱えながらもリアスはソーナに勝利し、初戦を白星で飾る。だが、その勝利は虚しいものだった……。
「ミラさん、また会えますよね?」
「さぁ?」
そして柳たちが帰る日がやって来た。見送りに来たミリキャスにミラが冷たい態度で対応する中、列車は動き出して人間界を目指す。そして、人間界についてアーシアが電車から降りたとき、彼女に話しかけてくる人物がいた。
「僕を忘れたのかい?僕は君と一度、出会ったはずだよ。ほら、この傷跡を見てごらん。僕はかって、君に助けられた悪魔だ。会合の時は話掛かられずごめんね。僕は君をずっと探していたんだ。―――――君の事を愛しているんだ。僕と結婚して欲しい」
彼が行ったのは求婚。そして、それに対してアーシアは……
「嫌です」
即効で断った。
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ラスボスの更新は一旦おやすみ 一~二巻程魔法使いの方に入ります