今回行われるゲームは魔王の妹同士の戦いとあって多くの者の注目を浴びていた。観覧席には堕天使現総督のアザゼルやサーゼクス等の指導者が集まってゲームの様子を伺っている。そんな彼なの中でも異彩を放つのが北欧の主神オーディンと柳だった。
「むぅ、あの二人は今日はおらんのか? あの乳や尻を眺めたかったのじゃがなぁ……」
「いやいや、勘弁して頂けませんか? 彼女らが不機嫌になったら世界がヤバいですって。……あの二人なら腰が抜けて……急用があって居ません」
主神と人間という間柄に関わらず二人は仲が良さそうに話し合い、オーディンの護衛のヴァルキリーと柳の護衛のミラは後ろに控えていた。
「それにしても、あれだけ正体を隠していたのに何があったのじゃ?」
「とある馬鹿が私の正体を大勢の前で話しまして。まぁ、煩いのは力ずくで黙らせればいいですし、あの服装って厨二臭いなぁって思ってたんですよ。それに人の口に戸は建てられないという言葉もありますし、冥界と天界を滅ぼすのも一時は考えましたが気が引けましたので……」
「ふぉっふぉっふぉ、アザ坊も命拾いしたのぅ。おや、そろそろ開始じゃな」
柳の口からサラっとこぼれ落ちた言葉に従者達の強さを知る者達は冷や汗を流し、オーディンは愉快そうに笑っている。そんな中、ゲーム開始のアナウンスが流れた。
『開始のお時間となりました。ゲームスタートです』
リアス達が転送されたのは学園の近くにあるショッピングモールを模した空間だった。今回のゲームのルールはフィールドの大規模破壊とギャスパーの神器の使用禁止。破壊力重視のリアス達にとってはやや不利なルールだった。当然パワータイプのゼノヴィアの動きも制限される事になり
「……この勝負頂きました」
「それはどうかな? 昔の偉い人は言った。剣がダメなら拳で殴れ。接近戦はCQC」
「前半部分は言ってないからね!? それに、剣士の誇りは何処に行ったんだい!?」
祐斗はキリキリ痛む胃を押さえながらゼノヴィアと共に立体駐車場を目指していく。コカビエル戦があった次の日に半死半生で見つかった彼女はどこかがおかしくなっていた。あれほど狂信的だった彼女が天界を憎む発言をし、剣に宿る破壊的な聖なるオーラには禍々しい邪気が混じっている。リアスは特に気にしていなかったが、祐斗は同じ剣士として彼女の事を警戒していた。
(見ていて下さい、DIO様! 僕は貴方の子孫に相応しい活躍をしてみせます!)
神器を封じられたギャスパーが与えられた役割は索敵だった。彼は無数のコウモリに変化して店内を偵察していた。そんな中、コウモリの一匹が人影を捉える。慌ててギャスパーはコウモリを集結させてその影を追い、
「かかったな! コレでも喰らいやがれ!」
「ぎゃふっ!?」
待ち構えていた匙と『兵士』によって彼の弱点であるニンニクがぶちまけられた。たまらず変化が解けてギャスパーの本体が姿を現す。匙は倒れてピクピクと痙攣する彼に向かって拳を振り下ろし、その拳は床に突き刺さった。
「何ぃ!? どこ行きやがった!?」
「先輩、彼処です!」
匙の後輩である『兵士』は天井を指差す。そこには再び無数のコウモリに変化したギャスパーが止まっていた。
「まんまと引っかかったな! このギャスパーに! 今更ガーリックが効くとでも!? 無駄無駄無駄無駄ァーッ! 三食ガーリック尽くしで、風呂はガーリックの絞り汁! しかも、生活用水の全てが絞り汁だ! 既にガーリックなど! とっくに克服した! 行くぞ!
叫び声と共にコウモリ達は一斉に匙達に飛びかかり、その体を傷つける。匙達も必死に手で振り払おうとするが、影から出てきた腕やに動きを封じられた上に血と共に魔力を吸い取られていった。そして、ギャスパーは一気にトドメを刺すべく上空へ飛び上がって二人を視界に収める。
「最高にハイって奴だ! アハハハハハハハハーッ! ザ・ワールドッ! 時よ止まれッ!」
柳の禁手内で行われたDIOによる蹂躙劇はギャスパーの心を大いに揺さぶり、彼は今まさにDIOになりきっていた。故に彼は躊躇いなく神器を発動させる。
「テメッ! それはルール違反……」
匙達は言葉の途中で停まり、ギャスパーの高笑いが響いた。
「アハハハハハハハハハハハーッ! ルール違反? その程度の事! このギャスパーには興味もない! あるのはシンプルな たった一つの思想だけだ……たった一つ! 『勝利して支配する』! それだけよ……それだけが満足感よ! 過程や……! 方法なぞ……! どうでもよいのだァーーーーッ」
『リアス・グレモリー様の『僧侶』 反則により退場』
「しっ、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
ギャスパーは反則行為によて強制的に退場となり、停止が解けた匙達のみがその場に取り残される。
「……なんだかなぁ」
「忘れましょう! 忘れて次行きましょう!」
匙達は虚しい勝利を忘れるように次の作戦の為に動き出した。
『リアス・グレモリー様の『僧侶』 反則により退場』
「ギャスパー君、何やってるんだい……」
「奴へのお仕置きは後で考えるとして……敵だ!」
ギャスパーの退場を知った祐斗がキリキリ痛み出した胃を押さて進んでいると、シトリー眷属が姿を現した。現れたのは『戦車』、『騎士』、『女王』。二人の姿を確認した『女王』が長刀を構えながら口を開く。
「お待ちしていました。木場く……」
「先手必勝ぉぉぉぉぉっ!!」
だが、その言葉は突然飛びかかってきたゼノヴィアによって中断せせられる。ゼノヴィアは飛び蹴りに反応しきれなかった『騎士』に対してマウントポジションを取って何度も拳を振り下ろす。その拳には確かに悍ましい邪気が込められていた。
『ソーナ・シトリー様の『騎士』 1名リタイア』
「よおおおおおおしっ! 先取点だぁ!! ヴァーリの童貞は頂いたぁ!!」
「ゼノヴィア!? 気を確かに!」
ゼノヴィアの背後から彼女に襲いかかろうとした『戦車』の猛攻を防ぎつつ祐斗は彼女に呼びかける。我に返ったゼノヴィアは『女王』に向き直った。
「そうだったな。私がどうかしていた」
「良かった! 正気を取り戻したんだね!」
「頂くのは童貞だけじゃなくてお嫁さんの座だったな! その為に小猫よりも活躍しなくては!」
「もう……手遅れだ……」
「クックク、はーはっはっははっは! モテモテだな、ヴァーリ! どうだい? 感想は」
「……彼女の様な美人に言い寄られるのは悪気はしない。だが、俺はやっぱり……」
「……そうか。まだアイツの事が忘れられねぇか。まぁ、それなら其れで良いさ。……ところで、柳。あの嬢ちゃんが纏ってた邪気って……」
「な、何の事ですか!? ミラは彼女を襲ってなんかいませんよ!? 襲われた時に邪気に侵されてなんかいませんよ!?」
「いや、冷や汗ダラダラ流して、目を逸らしまくってんじゃねえか……。おっ、そろそろ動くな」
アザゼルが目をやった画面には会談の際に一誠が天界より送られ、アザゼルの提案でゼノヴィアに貸し出されたアスカロンの一撃が『女王』の神器によってゼノヴィアに跳ね返される場面が映し出されていた。
「私の神器
『女王』の言葉の通り、ゼノヴィアは立っているだけでも精一杯で今すぐにでも消え去りそうだ。だが、そんな状況でも彼女は狂気的な笑いを浮かべていた。
「私がリタイア寸前? ああ、私はもうすぐ消えるだろうな。……だが、リタイアが確定しているという事は……リタイアを気にして戦う必要がないという事だ!!」
ゼノヴィアはそう言うとアスカロンを握り直し、瀕死の状態からでは考えられない動きで『女王』に接近する。口や傷からは血が溢れ出し、その目は虚ろだ。後一撃でも喰らえばすぐにでもリタイアしてしまいそうな姿だったが『女王』は怯えた目でその姿を見ていた。
「こ、来ないで!」
一気に飛びかかってきたゼノヴィアに向かって『女王』は長刀を突き出す。肉を貫通する感触と共にゼノヴィアの吐血が彼女の顔を濡らす。そして、彼女の腹部に激痛が走った。
「こういう時は確か、死なば諸共だったか?」
腹部を貫通したダメージによって消え去りながらもアスカロンを『女王』の腹に突き刺したゼノヴィアはケラケラ笑いながら消えて行き、数秒遅れて『女王』も消えていった。
『リアス・グレモリー様の『騎士』一名リタイア』
『ソーナ・シトリー様の『女王』一名リタイア』
この戦いよりゼノヴィアには『
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