「……此処は? うっ!」
ヴァーリが目覚めると其処は見知らぬ部屋のベットの上だった。起き上がろうとした彼は頭痛に顔をしかめながらも何があったかを思い出す。小猫を助ける為フリードと共に黒歌を倒そうとした所までは覚えているのだが、それ以上が思い出せない。ただ、覚えているのは突如頭に衝撃が走った事と、
「邪魔じゃ」
「……すいません」
そんな声が聞こえた事だけだった。これ以上は思い出せそうにないし、気絶させた犯人であろう知り合いを問い詰めても無駄だろうと思ったヴァーリは思い出す事を放棄した。……断じて怖いからではない事を彼の名誉の為、此処に明記しておく。
「そうだ! 小猫は!?」
ヴァーリは慌てて起き上がろうとして自分の手を誰かが握っているのに気づく。彼の手を握っていたのは小猫。彼女はベットにもたれ掛かる様にして寝ていた。夢を見ているらしい猫耳がピコピコ動いている。その様子にヴァーリは思わず笑みをこぼし、その頭を撫でていた。ヴァーリが思わぬ撫で心地を堪能していると目覚めた小猫と目が合う。思わずヴァーリは手を離した。
「……おはよう。すまないな。思わず撫でてしまった」
「……構いません。むしろ、もっと撫でて下さい」
「そうかい? なら、撫でさせてもらうよ」
ヴァーリは小猫に言われた通り彼女の頭を撫で、小猫は気持ちよさげに目を閉じる。彼女の耳が更にピコピコ動き、ヴァーリは思わずその耳を触る。
「……あふぅっ」
小猫は顔を赤らめ、気持ちよさげに声を漏らす。そんな中、部屋のドアが開いてアザゼルが入ってきた。
「よう! 声が聞こえたぜ。目が覚めた……すまん、邪魔した。病み上がりなんだから程程にな。この部屋には誰も近づかないようにしておくから。……避妊はしろよ?」
「誤解だ!」
何とか誤解を解こうとした
「良いって、良いって! 分かってるよ。ったく、柳といいお前といい、色気づきやがって」
「柳がどうしたんだい?」
「ああ、従者達を同時に相手するらしい。……負けたら避妊無しだってよ。どうすれば良いか相談してきたから媚薬とアドバイスを与えておいた。貸一つでな」
「……あの人、大人しい顔して意外とやるんですね」
ヴァーリはこの場にいない友人に同情の視線を送り、小猫は絶対零度の視線を送っていた。
「……勝った! 私は勝ちました!」
柳はカーテンを開け、眩しそうに景色を眺める。ベットの上にはベットの上でグッタリしている三人の姿があった。羽衣は巫女服を着た状態で尻尾と耳を出して仰向けに寝ており、胸は完全に露出し、袴は床に落ちている。脱ぎ捨てられた袴の横にはゼノンが寝ており、彼女は犬耳とリードがついた首輪をしていた。残るミラはソファーで寝ており、服が乱れた様子はない。ただ、幸せそうな顔で寝言を言っていた
「えへへ~♪ 柳さんにまたキスされちゃった~♪」
「ふぅ~、ミラが抱きしめてキスしただけでダウンしてくれて助かりましたよ。……今回は三人の望むやり方でしたからね。強引に私のペースに持っていけないのはキツかったです」
柳はそう呟きながらミラに毛布をかける。すると、その後ろから忍び寄ってくる影があった。
「……むぅ、まさか負けるとはのぅ。ゼノン、貴様のせいじゃぞ。妾が柳を屈服させようとしている時に手を出しおって。尻尾の付け根と胸は弱いと言っておろうが」
「焦らすように時間をかける貴様が悪い。放置プレイというものもあるが、我には合わん」
「ふん、ドMの貴様でも合わんのか。確か、何と叫んでおったかのぅ。柳の事をご主人様とか、自分の事を牝犬とか言って興奮しよって」
二人は言い争いをしながらも柳が着た服を再び脱がし出した。
「あの~、なんでお二人共私の服に手をお掛けなんでしょうか? 勝負は私の勝ちで終わりましたよね?」
「ああ、勝負はお主の勝ちじゃ。だから、褒美を遣わそうと思っての。今からもう一回戦じゃ。今度は妾が受け身になり、ゼノンが攻める。……異議は認めん」
「……我は受身の方が良いのじゃが、まぁ、新しい世界に目覚めるのも悪くはない。なぁに、昨日使うのを妨害した薬を使っても良いぞ」
二人はそう言いながらアザゼルが柳に渡した媚薬を無理やり口にねじ込み、そのままベットに押し倒す。しばらくの間、部屋に三人が絡み合う音が聞こえた……。
そして、レーテイング・ゲーム当日、ヴァーリとアーシアとフリードはアザゼルのお供として一誠達の控え室に来ていた。
「さて、いよいよゲーム開始だね。一誠、小猫、応援しているよ」
「はい、先生! 師匠の名に恥じぬ戦い方を……してみせます……」
「語尾が消えていく……頼むから変な戦いはしないでくれ。俺の胃は限界なんだ」
ヴァーリの応援に一誠は決意に満ちた瞳で返事をしたが最後の辺りで急に目をそらす。その様子にヴァーリは胃がキリキリ痛み出すのを感じた。彼の最近おストレス原因はアザゼルが提案したある子供向け番組。まだ企画段階だが、ヴァーリはその番組名を聞いただけで胃薬の使用量が倍に増えた。ゼノヴィアの誘惑も日増しに激しくなり、彼も男なので正直言うと嬉しくはあるのだが、それでも対応に苦労させられていた。
「……ヴァーリ先輩。活躍したら頭を撫でてくださいますか?」
「頭なら何時でも撫でてあげるよ。これで良いかい?」
そんな中、やっとできた癒しが小猫だった。あの日から随分と仲良くなっており、彼が小猫の指南役を買って出たほどだ。頭を撫でられて幸せそうに吐息を漏らす小猫を見ていたゼノヴィアはヴァーリの前に進み出てそっと頭を差し出す。それを見たヴァーリは苦笑しながら今度は彼女の頭を撫で出し、それを見た小猫は不満そうにゼノヴィアを見た。
「……今は私の番です。邪魔しないでください」
「おやおや、小猫はこの前も撫でて貰ったのだろう? なら、今度は私の番だ」
二人の間に火花が散り、一触即発のムードが流れる中、アザゼルによって更なる爆弾が投下される。
「そういえば、ヴァーリをモデルにした子供向け番組のヒロインを決めてなかったな。……よし! 今回活躍した方をモデルにすっか。ただし、功を急いで足引っ張りあったらレイヴェルがモデルな。番組が有名になれば世間一般の認識では其奴がヴァーリの恋人だと思われるだろうな。……レイヴェルは名門フェニックス家の長女だ。手ごわいぜ?」
アザゼルはそう言ってニカッと笑うとリアス達の方に歩いていく。二人は暫し睨み合っていたが無言で頷いた。
「……足の引っ張り合いはなし。見つけた敵は相手に近い方の獲物とし、残った方は別の敵を探す。でいいですね?」
「……他の仲間が戦いたがっている相手は譲る、でいいな?」
「「そして、焼き鳥にヒロインの座は絶対に渡さない!」」
二人は一時的な同盟を組んでゲームに備える。そして、ゲームの開始の合図が鳴り響いた。
一方その頃の焼き鳥姫は……
「くしゅんっ! 風邪でも引いたのかしら? ……ああ、ヴァーリ様とお揃い♪」
彼女が着けているのは先日のイベントの賞品である猫耳と肉球グローブ。見ているのはイベントの時の賞品獲得者の表彰式の写真。其処には猫耳と肉球グローブをつけて羞恥に顔を赤らめるヴァーリの姿があった。なお、ミラクルバトンを手にしたサイラオーグの部分は彼女の精神衛生上の都合で塗り潰されている。その写真を見ながらベットに寝転がっていた彼女はリアス達のゲームの様子をテレビで見ながら顔をしかめる。今写っているのはゼノヴィアと小猫。彼女らがヴァーリにモーションをかけているのを兄から聞いたレイヴェルは思い立った様に立ち上がる。
「こうしては居られません! お父様達に留学のご相談をしなくては!」
そう叫んでグローブをベットに投げ捨てて部屋を飛び出したが、猫耳を外し忘れた事に気付いて戻って来たのは数秒後の事だった。
意見 感想 誤字指摘お待ちしています
もうすぐ5巻終わり その後は6巻の構想練り直しつつ魔法使いを執筆 新作はに作品に詰まったらか思いついたら
イッセーのヒロインをどうしよう イリナが最有力候補 ロスさんはまだ地味な出番しかないし……
ヴァーリがモデルの番組wwwww アレですよアレ