ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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敵だったのに仲良くなりましたね

冥界の山中に突如、轟音が響き渡り、木に止まっていた鳥達は一斉に飛び立った。轟音の原因になったのは巨大なドラゴンのブレス。そのブレスが命中した地面は爆ぜてクレーターができ、木々は吹き飛んでいる。そして、その中心地で一誠とフリードがボロ雑巾の様に横たわっていた。

 

「……おい、生きてるか?」

 

「……何とか」

 

一誠が纏った鎧やフリードが創り出した盾は粉々に砕け、破片が周囲に散らばっている。二人が呻き声を上げながら何とか立ち上がろうとした時、この惨状の原因であるドラゴン、最上級悪魔タンニーンが土煙を舞い上げながら地面に降り立ち、重厚な声で告げた。

 

「飯の時間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、オッサン! 俺達は疲れてんだよ。腹減ってんだよ。ムカついてんだよ。自分の飯は自分で探せって、どう言うこっ、あべしっ!?」

 

「フリードォォォォォォォォォ!!」

 

飯の時間を告げられ喜んだフリード達だったが、タンニーンが告げたのは、飯は自分で用意しろ、の一言だけ。それに反発して食ってかかったフリードはタンニーンに殴り飛ばされ、地面をバウンドしながら飛んでいった。上半身が地面に埋もれ、犬神家を連想させる姿でピクピク動いているフリードを見て、一誠は絶対にタンニーンには逆らわないでおこうと心に誓ったのであった。

 

 

 

 

 

「あ~、クソ! サバイバルなんざ、何年ぶりだぁ? エクソシストの強化訓練以来だぜ」

 

「俺なんて夏休みなんだぜ。折角の夏休みなのに、ドラゴンに追われながら男と一緒にサバイバルなんてよ。せめて、綺麗なお姉ちゃんと一緒が良かった!」

 

あの後、なんとか復活したフリードと一誠は一緒に食料を探し、適当な獣と野草を集めて食べていた。最初はフリードが捌いていたが、これから暫くはこの生活が続くという事で一誠もやらされ、なれない作業に疲労はピークに達し、言葉もロクに出なくなっていた。反対にフリードは文句ばかり言ってはいるが、まだどこか余裕が見える。今も短剣を創り出し、分厚い果物の皮を剥いていた。フリードは果物の皮を剥くと二等分し、片方を一誠に差し出す。

 

「……ほらよ」

 

「サンキュ。なぁ、なんでお前はエクスカリバーを貰ったのに使わないんだ? 強くなりたいんだろ?」

 

「……強い武器だけ手に入れて強くなったなんて思ってるのは唯の馬鹿だ。そんなのは其奴が強いんじゃねぇ。武器が強いんだ。それに、デけぇだけの力に何の意味もねぇよ。力ってのは使いこなせなきゃ意味がねぇんだ。お前も神滅具なんて大層なもん持ってるんだから分かるだろ? なぁ、今度のゲーム。テメェはどういう目標を持ってんだ?」

 

一誠の何気ない問いに答えたフリードは、反対に一誠に問いかける。その質問に対し、一誠は心底悔しそうに言葉を発した。

 

「俺はよ、勝ちたいんだ。レイナーレには簡単に殺されて、ライザーとのゲームでは眷属は倒したけど結局負けた。……まぁ、負けて正解だったんだけどな。コカビエルの時も負けたし。……俺さ、悪魔になってから勝ったって言える経験がねえんだ。だから、どんな勝ち方とかじゃなくて、ただ単純に」

 

「……そうか。んじゃ、張り切って修行しなくちゃな。オッサンが呼んでるぜ」

 

タンニーンから休憩の終わりを告げられた二人は焚き火の後始末を済ませ、タンニーンへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、ミラ。ソフトクリームですよ。好きだったでしょう?」

 

「……い、要りません」

 

「あ、お化け屋敷ですよ。一緒に入りませんか?」

 

「お化けより、私の呪いの方がよっぽど怖いですよ? 入りません」

 

アーシアの告白に柳が返事を返してから不機嫌になったミラの機嫌を直そうと手を尽くす柳であったが一向に機嫌が直らずにいた。好物で釣ったり、遊びに誘ったりしたが一向に効果はなく、時間ばかり過ぎていく。そんな空気にアーシアは耐えられなくなっていた。

 

「あ、あの~、やっぱり私が柳さんに告白したからでしょうか?」

 

「まぁ、そうじゃろな。……奴の種族は他の存在を認めないという特徴を持つ。柳は、そんな者が初めて好意を寄せた相手じゃ。故にミラは柳に対し、一種の独占欲を持っての。我等二人以外が柳と仲良くなるのが気に入らんのじゃ。だが、誰かとと一緒に居る事で柳が幸せを感じる事も知っておる。柳にはもっと幸せになって貰いたいという心と、柳を独占したいと言う心。複雑な話じゃな。まぁ、お主に出来る事など何もない。目障りだから何もするでないぞ?」

 

「……言っておくがミラと話そうとするな。今の奴にお前が話しかけても殺されるだけだ。それでは、柳が悲しむ。死にたいのなら、柳に嫌われてからにしろ」

 

ゼノンと羽衣に相談したアーシアだったが、二人の容赦ない言葉によって一蹴される。ミラほどではないがこの二人も告白が気に入らなかった様だ。そんな中、ミラと柳の姿が何時の間にか消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、ミラ。何か言いたい事があるのでしょう? なんでも聞きますよ。いい加減仲直りしましょう」

 

「……」

 

柳は一向に機嫌を直さないミラに対し、話をつけようと観覧車に連れ込んだ。最初は黙っていた彼女だったが、ようやく折れたのかゆっくりと口を開き、

 

 

 

 

 

 

「柳さんの嘘つき! 私達以外に恋愛感情を抱かないって言ったのに! あの女の告白に対する返事は何なんですか!」

 

鼓膜の敗れるよな大声で怒鳴った。その顔は幸いな事に泣き顔でなく、ふくれっ面だったが、柳の顔を見ようともせず、頬を膨らませたまま顔を背けている。

 

「……仰る通りですね。弁解の言葉もありませんよ」

 

「柳さんの女誑し。何人落とせば気が済むんですか。学校でも何度も告白されてるでしょう」

 

「……はい。されています」

 

「柳さんの色情魔。あの二人が気絶するまでって、どれだけ鬼畜なんですか」

 

「……はい。仰る通りです。色情魔ですみません」

 

「それに、私がどれだけ好きって言っても相手にしてくださいませんし! 私の好意に気付いてますよね」

 

「はい。気付いています。……ミラはまだ子供だし、今は妹みたいだって言ってるじゃないですか」

 

「……柳さんの事だから私が成長してもズルズルと今の関係を続ける気がするんですが。そして、あの女に先を越されたり……柳さん?」

 

「じゃあ、もし私がアーシアさんを好きになっても良い様に先を越しておきましょう」

 

容赦ない言葉をズバズバと言い続けていたミラであったが、急にその言葉が止まる。優しく微笑んでいた柳によって抱きしめられていたのだ。動揺して顔を真っ赤にしながらも、ミラは嬉しそうにしている。柳はそんな彼女の耳にそっと囁き、その唇にそっとキスをした。

 

「~~~~~~~~~~~~!?」

 

「……あれ? ミラ? ミラさ~ん?」

 

柳の腕の中で顔中を真っ赤にしたミラは幸せそうな顔で固まり、観覧車が地面に降りるまで動き出すことはなかった。なお、三人と合流した時にすっかり機嫌を直して柳の腕に抱きついているミラを見て、三人は何があったか聞き出そうとしたが、平然としている柳と、妙に機嫌の良いミラがそれに答える事はなく、ゼノンと羽衣は結局、その日の夜に柳から無理やり聞き出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、来い、小僧共ぉっ!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

タンニーンの叫び声と共に一誠は背中のブースターをふかして飛んでいく。今の彼では最大まで倍加しても最上級悪魔である彼には届かない。だが、体格差を生かして体に纏わりつき、タンニーンの気をそらす事は出来る。その間にフリードが渾身の一撃の準備を整えていた。彼は作り出したのは巨大な固定式の弓矢、バリスタと呼ばれるそれには巨大な槍がセットされており、槍からは強力な聖なるオーラが放たれていた。

 

「これでも、喰らいやがれぇ!!」

 

バリスタから放たれた槍は一直線に向かって行き、その翼を打ち抜いて遥か彼方に飛んでいった。翼を大きく傷つけられた事によって地に落ちたタンニーンだったが、フリードもバリスタ創り出した負担が大きかったのか膝を着く。一誠はタンニーンの下敷きになり、必死でもがいていた。

 

 

 

 

 

 

「あ~、くそ! ああいう兵器は、剣や斧とかの武器より負担が大きいぜ。創るのに時間が掛かるしよ~。ま、剣とかなら何本も同時に出せるがな。イッセーはどうだ?」

 

「まぁ、禁手した後の神器の発動不可時間が短くなったのと、発動までの時間が短くなったがよ、まだ発動持続時間は伸びてねえよ。フリードは良いよなぁ。だいぶ成長してんじゃねえか」

 

修行開始から数日が経ち、すっかり仲良くなった二人はお互いの成長について話し合っていた。そんな中、彼らを訪問したアザゼルによって二人はグレモリー家の屋敷に連れ戻される。その理由は、小猫が倒れたというものだった……。




柳が告白にどう返したかは今後明かされます

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