「……これは、何でしょうか?」
兄と一緒に無理やりイベントに参加させられたレイヴェルは、目の前にある看板の前で、そう言葉を漏らす。看板にはボタンが取り付けられており、そのすぐ横には数字が表示されているモニターがあり、少しずつその数字が減ってきている。そして、看板にはこう書かれていた。
『強力な宝の番人を大勢で倒そう! 撃破時に残っていた全員に賞品をプレゼント! 豪華賞品有り。先着50名!』
「……こんなのに騙されるなんて何処の馬鹿でしょうか? 明らかに罠ですわ」
レイヴェルは呆れた様な表情を浮かべ、通路の先に進んで行った。なお、何処の馬鹿と彼女は言ったが……
「おお! 全員に豪華賞品か! よし! 押すぞ。ゼノヴィア、お前もそれで良いな?」
「当然だ! これを逃す手はあるまい! 定員に達する前に押せ、カーラマイン!」
それが自分の所の馬鹿と、未来の義姉の所の馬鹿とは、彼女に知るすべはなかった。なお、馬鹿同士で、中々仲良くなったようだ。二人は嬉々としてボタンを押し、やがて数字が0になった時、看板とボタンは音もなく消えさった。
「……む? 此処が番人の部屋か? 来ているのは悪魔だけか。さては、堕天使や天使は強力な番人に怖じけついたな! おや、彼処に居るのはグシャラボラス家の次期当主のゼファードルか」
カーラマインが辺りを見回すと部屋の様子が目に入ってきた。石造りの床に、巨大なツタが絡まっており、天井はかなり高い様で、真っ暗で何も見えない。離れた所で騒がしくしている集団が居る様で、目を凝らしてみると、見知った顔だった。
ゼファードル・グシャラボラス。彼は凶児の異名を持つ通り、とてもガラが悪い。今も周りに居るのが自分より下の相手とみて、威張り散らしていた。彼女らも同行する事になり、面倒くさかったが、逆らうのも面倒だし、番人の事も気になったので大人しく従う事にした二人は先に進み、その先に番人らしき存在が居た……。
「……機械?」
一行の目の前に存在していたのは巨大な機械だった。中央に扉らしき物がついた球体に四個の砲台があり、一行が近づいた時、その機械から電子音が聞こえてきた。
「pipipi…侵入シャ、ハッケン。マスターノ命令ニヨリ、最終防衛システム、起動シマス」
四台の砲台が一行を向き、そこからエネルギー弾が一斉に放たれた……。
この世界とは違う世界。そこに一人の魔王がいた。彼の名はゼタ。宇宙最強魔王と呼ばれた彼は、とある事情により肉体を失い、あらゆる願いを叶える力を持つ全知全能の書に魂を宿した。そんな彼はふと思いつき、とある願いを書に書いた。
次回作の主人公に喧嘩を売る! という願いを……。
その主人公がシリアス風だったのに驚きつつも彼女を撃破したゼタは彼女を無理やり弟子にする。その為、彼女が主人公になるはずだったゲームの発売は阻止され、ここから彼女の苦悩の日々が始まった。
シリアス向けな見た目の主人公から二頭身のデフォルメキャラにされ、永遠に完成しない映画の主演女優として登場し、隠しキャラとしてしか登場できない等、何度も苦渋を舐めさせられてきた。もはやネタとしての、次回作の主人公、となった彼女はついに自分が、最新作の主人公に喧嘩を売る、という願いのついでにゼタを抹殺。ついでにその世界のラスボスの一人を世界ごと吹き飛ばし、主人公の座を乗っ取りにかかるまでに至った。
そして、今、彼女の逆鱗にリアスが触れてしまった。彼女にとっての禁句の隠しキャラという言葉に……。
「あははははははー♪ 消し飛んじゃえ~!」
アサギは天高く舞い上がると、銃を乱射。その銃弾の嵐は上級悪魔であるリアスとライザーさえも地面に縫い付ける。そして、その隙を狙い、アサギは一気に接近してきた。
「し~んじ~んい~じ~め~! 隠しキャラって何よ~! 隠すなぁ~!!」
悲痛な嘆きの声を上げながらアサギは鉄球のついた鎖を二人の間に立って振り回す。鉄球の衝撃と、それによって枚起こった旋風によって二人が空中に吹き飛ばされた瞬間、アサギの手から放たれた光は宇宙まで飛んでいく。宇宙まで飛んでいった光は巨大な宇宙戦艦に送信され、レーザー砲が放たれた。その宇宙戦艦の名は無敵戦艦良綱。様々な世界に支店を置く、ローゼンクイーン商会の魔界支店にて受注生産されている兵器だ。この戦艦から放たれたレーザー砲の名は、超時空銀河波動砲。宇宙最強絶対無敵前代未聞の究極最大奥義である。
当然、その様な攻撃に二人が耐えられるはずも無く、二人の姿は転送の為に消えていった。ただし、
「すま…ない。君だけでも…守り…たかった…」
「いい…わ。気に…しないで…」
最後に抱き合い、キスをしていたが……。なお、二人は忘れている様だが、このイベントの様子は観覧席に大画面で映し出されている。観客が二人の様子を見て砂糖を吐く中、その光景にダメージを受けた者が居た。
「う、羨ましくなんてないんだから! 私の本体には柳が居るもん! ……うわ~ん!!」
アサギは泣きながらその場を去って行く。すると、二人の体が消えるのが遅くなり、二人の目の前に宝箱が現れた。
『完全に転送される前に番人が戦闘を放棄したとみなし、お二人に賞品が送られます』
「……開けるか」
「そ、そうね……」
気不味い空気の中、二人が宝箱を開けると、そこには見慣れた物が6個入っていた。
「……携帯電話?」
そう、宝箱の中に入っていたのは携帯電話だった。リアスが呆然としながらも、携帯電話を手にとったその時、けたたましい音楽と共に、アナウンスが流れ出す。
『さぁ、大変! 強敵が現れ、ピンチの時は、助けてもらおう、ヒーローに! 不思議な携帯っを、ピッポッパと鳴らせば、僕らのヒーローやってくる! 行けゆけ、僕らのニジレンジャー! 頑張れ、負けるな。38代目地球勇者プリニーカーチス! 皆が君らを待っている! ……なお、その携帯電話は一回使えば壊れますのでお気を付け下さい』
「「グレイフィア(さん)が壊れたっ!?」」
グレイフィアの奇行に驚きつつも、二人はついに転移していった……。
「……はぁはぁはぁ。チクショウ! なんで悪魔なのに聖剣が効かねぇ!?」
フリードは息を切らしながらも中ボスに向かっていく。だが、手に持った聖剣は傷一つつけられる事も無く砕け散る。
「貴方のその神器。確か、
中ボスはそう言い、フリードを蹴り飛ばす。なんとか聖剣を間に入れて直撃は避けたが、フリードは吐血しながらサーゼクスの近くの床に叩きつけられる。そんな彼に対し、中ボスは更に声をかけた。
「どうしてそこまで頑張るのですか? 貴方なら、ゆっくりと力を付ければ良いだけの話ではありませんか? いま無茶して体を壊したら意味がありませんよ。諦めて他の宝を捜しなさい」
「……私もそうした方が良いと思うよ。今は彼が手加減をしているが、本気を出されたら後遺症が出かねない。諦めるんだ、フリードくん」
サーゼクスはそう言って、倒れたフリードに手を差し伸べるが、フリードははその手を振り払い、自力で立ち上げる。だが、足元はフラつき、まともに戦える様子ではない。しかし、彼は中ボスに向かって行く。その目に闘志を燃やしながら……。
「……無謀だなんて分かってるよ。無茶なんて百も承知だ。だがな! 俺は家族の為に強くならなけりゃいけねえんだ! その為なら、限界だって超えてやる!」
彼がそう叫んだ時、彼が作り出した聖剣の輝きが増し、部屋中を包み込んむ。
「来た来た来た来たぁっ!
その叫びと共にフリードの持つ聖剣が形を変えていった。
「……ここ、明らかに宇宙船だよなぁ? なんでこんな所に?」
一誠が窓から外を眺めると土星らしき星が見え、通路を見れば、SFでよく見る宇宙船の内部である。首をかしげながらも歩き続けると、ようやく、突き当たりに出た。目の前には宝と書かれた扉。中に入ると、
「よし! ホームランだっ! ちっ! 何やってんだぁ!」
怪しいオッサンが野球中継を見ながらビールを飲んでいた。黒タイツで全身を覆い、その上から緑のコート。頭には顔全体に巻かれた包帯とヘルメット。どう見ても不審人物である。
「アンタ、誰だよ!?」
「んっ? おお、兵藤か!」
「……俺のこと知ってんのか?」
「はぁ? 何を……。ああ、こっちのお前とは初対面か。私は此処の宝の番人だ。まぁ、よっちゃん、とでも呼んでくれ。このコートを脱がせれたら本名を見教えてやる。まぁ、弱いお前には無理だろうがな」
よっちゃん、と名乗った男はそう言うと戦闘態勢を取った
意見 感想 誤字指摘お待ちしています
次回 やっと主人公の出番なるか!? 従者の出番はあります ヴァーリもギャグに走れるか!?
おまけは今後追加予定
今回のラスボス
アサギ ソウルクレイドル 永遠の次回作の主人公(笑)