吸血鬼は基本的に排他的な種族である。純潔至高主義であり、たとえ血縁者であっても他の種族の血が交じっていれば、雑種と呼ばれて虐げられる。そして、吸血鬼は一度滅びかけた種族であった。人間を攫い、犯し、血を吸う為の家畜とする。そんな彼らが人間の怒りを買ったのは当前の結果だった。派閥ごとに争っていた吸血鬼が一致団結した人間に敵うはずもなく、その数を減らし、衰退の一途を辿っていた。そして、皮肉な事にその吸血鬼を救ったのは、蔑んでいた人間の血を引く半吸血鬼の少女の神器から現れた吸血鬼だった。
DIOと名乗る吸血鬼は圧倒的なカリスマ性でバラバラだった吸血鬼を統一、人間への反撃を開始する。人間も名立たる吸血鬼狩りや神器使いを投入するも、尽く敗れていった。一番の要因となったのは彼の持つ時を停める力だった。どんな強者でも時を停められては反撃も回避もできない。やがて、彼は吸血鬼の名門ウラディ家の娘を娶り、世界征服への第一歩を歩もうとしていた。だが、一人の英雄によってその野望は潰える事となる。彼を倒す為に現れた英雄の前に彼の能力は無効化され、それでも戦った彼はその生涯を終えた。英雄を道連れにして……。
DIOの死亡。人間は圧倒的なカリスマを失った吸血鬼は再び追い込み、以前ほどではないがその力を大きく削ぐ事に成功し、辺境へと追い込んだ。DIOの血筋を残したまま……。
やがて時は流れ、吸血鬼が再び派閥に別れ、半吸血鬼が蔑まれる中、ブランドー家に一人の半吸血鬼が生まれた。当然のようにイジメ抜かれて育った彼だったが、ある日その生活が一変する事となる。
神器・
彼に対する視線は期待から失望へと変わり、やがて、DIOへの侮辱という憎悪へと変わって行く。それから、彼や同じ半吸血鬼は再び以前の、いや、以前以上の地獄の日々を送る事となった……。
「―――そして、ある日、ギャスパーの家族は彼を追放したの。ギャスパーの能力を人間に知られるようにした上でね。そして、死にかけていた所を私が見つけ、眷属にしたのよ」
「そんな! 家族なんでしょ!? そのDIOって奴がどれだけすごかったか知らないけど、幾ら何でもあんまりじゃないっすか!」
「それ程までに吸血鬼にとって純血主義とDIOの名は大切だったのよ。」
吸血鬼に憤る一誠に対し、リアスは悲しげに呟く。その視線の先ではダンボールに入って震えるギャスパーの姿があった。彼はうずくまりながら泣き叫んでいる。何もかもに恐怖する様に。
「僕は、もう誰にも期待されたくなんかないっ! どうせ僕なんか期待するだけ無駄だし、失望されるのも嫌だっ! 勝手に期待して、勝手に期待を裏切ったって言って、だったら、最初から期待されない方が良かったっ! なんで僕はこんな力持って生まれてきたんだっ! こんな力要らなかったっ! 僕なんて産まれて来なかったら良かったんだっ!!」
「……貴様、いい加減にしろよ」
「ちょっと、ライザー!?」
ギャスパーの言葉を聞いた途端、ライザーの声が空き教室に響く。声は静かだったが、ライザーの顔は怒っていた。リアスの制止も聞かず、無言でツカツカとギャスパーに歩み寄ると、その胸ぐらを無造作に掴み、持ち上げた。
「そうやって泣き言言ってるのはさぞかし楽だよなぁ。自分を慰めれる上に周りも優しくしてくれるし、嘸かし気分が良いだろうよ。僕は世界で一番不幸ですってか? ハッ! 貴族の俺が言えた事じゃねえが、お前位不幸な奴は幾らでも居るんだよ。甘ったれんじゃねぇっ!」
「あ、貴方なんかに僕の気持ちが分かるもんか!」
「ああ、分かんねえよ。他人の気持ちが分かるなんて只の錯覚だ。お互い不幸だから相手の気持ちが分かる? ハッ、ただ分かってる気で傷の舐め合いをしてるだけだろうがっ!! お前には力が有るんだろう? なんでその力を使ってお前を馬鹿にした連中にやり返さねえ!? ……すまん、熱くなりすぎた」
ライザーはギャスパーに謝るとそっと床に降ろし、教室から出て行った。
「おい、ギャスパー。お前の仲間は頼れる奴ばかりだ。お前が困ったら絶対に助けてくれる。だから、お前も仲間の助けになれるくらい強くなれ。そして何時か、お前を馬鹿にした奴らを見返してやりな。じゃあな」
「は、はい」
ギャスパーの返事にニカッと笑うとライザーは転移していった。リアスはライザーの言葉を噛み締めているギャスパーに近づいていく。
「ギャスパー、私も協力するからもう一度だけ頑張りましょう」
「……はい。……あの、ところであの人誰ですか?」
「……あ」
「……そういや、俺、あいつに紹介されてたっけ?」
二人がギャスパーへライザーを紹介していない事に気づいたのはほぼ同時だった……。
「……あの~、寝づらいのですが」
「気にしなくて良い」
「気にするな」
「気にしないで下さい」
その日、柳の寝室ではいつもと違う光景が繰り広げられていた。従者が一人くらいベットに潜り込んでくるだけならたまに有ったが、その晩は違った。左右の腕をゼノンと羽衣に抱きつかれ、上からはミラが乗っている。これでは寝返りも打てないと柳が苦情を言っても従者は其処を退く気はなさそうだ。
「ずっと言いたかったが、怖くて言えなかった事を貴様があっさりと了承してくれたからな。我らは嬉しいのだ。……ありがとう」
「こうやって我らの気を少しずつ送り込み、お主を強化しておるのじゃ。あとは鍛錬と合わさればすぐに強くなれるし、人を捨てる時も簡単になる」
「その時はちゃんと私たちをお嫁さんにしてくださいよ。そして、平等に愛してくださいよ? あ、場所はローテーションで変わりますから」
「……努力しますよ。それにしても、お嫁さんが三人ですか。これは昔のライザーの事を言えませんね。……ローテーションという事は二人も上になるんですか? ……重そ……いや、太ってるって事じゃなくて二人共ミラと違ってスタイルが良いからですよ。だから、腕を絞めるのは止めて下さい。……って、今度はミラですか!? すみません、私が悪かったです!」
ミラが柳の胴体を締め上げだした時、仕事の依頼が入った事を知らせる音が鳴り響く。柳は安堵と不機嫌さを浮かべながら起き上がった。
「……こんな遅くに。それに、フードが必要な相手ですね」
柳がブツブツ呟きながらフードを被り、パソコンを開くと画面に赤い髪の青年が映し出された。
「やぁ、君が指揮者かい? 私は魔王サーゼクス・ルシファーという者だ。早速だが依頼をしたい。今度駒王学園で三勢力の会談が開かれるんだが、全ての勢力と関わっている君に第三者として出て欲しいんだ」
「……了解。では、報酬に関しては後ほど連絡します」
柳は不機嫌さを隠そうともせず、会話もそこそこに通話を切った。心底嫌そうな顔をしながら……。
意見 感想 誤字指摘お待ちしています
魔法使いの方でもオマケ書こうかな
舞台をフェイトにして、子供時代のシオンとゲオルクとルフェイにシロウの代わりにセイバー召喚させようかな 子守しながら聖杯戦争 セイバー哀れ アーチャーも哀れになる予定
細かい設定は無視して…… もう一度古本屋で漫画探すか、アニメ借りて