ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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フェイトが面白くて老兵の執筆のための恋姫が進まない 来月にはモンハン4が出るし……

超不定期ってタグあるし、告知だけしておきます


ヴァーリ? 何処かに逃げました

―――――人は死ぬ。死は誰にも平等に降りかかる。平民であっても、王族であっても、悪党であっても、そして、英雄であっても……。

 

今、一人の英雄に死が訪れようとしていた。原因はただの事故。階段で足を滑らせ、強く頭を打ち、彼の一生は呆気無く終ろうとしていた。

 

(死にたくない、死にたくない、死にたくない! この俺が! こんな形で死んでたまるか!!)

 

今にも命を手放そうとしながらも彼は生に執着していた。かって英雄とまで呼ばれた自分が足を滑らせて死ぬなど、許されるわけがない。どんな事をしても生き延びる。そして、意識が薄れていったその時、彼の目には胎児を宿した孫娘の姿があった……。

 

 

 

 

 

 

「なんです、ゼノンさん。話って」

 

「……それはだな」

 

バカンスの夜、柳はゼノンから話があると呼び出され、昼に入った温泉へと来ていた。二人で温泉に入りながら発せられた柳の問いに、ゼノンは言いにくそうに言いよどむ。まるで、今から言うことを拒否される事を恐る様に。そんな様子を見て柳は嘆息を吐き、ゼノンの顔をまっすぐ見つめた。

 

「ゼノンさん。言いたい事があるのなら何でも言って下さい。私達は家族じゃないですか」

 

「……すまん。なぁ、柳。我らは貴様の神器で呼び出されたが、貴様が死んでも現界し続ける。数百万年生き続ける我や転生を繰り返す羽衣、そして、龍族であるミラ。我らが貴様と一緒に居られるのは、あと精々数十年。はっきり言おう。柳、我の手で悪魔になる気はないか?」

 

「あ、良いですよ。じゃあ、大学には行きたいので、大学を卒業したらお願いしますね」

 

「……随分とあっさりしているな。少しは悩むと思ったのだが……」

 

「なんで悩む必要があるんですか? だって私、皆さんの事が好きですから、長い間一緒に居たいですよ」

 

柳の口からあっさりと発せられたその言葉に、隣で聞いていたゼノンだけでなく、盗み聞きしていた羽衣とミラも耳まで真っ赤になっていた。

 

 

 

 

「……むぅ。奴ならああ言うと思っとたが、実際に聞くと気恥ずかしいのぅ」

 

「柳さん。そんな、私の事が好きだなんて。あん、私はまだ少女ですから、まだ本番は……」

 

「落ち着け、馬鹿者。まだ話は続いとるぞ。……しかし、悪魔にする方法とはどの様なものなのだ?」

 

妄想に耽るミラを一喝した後、羽衣は思案に耽る。先を越されそう、何故かその様な不安に駆られながら……

 

 

 

 

 

 

「ところで、ゼノンさん。悪魔にするってどういう風にするんですか? ……できれば痛いのや、人格が変わるのはご勘弁を……」

 

「安心しろ、我の知っている方法は幾つか有るが、その中でも痛くなく、人格の変わらん方法がある。……房中術は知っておるの?」

 

「……まぁ、羽衣さんから仙術の講義の時に教わりましたから。男女の交わりの際に気を送り込むアレでしょう? ……危うく実践させられそうになりましたよ。……あの~、まさか」

 

柳がそう言った途端、ゼノンが首筋に手を回し抱きついていた。長い白髪が柳の肩に触れ、張りのある胸は柳の胸板に強く押し付けられても形を変えない。そして、唇が触れるか触れないかの距離でゼノンは優しく囁いた。

 

「想像の通りだ。なに、貴様は将来的にはこの世界を捨て、複数の世界を支配する魔王神の夫になる男。夫婦なら当たり前の事をするだけだ。……なんなら、他の二人も交えて天狐と龍の気も取り込むか?」

 

「いや、あの、ゼノンさん? 悪魔化は大学卒業後の筈では……」

 

「……安心しろ。これは練習だ。だから、悪魔はせず、避妊もしている。それとも、我に恥をかかせる気か?」

 

そして、ゼノンは柳にゆっくりと体を預けていく。そして……

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、待てーぃ!! 妾を差し置くな! っというか、妾も混ぜるのじゃ!」

 

「チッ、仕方ない。ミラはそこで見学だ。貴様は未熟だからな」

 

「……はい」

 

 

突然の乱入者により動きを止めたゼノンは憎々しげに二人を睨み、仕方なさそうに交渉を進める。本人の意思を無視して……。交渉の際に未着していたゼノンが立ち上がり、三人の意識が自分から離れた隙に柳はこっそりと逃げ出そうとしていた。

 

 

 

「い、今の内に……」

 

「「何処に行く気だ(じゃ)?」」

 

しかし、その逃亡はあっさりと露見し、両肩を掴まれる。柳が振り返った時、二人の顔は獲物を狙う獣の目だった……。

 

「ミ、ミラ、助けて……」

 

「嫌です。これもお勉強ですから」

 

最後の希望も潰え、絶望した柳は羽衣とゼノンに引き寄せられ、背中から抱きつかれる。そして……

 

 

 

「「いただきます」」

 

そう言うと同時に押し倒され、二人の体が柳に覆い被さった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、お婿に行けない……」

 

「安心しろ。妾らが貴様の嫁になってやろう」

 

「それに、本番は勘弁してやっただろう。有り難く思え」

 

「……は、はぅぅ」

 

その後、四人以外誰も居ない世界にある温泉では疲れきった柳、満足したような顔の羽衣とゼノン、そして、顔を真っ赤にして湯気を出しているミラの姿があった……。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、一誠が聞いたら血の涙を流し、嫉妬に唇を噛み切るような目に柳があっている頃、一誠は旧校舎の一室の前にいた。部屋の扉は『KEEPOUT!』と書かれたシールで封印されている。主であるリアスの説明によると、この部屋には力が強力すぎる為に封印された『僧侶』がおり、これまでの活躍から出してもリアスが制御できる、と上が判断したので封印が解かれる事となったのだが……。

 

 

「……引篭りなんっすよね?」

 

「そう、それが悩みの種なのよ。本人は根っからの引き篭りで、夜中は旧校舎の中なら自由に動けるのに出たがらないのよ。ねぇ、ライザー、貴方はどうやって心を鍛えたの?」

 

なぜ、ライザーが居るかというと、封印開放の知らせを持ってきたのが彼だからだ。そして、主の婚約者なのだからと同行を申し出、リアスもそれを了承した為にこうして一緒にいる。ちなみに二人は先程から手を繋いでいた……

 

「山の中を殺気を撒き散らすドラゴンに追われながらのサバイバルだ」

 

「……さ、さぁ、開けましょ」

 

トラウマを刺激された顔になったライザーを見て、聞くんじゃなかった、と判断したリアスは話しを切り替え、扉を開ける。すると、けたたましい声が響いてきた。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

一誠が何事かと覗き込むと、部屋の奥には金髪の小柄な少女らしき人物がダンボールに入っていた。一瞬、美少女か!、と喜んだ一誠であったが、なにか不自然なものを感じ、リアスの方を振り向いた。

 

「あの、部長。あの子って、女の子ですか?」

 

その言葉を聞き、一瞬驚いた顔をしたリアスだったが、すぐにどこか嬉しそうな表情になった。

 

「あら、気づいたのね。そう、あの子は男よ。女装趣味なの。ギャスパー、彼らは新しい仲間よ。『兵士』の兵藤一誠と『騎士』のゼノヴィア。仲良くしてあげてね。二人にもちゃんと紹介するわ。この子は『僧侶』にして駒王学園の一年生。名前はギャスパー・ブランドー。転生前は伝説の吸血鬼の子孫と人間のハーフなの」

 

ブランドーという名を聞いた時、ギャスパーの肩がビクリと震えた……。




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