ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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今後に期待します

「……まさか、あなたが堕天使陣営だったんなんて。指揮者が素性を知らない方が良いっていう訳だわ。まぁ、前回と今回の事でチャラにしてあげるわ。……知らなかったとはいえ、堕天使側の相手に特訓の協力をして貰ったなんて知られたら、こっちも拙い事になるもの」

 

「ああ、前回の事はなかった事にしておこう。彼については許してやってくれ。ああいう奴なんだ」

 

気絶したコカビエルを転移させた後、ヴァーリはリアス達に簡単な説明を行った。自分の所属する組織の事、今回その組織の命令でコカビエルを止めに来た事。リアスは堕天使の仲間とは知らずに強力して貰っていた事に頭痛を覚えたが、助けられた事には変わりがないので深く追求はしなかった。

 

「さて、次は逃げたフリードを追わないとね。それにしても全員ひどい怪我だな。俺も奥の手を使ったせいで体がガタガタだしな。なぁ、フェニックス。フェニクスの涙を持ってきていないのかい?」

 

「残念ながら無い。リアスの危機を知らされて、急いできたからな。……お前も彼奴を知っているのか?」

 

「ああ、一応友人だ。おっと申し遅れたな。俺の名はヴァーリ。よろしく頼むよ、友人の友人君」

 

「ライザーだ。よろしく」

 

ヴァーリから差し出された手をライザーが握り返した時、校庭に拍手の音が響く。リアス達が音のした方向を見ると、柳がフードを被って立っていた。

 

「皆様、お疲れ様でした。ヒール!」

 

柳が呪文を唱えた瞬間、リアス達を緑色の光が包み込み、全員の怪我が癒えていく。その光景にヴァーリとライザー以外の全員が驚いている。

 

「貴方、回復魔法も使えたのね。しかも、悪魔にまで効くなんて……」

 

「いえいえ、大した事ではありませんよ。あ、お礼は結構ですよ。仕事のついででしたから。では、これで……」

 

「あ、待ちなさ……」

 

リアスの制止も聞かず、柳は転移していった。一同が黙り込む中、一誠がふと呟く。

 

 

 

 

「あの~、誰か足りないような……」

 

「何を言う。誰も居なくなっていないだろう。さて、聖剣は校庭に散らばっているし、急いで集めるか。……今回は助かった。私一人では勝てなかっただろうからな」

 

 

一誠の言葉を否定した後、ゼノヴィアはぶっきらぼうに礼を言うと聖剣に向かって歩きだした。任務を達成した充実感を胸に……。

 

 

 

 

 

その頃、教会の助力もあってイリナは日本行きの飛行機の中に居た。一人残されたゼノヴィアを心配しながら……。

 

「待ってて、ゼノヴィア。すぐに助けに行くから!」

 

決意を胸に、瞳に闘志を宿らせながらイリナは日本を目指す。既に事件は解決しているとも知らずに……。

 

 

 

 

 

 

「……今回の事件の顛末はこの様になっています。詳しくはお送りした資料をご覧下さい」

 

「今回は有難うございました。お陰で優秀なエクソシストを一人失わずにすみました。では、報酬である天界のアイテムは後日お送りします」

 

家に戻った後,柳はミカエルへの報告を行い、今回の依頼を終わらせた。部屋に居るのは柳の他に羽衣とゼノンだけであり、ミラの姿は何処にもない。通信を切ったあと、柳は疲れた様に椅子にもたれ掛かって呟いた。

 

「あの人も可哀そうですね。ミラの怒りを買うなんて。しかし、あの子があんなに怒るなんて珍しい……」

 

「そう言ってやるな。あやつはお主に無礼を働いた事に怒っておるのじゃから。さて、言っていた精気の代金じゃが、今回はこれで勘弁してくれ」

 

羽衣はそう言って柳に軽くキスをすると、嬉しそうに笑った。

 

「妾らがあれだけ色仕掛けをしても反応せぬから眼中にないのかと思っておったが、あそこまで褒められてはのぅ。お主の伽を最高のものにする為にも、しっかり勉強をせんとな。……覚悟しておれ、妾らの虜にしてやるからの」

 

「それとも、今から我と寝るか? 安心しろ。経験のない同士だが、優しくしろと言わん。若き情欲の赴くまま獣の様に……」

 

「……今後を楽しみにしています。私も男ですからね。我慢できる内にしてくださいよ?」

 

柳は耳まで真っ赤にしてそう言い、それを聞いた二人は一瞬キョトンとするが、直ぐ様妖艶な笑みを浮かべた……。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ミラはどうするのじゃ? あやつはまだまだ少女だからのぅ。性的魅力など皆無じゃろ。あやつだけ大人になるまでお預けじゃな。どっち共にとってもな」

 

「しかし、いくら少女といっても、あの断崖絶壁では成長しても……」

 

「……ミラが聞いたら怒りますよ」

 

 

 

 

そして、次の日。日本についたイリナがゼノヴィアに呼び出された場所に着くと、そこには死んだ魚の目をしたゼノヴィアが立っていた。まるで全ての希望を打ち砕かれたかの様なその目にイリナは軽い恐怖を覚えた。

 

「そ、どうしたの!? 任務は無事終わったんでしょ」

 

「……ああ、終わったよ。何もかもな。もう、どうでも良い。ほら、この袋にエクスカリバーの破片を入れているから持ち帰ってくれ」

 

「えっ!? 持ち帰ってくれって、貴女はどうするのよ!?」

 

その言葉を聞いた途端、ゼノヴィアの瞳は黒く濁りだし、イリナはますます恐怖を募らせていった。

 

「任務を終えたあと、フードの少女らしき相手に襲われてな。その時に知ってはいけない事を知らされたから、追放されたんだ。デュランダルは手切れ金の代わりだとさ。フ、フフフフフフフ……」

 

「そ、そう。じゃあ、私は帰るわね。貴女に主のご加護があらん事を……」

 

そう言ってそそくさと去っていくイリナの背を見てゼノヴィアは呟いた。

 

「その主はとっくに死んでいたんだ。私達は騙されてたんだとさ。とっくに死んだ奴なんかの為に何をしていたんだろうな……。さて、新しい主の所にでも行くとするか。今度は死なないと良いな……」

 

ゼノヴィアは虚ろな目をしながら街中を歩く。すれ違う人達は一瞬、その美貌に目を奪われるが、その瞳を見て悲鳴を上げて逃げていった。その姿をこっそりと見ながらミラはほくそ笑む。とても邪悪な笑みで……。

 

「ふふふ、よく考えたら貴女みたいなのは、ただ死ぬより、そっちのほうが堪えますよね。さて、少し私の影響受けちゃったけど、敵意は天界にだけ向いたから良いかな?」

 

ミラはそう呟くと人ごみに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「……此処は?」

 

コカビエルが目覚めると、見知らぬ部屋のベットの上に居た。窓から見える空は白く、どうやら異空間の様だが、自分がそんな所に居る理由が分からない。あれだけの事をしたのだから、コキュートス行きは覚悟していたのだが、そう考えていると、入り口のドアが開き、小鍋を持ったアナスタシアが入ってきた。

 

「あ! 目が覚めたんだ。はい、お粥。残さず食べてね」

 

アナスタシアが渡してきたお粥からは刺激臭がし、見るだけでで辛そうだ。本来、辛いものが苦手なコカビエルであったが、何も言わずに口に運んだ。その姿を見て、アナスタシアは安心したような表情を浮かべている。

 

「良かったぁ。食欲あるみたいで。昔から私の作る物は全部食べていたものね。辛いの好きだったでしょ? お祖父ちゃん(・・・・・・)

 

「……ああ、お前の作る物は何でも美味しいからな。……なぁ、俺はどうして此処に居るんだ? 負けた時はコキュートスに送られるものとばかり思っていたんだが」

 

お粥の辛さを必死にこらえ、コカビエルはそう尋ね、アナスタシアは窓の外を見ながら答える。どこか安心した様子で……。

 

「ここが牢獄だよ。三階建ての小さな塔と庭。お祖父ちゃんは死ぬまで此処で過ごすの。この部屋が二階でお祖父ちゃんの寝室よ。三階は書庫で、一階にはキッチンが有るわ。それと、庭にはグリシア達のお墓を移してきてる……。私も月一位なら会いに来ても良いって言ってたわ」

 

「……アザゼルの奴め。余計な気遣いを。……ありがとう。! フリードはどうした!? それに、レインとカイルは!?」

 

犯した罰に対し、あまりにも軽すぎる罰に友人の思いやりを感じ、涙をこらえていたコカビエルであったが、協力者達の事を思い出し、急に立ち上がった拍子にふらついてしまう。彼の右足には殆ど力が残っていなかった。転びそうになったコカビエルを慌てて駆け寄ったアナスタシアが支えた。

 

「も~、無茶しないでよ。覇龍で体がボロボロなんだから~。杖無しで歩ける様になるには数年掛かるらしいわよ。……フリードは組織に残るらしいわ。協力した理由が理由だし、罰も重くならないらしいわ。手柄立てて、お祖父ちゃんに恩赦を出してみせるって張り切ってた。あいつも月一くらいで会いに来るって。二匹は無事よ。私が頼んだら処罰無しだって」

 

「……相変わらず、お前には甘いな。そうか、フリードがそんな事を……」

 

コカビエルが嬉しそうに微笑んでいた。大きな罪を犯した自分にも慕ってくれる者達と会う権利が残されている事を知り、コカビエルが涙を流す中、アナスタシアは決心した顔で告げる。

 

「それでね、今回の事もあって三大勢力での話し合いが開かれる事になったわ。私も無理言って護衛の一人として出席するわ。……一目、見ておきたいのよ。私から家族を奪った奴らの親玉の顔をね……」




意見 感想 誤字指摘お待ちします

前回のあとがきに、おまけ追加しています

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