ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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短いけどキリの良い所で……


友の戦いを見守りましょう

ヴァーリの幼少期は恵まれたものではなかった。あまりにも高すぎる才能と、その身に宿した神滅具。周囲の者達は両親すら彼を恐れ、友達も居らず、孤独な毎日だった。そして、彼を恐れた両親の手によって捨てられた後、彼は運命的な出会いをする事になる……。

 

「ねぇ、アンタ何してんの?」

 

幼いヴァーリが空腹で倒れ、意識が朦朧とする中、最後に見たのは、しゃがみこんで彼を見つめている少女の姿だった……。

 

 

 

 

「……此処は?」

 

「あら、起きたんだ。はい、お粥」

 

ヴァーリが目を覚ますと見知らぬ部屋の暖かいベットの上だった。状況を判断しようと部屋の中をヴァーリが見回すと、自分を見つめていた少女が部屋に入ってきて、お粥らしきお椀を差し出す。急に空腹が蘇ったヴァーリ慌ててお粥に食らいつく。その途端、ヴァーリの口の中を刺激が駆け巡る。お粥は物凄く辛かった。

 

「ッ~~~~~~~~~~!?」

 

「も~、がっつくからよ。はい、お水」

 

ヴァーリの反応をお粥が熱かったらしいと思った少女は水の入ったコップを差し出し、ヴァーリは慌てて水を流し込む。まだ口の中に刺激が残っている中、少女が小首を傾げて尋ねてきた。

 

「そのお粥、私が作ったんだ。美味しかった?」

 

「辛す……、美味しかった。ありがとう」

 

辛すぎだった、そう言おうとしたヴァーリだったが、何故か言えなかった。この少女を悲しませたくない、何故かそう思えたのだ。少女がヴァーリの言葉に喜ぶ中、男性が一人、部屋に入ってきて、少女はその男性を見た途端、嬉しそうに駆け寄って行き、男性は少女を抱き上げた。

 

「……アナスタシア、一人で先に行くなと言ったはずだ。ほぅ、どうやら目が覚めたらしいな。小僧、名前は何というのだ?」

 

「ヴァ、ヴァーリです」

 

「そうか、良い名だ。俺の名はコカビエル。此奴はアナスタシアだ」

 

「よろしく~」

 

笑いかける少女の顔は眩しく見え、これが初恋だと、ヴァーリはそう思った……。

 

 

 

 

 

 

「……コカビエル。貴方は俺の正体を知っても温かく接してくれた。俺は貴方とアザゼルの事を父親の様に思っている。……だから、そんな誇りを失った姿は見たくないんだ。さっさと倒させてもらう!!」

 

「ヴァーリ、ヴァーリィィィィィィ!!」

 

コカビエルの瞳からは完全に理性が消え、そんな姿を見て、一瞬悲しそうな目をしたヴァーリは目に決意を宿らせ、コカビエルに接近する。コカビエルは両腕を振り回し、殴り飛ばそうとするもヴァーリはそれを簡単に避け、その身に触れる

 

「大ぶりの一撃は簡単には当たらない。攻撃は無駄なく正確に。……俺にそれを教えたのは貴方の筈だ」

 

Divide(ディバイド) Divide(ディバイド) Divide(ディバイド) Divide(ディバイド) Divide(ディバイド)

 

「よし、これで!  がはっ!?」

 

ヴァーリの神滅具・白龍皇の光翼の能力は10秒間毎に相手の力を半減し、吸収するというもの。それを修行によって連続で行える様になったのだ。そして、ヴァーリが大幅に力を削ったと確信した瞬間、ヴァーりは全く下がっていない腕力で殴り飛ばされた。コカビエルは更に追撃を加えようと腕を伸ばすも、ヴァーリは素早く上空に飛び上がり、それを回避した。

 

「アルビオン、どういう事だ? 確かに力を吸い取ったはずだが……」

 

『ふぉッふぉ……ハッ! ……恐らく、体の表面に薄い障壁を張っているのだろう。奴に触ろうとしても障壁が邪魔で触れなかったっという訳だ。しかし、理性が飛んでいるというのに高度な真似をする。恐らく、暴走しながらも意識の底に理性が残っているのだろう』

 

「……其れでこそ俺の師匠だ。コカビエルに勝てるのはアザゼルかバラキエル位だったからな。俺も禁手に至ってからも一度も勝てていない。だが、今日こそ勝たせてもらう!」

 

『ヴァーリ! 構えろ!!』

 

ヴァーリが見ると、コカビエルの背中がメキメキと盛り上がり、巨大な翼が出て来た。その翼を羽ばたかせ、コカビエルはヴァーリ目掛けて飛翔する。ヴァーリはそれに合わせ顔面に接近し、拳を振り抜く。

 

「これでどうだい!! なっ、しまっ……」

 

「ガァァァァァァァァァァッ!!」

 

「ちっ!」

 

Half Dimensionivide(ハーフ・ディメンション)

 

だが、ヴァーリのの拳が眉間に突き刺さる瞬間、後ろに身を引いて避けたコカビエルの口から無数の光の矢が放たれる。ヴァーリも無数の槍の力を一度に半減し、全てを撃ち落としていった。しかし、最後のやりを落としたその時、目の前にコカビエルの爪が迫っていた。

 

「先生ェーーー!!」

 

一誠の叫び声が校庭に響く中、白い鎧の破片と鮮血が宙を舞い、ヴァーリは校庭に墜落していった。

 

 

 

 

 

 

「柳さん。助けなくても良いんですか? このままじゃ死んでしまいますよ」

 

内容とは裏腹にのんびりとした口調でそう言うミラに対し、柳は笑いながら返す。まるで、何も心配いらない、といった表情で……。

 

「あの程度で死ぬのなら既に羽衣さんに殺されています。大丈夫、彼には切り札がありますよ」

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ、やはり強いね。やはり、これを使うしかないのか」

 

ヴァーリがそう言った途端、彼のオーラが急激に高まり、この場に居ない誰か達の声が響く。その声には圧倒的に純粋な闘志で満ち溢れていた。

 

「我、目覚めるは――律の絶対を闇に堕とす白龍皇なり――」

 

<極めるは、天龍の高み!>

 

<往くは、白龍の覇道なりッ!>

 

<我らは、無限を制して夢幻すら喰らうッ!>

 

「無限の破滅と黎明の夢を穿ちて覇道を往く――我、無垢なる龍の皇帝と成りて――」

 

 

「「「「汝を白銀の幻想と魔導の極地へと従えよう」」」」」

 

juggernaut(ジャガーノート)over drive(オーバードライブ)!!!!』

 

 

「グガッ!? ヴァーリィィィィィィィ!!」

 

ヴァーリから発せられるオーラに反応したコカビエルが腕を振り上げて突進するが、全方位から力を加えられたかの様に動きを止める。コカビエルの視線の先にいたヴァーリは白銀の鎧に包まれし、極大のオーラを放つ、別次元の存在となっていた

 

「これが禁忌の力である覇龍を俺なりに昇華させた力。名づけて、白銀の(エンピレオ)(・ジャガーノート・)覇龍(オーバードライブ)。……できれば別の形で見せたかった。俺が禁手に至った事を我が事のように喜んでくれた時の様に褒めて欲しかった。……だから、コカビエル。 この力でお前を倒す!!」

 

ヴァーリから滲み出るオーラだけで後者にヒビが入る中、ヴァーリは一気にコカビエルへと接近する。それだけでコカビエルを覆っていた鎧が砕け、体から血が吹き出す。そして、ヴァーリの拳が突き刺さった瞬間、コカビエルは紙の様に宙を舞い、地面に激突する。既に覇龍が解けたその体からは血が流れ出ており、もう、意識は無い……。

 

 

 

 

 

「何だい? コカビエル。話って」

 

「……アナスタシアの事だ。お前はアイツが好きなんだろう? 見ていれば分かるさ。……もし俺が死んだらアナスタシアを支えて欲しい。アイツは強そうに見えて脆いからな」

 

「……分かった。約束するよ。でも、死なないでくれよ。貴方が死んだらアナが悲しむ」

 

「……善処するさ」

 

 

 

 

 

「……コカビエル。そんな力を使ってまで復讐がしたかったのかい? 貴方が死んだらアナが悲しむって言ったじゃないか……」

 

ヴァーリは力なく倒れているコカビエルを見つめ、悲しそうに呟いた……。




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