ライザーが連絡を受けたのはハグレ悪魔討伐任務の直後だった。礼儀作法の勉強の為に家に残っていたレイヴェルからリアスとコカビエルの戦いの知らせを受け、街に居る友人に連絡しようとしたが、直ぐに思い直す。
「(いや、柳は此れ位で動く奴ではないな。それに、此れだけの事態、何処かから、何らかの依頼を受けていてもおかしくない。なら……)流石にコカビエルはヤバイ! お前らは屋敷で待機していろ! 俺はリアスの元に向かう!」
「はっ! ご武運をお祈りします!」
今の自分達の力量では主の足手纏いにしかならない。その事を理解している眷属達は悔しさを噛み締めながらもライザーを見送る。ライザーが駒王学園に到着した時、目に飛び込んできたのは、コカビエルが巨大な光の槍を祐斗へと放つ所だった。ライザーは炎を槍状にして放つ。炎の槍は光の槍の起動をずらし、祐斗の命を救った。
「助けに来たぞ、リアス!!」
コカビエルを睨めつけながらライザーは冷や汗を流す。慢心を捨て、修行した彼でも、いや、修行によって強くなったからこそ、目の前の相手の力量を感じ取っていた。相手は自分より格上。しかし、だからこそ戦いがいがある。不謹慎とは感じながらも、彼の心は歓喜で満ち溢れている。そして、双方睨み合う中、先に動いたのはコカビエルだった。
「ふんっ!」
コカビエルの手中に現れたのは一本の槍。大きさこそ普通だが、ソレに込められている光力は下級堕天使など足元に及ばず、槍から放たれる光を浴びただけでライザー達は痛みを感じていた。ライザーが身構えた瞬間、コカビエルの姿が突如消える
「何処だっ!?」
「ライザー、後ろ!」
コカビエルを探し、辺りを見回すライザーの耳にリアスの叫び声が届く。咄嗟に後ろを振り向いた時、既にコカビエルは槍を投擲していた。咄嗟に避けようとしたライザーだったが、すぐ後ろに一誠が居た為、避けれなかった。避ければ、一誠に当たり、受ける訳にもいかない。ライザーがとった行動は……、迎撃。
「
ライザーの手から放たれた炎は生きた蛇の様に槍に絡みつき、その機動をずらす。そして、それだけに留まらず、先端がコカビエルに向かう。蛇の頭部を模した炎がコカビエルに噛み付くが
「温いっ!」
腕のひと振りによって霧散する。コカビエルの腕には火傷一つ出来ていなかった……。
「餓鬼にしては中々やるな。だが、貴様程度の者など、大戦の時には幾らでも居たぞ」
「……お褒めの言葉どうも。褒美にコレも喰らっておいてくれよ。
「……流石にあれは拙いな。この後にある魔王の援軍との戦いに差し支える。だが、避ければ良いだけの……何っ!?」
ライザーの手から放たれたのは極太の炎。先ほどの炎など比べ物にならない程の熱量を秘めたその一撃はコカビエルに向かって行く。流石にこれを喰らえば無傷では済まない、そう判断したコカビエルは横に避けるが、ライザーが腕を振るった瞬間、軌道を変えてコカビエルに襲いかかる。咄嗟に腕を交差させ防ぐコカビエルだったが
「追加だっ!」
再びライザーの手から放たれた一撃によって押し切られ、コカビエルは校庭に激突し、火柱が上がった。
「やったわ! ありがとう、ライザー」
「近寄るな、リアス! この程度じゃ彼奴は死んでいない。多少ダメージを受けただけだ。……下がっていてくれ。君を巻き込みたくない」
ライザーが近寄ってくるリアスを手で制した時、校庭で燃え盛っていた炎が消え去り、中からコカビエルが出てきた。ローブは多少焼け焦げているが、目立った外傷はない。コカビエルはライザーに無言でゆっくりと近づて行き、そっと腕を上に向ける。すると其処には校舎ほどもある巨大な光の槍が出現していた。その槍から発せられる光力にライザーさえも恐怖を感じた。
「……量より質って事かい?」
「……いや、質より量だ」
「全員っ、逃げろォォォっ!! くそっ!
コカビエルがそう言った途端、巨大な槍は無数の槍へとわ分かれ、空を埋め尽くす。ライザーは咄嗟に槍と自分達の間にドーム状の炎を展開するが、槍はあっさりと炎を貫いて降り注いだ。校庭に一撃でも喰らえば死にかねない威力を持った槍が振りそそぎ、ライザー達はそれを必死に躱していく。
「無理に撃ち落とそうとするな! 勢いを弱めて避ける事を優先しろ!」
魔力を使う事が不得手な一誠と小猫と祐斗は避けることに集中し、残った三人は魔力で槍の勢いを殺していた。ようやく半数を避けたという頃、リアスの放った魔力は槍に当たらずに空を切り、槍はそのままリアスに迫っていった。
「部長ぉぉぉっ!!」
一誠の叫び声が木霊する中、思わず目をを閉じたリアスの顔に温かい物が掛かる
「だい……、じょうぶか……? リアス……」
「ライ、ザー? い、やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
目をあけたリアスの前には、リアスを庇い、腹を槍で貫かれたライザーの姿があった。ライザーは刺さった槍を引っこ抜き、微笑む。その口からは吐血が溢れていた……。
「よ、かった……。怪我……、していないようだな。大……、丈夫。俺は……不死だ……」
「不死っていっても光を喰らったらタダじゃ済まないじゃない! 無茶しないでよ!」
リアスが涙を流しながら叫ぶ中、ライザーは苦笑しながら倒れる。いくら不死といえども、弱点である光に貫かれた体からは何時もの回復能力が失われ、徐々にしか傷は塞がらない。しかし、その間もコカビエルは力を溜め、再び先ほどの一撃を放とうとしていた。しかし、強烈な力の波動を感じ、コカビエルの気が逸れる。振り向いた先には一誠が居て、その体から龍のオーラが立ち上っていた……。
「……何が神滅具だ。何が成長の兆しだ。こんな時に使えなきゃ意味ねえだろうがっ! さっさと至りやがれぇぇぇっ!!
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』
その叫びと共に赤龍帝の籠手の宝玉が光り輝き、一誠の体は赤い全身鎧に包まれていた。一誠は背中のブースターから魔力を噴射し、一気にコカビエルへと近づく。限界まで力が倍加された一誠の拳がコカビエルへと迫る
「ふむ、この場で禁手に至るとは中々だな。それにしても神器も中々悪くない。下級でさえ、これ程なのだからな」
「な、なにぃ!? そ、それは!」
「ああ、貴様の神器の下位互換だな。だが、それで十分だ。貴様ら悪魔に絶望を与えるにはなっ!!」
一誠の拳を易易と受け止め投げ飛ばしたコカビエルの腕は龍を模した籠手に覆われていた……。
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