あとグロ注意。
Sideカロ
周りの景色が変わり、いつもの戦う空間へと移動した。空を見上げてみれば、そこには微笑みを浮かべているレミリアとフラン。
「さあ、行くわよカロ。加減は無用よ」
「楽しませてよね」
ニンマリと口もとを歪めると、瞳が鋭くなる。いいねえ、戦意満々の瞳。私、好きだよ。
「へ~いいんだね。じゃ、加減はしないよ」
休ませてくれたお陰か、力は完全に戻ってきている。これなら、まあいけるだろ。
私とレミリアとフランは互いに見つめ合う。そして、見つめ合う事数分。私の鼻先が僅かに動くと共に、レミリアとフラン、そして私は同時に動き出す。
脚に力を込め、レミリアとフランに向かって跳躍。体の両脇に妖力で足場を作り、直線ではなく左右に移動しながら突っ込んでいく。
「フラン」
「分かってる」
レミリアが自分の爪で手首を切るとこちらに向かって血を投げてくる。フランはレミリアが血を飛ばすのに対し、様々な色の弾幕を無数に放ってくる。
血は細長い槍のような形になって私に向かって直線で飛んでくる。それだけなら躱すのは簡単だが、私の逃げ道を封じるようにフランの弾幕が飛んでくるため、簡単には避けれない。けど、この程度なら弾き飛ばせる。……と思う。なんか嫌な予感がするんだよな。
両拳を妖力で強化し、飛んでくる血と弾幕を弾き飛ばすため殴りつける。
いつも通りならこの程度の弾幕なら弾き飛ばせる。むしろ、当たったところでどうということはない。はずなのだが――――――
「ッ! やっぱりか」
殴りつけた血と弾幕は消えない。それどころか、私の妖力で強化したはずの拳から血が流れだしている。
この血と弾幕、見た目以上に威力が高い。レミリアとフランの奴、いつの間にかかなり強くなってる。
妖力で拳を更に強化して弾幕と血を逸らしていく。破壊できないなら逸らせばいい。初めてかも、こんな逸らすなんて真似したの。
「ほら、行くわよ」
「そーれ!」
弾幕と血を逸らし、躱していると急に攻撃が止んだ。何事かと思いレミリアとフランを見てみると、そこにはレミリアを腕に乗っけっているフランがいた。
フランがグッと腕を引き、レミリアが体を縮めた瞬間、二人の体がブレた。何が起きたか
分からない、ただ分かるのは、私の腹にレミリアの片足がめり込んでいることだけ。
「ウグッ!? 速すぎ」
なんとかその場で耐え、レミリアの脚を握って攻撃に移ろうとするが、レミリアは残っている方の足で私の頭を横から蹴り飛ばしていくる。
一瞬視界が揺らぎ、力が少し抜けてしまう。その隙にレミリアは体を捻って私の腕から自分の足を外し、更に私の腹にもう一発蹴りを入れてから離れる。
「フラン、次」
「はーい!」
頭を振り、視界をいつも通りに戻す。ああ、クソ! 頭揺らされた。気持ち悪い。
吐き気を抑え、視線をレミリアとフランの方に向けてみると、今度はフランが真っ直ぐと私の方に向かってきている。
「クッ!」
「ほらほら、どうしたの!」
繰り出される拳を躱していく。途中、蹴りやら弾幕やらが放たれるが躱していく。もう少し経てば……よし、いける!
「よっ」
ようやく普通に動けるようになれた体を動かして顔に向かって飛んでくるフランの拳を躱す。そして、すぐさまフランの腹に向かって拳を入れる。
「アハッ! ようやく調子出てきたね!」
この一発で少しでもふらつくかと思ったのに、全然ふらつかない。それどころか、喜々として殴りかかってくる。
普通、悶絶してもおかしくないんだけど。もしかして、効いてない?
再びフランの拳をいなしてもう一発拳を打ち込むが、やっぱりフランは何事もなかったかのように殴ってくる。
これ以上いなしてもダメだし、かといって殴ってもダメ。さて、どうする。
フランの拳を躱した瞬間に顎に向かって下から上に蹴り上げる。流石にこれは耐え切れなかったのか、フランの首が上を向く。その間にフランとの距離を開ける・
「いったた。何発も受けてると流石に辛いね」
「楽しみすぎよ、フラン。あんまり受けてると、やられるわよ」
地面に降り、空を見上げてみれば、フランとレミリアは笑いながら話している。余裕そうでいいね。
「ス――――――はぁ」
さて、久々に出すか。アレになると、力加減とか分かんないんだよね。……ただ、手加減は無用のようだから、全力でいってもいいよね。
大きく息を吐き、フランとレミリアを睨みつける。
「あら、怖いわね。本気になるのかしら?」
「本気……ね。そうだね。本気出させてもらうよ」
久々だ。この状態になるのは。
体に力を込めていく。そして、徐々に体を人間から狼へと変えていく。
私の本気。人間としての理性のある状態とは違う野生の狩る者としての本気。
「ガルルルルル」
さあ、本気でいくよ。
Sideレミリア
「出たわね」
とうとう来た。私が異変を起こした時に見たカロの本当の姿。人間の時とは比べ物にならない程の妖力。いいわね。本当、素晴らしいわ。
「来たね、お姉ちゃん」
「ええ、フラン……腹括りなさいよ」
「分かってる」
フランと軽く話してから、狼の状態であるカロを睨む。鋭い眼光。狩る者の瞳。懐かしいわね。昔、私達を狩りに来た人間達を思い出すわね。
「アオ――――――ン!!」
「ッ!」
「うわ、凄いね」
カロがただ雄叫びを上げただけなのに、空気がビリビリと震えている。肌が痛いわね。まるで、刃物で切られたみたい。
「来るわよ!」
雄叫びをあげたカロは、四肢を深く落とすと私達の方へ跳んでくる。さっきとは比べ物にならない速度。遠距離で対応してる暇がない。
即座に横に体をずらして躱す。完全に躱した……はずなのに。
「お姉様」
「ええ、大丈夫よフラン」
私のスカートと足に僅かに切り傷ができた。掠ってもいないのに、傷つくなんて……面白いじゃない!
「面白くなってきたわ」
カロが行った方向に体を向けながら右手に魔力を編んで槍を作る。そして、カロを目で捉えると同時に槍を投げる。
槍の数は全部で三本。縦に連なって飛んでいく。まだカロはこっちを向いていない。これなら、当たる。
私達を見ておらず、尚且まだ跳んだ勢いを殺しきれてないカロに私の槍が迫る。当たると確信していた……のだけれども、すぐにその確信は外れた。
見えていないはずのに、カロはその場で宙返りして私の槍を躱す。当たると思っていのだけれど、やるわね。
「レーヴァテイン!」
すぐさま躱したカロの上からフランが炎の剣を出して斬りかかる。
「グルア!!」
「「ッ!?」」
フランの炎の剣がカロに当たる瞬間、カロは吠えた。そう、吠えただけ。なのに、私とフランは吹き飛ばされた。
私は地面に叩きつけられ、フランは遥か彼方に吹き飛んでいく。
「一体、何が起こったの……! なるほどね」
地面に叩きつけられたせいで痛む体をなんとか起こしてカロを見てみると、私達が吹き飛ばされた原因が分かった。
カロが吠えたと同時に、カロの妖力が弾けとんだ。普通なら、武器として固定して使ってるわけじゃないから、何事もないかのように妖力は通り過ぎるのだけれど……どうやらカロの妖力は元が濃いせいか、当たったら衝撃はあるみたいね。
「よいしょっと」
立ち上がり、服についた埃を叩き落としながら空から私を見落としているカロを見る。
遠距離のチマチマした攻撃じゃダメージは与えられない。かといって近づけばさっきの妖力でまた吹き飛ばされる。
やれやれ、あまりこの戦い方は好きじゃないのよね。この戦い型はフランの専売特許だから。
「フランの、私、近接に移るわ。合わせなさい」
体全体を妖力で覆う。集中的に拳と脚には少しだけ妖力を多めにしておく。最後に、能力を発動。
「行くわよ、カロ」
カロの下まで踏み込み、すぐにカロに向かって跳んでいく。
今更常識が通用するとは思ってはいないけど、私の最速についてこれるなんて。でも、こちらを向いたところで、私は止まらないわよ。
「ス――――――」
息を大きく吸い、体を膨らませるカロ。一体何をするか分からないけど、今の私には妖力の塊を放ったところで止まりはしないわよ。
「■■■■――――――!!」
「ッア!!」
これは……予想外!!
カロへと到達するという僅か距離。拳一つ分くらいまで迫った私に、カロが放ったのは妖力の塊ではなかった。カロが放ったのは、音の玉。いうなれば、音の爆弾を放ってきた。
尋常ならざる声。そもそも、声と認識してもいいのか疑問に思う音が私の両耳を襲う。
鼓膜は破れ、一切音に対して警戒をしていなかった脳は揺れ視界が歪む。体に纏っていた妖力も、体に込めていた力も全て解ける。
「グル」
空中でふらつき、地面へと落ちていく私にカロは跳んでくる。
大きな顎が開き私を噛み付こうとしている。さっきの音のせいで体は上手く機能しない。マズイ、躱せない。
「だああああああらっしゃあああああああああああ!!」
私の頭をカロの顎が噛み砕こうと閉じる間際、カロの横っ腹をどこからか飛んできたフランの蹴りが炸裂する。
流石のカロでも、予想外の一撃は思った以上に痛いのか吹っ飛んでいく。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
空中で態勢を立て直して浮かんでいると、フランが話してくる。
フランが何か言ってるが、こちらは答えられない。鼓膜壊れてるし、話はできない。私がフランが何言ってるか分かっているのは、フランの口を読んでいるだけだし。
「……? もしかして、お姉ちゃん喋れない?」
頷く。吸血鬼の特性で数分経てば治るだろうけど、今はね。
「なるほどね。鼓膜やられちゃったんだ。う~ん……治るまでは待ってくれないよね」
待ってはくれないでしょうね。しかも、私、今体調最悪だから下手したらフランの足でまといになるわね。
「グルルルル」
戻ってきたカロは私達の方を見ながら唸っている。あらら、どうやらカロ怒ってるみたい。これじゃあ、多分もう容赦はしないでしょうね。
「お姉ちゃん、どうやら怒ってるみたいだよ? どうする? ……って、聞いても答えられないね。それじゃあ……この状態で勝つのは難しいから頑張って相討ち狙おうか」
……確かにそうね。私の体調は……一応普通には動けるけど最悪。フランも妖力の燃費が悪いせいとカロからの打撃のせいで満身創痍。カロは万全。……相討ち狙いか。
「じゃ、お姉ちゃんいくよ!」
フランが言い終わると同時に私達はカロに向かって飛び出す。私は右から、フランは左から。左右から同時に蹴りを放つが、カロは軽く飛んで躱す。
「フォーオブアカインド!」
フランと私の足の裏が当たり、蹴りの威力を利用して弾けるように後ろへと飛ぶと同時に、軽く飛んだカロの上から三人の偽物フランがカロに殴りかかる。
不意を突いた攻撃。だが、偽物フランの拳は当たらない。
カロは首を上に向け、一人目の偽物フランの首に噛みつき地面に向かって引っ張り回転する。その反動を利用して、今度はもう一人のフランに向かって後ろ足で蹴りを入れ、最後の一人には回転した勢いを使って先ほど噛み付いていたフランをぶつける。
偽物フランが殺られたことにためらってる暇はない!
空中で身動きを取れないカロに向かって即座に飛び込み、背中から心臓に向かって右腕で突きを放つ。
真っ直ぐと私の腕は進みカロの体に当たる。が、貫けない。生身でも相当な力がある吸血鬼の力でも、カロの肉体を貫けない。
少しも貫けなかったことに驚き、僅かに動きを止めてしまう。その隙に、カロは円を描くように回転すると、私のお腹に向かって前足で蹴りを入れてくる。
「ウグッ」
なんとか耐え切れはしたが、あと一発でも受けたら殺られる!
必死に吐き気を抑え、カロの前足を片手で掴む。
「捕まえた」
今使える全妖力を右手に集中させ、カロの顔面を殴る。……ったく、硬いわね。
後ろへと吹き飛ぶカロの体だが、掴んでいた足を引っ張りもう一発殴ろうと拳を振る。しかし、カロは私が引っ張った勢いを利用しながら大きく口を開ける。
カロの口へと放ってしまう拳。カロのすることに気づいた時には、私の腕はカロに喰われた。右肘から先を全て食われた。
掴んでいた前足を離し、余っている方の腕で無くなった腕を押さえて痛みに耐え、血で腕の代わりを作る。
「だああああああああ!!」
空かフランの声が聞こえる。それと共に、カロの上にフランが落下し、カロを捕まえながら一緒に地面に向かって突っ込んでいった。
徐々に地面に向かってカロとフランは迫っていく。そして、後少しで地面に当たるというところでフランはカロから離れる。
勢いのままカロは地面に激突すると思っていた。だが、カロは地面当たる前に体を地面と水平にする。
「嘘でしょ」
音もなく、カロは地面に降りた。勢いを全て殺し、地面に降りた。
次の瞬間、カロはその場から音もなく消える。
「どこへ……!」
どこへ行ったか探していると、衝撃的な光景が私の目に入った。……フランがカロに倒されていた。
ボロボロになったフラン。そして、その横で私の事を見ているカロ。
フランが光の粒子となって消えていく。一秒もカロから視線は外してはない。なのにも関わらず、カロの姿はフランの隣から消えている。
「……はぁ、カロ。貴方、強すぎよ」
言い終わると同時に、私の視界は真っ暗になった。
最後、レミリアはどうなったでしょうか。ヒント、マミさん。
感想、誤字、アドバイスお願いします。
あ、次回からはアンケートやらなにやらですので。