二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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はぁ、コメント欄に等々アンチが湧いて来た。これはもう……嬉しいね! コメントが増えるたびに、私の評価は上がっていくよ! やったね! 気になる方は、コメント欄をご覧になってください。

今回は長くなってしまったので前後編になっておりますす。

では、第八十六話をどうぞ!


第八十六話 六人の戦い前編

Sideカロ

 

始まると同時に飛んできたのは、左右から来る二発の斬撃。正面にいるのに、一体どうやって放ったのかとか、どうやったらその軌道で飛んでくるんだとか、心の中でも思いつつも前に軽く跳ぶことによって躱す。

 

「開幕の一撃は放ちましたよ」

 

「まあ、二発放ってるんで一撃ではないんですけどね」

 

「細かいことはいいんですよ」

 

気楽に会話しながら妖夢と文の二人が飛び出してくる。その二人の背後から、魔理沙が上から、紫と霊夢が左右から飛び出してきた。

 

私はというと、斬撃を跳んで躱した勢いのまま妖夢と文に向かって更に駆け出していく。

 

「文さん、合わせてください」

 

「分かりました」

 

文が妖夢の後ろへと下がる。……二人で同時に攻めるもんだと思ってたんだけど、何を狙ってるんだろ?

 

私は妖夢に近づくのを一旦やめ、その場で少し呼吸を整え、肘を妖夢の顔に向けて思いっきり踏み込む。

 

狙い通り、私の肘は妖夢の顔へと吸い込まれるように向かう。このままいけば確実に当たると確信した瞬間、私の方に向かって風が吹いてきた。決して弱くない……むしろ力を抜けば体が吹き飛ばされそうなくらい強い。

 

風によって僅かに目を閉じてしまい、ほんの少しだけ妖夢から目を離してしまった。再び目を開けてみれば、そこには妖夢の姿は無い。あるのは、扇を振り下ろしている文の姿だけ。

 

妖夢という的を失った私の肘は空を切る。一体妖夢はどこに消え……ッ! 痛い! 急にお腹の辺りから痛みが……!! なるほど、そういうことね。

 

自身のお腹を見てみると、ヘソから脇腹にかけて大きな切り傷があった。

 

あの強風の中、妖夢は自分の背中であの風を受けて自身の速さを上げる。そして、私が目を瞑ったあの一瞬の間にお腹を切ったってとこかな?

 

切り傷から出てくる血を妖力を集めて圧迫することで外に流さないように止血しながら振り返ると、そこには長い方の刀を血に染めて後ろ向き出たっている妖夢がいた。

 

「……やるじゃん」

 

「これでも、鏡夜さんの弟子なので」

 

刀をひと振りして、刀に付いている血を払い落とすと同時に振り返り、私に向かって持っていた刀を投げつけてくる。

 

飛んで来る刀の速さは躱せない程のものではない。これは、避けさせてもう一つの刀で斬りかかってくるって戦法か。

 

目と鼻の先にまで飛んできた刀を首を横にずらすだけで躱す。すると、案の定、妖夢は持っていたもう一つの刀を抜きながら突っ込んでくる。

 

突っ込んでくる妖夢に対して、私は両手を妖力で覆って固くし迎え撃つ準備をする。しかし――――――

 

「懐かしいですね。刀なんて」

 

背後から聞こえてくる風切りを音を避けるため、妖夢の方に向かって背を屈めながら跳び、空中で一回転する。

 

空中で回転したことによって、先ほど聞こえてきた風切り音の正体が見えた。……文だ。妖夢がさっき投げた刀を手に持ち、横薙に刀を振るってきたのだ。

 

「警備員だった頃以来ですよ」

 

「そうなんですか」

 

地面に手を着け、妖夢に向かってかかとを落としを仕掛けるが、軽く刀で威力を受け流す。いや~まさかこれを流されるなんて。

 

「流石に、力では負けますので」

 

威力を全て受け流した妖夢は、私に向かって真っ直ぐと勢いよく刀を振り下ろしてくる。私はというと、受け流されたかかと落としが地面に落ちる前に、腕の力を使って逆立ちの状態へと戻していた。

 

勢いよく振り下ろされた刀を右足で側面から蹴り飛ばし弾いて躱す。ついでに一発入れておきたかったけど、それは後ろから妖夢と同じように刀を振り下ろしてきた文への防御で出来ない。

 

逆立ちのまま体を横に一回転させ、妖夢の刀を弾いたとき同様、文の刀を側面から蹴り飛ばして弾く。

 

そのまま更に一回転して今度は妖夢の両肩に向かって一本ずつ脚を乗っけて首筋を拗ねで挟む。

 

「そーれ!」

 

「ぐッ!」

 

体を腹筋の力だけ一旦妖夢の顔の位置まで持ち上げて、一気に後ろへと倒れこみ、地面に手を着けながら足で挟んでいた妖夢を文に向かって投げる。

 

「妖夢さん、今度は私に合わせてください!」

 

「了解です!」

 

背中を丸めた状態で吹っ飛んでいく妖夢。そんな妖夢に対して、文は持っていた刀を投げて渡す。落としてもおかしくない状態で、妖夢は刀を受け取る。その姿を文は確認すると、何故か妖夢の両足を掴む。

 

妖夢を投げた私は、地面を手で押して普通に立ち、妖夢と文の方に体を向ける。っと、そこで視界に入ってきたのは二本の刀。

 

「どっせい!」

 

なんと、文は妖夢の脚を掴んだまま横回転し、私に向かって妖夢を一本の刀のように振るってきた。……これは、流石の私でも想定外。こんな無茶苦茶、よく実行できること。

 

後ろに体を逸らして躱し、バク転で距離を取るが――――――

 

「そら、行きますよ!」

 

更に横回転をした文が、今度は妖夢の事を私に向かって投げてきたのだ。

 

両手に刀を持って飛んで来る妖夢は、真っ直ぐと私の方に向かってくる。まだ体制は整ってないけど、対応できるか私?

 

「ふぅ」

 

地面に立ち、正面を見ると同時に妖夢が斬りかかってきた。上と下。器用に両手の刀を使って、挟み込むように刀を動かして斬りかかってくる。

 

奥して下がれば、刀の餌食。左右に逃げればいいかもしれないが、それでは文の格好の的だ。

 

ならここは、前に出る!

 

その場で踏み込み、突っ込んでくる妖夢の顔面に向かって拳をブチ込むため、右手を振るう。

 

このままいけば、確実に私の拳は当たり瀕死になるという状況のはずなのに、妖夢は眉ひとつ動かさない。それどころか、勝利を確信したような表情をしている。……何を仕込んでる?

 

拳は勢いよく妖夢の目先までいく。当た……いや、これは……そういうことか!

 

「私達を忘れてもらっては困りますわ」

 

「紫!」

 

私の拳は紫によって展開されたスキマの中に入ってしまった。妖夢もそのスキマの中に入る。

 

妖夢が勝利を確信したような表情をしていたのはこれを狙っていたせいか! ……どこだ。どこに出てくる。一撃で私を沈めることができる場所……上か!

 

スキマに入ってしまった右腕を無視して上を見上げると、やはりスキマが展開されており、そこから妖夢がクルクルと回りながら落ちてきた。

 

「はぁぁぁああああああああああ!!」

 

眼前には二本の刀。動かせる箇所は左手のみ。両足はいつの間にかスキマの中。

 

さて、二本の刀を一本の腕で止めるにはどうすればいいか? 簡単だ。

 

「こうふればふぃ」

 

「嘘……!」

 

一本の刀は左手で握り締めて止め、もう一本の刀は噛み付いて止め、すぐさま右腕を引っこ抜いて妖夢の顔面を掴み、そのまま地面に向かって叩きつける。

 

「グルア!!」

 

両足を固定していたスキマは咆哮によって砕け散り、私の両足は開放された。

 

「ッ! この……!」

 

止血した箇所を妖夢は思いっきり蹴ってくる。一瞬、息も詰まるような痛みに妖夢を掴んでいた手の力が緩む。その隙に妖夢は抜け出すと、数歩後ろへと跳びながら距離を取ってくる。

 

「グルルルル……」

 

人間の状態だというのに、私は狼の時のような唸り声をあげてしまう。……ああ、私、相当危険な状態みたい。この声が人間の時に出るってことは、瀕死の状態になってるって事なんだよね。

 

たった三人相手にこれか……もし、これで五人が連携を組んできたら……ふふ。

 

「フフ、アッハッハッハッハッハ!!」

 

「何ですか急に……」

 

「これは……」

 

「来ますね」

 

面白い! 面白すぎるよ! この私が鏡夜以外で瀕死? そんなのあの人以来だよ! ああ、駄目だ……嬉しすぎて笑いが止まらない!

 

「フフ、面白い。実に面白いよ!」

 

「霊夢! 魔理沙! 計画変更! 一瞬で仕留めるわ!」

 

「言われなくてもそうするわよ!」

 

「何だよ、この妖力。ありえないだろ!」

 

霊夢と魔理沙の声が聞こえたかと思うと、結界で捕縛されてしまった。これは……霊夢の八方鬼縛陣。霊夢の中で結構な力を持ってる結界じゃなかったっけ?

 

上空からは魔理沙が真っ逆さまの状態でこちらを見ている。身動き取れない私に、一体何をする気かな?

 

仕方ない。これ以上連携が面倒くさくなるのなら、奥の手を使いますかね。

 

「インクリス・マスタースパーク!」

 

「へ~これは……」

 

魔理沙の周りに小さな魔力の塊が二十個程現れる。紅魔館を攻めてきていた魔理沙の頃は、一発のマスタースパークに三分の一位の魔力を消費していたのだけれど……今はこの一個一個の魔力全部にあの頃のマスタースパーク以上の威力が込められている。……成長してるね~。

 

「ぶっ飛べええええええええ!!」

 

叫び声と共に、小さな魔力の塊は激しく光りだすと……巨大な光線へと変化し、動けない私に向かって飛んでくる。

 

この威力……当たればただじゃすまないかも。でも、よけられないんだよね~参ったね、これは。

 

仕方ない。あんまり使いたくはないけど、奥の手を使うかな。

 

「変化・獅子狼!」

 

「うそ……」

 

光に飲まれる僅かな時間。私は体が変化していくのを確認しながら霊夢の束縛を解き、魔理沙からの改良版マスタースパークみたいなものを躱す。

 

「カロ、貴方……」

 

私の本来の毛色。それは白銀である。だが、今の私の毛色は白銀とは対になるような黄金色。長髪の端から端まで全部黄金色になっている。

 

この黄金色になっている理由は、妖力のせい。本来ならば出しきれないような妖力を出すと必ず操ることが出来ない妖力が発生する。その操ることの出来ない妖力を髪の毛から発散すると、こんな色になるんだ。

 

じゃあ、最初から操りきれない妖力を出すなよって話になるかもしれないけど、とんでもない。体の中に隠しているのと体の外に出してるのじゃ威力や技の質が格段に違うんだから。具体的に言うと、下級妖怪と鏡夜の本気くらいの違い。

 

これは、美鈴の使う気の流れの応用なんだ。でも、これには制約があって、この状態になって約五分。それ以内にこの状態を解除しないと、私の体が崩壊し続けるんだ。ま。体が崩壊しても、治せるんだけどね。

 

「さあて、行くぞお前たち。この状態は長くはいられないのでな」

 

「ッ!?」

 

「魔理沙!」

 

上を見上げ、大量のマスタースパークを放ってくれた魔理沙に向かって跳ぶ。空気の抵抗などは無意味。そんな邪魔な物は全て妖力で弾いていく。

 

光速を超えた速度。形容出来ない速さの中、私は魔理沙の背中を思いっきり蹴る。

 

魔理沙から、人間の音としてはなってはいけないような音が蹴ってから何秒も後から聞こえると同時に光の粒子となって消えていく。

 

「まずは一人! 次!」

 

「私ですか!」

 

次に狙うは妖夢。

 

魔理沙を蹴り飛ばした脚を振り抜きながら一回転させ、空気の層を蹴り飛び出す。迎え撃つように妖夢は両手で刀を構えるが、そんなもの関係無しに殴る。

 

「ッ! 速い!」

 

妖夢の目の前へ辿り着くと右手を妖夢の胴体に向かって振り抜く。それを、僅かに遅れながらも妖夢は両手に持ってる刀で、私の拳の軌道をギリギリ逸らしてくる。

 

この速さに付いてこれるだけでも上々だけど、惜しい。その程度じゃあ、私には追いつかないよ。

 

流された拳を引き戻した勢いのまま空中で回転し、妖夢の後頭部に向かって裏拳を叩き入れる。

 

「あぐ!」

 

「二人目!」

 

私の裏拳によって地面に向かって、顔面から突っ込んだ妖夢は、光の粒子となって消えていく。さて、これで後三人。霊夢と文と紫。この中で厄介なのは霊夢……よし、じゃあ次狙うのは……

 

「霊夢!」

 

「まさか、私を狙ってくるなんてね!」

 

地を蹴り、霊夢へと突っ込んでいく私に対して、霊夢は御札を取り出し、私を迎え撃とうとする。

 

霊夢の能力は空を飛ぶ程度の能力。これは単に空を飛ぶのではなく、周りから浮く……つまり、この世界から自分の存在ごと浮かせる事ができるので、こちらから霊夢に対して干渉する事が出来ない。

 

……考えてみれば、それってかなり強い能力だよね。だってこっちから干渉できないなら、霊夢に何もできないってことだよ? なんで理不尽な能力……でも、私には関係無い!

 

この世界から自分の存在を浮かせることができるのなら、私もその領域にいけばいいんだから!

 

霊夢が投げてくる御札を全て受けながらも、霊夢に向かって直進していく。

 

顔、脚、腕、胴体に、御札のせいで切り傷やら火傷やらを受けるが、気にしていられない!

 

後退しながらも、なお御札を投げつけてくる霊夢との距離を詰め、左手を思いっきり突き出して霊夢に掴みかかろうとする。

 

「無駄よ、この状態の私に触れるなんて……!」

 

「触れるなんて、何?」

 

「そんな……馬鹿な……」

 

私の左手は、ガッチリと霊夢の胸ぐらを掴んでいる。

 

何をしたか? 簡単。自分の存在を霊夢と同じ領域にまで成長させた……ただそれだけ。

 

浮くということは、この世界とは違う領域にいるということ。そのために、私達は霊夢へと干渉する事が出来ない。なら、もし霊夢と同じ領域に行ければどうだろうか? 答へは、今の私だ。

 

「今回は、手加減しない……ぞ!」

 

「あぐっ!」

 

右手を引き、本気で霊夢の顔面を殴りつける。妖夢は僅かに対応できたのだが、霊夢はモロに私の拳を顔面に受け吹き飛んでいき、空中で光の粒子となって消え去る。

 

「あと二人!」

 

御札で傷ついた傷を少しずつ治しながら、紫と文の方へと視線を向ける。霊夢の御札、何か掛けられているな。傷が治りにくい。妖怪の回復を妨げる能力でも掛けられていたのか?

 

「……どうします、紫さん」

 

「……」

 

二人が何やら話している。紫、難しい顔してるけど、まさか辞めるなんて言わないよね。

 

あ、ちなみに、私は霊夢の領域まで成長してたけど、自分に制限を掛けて、紫たちと同じ領域に戻している。そうじゃないと、あっちが干渉できなくて、負けを認める可能性があるからね。

 

「文、私を巻き込んでもいいから全力でやって頂戴」

 

「……いいんですか?」

 

「構わないわ。私も全力で行くから」

 

「そうですか……では、巻き込んでも知りませんからね!」

 

獅子狼解除まで、後三分。

 




カロさんの奥の手!

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