コラボ、島夢様がコラボしてくださいました。もしよければ、東方戦愛録をご覧になってください。
では、第八十五話をどうぞ。
Sideカロ
「さて~どうしよう~」
話を聞き終えた私は、出迎えてくれた天狗に挨拶して、平屋の前でこれからの事について考えていた。
阿求に話を聞いて、今回の異変の犯人と思われる妖怪の名前と特徴は分かったのはいいんだけど……一体、どこにいるんだろ?
これまでの話によれば、今回の異変の黒幕と思われる萃香は体を細かく出来るから、探すとしたらこの幻想郷全部を調べなきゃないけなくなるんだよね。……誰か、居場所を知ってるのいないかな~……って、そうだ。紫がいるじゃん。幻想郷の創設者で、大抵の事はなんでも知ってる紫が。
紫も紫で探すのが面倒くさいけど、黒幕の萃香よりは探しやすいはず……よし、ゆかりを探して居場所を吐かせよう。知らなかったら、最終手段の鏡夜にでも聞いてみればいいし。
「それじゃあ~行こっか~」
目指す場所は博麗神社。その場所から紫の妖力をヒシヒシと感じる……のはいいんだけど、なんだか嫌な予感がするな~。多分、行けば戦いは免れない気がする。それでも、行くけど。
足に力を込め、空に向かって真っ直ぐ跳んで雲を突き抜ける。こうしないと、人間たちに迷惑を掛けずに人里を出られるからね。下手にいつもの勢いのまま人里なんて走ったら、家が粉々に壊れちゃうよ。
雲を突き抜けた先の空は快晴。だけど、若干太陽が傾いて、そろそろ夕方になりそう。急いで解決しないと、夕飯に間に合わなくなっちゃう。急ごう。
博麗神社までの道を、妖力を使って作りその上を走って進んでいく。
「到着~」
「あれ? カロ、アンタ何やってるのよ?」
「やっほ~霊夢~久しぶり~」
博麗神社の丁度真上辺りで妖力の道から飛び降りた私は神社の鳥居の上に立つ。すると、今までずっと宴会の準備をしてたのか、疲れきった表情の霊夢がいた、
紫は……いない。スキマの中にでも隠れているのかな? ……霊夢に聞いてみようか。
「久しぶり。で? 何しに来たわけ? 宴会の手伝いでもしてくれるの?」
「やだな~そんなわけないじゃん~」
「そう。ま、そうだとは思ったけどね。あ~あ、誰か手伝ってくれる人はいないかしら」
「なはは~」
面倒くさいし、何より今はやらなきゃいけない事がある。残念だけど、手伝うのはまた今度だよ。せめて、この異変を解決できたらかな? だから、今は頑張って頂戴、霊夢。
っと、そんな事より、早く紫の場所を聞かないと。時間がなくなっちゃう。
「ねえ~霊夢~紫知らない~?」
「紫? 知らないわよ。今朝からずっと神社で宴会の準備してたけど、見てないわよ。ってか、見つけてたら手伝わせてるわよ」
「だよね~」
ってことは、やっぱりスキマの中に隠れてるんだ。それにしても、さっきから妙な視線を感じるんだけど、それは紫の仕業かな。
出てくる気配は……ないね。しょうがない。無理やり引きずり出してやりますか。
少しだけ目を瞑り、右手を前に出して意識を右手に集中させる。
「見つけた……」
「何を……!?」
目を開け、何もない空中で右手を強く握る。すると、その握った箇所が私の手に合わせて大きく歪む。
握った右手に感じる紫の存在。必死に逃げようとしてるようだけど、逃がさないよ。絶対にね。
右手を握ったまま腕を大きく引き寄せる。それに合わせて、握っていた箇所の空間が私に引っ張られ、徐々に歪んだ空間に黒い穴が出来始めてきた。
その穴は大きくなり続けていくが、更に引っ張っていく。そして、とうとう引っ張っていた歪んだ空間に限界でも来たのか、パリンと言う儚い音が鳴る。同時に、先ほど出来ていた黒い穴から声が聞こえてくる。
「ちょ、ちょっとカロ。分かったから! そんな強引な方法でこじ開けないで!」
「だって~これが楽なんだもん~」
ニッコリ顔で言ってやると、黒い穴から背中を向けて出てきた紫が騒ぎ始める。よし、紫を捕まえるの成功。
「ひぎゅん! も~痛いわよ、カロ」
「ごめんね~」
尻餅を付いた紫に手を差し伸べて立たせてやる。中に着込んでるせいなのか、はたまたこのぐーたら相棒は動いてないせいなのかは知らないが、地味に重い。私ほどではないけど。
「なんか、今失礼な事考えたでしょう」
「な~んにも~」
なんで心の中を読んでくるの、紫。あんた、そんな妖怪じゃないでしょうに。
お尻に着いた埃やら砂やらを払い落とした紫は、いつもの胡散臭い笑みを浮かべ始める。
「さて、カロ。どうして私を呼んだのかしら?」
「もう~分かってるくせに~」
「あら、わからないわ」
はぁ、嘘を付くようになってしまうなんて、お姉さん悲しいわ。……なんて、小芝居やってる場合じゃないか。
紫のやつ、知らないと言ってるけど、実は私の事をずっと監視していたんだよ。ほら、人里で誰かに見られてる感じがしたとか、天狗の山で視線を感じるって言ったあの時ね。
「そう~まあいいや~えっとね~紫ってさ~萃香って鬼知らない~?」
「勿論、知ってるわよ。それがどうしたの?」
ニタニタしながら聞いてくるって事は、何かしら要求してくるな。
「その居場所を教えて欲しいな~」
「へ~そう。別にいいけど……何とかしら」
はぁ、やっぱりね。何にしようかな。今持ち合わしてるもので等価になりそうな物は……残念だけど持ち合わせてはいないんだよね。
「何がいい~?」
「そうね……物は持ち合わせてはいないでしょから。これでいいわよ」
そう言って取り出したのは、あのスペルカード。成程ね、わかりやすくていいじゃん。
「貴方が勝ったら教える。負けたら、教えない。実に簡単でいいでしょう?」
「いいよ~他に条件は~?」
「こっちは複数」
「わかった~」
複数って言い方が少し気になるけども……多分大丈夫でしょう。何人来たとしても、大丈夫……なはず。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! なんで私も入っているのよ」
そこまで話したところで、今まで関わってこなかった霊夢が慌てて紫に近寄った。
普通、そうなるよね。勝手に戦わされそうになってるんだから、止めに入るよね。……あ、でも、上手く言いくるめられてる。
「いい、霊夢。ここで勝てば、カロに宴会の準備を任せられるかもしれないのよ」
「そ、そうね」
「なら、ここは闘うしかないんじゃない? 貴方だって、このままグダグダと宴会の準備をするのはしんどいんじゃなくて?」
「……分かったわよ。戦えばいいんでしょう、戦えば! その代わり、どっちに転がっても、あんたは手伝いなさいよ」
「美味しいお酒を出してくれるならね」
だそうな。まあ、これで闘う意思は固まったって事でいいのかな? なら、さっさと戦いましょうよ。
「もういい~?」
「ええ、いいわよ……それじゃあ――――――」
紫が持っているスペルカードを掲げる。その瞬間、一陣の風が吹き、一瞬にして周りの風景が変わる。
「始めましょうか」
「そうだね~……どれだけ成長したか、見てあげるよ」
「それはそれは。怖いですわ」
「いいから、早く仕掛けなさい、紫」
さて、戦いを楽しみつつも相棒の力を見てあげましょうかね。
Side鏡夜
今、俺はある所に行っている。それも、一つではなく複数の俺を使いながらだ。鏡華は文の元へ。鏡夢は魔理沙ちゃんの元へ。鏡忌は妖夢の元へ。そして、俺は紅魔館へ。
これは全て、ある計画のタメなのだが、それはまた今度教えるよ。
そんなことを考えつつ、紅魔館の中を歩き、ある場所の前で歩を止める。その場所はお嬢様達……つまり、レミリアお嬢様とフランお嬢様がいる部屋の前だ。
「あら、鏡夜」
「おはよう、鏡夜。今日もいい天気だね」
「そうですね。今日は実にいい天気です」
扉を開けて中に入れば、そこには紅茶を飲んでいるお嬢様達。いつも通りの可愛らしさだ。ああ、どうしてこうも愛おしいのだろう。……っと、ノロケるのは後にして計画を実行しないと。
「お嬢様、実はご相談がありまして」
「珍しいわね。鏡夜が相談だなんて」
「本当にね。具合でも悪い? なんなら、一緒に寝てあげるよ。勿論……」
「いえ、具合は悪くありませんよ」
少し、世間的にマズイ事を言いそうなので、止めておく。これ以上言わせてしまうと……ね?
途中で言葉を遮ってしまったせいか、フランお嬢様は頬を膨らませて怒ってますよアピールをしてくる。
「ぽひゅ……」
可愛らしいので、近寄って頬を指で押してみたら、変な音がでた。ああ、可愛い。
「それでですね、相談というのは――――――」
Sideカロ
「一気に決めるわよ、合わせなさい。夢想天生!」
「いきなりね。でも……そうね、一気に決めましょうか」
両脇にスキマを展開し、光り輝く何かを発射してくる紫。その隣では、霊夢が浮遊しながら徐々に姿が薄くしていく。
とりあえず、全ての光り輝く何かは弾き落とす。これくらいの威力なら妖力を使わずただ腕力だけで叩き落とせるので、妖力の方は足の裏に貯めておく。
何十もある数の光り輝く何かを叩き落としながら前進し、紫の目の前にたどり着く。
「ッ! 流石に早いわね」
紫の顔面に拳を振るうがスキマに入られることで躱される。なので、すぐ隣にいた霊夢ん向かって脚を向け、先程から足の裏に貯めていた妖力を開放して砲弾のように放つ。
本来なら体が吹っ飛んで、それで霊夢は終わり……のはずなのだが――――――
「嘘……」
「いくわよ」
霊夢の体に当たらず、そのまま霊夢の体をすり抜ける。
……なにこれ? 攻撃が当たらないとか、どうやって倒せばいいの?
「セイッ!」
「グッ!」
効くかどうか分からないが、ダメ押しで殴りかかってみたが、案の定霊夢の体をすり抜ける。なのに、霊夢のかかと落としは、私の脳天に落ちる。
全く、なんて理不尽な能力なの。これじゃあ、一方的に殴られるだけじゃん。どうにかしないと。
霊夢のかかと落としのせいで、目の前が歪み地面に倒れそうになるが、咄嗟に地面に手を着いて前転し、地面を思いっきり押して前に跳ぶ。
「イタタ。なんて反則」
「反則じゃないわよ。これからスペルカードごっこでも使っていこうと思ってるし」
「なんて理不尽」
振り返りながら両手に妖力の塊を作り出し、飛んで来る弾幕に向かって投げつける。
弾幕と私の妖力の塊はぶつかり合い、視界が見えなくなるような閃光が発生するが、それを気にせずに、後ろに向かって脚を抱えて周りながら跳ぶ。
……ん、んん? よし、治った。視界良好、ちゃんと目眩も治ってる。
「あら、外していまいましたわ」
「簡単には当てるわけがないだろう」
「でしょうね」
弾幕を放って来た張本人である紫が、扇子で口元を隠しながら言ってくる。
まあ、紫にイラッと来たのは無視するとして、これからどうしよう。霊夢に攻撃は当たらない。紫はスキマに隠れて何処へでも逃げることが可能。
……紫はいいとして、やっぱ霊夢だよね~。どうすっかな~本気でつぶしに行けば、なんとかなるでしょうけど……う~ん、仕方ない。あんまり使いたくないけど、本気で戦いますか。
「霊夢、紫。先に謝っとくね。ごめんね」
「何よ急に」
「ちょっと苦戦しそうだから、本気で行くね。それと――――――」
死なないでね。
目を閉じ、意識を体の奥深くにまで集中させる。そして、目と開ける。すると、溢れんばかりの妖力が体から吹き出る。その妖力を無理やり体の中に押し込めて身体強化に回す。
この妖力、半分だけだというのに操るのとっても難しいんだよね。だから、妖力を本気出すと私自身が死ぬ可能性があるんだ。それなのに、妖力は常に増えていく。……どうしろと?
勿論、体の方も強化され続けてはいるんだけど、追いつかないんだよね。……っと、今はそんなことはどうでもいいや。戦いに集中しないと。
「さ、行くよ」
「これは、まずいわね」
「そう? 私は別に問題ないわよ」
紫は切羽詰まって慌てるが、霊夢は油断からか平気そうだ。……ま、その余裕、すぐに崩してあげるけどね。
「もういい?」
「これじゃあ、負けるかもね」
「あら、弱気ね紫」
「そう、弱気なの。油断なんてしてられないからね。だから……」
今まで少し慌てていた紫が急にニタニタと笑い出す。その笑と共に、紫の周りにスキマが三つ出来る。
……一体何だろう。何か呼び出す気?
「さあ、戦いましょう。妹、弟子、そして魔法少女」
「イタァッ! ったく、一体何よ!」
「痛いです。お尻ぶつけました」
「皆さん、鈍感ですね~」
スキマから三つの気配を感じると思い身構えていると、そこから三人現れた。
一人目は、黒いとんがり帽子をかぶった魔女っ子、霧雨魔理沙。鏡夜に魔法を教えて貰っている魔法少女。二人目は、刀を持ち、緑色の着物を着ている魂魄妖夢。鏡夜の弟子である少女。そして、三人目。言わずともしれた射命丸文。鏡夜の妹。
何故、この三人?
「鏡夜がこれから戦うから練習しとけって急に来たから何かと思ったら、このことだったのか」
「私も同じ理由ですね。……それにしても三人共、会うのはお久しぶりですね」
「まあ、私の場合は二人とは取材の関係上しょっちゅう会ってるんですけどね」
どうやら、この三人は鏡夜によってここに来ることを暗示されていたらしいね。……やっぱり、鏡夜のやつ、この異変に何かしら関わってるな。後で問い詰めてみるか。
「魔理沙、妖夢、文。何でここに」
「私が少しお願いしたのよ。……それじゃあ、三人とも、いいわね」
「いいぜ。自分がどれだけ強くなったか確認できるから」
「私も同意見ですね。少し、戦わせていただきますよ」
「私は一度戦ってるんですがね。再挑戦って事で行きますか。負けたのも悔しいですし」
それぞれ自分の武器を構え出す。魔理沙は八卦炉という魔法道具。妖夢は刀を二本。文は扇。
成程。紫が言ってた複数と言うのは、こういうことだったのね。面白い、相手になるよ。これだけの相手、一度に戦うことなんて滅多にないからね!
「さあ、存分に相手してあげる。来なさい!」
如何だったでしょうか?
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