二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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もしかしたら、今回のルナサの話だけで、3話いくかもしれない。

色々と、今回の話では、謎の部分が多いですが、それは次回徐々に明かされていきます。

では、第八十話をどうぞ。


第八十話 ゆ、夢……だよね? 前編

Sideルナサ

 

「ね、眠い……」

 

連日演奏続きで疲れた。本当にもう、眠くて疲れて死にそう……まあ、生きてるかどうかも微妙なんだけど。

 

「流石に、一日六曲はキツイよ……」

 

自室に向かい、自分のベットに飛び込み、そのまま枕に顔を埋める。

 

演奏を終わらせたあと、すぐに次の曲を演奏し、全部終わったとしても、まだしてよ! の声。休みをとっても、すぐに演奏だったんだよね。

 

……いや、演奏の依頼があるだけ嬉しいことなんだけど、でもね、曲の演奏量だけはもう少し控えめにして欲しいよ。

 

なんで、連日連夜、宴会ばかり開くのだろう。たまにはこう、もう少しゆっくりと休みながら演奏させてくれると嬉しいなあ。

 

……で、でも、もっと欲を言えば、きょ、鏡夜とこう……色々と……。

 

「って、何考えてるの私! そ、そんな度胸、あるわけないのに……」

 

そ、その……す、少しだけ鏡夜と一緒に買い物や一緒に住みながら食事している光景を想像してみたら……か、顔が熱くなってきた……!

 

は、恥ずかしい。けど、一度は体験してみたい……かも。

 

「……はぁ、でも、そんなの夢のまた夢……だよね」

 

鏡夜にはレミリアって子とフランドールって女の子がお嫁さんなんだもんね。それに、他に何人も可愛い子と知り合いだし、私なんて眼中に入ってないよね……。

 

「……でも。一度でいいから、鏡夜と一緒に買い物や……食事なんか、出来ると……いい……な……」

 

鏡夜とのアレやコレを想像していたら、私はゆっくりと眠りについてしまった。

 

いつか……実現できるといいな……。

 

 

 

「な~るほどね。それじゃあ、明日は……」

 

 

 

「……ん。朝……」

 

眠りについてから何時間経ってしまったのかは分からないけども、取り敢えず何時間かが経って朝になってしまっていた。……それとも、お昼なのかな。

 

「……汗臭い」

 

昨日、演奏後、帰ってからすぐに眠ってしまった為、昨日お風呂に入り忘れていた。汗を掻きながら演奏したから、風呂に入らないで寝れば、汗臭いのも当たり前だよね。

 

汗を掻きすぎたせいで、少しベタッと気持ち悪い感じがする衣類をベットの上でイモムシのように脱ぎ、ベットから起き上がる。

 

私の部屋の外は、リビングに繋がっていて、そこを経由してお風呂場に行かないといけない。……裸で行っても大丈夫だよね。

 

妹達に裸を見られる可能性はあるけども、妹達は寝てるだろうし、もし起きていたとしても、妹達だから問題ないよね?

 

それに、今新しい服に着替えるのももったいないし。

 

「さっさと行こう。今日は演奏の依頼も無いことだし」

 

脱ぎ捨てた服をそのままにし、部屋を出る。

 

「やあ、ルナサちゃん。おはよう」

 

「……え?」

 

部屋を出た直後、そこには妹達の姿は無かった。その代わり、いつもそこには居ないはずの鏡夜がいた。

 

……もう一回。え?

 

「な、なななななな、なんで鏡夜が、こ、ここここここんな所に!?」

 

の、脳の処理が追いつかない! 理解できない!

 

え!? これって、夢? 夢だよね!? 誰か夢だと言って! これが夢じゃなかったら、私はあまりの恥ずかしさで死んじゃうよ!

 

「まあまあ、それは置いといて、ルナサちゃん」

 

「は、はひ!」

 

あまりにも緊張しすぎて、舌の呂律が回らず、変な声が出てしまう。

 

ちょちょちょ! か、顔が近い……! な、なんでそんな顔を近づけてくるの!? あ、夢だから? そうだよね、夢だから、鏡夜が家にいて、こんなに顔を近づけてくるんだよね!

 

顔が近い鏡夜から離れようと下がるが、そこには先程出てきた扉があり、後ろへと下がれない。

 

だ、誰か助けて……きょ、鏡夜の格好良い顔が徐々に近づいて……!

 

あと少しで唇がくっついてしまうといった距離で、私は両目をギュッと瞑る。

 

か、覚悟は決めたよ。い、いつでも、私は準備万端だよ!

 

「ふっ」

 

「ふひゃい!」

 

両目を閉じ、覚悟を決められていると、いきなり耳に息を吹きかけられた。

 

く、擽ったい! それに、変な声出ちゃった……!

 

「ふっ」

 

「ん……ぅぁ……」

 

また耳に息を吹きかけてきたので、必死に声を押し殺して我慢していると、急に息を吹きかけられなくなった。

 

お、終わったの……?

 

「はぁ……はぁ……んあ……」

 

少しの間息を整えていると、今度は耳元にそっと囁かれた。

 

「まあ、イタズラはこれくらいにして、本題を言うけど……」

 

「ふへ……?」

 

「お風呂、行ってきた方いいよ?」

 

鏡夜に言われてから、目を開いてみると、そこには下に指を指している鏡夜が……。

 

指の向きの通り、下に視線を移していくと、そこには私のこじんまりした胸が一糸まとわぬ姿で顕になってい……る……!?

 

そ、そうだった! 私、部屋出る時裸だったんだ! 鏡夜の姿見つけた事で忘れてた!

 

「は……あ……え……」

 

「ね?」

 

優しく微笑む鏡夜。その笑顔で、私の羞恥心が更に追い込まれて行き――――――

 

「……うわああああああああんんん!!!!」

 

「ありゃりゃ」

 

鏡夜の空いている隙間をくぐり抜けて、急いでお風呂場へと駆け込む。

 

恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!! きょ、鏡夜に裸見られたあああああああああ!!

 

「朝ごはん出来るてるから、早めに出ておいでよー! じゃないと……」

 

じゃないと……じゃないと何するの!? ねえ、何するの鏡夜!?

 

「乗り込んじゃうよ」

 

ッ!? そ、そんな……私にどうしろと! 裸見られて恥ずかしいくて、鏡夜の顔まともに見れないのに、その上、早く上がらないと乗り込んでくる!? 究極の二択!

 

お風呂に入って、鏡夜の前に出るか、それとも、お風呂場に立て篭って鏡夜がこさせないようにするか……!

 

鏡夜を来させないようにする? 無理無理。だから、答えは一つ。

 

「うわあああああん! いそいではいりゅよう!」

 

急いでお風呂に入るしかない……けども、今思った。私の着替え、ないんけど。

 

何、まさか裸でまた出ろと!? それだったら、覗かれるのと変わりない気がするんだけど……。

 

「……もしかして、コレ着てって事?」

 

速攻でお風呂に浸かって体を洗い、すぐさま外に出て着替えをどうしようか模索していると、お風呂から出た場所の近くに、着替えが一式置いてあった。

 

コレって、見たことはあるけど、い、いいのかな……? 値段的に高級品のような気がするんだけど。それに、私には、こんなの似合うはずが……。

 

「ルナサちゃん。上手く着替えられたー?」

 

「い、今着てる……」

 

もうそれしか着替えがないので、私はいそいそとその着替えに着替えていく。私なんかじゃ似合わないだろうに、何でこの服を……。

 

置いてあった着替えに着替えた私は、お風呂場の扉を少しだけ開けて、ちょっとだけ出来た隙間から外を見る。

 

「……」

 

「ばあ!」

 

「ッ――――――!?」

 

ゆっくりと視線をずらして外を覗いていたのだが、いきなりニッコリ鏡夜の顔が目の前に現れた。

 

あまりにも突然過ぎたため、驚きのあまり声にならない声を上げて、後ろにへたりこんでしまった。

 

こ、腰が抜けた……た、立てない。多分、今、私涙目だと思う。だって、すごく驚いたから。それ以外の理由なんてない!

 

「そこまで驚いてくれると、こちらも感激だよ」

 

扉を全部開け、腰の抜けた私の前に鏡夜は屈むと、そっと私の手を取った。

 

「ごめんね。驚かせちゃって」

 

謝るのなら、やらないので欲しいのだけど……。

 

涙目のまま、いじけたようにソッポを向いてむくれていると、鏡夜は優しく私のことを起こしてくれた。

 

「そんなに驚いた?」

 

「……驚いた」

 

鏡夜の顔を見ずに、ちょっと拗ねた声音で言う。

 

チラッと鏡夜を見てみれば、そんな私に対してどうしていいのか分からないのか、苦笑いを浮かべて、頬を掻いていた。

 

「う~ん……じゃあ、これで許して」

 

「ふえ……ッ!?」

 

私の握っていた方の腕を引っ張り、私を抱き寄せてくる鏡夜。

 

い、一体何するつもり!? ま、まさかさっきの続き!? い、いや待って。い、今そんなことされたら、恥ずかしくて死んでしまう! そもそも、何されても、恥ずかしさのあまり、死にそうになるけど……。

 

そんな、細かいことは置いて……って、きょ、鏡夜の顔が段々、近くに……!

 

先ほどと同じようにギュッと目を瞑り、何が来るのか分からないけども、とりあえず待っていると、私の体が思いっきり抱きしめられた。

 

「ああ、本当、かっわいいな~ルナサちゃん」

 

……ど、どうすればいいの、私! う、動けない。それに、抱きしめられているせいか、鏡夜の、その……甘い、いい匂いが私の鼻をくすぐってくる。

 

なんで女の私よりもいい匂いがするの……少しだけ、落ち込んじゃいそう。

 

……って、違うよ! 今は、どうやって対応すればいいかだよ! 抱きしめられぱっなしは、嬉しいけども、その前に、私の精神が限界に来ちゃう! この、一分一秒で、私の羞恥心は天井知らずに上がっていってるんだから!

 

だ、抱きしめ返せばいいのかな……? で、でも、それって大胆すぎる? ああもう! とりあえず、真っ赤になって熱い私の顔、どうにかしなきゃ!

 

「手作りで作った黒のゴスロリドレスも似合うし、大人し系の女の子だし、もう言うことなしに可愛すぎだよ」

 

「きょ、鏡夜、か、顔が近い……」

 

もう、何かが不切れったのか、鏡夜は私の頬に自分の頬を擦り付けながらクネクネ動き始める。

 

そ、そんなに私って可愛いのかな? でも、鏡夜にはお嫁さんが居るし。そのお嫁さんは、私の何倍も可愛いから、私は可愛くないと思うのだけど。

 

「ル~ナサちゃん」

 

ふと、私が考え混んでいると、鏡夜がいきなり私の顔を覗き込んできた。

 

「ダメだよ。最初に会った時言ったでしょう。君は、笑顔の方が似合うよってね。ほら、ニコッとだよ」

 

そんな事を言いながら、鏡夜はニッコリと微笑んでくる。

 

笑顔……そうだ。鏡夜に初めて会った時、笑顔が似合うって言われたんだ……どうして、鏡夜の前で暗い顔をして、笑顔になっていないんだ、私。

 

鏡夜にお嫁さんがいる? 私は可愛くないって自分で思っている? もう関係無い! 私は、鏡夜のお嫁さんがいたとしても! 自分に自信を持ち、鏡夜を振り向かせて、鏡夜の恋人になってやる! 

 

そのために、やることは一つだよね。

 

「クス……ニコッだね」

 

笑顔でいること――――――

 

「うん、やっぱりその方が暗い顔より、可愛いよ」

 

「ッ――――――!!」

 

じゃなくて、鏡夜を見て、赤面して恥ずかしがる事を治すことです。

 

 

 

「はい、お待ちどうさま。朝ごはんだよ」

 

「あ、ありがとう」

 

そんなこんなが有り、今は朝食を頂いているところ。何故か、鏡夜と二人っきりで。

 

「簡単な物でごめんね」

 

「う、ううん。十分……だよ」

 

正直な話、十分以上。むしろ、日頃食べている朝食より豪勢。

 

基本、私達は、パン等を食べるのだが、今日はご飯。かなり久しぶりに見た。

 

鮭や味噌汁。ご飯に漬物。それに加えて、食後の甘味であるお団子が数本。

 

最高です。ただ、私その……あんまりお箸が得意じゃないんだよね。

 

「それじゃあ、いただきます」

 

「いただきます」

 

用意を全て終えて、鏡夜と私は両手を合わせてから、食事を始める。

 

……なんだろう。この光景って、傍から見たらその……ふ、夫婦っぽく見えるんじゃない? 

 

「ッ!」

 

「おっと、どうしたの? 大丈夫?」

 

「だ、大丈夫!」

 

変な事考えたせいで、お箸落としちゃった。

 

でも、夫婦って、どう見てもそれはないよね。……いや、違う。さっき決めたばっかりじゃない! 自分に自信を持たないと! だ、だから、今の私達は、傍から見たら、ふ、ふう……ふ……。

 

「ッ!」

 

「むぐ? んぐ。大丈夫? もしかして、お箸使いづらい?」

 

「だ、大丈夫! も、問題ない……」

 

もう、どうして考えただけで顔が赤くなるのよ、私! またお箸落としちゃったし……完全にこれ、おかしい子だと思われてるよ……。

 

「ふみゅ……」

 

「……ふむ」

 

ちょっと自己嫌悪で涙目になりながら、お箸を使って悪戦苦闘しながらもご飯をちまちまと食べていると、鏡夜が顎に手を当てて、何かを考え始めた。

 

「しょうがない」

 

「んむ?」

 

いきなり食べるのをやめた鏡夜は、私の方へ寄ってくると、隣に座った。

 

どうしたのだろうか……等と考えていると、鏡夜が急に私が使っていたお箸を渡すように手を出してくる。

 

もしかして、もう食べるなって事……ち、違うよね。もしそうだったら、すんごい悲しい。

 

出された手に、素直にお箸を渡すと、鏡夜は先程まで食べていた私のご飯を取り、お箸で摘み――――――

 

「はい、アーン」

 

私の口元に差し出してくる。

 

これって、もしかして、里でこの前噂されていた、恋人同士がやる、アーンってやつ……!

 

ど、どどどどどうしよう! 出されたんだから、素直に食べるべきだよね。で、でも、その、恋人同士がやる事って考えると、恥ずかしい。

 

待って、でも、これって逆に考えれば、鏡夜の恋人に一歩近づける絶好の機会だよね。よ、ようし!

 

「あ、アーン」

 

目を瞑り、ふるふると緊張のあまり震えながらも、なんとか差し出されたご飯を口に含む。

 

……は、恥ずかしい。けど、なんか嬉しい。

 

閉じていた瞼を開けてみると、そこには私の唇ギリギリまで、鏡夜の顔が迫っていた。

 

「……」

 

な、なんで無言で見つめてくるの。私、何かおかしなことした?

 

「何かに、似てる……」

 

似てる? 似てるって何に似てるんだろう?

 

動物? 人? 誰にも似てない気がするのだけど、誰かに似てたかな?

 

……あ、もしかして、里で人形劇を開いてるアリスに似てるのかな? でも、私はあそこまで陽気では無いから、似てないと思うし……誰に似てるんだろう?

 

「……ああ、こうすればいのか」

 

鏡夜は私にアーンするのをやめると、何かを開いて、その中をガサゴソとあさりだした。

 

「これだこれ、はい、ルナサちゃん、目を瞑って」

 

「こう?」

 

言われた通り目を瞑る。流石に何回も目を瞑ったから、これくらいじゃあ緊張しなくなった! 一歩、前進。

 

頭を二、三度触れた後、鏡夜は一息つくと、そっと私の頭を撫でてきた。

 

「これでよし、目を開けてみて」

 

「……?」

 

目を開けた先には、鏡。そこに写っているのは、勿論私なんだけども、ある部分が違う。そのある部分とは――――――

 

「……耳?」

 

そう、耳。私の頭の上に、猫のような耳が生えていた。力を入れれば動くし、音も聞こえる……って、なんで猫耳!?

 

ちょ、ちょっとこれ、私の耳どうなっちゃってんの!? 頭の横触れば、いつもの耳があるし、この頭の上の耳はなんなのー!

 

「う~ん、やっぱり猫耳はルナサちゃん、似合うな」

 

「ちょ、ちょっと鏡夜、コレ……」

 

「ああ、大丈夫。それ、取り外し可能だから。でも、とっちゃう前に、一つだけやってほしいんだけどいいかな?」

 

「可能なら……」

 

鏡夜は何をさせるつもりなんだろう? 出来るだけ、無理じゃないことにして欲しい。

 

「その格好のままで、にゃあって言ってみて」

 

それは……その、恥ずかしいのだけど。でも、無理なことではないから、やらなきゃいけないよね……?

 

椅子に座ったまま、体を鏡夜の方に向け、両手を胸元に持ってきて、少しだけ手首を曲げる。あと、恥ずかしいので、顔は鏡夜を見ないように俯かせとく。そして――――――

 

「にゃ、にゃあ……」

 

「ッ! 超カワイイ!!」

 

「はにゃあ!!」

 

またもや何かが吹っ切れたのか、鏡夜が私に飛びついて、抱きしめてきた。そのまんま、立ち上がると、私を抱きしめたまま、その場で回り始める。

 

「さ、食事も取らないといけないから、ルナサちゃんの柔らかさとかが名残しいけど、食事を再開しましょうか」

 

「う、うん」

 

何回転したかわからないけど、とりあえず目の回る位の回数を回った鏡夜は、椅子に座ると、また同じようにお箸で私の口にご飯を運んでくる。

 

……私、今日生き残れるかな……恥ずかしさで死なないようにしよう。もう一回言うけど、生きてるかどうか分かないけどね。

 

ともかく、私の一日は始まったばかりだ。覚悟を決めよう。

 




どういうことだ。ここで、切らなければ、1万字を超える自信があった。

感想、アドバス、批判、なんか、誤字、お待ちしております。

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