毎度のことながら、キャラ崩壊が起こってないか心配です。多分、今回はあるともいます。違ったら違うと言ってくださいね?
では、第六十二話をどうぞ。
Sideショタ鏡夜
「いたた~いきなり爆発はキツイよ」
「本当だよ。神である僕すら吹き飛ばすなんて」
僕は今、オリジナルから発生した爆発によって、数十km程をこの目の前にいる神、ネメシスと共に吹き飛ばされた。痛みなんかは特にはないけど、なんかこう、体に違和感を感じる。
それで、話は変わって、僕の容姿なんだけど、何故にこの容姿なのだろう。あまり見たことないけど、この黒髪で、前髪の先っぽがちょっとツンツンしてて、死んだ魚のような瞳ってもしかして……いやいや、あのキャラじゃないでしょう。だって、あのキャラって高校生だし、でも、この姿、あの高校生を小さくしたような感じなんだよな。
これで、螺子でも持って、『僕は悪くない』なんて言ったら、完全にあの人だよ。
「もういいかな?」
「え? 何が?」
考え事に浸っていると、ネメシスが何か話しかけていたようだった。全然聞いてなかったんだけど。
「あのさ、僕、早く君と戦いたいんだけど」
「あ、ああ、ごめんなさい」
「うん、別にいいよ」
笑顔で言ってくるネメシスに対して、少々かしこまって返事を返すと、僕のいた地面が爆発した。
「もう、始まってるしね」
「そうですか」
一瞬のことで驚いたが、咄嗟に爆発を回避して、ネメシスの背後に回り込んだ僕は、ネメシスに対して拳を振るう。
「やっぱり面白いね、君」
完全に虚を付いたと思ったのだけど、ネメシスは僕の攻撃に反応して振り返ると、拳を躱し、伸びきった腕を掴んで思いっきり振り回してきた。
そりゃあ、声を出してたらバレちゃうか。
振り回されているあいだにそんなことを考えていると、ネメシスは一際力を入れると、空中に僕を放り投げた。
元々力も強いのに、遠心力もついているため、体に凄いGが掛かって呼吸もままらないけど、そのGに堪えて、空中で妖力の翼を作り出して態勢を整える。
すぐさま、ネメシスを見ると、目の前には馬が飛んできていた。
「復讐『リベンジャーデストロイ』」
突然突っ込んで来た馬を躱し、距離を取る。しかし、距離を取ろうと翼を羽ばたかせて飛ぶと、見えない壁のようなものにぶつかった。多分結界などだろうけど、唯の結界ではいみたい。唯の結界なら僕は普通に壊せるからね。
そんな思考をしていると、先ほど突っ込んで来た馬が光り始めてきた。そして、その光が一層強まると、馬が爆発した。
まるで核でも爆発したような衝撃が爆を襲う。まあ、核なんてくらったことないけど。
爆発だと寸前で気づいた僕は、咄嗟に曲げる能力でダメージを曲げて、ネメシスに送りつける。実は、曲げる能力ってこんなことにも使えるんだよね。
爆風が収まり、視界が晴れたその先には、ネメシスの足の裏が見えた。
「危ない!」
「躱すんだこれを」
何とか上体を逸らして、ネメシスの前蹴りを躱すが、ネメシスはすぐさま足を振り上げると、顔面に向かってかかと落としを放ってきた。ていうか、あの爆発でノーダメージですか。
ネメシスが振り下ろしてきたかかと落としを顔の前で両手をクロスさせて防ぐ。だが、その威力は半端ではなく、今の僕の状態では耐えられず、僕はネメシスの力に押されるように地面へと叩きつけられた。
地面へと蹴りとばされた僕は、まるで爆弾でも落ちてきたような音を立てて地面へと叩きつけられた。
「クレーターが出来るって、僕よく耐えられたな~」
直径三km程のクレーターの中心で、仰向けに寝っころがりながらボヤくと、上空からネメシスが笑顔で降りてきた。
ああ、懐かしいな。あんな、純粋に戦いを楽しんでいる顔を見るのって。
そんなことを考えていると、僕の中で、何かが切れた。
……ああ、いいじゃないか、僕。遊びはここまでで。
「クク、アハハハハ!!!!」
僕は足を上げ、振り下ろした反動で跳ね起きると、妖力の翼を羽ばたかせて降りてくるネメシスに突っ込んでいった。
ネメシスは楽しそうな表情を浮かべると、僕と同じように笑顔を浮かべながらこちらへ突っ込んできた。
「アハハハ!!!!!」
「君、面白いよ!」
僕とネメシスの距離が腕一つ分となった瞬間、僕とネメシスは同時に左右別々に拳を放った。ネメシスの右拳が僕の頬へと当たり、僕の左拳がネメシスの頬へと当たる。
全くの同時に、僕とネメシスの拳は相手に当たり、衝撃波が発生する。だが、そんなのことは気にしないとばかりに、僕とネメシスはすぐに拳を引っ込めると、再び相手の顔面に向かって拳を放つ。
ぶつかると同時に、今度は互に反対の足で蹴りを放つ。そして、そんなことを何十、何百と行っていく。
「アハハハハハ!!!!!」
僕は、ダメージを喰らっているというのに笑い続ける。右手は血まみれで、左目は見えない。頭からは血が出てるし、内蔵も何箇所も傷つき、破裂している。だが、それでも、僕は笑うのをやめない。だって、面白いんだもの。
殴りあいを続けること数分。体に力が入らず、地面の所々が抉れ始めたとき、ネメシスは思いっきりバックステップでその場から飛び退いた。
何ごとかと思い、不審に思っていると、ネメシスは笑いながら一枚のカードを取り出した。
「君、面白いね! 面白い君にプレゼントだよ!」
ネメシスはそう言うと、一枚のカードを握りつぶした。
「闇符『幻影写し』」
ネメシスが呟いた瞬間、目の前には僕と同じ姿のもう一人の僕がいた。更に最悪のことに、明らかに僕より力が全てで上だ。
……だから、どうしたの?
自分よりすべてが上だからと言って、負けるなんてことはない。相手が全て上ならば、僕の力まで下げる、或いは別な僕に戦わせればいい。そこで……
「来て。もう一人の僕」
「全く、うるさいですね」
僕が空に向かって声を上げると、僕の隣には真紅の瞳に、黒髪ロングストレートの少女がたっていた。
「ごめんね。でも、ちょっと手伝って頂戴」
「……どうやらそのようですね。解りました、もう一人の貴方は私に任せなさい。貴方はあの薄ら寒い笑いを浮かべてる奴をボコしなさい」
「ありがとう」
僕ともう一人の私が頷きあった瞬間、僕はネメシスへ、私はもう一人の僕へと向かっていった。
「本当、面白いね、君!」
ネメシスは、その薄ら寒い笑を、更に一層その笑を狂気的に歪めると、僕に向かって右足で蹴りを放ってくる。
それを地面に右足を埋め込みストッパー替わりにして、左手で受け止める。
今まで戦ってきた中で、上位に入るであろうその蹴りは、何とか止めれたが、もし足を地面に埋めてなかったら吹き飛んでいただろう。
其のくらいの衝撃を喰らった僕だが、すぐさま地面を削りながら、右足でネメシスの顎めがけて蹴りを放つ。
土埃を目くらましとなって、ネメシスには見えないはずの僕の蹴りは、いともたやすく左手で止められてしまった。
そこまで弱い蹴りを放ったつもりはないんだけど、意外と力が弱まっているみたい。
ネメシスは僕の蹴りを受け止めると、僕の右足を掴み、右手で僕の顔面を掴んできた。
そのままの体制で、ネメシスは僕の体を、頭から地面に叩きつけると、握っていた僕の右足を引きちぎってきた。
「きひゃはははは!」
僕は右足を引きちぎられた瞬間、変な笑い声を上げてしまう。別にMってわけじゃないよ。
この笑の理由は、この戦いがあまりにも楽しすぎるんだ! 今までの僕だったら、右足をやられたとしても、回復できるから余裕でいられた。でも、今は違う。超常的な回復力もなければ、力もない。余裕でいられる時なんてない。だから、それが面白い。
絶対的なピンチ。死ぬかもしれないという、思い。それら全てが僕にとっては懐かしい。そのあまりにも懐かしすぎる感覚故に、僕は思わず笑ってしまったのだ。
僕の足を引きちぎったネメシスは、狂気的な笑を浮かべると、右足を遥か彼方へと投げ捨て、右手で僕の頭を握りつぶそうとしてきた。
ギリギリと僕の頭に力が込められていくが、僕はすぐさま右足から流れている血を操り、右手に刀を作り出して、ネメシスの右腕を肘から斬り飛ばす。そして、右足の血を操り、血で右足を作りネメシスの腹を蹴り飛ばす。
その場で耐えられると思っていたのだが、意外にも、ネメシスは僕の蹴りで後ろへと吹き飛ぶ。その瞬間、僕は足を使って跳ね起き、右手に持っていた刀をネメシスに向かって投げる。だが、それはネメシスの拳によって下へと弾かれ、地面に突き刺さってしまう。
ネメシスは僕の刀を弾くと、地面に突き刺さった刀を握り、僕の方へと掛けてくる。しかし、その途中で、僕はネメシスが握っていた刀を操り、棘を生やして、ネメシスの刀を握っていた手に突き刺す。
一応、血ならばどこに合っても操れる。例えば、体内にある血でも。
まあ、それはいいとして、僕の血が手を貫いたことに一瞬戸惑り、その場で止まってしまったネメシスに、僕は急接近して左足で脇腹に向かって蹴りを放つ。
右腕を無くしたことにより、ネメシスは残っている右足で僕の蹴りを受け止める。だが、体制が不安定だったのか、ネメシスは僕の蹴りを受け止めた瞬間、吹き飛んだ。
しかし、ネメシスは空中ですぐさま体勢を立て直すと、狂気的な笑を浮かべてこちらに向かって突っ込んできた。
向かってくるネメシスに対して、右手でネメシスの腹にめがけて拳を振るうが、ネメシスは躱すことはせず、腹に拳を当て受け止めると、残っている左手で僕の腕を掴むと、僕の腹に蹴りを放ってきた。あまりに勢いのある蹴りだったため、僕の体は後ろへと吹き飛ぶ……ハズだった。
しかし、僕の体は、ネメシスの握っていた腕に引っ張られ、今度はその腕を支点に一回させられ、地面へと叩きつけられた。そして、ネメシスは僕の腹を足で踏みつけると、僕の腕を引きちぎった。
そして、僕の引きちぎった腕を、最初の足と同じように、どこかへ放り投げると、すぐさま残っている腕で、僕の顔面に向かって拳を放ってくる。
僕は、その拳を躱せなかった。地面に叩きつけられた衝撃と、腹を踏みつけられた衝撃により、呼吸ができず動けなかったのだ。
顔面に拳を喰らった僕は鼻が折れ鼻血が出てきたが、流れてくる鼻血を口に含むと、ネメシスに向かって吹き出す。
鼻血は針のようになってネメシスへと向かっていく。当たるという確信は無かったが、粗確信通り、ネメシスは上体を逸らすと、僕の腹から足をどけて、後方へジャンプした。
足をどけ、ネメシスが飛び退いた瞬間、僕は跳ね起き、ネメシスへと突っ込もうとした。しかし、僕は突っ込むことはせず、その場に立って、ネメシスを睨んだ。
何が起きたかというと、ネメシスが一枚のカードを握っていたのだ。
「面白いね! こんな楽しい戦いをしたのは久しぶりだよ! でも、もうこれで終わり。これが終わったら、僕帰るから。目的も果たせたしね」
「もう帰っちゃうんですか。まだまだ、戦いましょうよ」
「僕もそうしたいいだけどね、この体じゃあ、もう限界なんだ。だから、これで終わり!」
ネメシスはそう言うと、手に握っていたカードを握りつぶした。
「滅殺『デストロイ・ギガレイズ』」
そう呟いたネメシスの体は変貌を遂げ、一体の巨大な龍へと変化していった。その龍はこちらを向くと、大きく体を震わせた。そして、次の瞬間、龍から紅い光線が放たれた。
先ほどまで受け止められるほどの威力ではない。一撃をもって、死にたらしめる。そんな馬鹿げた威力がこの光線にはある。普段の僕なら、問題ないけど。今の僕では耐えられない。
咄嗟に光線を横っ飛びで避けるが、光線はまるで意思を持ったように僕を追跡してくる。
「く! めんどくさい!」
迫り来る光線を避けて続けるが、一向に収まる気配がない。
埒があかないと思った僕は、迫り来る光線を前にして、棒立ちになった。そして、すぐさま目の前にスキマを展開し、その中へと光線を入れていく。
これはスキマの入口だ。入口ということは、出口もある。その出口とは……
「全く、ようやく死んでくれましたか」
もう一人の僕と戦っていた私の目の前だ。私は、もう一人の僕の目の前にスキマを開いて、その光線を当てたのだ。
スキマを閉じ、ネメシスの方を見ると、そこにはネメシスの姿は無く、あったのは一つの大きな男の死体だった。
「……終わったのかな? は~疲れた」
ネメシスがいなくなったことに対してホッと息を吐くと、後ろからハリセンのようなもので叩かれた。
「痛っ!」
叩かれた頭を抑えて後ろを向くと、そこには胸の前で両手を組んで、妖力で作ったハリセンを握って、仁王立ちしている私がいた。
「痛っ! じゃ、ありませんよ。なんですか、せっかくオリジナルの元へと帰っていたのに、急に呼び止めるなんて」
「ご、ごめん」
「ごめんですめば、警察はいらないんですよ。全く、あれぐらい自分で倒しなさい」
「は、はい」
何故か、僕は私の前になると、妙に畏まってしまう。何故だろう。
私はヤレヤレといった感じで首を振ると、その真紅の瞳でこちらを見てきた。
「まあ、いいです。弟の頼みです。姉である私がしっかりしませんとね」
「僕、弟なの?」
「何か問題でも?」
「い、いえ、何も」
腕を組みながら高圧的に行ってくる私に対して、僕は何も言えなかった。何か言ったら、殺されそうだ。
「では、オリジナルまで戻りますよ。弟」
「う、うん。わかったよ、姉さん。でも、その前に」
「何か?」
「名前を教えてくれると嬉しいな?」
「名前? 私の名前は、時成鏡華。弟、貴方は?」
「僕は……時成鏡夢、よろしく」
名前の由来は、特にないけど、しいて言えば、目の前の私が、僕と似ていて、これが夢のようだからかな。だから、鏡に移った私は僕と似ていて、それはまるで夢のよう。略して鏡夢、なんてね。
「解った。よろしく、弟」
「呼び名は変わらないのね」
「何か、問題でも?」
「いえ、ないです」
もう、諦めました。
「それじゃあ、オリジナルのところに戻るわよ」
「解った」
そう言うと、私は目を閉じて、妖力の粒子となって、風に乗って消えていった。
僕も同じように、目を閉じて、風に乗るように意識を失っていた。
「オリジナル、この姉さんは怖いです」
スペルカードの発動は、自分のオリジナルですが、こんな感じでいいでしょうか?
感想、批判、誤字、アドバイス、改変、お待ちしております。