それと、主人公がちょっと最低な奴に見えるかもしれませんが、ご了承ください。
では第四十二話をどうぞ。
Side霊夢
「う、う~ん・・・あれ、ここどこ?」
鳥の鳴き声が聞こえる中、私は目を覚ました。・・・いつの間に眠ってしまったのだろうか。
私は寝ぼけたまま、気怠い体をなんとか起こしながら周りを見た。
「あれ? ここって・・・」
周りを見ると、全て紅色だらけだった。その紅に妙に見覚えがあるのだが、頭の中に霧がかかったように思い出せない。
「・・・私って、昨日何したっけ」
取り敢えず昨日の事を思い出し始めた。
「確か異変を解決して、その後無理やり鏡夜に宴会に誘われて、そして料理を食べて・・・あれ?」
異変を解決し、料理を食べたまではいいが、その後の記憶が何故か一切思い出せなかった。
「う、う~ん」
「!?」
何とか思い出そうとしていると、突然隣から唸り声が聞こえた。
私は慌てて隣を見ると、そこには―――
「え・・・鏡・・・夜・・・?」
鏡夜が寝ていた。・・・って、どうして鏡夜が寝てるの!?
だって、確か私は普通に料理を食べて、魔理沙と会話して、それから・・・それから・・・私は何をしたんだっけ?
「う~ん、あれ、霊夢ちゃんおはよう」
「あ、うん。おはよう」
そんな感じで、昨日の事を思い出そうとしていうると、鏡夜が起きた。
「で、鏡夜。どうしてここにいるの?」
「あれ? 覚えてないの?」
「な、何を?」
鏡夜は不思議そうに寝たまま首を傾げながら聞いてくる。鏡夜の言葉に私は自分の記憶を探り、昨日の事を思い出すが、やはりこの状況になるようなことなど、記憶にない。
「あ~もしかして、忘れちゃってるの?」
「忘れてるって何を?」
「昨日、霊夢ちゃん。酒に酔って、鏡夜と一緒に寝るの~って言ったから、ここにいるんだけど」
「へ・・・・・・あ!」
鏡夜の言葉で、私のあの料理の後の記憶を思い出した。
そうだった。私は魔理沙が持ってきた酒を飲んで、それで酔っぱらって、そして・・・
そこまで考えた途端、急激に私の顔は熱くなり、何も考えられなくなった。
「・・・・・・・・・・」
「霊夢ちゃん?」
「きゃ・・・」
「きゃ?」
「きゃあああああああああああ!!!!!!!!!」
「ごめんなさい」
「あ~うん。別にいいよ」
あの後、思わず悲鳴を上げてしまった私のせいでここの人が全員起きてしまった。そのせいで、鏡夜が何かしたとの疑いがかかったが、すぐに私が説明し、鏡夜は一切悪くない事を証明した。
そんなことがあったが、今私は鏡夜の家で朝ごはんをいただいている。当然風呂に入った後によ?
「それにしても、驚いたわよ」
「そうだね。流石に朝一での悲鳴は驚いたよ」
「うう、ごめんなさい」
「あっはっは~霊夢~気にしなくていいよ~」
「うう」
カロが慰めの言葉をかけてくるが、それが余計に私の心にチクチクとくる。
「まあ、仕方ないわよね。咲夜もそう思うでしょ」
「ええ・・・そう・・・思います・・・」
「どうしたの、咲夜?」
咲夜は頭を抑えて、具合悪そうにレミリアに答える。もしかして、二日酔いなのかな?
「今朝から、妙に頭が痛くて・・・」
「ああ、やっぱり二日酔いになったのね」
「二日酔いですか」
「そうよ」
「そうですか・・・う」
咲夜は頭を抑えながら、とうとう机に突っ伏してしまった。
「あらら仕方ない。お嬢様、咲夜ちゃんを寝かせてきますんで、少し席を立ちますね」
「わかったわ」
鏡夜はそう言うと、咲夜を抱えて、食堂を出て行った。
そんな感じで食事も終わり、お礼をも言ってこれから帰ろうとすると、鏡夜が声を掛けてきた。
「あ、霊夢ちゃん。帰るの?」
「そうだけど?」
「じゃあ、私も人里までついて行っていいかな」
「別に構わないけど?」
私は平然と鏡夜に答えるが、内心大変なことになっていた。
そもそも、今朝あんな事があったってのに、どんな顔をすればいいのよ! 第一、まず鏡夜と一緒にいたら、顔がまた熱くなっちゃいそうだし・・・
とまあ、こんな感じで内心大変なことになっていた。
「じゃあ、行こっか」
「ええ」
外に出て、鏡夜は門の前にいたカロと美鈴に何か言ったあと、例の黒い服のまま真っ白い翼を出した。
「じゃあ、霊夢ちゃん。行こっか」
「ええ。それじゃあ、カロ。また今度ね」
「じゃあね~」
カロに手を振った後、鏡夜と一緒に空へと飛び立った。
「そういえば鏡夜。魔理沙はどうしたの?」
昨日の記憶では私が酔っている時に魔理沙は寝ていたため、多分、鏡夜の家に泊まっていったと思ったのだが、今日の朝ごはんの時間に、魔理沙が現れなかったために、気になったので鏡夜に聞いてみた。
「ああ魔理沙ちゃん? 今朝起に行ったら、頭痛いからもう少し寝るって言って、まだ寝てるよ」
「そうなんだ」
どうやら、魔理沙も咲夜同様二日酔いになってしまったらしい。なんで、二人して二日酔いになるまで飲むのかしらね。
そんな風に鏡夜と話しながら飛んでいると、人里についた。
「ここ?」
「そうよ」
人里の入口の前に降りると、鏡夜は興味深そうにして、人里へと入っていった。
「ほ~結構賑わってるね~」
「そうね。ここ最近、霧のせいでろくに店も開けなかったでしょうからね」
「成程ね~・・・っと、見つけた」
人里に入り、鏡夜と話していると、鏡夜はある店の前で止まり、中へと入っていった。
店の暖簾を見ると、茶屋と書かれていたが、鏡夜は一体何をしにここへと入っていったのだろうか?
私は鏡夜の入った少しあとに中へと入ると、鏡夜とここの店の主人らしき人が話し合っていた。
「どうしてもですかい?」
「ああどうしても、無理かな?」
「いや、できるっちゃあ、できますけど。結構かかりますぜ」
「そこは、大丈夫」
「そうですかい・・・じゃあちょっくら用意しますんでそこに座って待っててくだせい」
「はいよ」
「何話していたの?」
「おお、霊夢ちゃん」
店の主人と話し終えた鏡夜は、居間へと座った。私も店の中に入り、鏡夜の向かい側へと座る。
「いやね、ちょっと大量の団子の注文をね」
「大量って・・・どれくらい?」
「ざっと百本かな?」
「百!?」
大量と言われ、精々二十本ぐらいだと思っていたが、まさかの百という数字に思わず驚いてしまった。
「そうだよ」
「何でそんなに?」
「ちょっと、友人のところにお土産にね」
「そうなの・・・って、そもそもお金いくら持ってるのよ」
「ん? こんぐらい」
「え?」
鏡夜は平然な顔で、一つの袋を机の上に取り出す。袋を取り出したのはいい・・・だが、その見た目が半端なかった。まるで、一つの大きな岩でも見ているような感じだった。
「ちょ、ちょっと見せて」
「はい」
偽物かと思い、袋の中を覗くが、袋の中身は確かに本物のお金が入っていた。
「鏡夜、これどうしたのよ」
「この前、紫ちゃんに貰った」
「紫に貰ったって・・・」
紫から貰ったと言った鏡夜に、私は思はずため息をついてしまった。
「はあ~全く紫ったら」
「まあ、いいじゃない」
そうして、鏡夜と話していると、店の主人がこちらにやってきた。
「旦那、できやしたぜ」
「もう?」
「はいでさ」
「そう。じゃあ、商品を取りに行ってくるから、霊夢ちゃんは待っててね」
鏡夜はそう言うと、店の奥へと行った。
「お待たせ」
「はや!」
奥へと行った鏡夜は数秒で戻ってきた。戻ってきたのはいいのだが、その手には何も持ってはいなかった。
「あれ? お団子は?」
「貰ったよ」
「でも、持ってないじゃない」
「あ~それはちょっとね・・・」
「ちょっとってなに?」
「まあ、いいじゃない」
鏡夜は誤魔化すようにそう言うと、茶屋の外へと行ってしまった。
「あっ、ちょっと鏡夜」
私もすぐさま鏡夜の後を追い外へと出ると、鏡夜は笑顔で待っててくれた。
「はいこれ」
私が外に出ると同時に、鏡夜はどこからか取り出したお団子を渡してきた。本当に一体どこから取り出したのだろうか。
「どうして?」
「今日、茶屋まで付き添ってくれたお礼」
「そんな、別にいいわよ」
「いいからいいから」
別に私はそんなお礼をされるような事をしていなかったため、鏡夜からお団子を遠慮したが、鏡夜は笑顔でお団子の串の部分を持たせてきた。
「じゃあ、頂いとくわ」
鏡夜からお団子を頂くと、鏡夜は笑顔で頷いた。
「うんうん。それじゃあ、霊夢ちゃん。私はこれから用事があるからここでお別れだね」
「そうなの・・・じゃあ、また今度ね」
「ああまた今度、会いにいくから」
鏡夜はそう言って、笑顔で手を振りながら人里の出口の方まで歩き始めた。
「また今度ね・・・嘘じゃなければいいんだけど」
そう呟いた私は、お団子を一口食べた。
「うん、美味し!」
Side 鏡夜
「さてっと、妖怪の山へと向かいますかな」
霊夢ちゃんと別れた俺は、人里の外に出て妖力で翼を作り、仮面をつけて空へと飛んだ。そういえば、団子のことだが、それはスキマに入れといた。勿論品質は保つように、俺特製の箱の中に入れてね。
「あそこかな?」
しばらく飛ぶと、一つの大きな山が見えてきた。
「そこの奴、止まれ!」
山の方から突然そんな声が聞こえると、山から一人の女の子が現れた。その女の子は、白い狼のような耳と尻尾を生やし、剣と盾を持っていた。・・・多分天狗なんだろうけど、見たことないな。
「はい、止まります」
「貴様、何をしにここえ来た!」
「昔の家族に会いに来たんだけど・・・」
「うるさい! 問答無用!」
そう言った女の子は、俺に持っていた剣で斬りかかってきた。
「え~」
斬りかかってきた女の子に、体をちょっとだけずらして躱すと、女の子はすぐに振り返り、またもや斬りかかってきた。
「この、この!」
「あっはっは、遅いぞ~」
大体十回ぐらいそれを繰り返したあと、俺は女の子の後ろに回り込んだ。そろそろ時間も押してたしね。
「ふ~もう少し楽しみたかったけど・・・ごめんね」
「え?」
そっと、俺は女の子の首筋に手を添え―――
「ふっ!」
「!?」
軽く電気を流し気絶させた。正直手刀で気絶させても良かったんだけど、それだと危ないからね。
さて、そんな感じで気絶した女の子を肩に担いで、昔の記憶を頼りに天狗の里を飛びながら探していく。
「確か、この辺だったような・・・お! あったあった」
しばらく妖怪の山の周りを飛んでいると、一つの里を見つけた。
「よっと」
女の子を肩に担いだまま里の入口へと降りる。里の入口に降りると、一人の天狗がやってきた。
「ん? 誰だ・・・って、貴様!」
天狗は俺の担いでる女の子を見ると、怒りの形相になった。
「貴様! 一体椛に何をした!」
「いや、襲ってきたから気絶させたんだけど・・・」
「ふん! そんな嘘はわかっている! 皆、来い! 侵入者だ!」
「何!?」
天狗の叫びによって、周りにいた天狗全員が集まってきた・・・どうしよう?
「こいつが侵入者か?」
「ああそうだ。椛を汚いやり方で倒したあげく、この里に侵入してきた奴だ」
天狗の一人が、もう一人の天狗に説明をする。なんか、メッチャ悪者にされてるんだけど。
「ふむ。おい貴様、目的は何だ?」
「昔の家族に会うことだけど?」
「ふむ。よしコイツは嘘つきだ! 皆、やっちまうぞ!」
「え!?」
勝手に嘘つきだとされた。こいつらってこんな人の話を聞かない奴らだったけっか? と考えていると、周りにいた天狗が一斉に襲いかかってきた。
「あ~もういいや、かかってこい」
もうめんどくさくなった俺は、取り敢えずこの場にいる全員を気絶さるため、空へと飛び上がり、拳を握った。
Side文
「何やら、騒がしいですね~」
部屋にいると、先程から外が騒がしい。いや、確かにいつも騒がしいのだが、今日のはどこかおかしい気がした。
「何かあったのですかね?」
一人首を捻りながら考えていると、急に家の扉が勢いよく開かれた。扉を開いた向こう側には、息を切らしながら肩で息をしている、葛木さんがいた。
「おや、どうしましたか、葛木さん?」
「大変だ文! 侵入者だ!」
この山には侵入者などさほど珍しくもないのに、葛木さんは声を荒げていった。
「侵入者ぐらいで何を慌てているのですか?」
「それがただの侵入者じゃないんだ」
「どういうことですか?」
「侵入者は人間なんだ。だけど人間じゃないような・・・」
「?」
私は葛木さんの言葉に首を傾げると、葛木さんは後頭部を掻いて困った顔をした。
「とりあえず来てくれ!」
「あ、ちょっと」
葛木さんは私の手を握ると、一目散に家の扉に向かった。
「な、なんですかこれ!?」
「クソ!」
葛木さんに連れられ、里の入口まで来ると、そこにはとんでもない光景があった。何十という天狗が一人の仮面を付けた男に蹂躙されていたのである。それも、男は余裕の笑みを見せながら。
「はっはっは、どうした~?」
「糞が!」
「押し潰せ!」
「はっはっは!」
天狗たちは一人一人、尋常じゃない速さで男へと突っ込むが、あるものは一瞬の内に投げられ、あるものは一瞬で気絶させられたり、といった感じだった。
私はその光景に見とれていると、戦っている男と目があった。
「ふっ」
「!?」
男は私と目が会った瞬間、その口元に笑顔を浮かべると、空中でその動きを止めた。
「は~さて、楽しい時間も終わりだ」
「何を言って・・・」
「眠れ」
「な!?」
男は小さくそう言うと、一瞬で私達を包み込むように魔力を放った。私はあまりにも速すぎるその行動に唖然としていると、私と葛木さん以外の全員が眠ってしまった。
「一体、どうなって・・・」
「文!」
「え?」
私が唖然としていると、葛木さんがいきなり私の前に飛び出してきた。戸惑いつつ葛木さんの前を見ると、先ほど空中にいた男が葛木さんの目の前に立っていた。
「貴様、何者だ!」
葛木さんは男に向かって怒鳴りながら言うが、男は笑顔を浮かべたまま、こちらを見てくるだけだった。
「おい貴様! 聞いて・・・」
「聞いてる聞いてる、そんなに叫ぶなって・・・葛木」
「何故、俺の名前を・・・」
男はまるで、昔馴染みのように葛木さんの名前を呼ぶ。だが、葛木さんには心当たりがないようなのか、訝しげに男を見る。
「知ってるかって? おいおい、この声を忘れちまったのかよ?」
「声?」
「そう」
男の言葉を聞いた私と葛木さんは、その声について考えたが、一向に心当たりがない。
・・・いや、心あたりはある。ただし、その声の主は既に死んでいるはずなのだ。
「は~悲しいぜ。全くあの言葉を覚えていてくれればいいのに・・・」
「あの言葉?」
私は男のあの言葉という発言に首を傾げながら聞き返した。男が言うあの言葉が、私の思っている言葉と一致しているかわからないが、確かにあの人は死ぬまである言葉を言い続けていた。
「そうだよ・・・」
男は頷くと、私が昔あの人に散々言われた言葉を言いながら仮面を外した
「俺は死んでもしなないってね」
「鏡夜・・・?」
「兄・・・さん・・・?」
仮面を外した男の顔はあの人・・・兄さんである鏡夜の顔であった。
「よう、葛木、文」
「あ、兄さん、いや、鏡夜なんだよね」
「お前・・・鏡夜・・・なのか?」
「ああそうだよ。なんだい、お前らは揃いも揃って親友と兄貴の事を忘れちまったのか?」
鏡夜は苦笑いを浮かべると、肩をがっくり落として、落ち込んだふりをした。だが、私はそんな事を気にしてられず、よろよろと鏡夜の元へと歩いた。
「鏡夜」
「ごめんな、文。心配かけた」
鏡夜は昔の、そうあの一緒に暮らしていた時によく見せてくれた笑顔で私の頭を撫でてくれた。
「あ、あああ、鏡夜、きょううううううやあああああああ!!!!!!」
私は思わず鏡夜の胸元で、嬉し涙を流してしまった。
「心配かけてごめんな、文」
いかがだったでしょうか?
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