では、第三十九話をどうぞ。
Side鏡夜
「あ~霊夢ちゃん」
「何?」
「ごめんなさい」
「うん! 許さない」
現在、正座でお説教されてます。何を言ってるかわからないって? あの後、残機がなくなると同時に、霊夢ちゃんに正座! って怒鳴られました。
そうして、霊夢ちゃんは俺を正座させた後、何故か説教を始めたんだよ。
「だから、十年ほったらかしにしたのはごめんって」
「駄目! 私が一体どれだけ鏡夜と会える日を楽しみにしてたと思ってるの!」
霊夢ちゃんは両手を腰に当てると、胸を張りながら言ってくる。いやね、俺もちゃんと会えなかった理由を話したよ。でも、一切聞き入れてもらえなかったんだよ。
「えっと・・・ごめんなさい」
「駄目!」
俺はジャパニーズ土・下・座をして謝るが、一切聞き入れてもらえない。
「じゃ、じゃあ、どうすればよろしいですか?」
霊夢ちゃんに迫力がに、つい敬語になってしまった。
「そうね~・・・う~ん」
土下座をやめて顔を上げて聞くと、霊夢ちゃんは目を瞑って考え始めた。
「あ! いいこと思いつた!」
数秒程考えると、霊夢ちゃんは人差指を立てた。
「なんでございましょうか?」
「私の家に、週二日は来なさい!」
「そんなことでよろしいのですか?」
「ええ!」
「それなら喜んで受けるよ・・・で、そろそろ立ってよろしいでしょうか?」
「うん? 駄目だけど?」
「え~」
そこから、数分後。さっき霊夢ちゃんと一緒にいた子が部屋に戻ってきた。さっきの子がいるということはどうやら、咲夜ちゃんはやられたようだね。
まあ、咲夜ちゃんがやられたのは置いといて、さっきの子がやってきてくれたおかげでようやく俺は正座から解放された。
「あ~足が痛い」
「鏡夜が悪い!」
「それはそうなんだけどね」
「なあ霊夢、誰なんだぜ?」
霊夢ちゃんと話していると、隣にいた子が指差しながら言ってくる。あれ? 霊夢ちゃん教えてなかったんだ。
「そういえば魔理沙には言ってなかったわね。この人は鏡夜。時成鏡夜よ」
「どうも~」
霊夢ちゃんが自己紹介してくれたあと、笑顔を作って軽く挨拶すると、魔理沙ちゃん? は固まっていた。どうしたのだろうか?
「どうしたの? 魔理沙」
「おいおい霊夢。嘘はいけないぜ」
魔理沙ちゃんは人差指を横に振ると、自慢するかのように話し始めた。
「いいか、霊夢。時成鏡夜っていうのはだな、数百年前に実際いた人物で、ここにいるはずないだろ? それに・・・」
「それに?」
「伝承によれば、体長5m、体重五百キロ、その姿はあまりにも醜悪で、大妖怪すらも恐れさせる人物で、その声を聞けば一瞬で気絶し、鬼と素手で殴り合ったり、天狗のスピードを余裕で超えたり、それから・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれる、魔理沙ちゃん」
「ん?」
不思議そうな顔でこちらを見てくる魔理沙ちゃん。いや、なんでそんなに不思議そうな顔をしてるの? というか、なんでそんな風に語り継がれてるの俺!
そもそも、なんで体長五mなんだよ! いねえだろそんな人間! しかも、醜悪で声を聴いただけで気絶だと? 何それ・・・
とまあ、心の中で一通りツッコミを入れてから、俺は何とか落ち着いて魔理沙ちゃんに話しかけた。
「え~と、魔理沙ちゃん。その伝承はどこから聞いたの?」
「ん? 稗田の奴が書いた幻想郷縁起からだぜ?」
「あいつの一族か」
魔理沙ちゃんの言った名前に、俺は頭を抱えた。実はこの稗田家は昔、日本を旅している時に少しだけ会った一族だ。なんでも、今日本を騒がせている俺に、話しを聞きたいって事で、待ち合わせをして会ったんだが・・・まさかこんなことを書かれているとはね。
「まあ、いいや。取り敢えず、俺は時成鏡夜だ。よろしくね」
「おう! 本当の時成鏡夜はわからないがよろしく! 私は霧雨魔理沙だぜ」
「よろしく、魔理沙ちゃん」
俺は軽く魔理沙ちゃんと握手したあと、霊夢ちゃんに話しにかけた。
「で、霊夢ちゃん。異変は解決しに行かなくていいの?」
「あ、忘れてたわ」
「はあ~全く」
「そうだぜ、霊夢。なんで目的を忘れているんだよ」
「う、うるさいわね! その、ちょっと、嬉しいことがあって、それに・・・」
霊夢ちゃんは顔を真っ赤にし、徐々に声が小さくなっていく。最後の方は聞かなっかたことにしよう。乙女の秘密は守ってあげるもんですよ?
「ああもう! いいから、さっさと行くわよ!」
「はいはい」
霊夢ちゃんは空を飛び、魔理沙ちゃんは箒に跨って、最後の部屋へと向かおうとした。
「おっと、二人とも待って」
扉に向かおうとした二人の肩を掴んで、俺はポケットから飴玉を取り出し、二人に渡した。
「これは?」
「それは、霊力が回復する、俺特製の飴玉。魔理沙ちゃんには魔力ね」
「危険とかは?」
「何もないよ。ついでに、体力も回復するようになってるから」
「そうなの」
そこまで説明すると、霊夢ちゃんは躊躇いなく飴玉を食べた。
「お、おい霊夢!」
「どうしたのよ、魔理沙?」
コロコロと口の中で飴玉を転がしながら、霊夢ちゃんは答えた。
「どうしたって、そんな訳わかんないもの平然と食うなよ」
「別に大丈夫よ。鏡夜がくれたものだし。魔理沙も食べてみたら? 意外と美味しいわよ」
霊夢ちゃんの言葉に魔理沙ちゃんは飴玉をジッと見つめた。
「ええい、どうにでもなれ!」
魔理沙ちゃんは決心したのか、飴玉を勢いよく口に含んだ。別にそこまで意気込まなくてもいいのに。
「むぐ、うむ、ん? 意外と美味しい」
「それは良かった」
「じゃあ鏡夜。私達は行くわね」
「ああ、行ってらっしゃい」
霊夢ちゃんは手を振りながら扉に向かう。一方魔理沙ちゃんは、何故か俺の前で動かない。
「どうしたの?」
「あの、飴玉ありがとう・・・だぜ」
お礼を言った魔理沙ちゃんは帽子を深くかぶりこみ、顔を真っ赤にして霊夢ちゃんのいる扉に向かった。
「鏡夜さん」
「お、咲夜ちゃんお疲れ様」
霊夢ちゃんと魔理沙ちゃんが扉から出た後、疲れきった表情の咲夜ちゃんが時を止めて現れた。まあ、俺は時を止めた世界でも動けるから、あまり意味はないと思うんだけどね。
「ええ、疲れました」
「はは、大変だったね~・・・それにしても、どうやって負けたの?」
「はい、実は・・・」
咲夜ちゃんの感想を聞いた俺は、苦笑いしかできなかった。
咲夜ちゃんが負けた理由を簡潔に説明すると、単なる火力不足だった。時を止めてナイフを投げるが、圧倒的な火力で、ナイフを突破されてしまったらしい。流石、弾幕はパワーだと言い切る子だよね。
「まあ、これから頑張ろう」
「はい」
俺は落ち込んでる咲夜ちゃんの頭を撫でる。
「さてっと、じゃあ早速準備にかかりますか」
「そうですね」
咲夜ちゃんの頭を撫でるのをやめ、俺と咲夜ちゃんは厨房へと向かった。
Side霊夢
「なんか、体が軽くなってきたわね」
「そうだな」
扉から出て数分程飛んでいるうちに、先ほど鏡夜にもらった飴玉は溶けてしまった。飴玉が溶けると同時に、先ほどまで極僅かしかなかった霊力と、体力が回復した。
「凄いわね、いつもの調子と変わらない・・・むしろいつも以上に動けるんだけど」
先ほどまであった疲れは完全に取れたし、なんかいつもより調子もいい。流石は鏡夜ね。
そしてそこから更に数分ほど飛ぶと、一つの大きな扉の前に到着した。
「ここかな?」
「多分ここだぜ」
扉を開けて中に入ると、一人の女性がいた。
「ふはははは! 私がこの紅魔館の主、最強の悪魔だ!」
女性は腕を組んで笑い出す。でもなんか、いかにも雑魚キャラっぽいんだけど・・・この女性本当にここの主かしら?
「貴方がこの異変の首謀者?」
「そうだ!」
「じゃあ霊夢。ちゃっちゃと倒しちまおうぜ」
「そうね」
「残機は二、スペルカードは三」
そうして、戦いが始まったんだけど・・・
「え~っと」
そこには地面に仰向けで倒れている女性がいた。
えっとなんでこうなってるか簡単に説明すると、この女性、普通の攻撃だけで終わりました。ただお札を投げて、飛んでくる弾幕を躱していたら、あっさりと倒せました。
「これで、異変終わり?」
あっさりと異変の主犯を倒したことに戸惑いつつ魔理沙の方を見ると、魔理沙も困ったような顔をしていた。
「あ~うん、終わりでいいんじゃない?」
「そんなわけ無いでしょう」
「「!?」」
魔理沙と会話していると、急に声が聞こえた。私は周りを見渡すが、そこには私と魔理沙以外誰もいなかった。
「どこにいるの!」
「ここにいるよ」
先ほど女性が気絶している場所から更に奥の空間が突如歪んだ。
「こんにちは、博麗の巫女さん」
「お姉様、今はこんばんわだよ」
「あら、もうそんな時間だったかしら」
空間が歪みそこから現れたのは、テーブルに座って優雅に紅茶を飲んでいる二人の女の子だった。一人は金髪、もう一人は青色の髪だった。
何故ここに女の子がいるのかと疑問に思ったが、その女の子の背に付いているものを見て理解した。その女の子たちの背には、大きな、まるでコウモリのような羽が生えていたのだ。
「貴方達が、本当の黒幕?」
「そうよ」
優雅に紅茶を飲みながら答える女の子は、紅茶のカップを置くと、二人とも立ち上がった。
「さて、歓迎するわ。博麗の巫女、博麗霊夢。普通の魔法使い、霧雨魔理沙」
「何故、私たちの名前を・・・」
「なんで知ってるのかって? それは秘密」
「秘密って」
「女の子に、秘密はつきものだよ」
金髪の女の子は、唇に人差指を付けながら笑顔で言ってくる。その笑顔に意識を一瞬引き込まれそうになったが、すぐに頭を振って意識を戻した。
「さて、自己紹介はまだだったわね。私はレミリア・スカーレット。ここの主よ」
「私はフランドール・スカーレット。レミリアお姉様の妹だよ」
二人の女の子・・・レミリアとフランドールは自己紹介すると、スカートの裾を持って、お辞儀した。
「自己紹介ありがとう。で、私たちの目的はわかってるわよね?」
「ええ、わかってるわよ」
「じゃあ、話しが早いぜ。さっさとこの霧をしまってくれないか?」
「それは、断るわ」
「だろうな」
魔理沙は断られることを承知だったのか、苦笑いを浮かべた。
「一応、理由を聞いても?」
「理由ね。私達吸血鬼という種族は、太陽が苦手なの。だから、その太陽を遮るためにこの霧を出してるの」
「で、霧はしまえないと」
「その通りよ」
「ってことは、やっぱりこれできめるしかいんだぜ」
魔理沙はスペルカードを取り出すと、好戦的な笑みを浮かべた。
「やっぱりそうなるわよね」
レミリアも魔理沙同様スペルカードを取り出し、フランドールも後を追うように、スペルカードを取り出した。
「は~やっぱりこれで決めなきゃいけないのよね」
私もスペルカードを取り出し構えた。
「でも、ここでやるのはちょっと狭いわね」
「じゃあ、外に行きましょう。お姉様」
「そうね。別にいいわよね。二人とも」
「ええ」
「構わないぜ」
私と魔理沙が頷くと、レミリアとフランドールは左右の窓から、体をコウモリ変えて飛び出していった。
「私達も行くわよ」
「おう!」
私と魔理沙もコウモリの後を追うように外に飛び出した。外に飛び出すと、レミリアとフランドールは空に浮かんでる月を見ていた。
「フラン、今日はあの時のような月ね」
「そうだね、お姉様」
レミリアとフラドールはゆっくりとこちらを向く。二人の瞳を見ると、その瞳はどこか、懐かしいものを思い出しているようだった。
「さて、準備はいい?」
「ええ、いつでもいいわよ」
「じゃあ、残機は四、スペルカードは五枚ね」
「OK、了解したぜ」
私とレミリアは、戦闘の邪魔をしない、させないために魔理沙とフランドールと距離を取る。そして、ある程度距離を取った後、お札と退魔の針を握った。
レミリアはというと、ふっと息を吐き、大きく手を広げた。魔理沙の方も気になりそちらを見ると、フランドールの方も同じようにしていた。
「「今日はこんなに月が紅いから」」
レミリアとフランの声は、まるでどこか懐かしい思い出を思い出しながら言ってるようだった。
「「本気で殺す(わよ) (よ)」」
レミリアとフランの言葉が終わると同時に、馬鹿げた量の弾幕が私を包み込んだ。
ふ~ようやく後二話くらいで紅魔郷は終わると思います。
誤字、感想、アドバイス、批判、お待ちしております。