二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

38 / 109
今回、オリスペカがあります。それと、若干表現が乏しいかもしれません。

では、第三十八話をどうぞ。



第三十八話 さあ、遊ぼうか

Side霊夢

 

扉を開け中に入ると、仮面を付けた男性と、メイド服を着た女性が頭を下げていた。二人はゆっくりと頭を上げると―――

 

「「いらっしゃいませ」」

 

客人を迎えるような声で言った。女性は笑顔でいい、男性は仮面で表情はわからないが、見えている瞳はまるで、娘の成長を喜でいるような瞳だった。

 

「御二人の目的は承知済みです。異変を解決に来たのでございますよね?」

 

「ええそうよ。話しが早くて助かるわ」

 

女性が話しかけてくる。しかし、男性の方は一切しゃべろうとしない。

 

「ならばここを通すわけには行きません。故に・・・片付けさせていただきます」

 

女性はそう言うと、懐から何枚かトランプを取り出した。そして、男性の方が腕を上げ指を鳴らすと、

 

「!?」

 

いつの間にか正面にいた女性が消えた。しかし、消えたのは女性だけではなく隣にいた魔理沙も消えていた。

 

「一体どこに・・・?」

 

部屋の中を見渡すが、二人の姿は見えず、少しすると外から何かがぶつかるような音がした。窓から外を見ると、二人が戦っていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

魔理沙の姿が確認できたので、そちらから目を外して正面の男性を見る。男性はただその場に悠然と立ち、無言でこちらを見ていた。

 

「・・・貴方は、誰?」

 

私は緊張しつつも男性に聞くと、男性はくつくつ笑い出した

 

「分かっているんだろう? 博麗の巫女・・・いや、霊夢ちゃん」

 

「やはり、貴方は・・・」

 

男性はパンっと両手を合わせて鳴らすと、部屋の中に強い風が吹いた。あまりの強風に私は袖で目を隠す。そして、強風が収まり袖をどけるとそこには、十年前と変わらない姿の鏡夜がいた。

 

「鏡夜」

 

「やあ、久しぶりだね。霊夢ちゃん」

 

鏡夜は手を軽く上げると、昔と変わらない笑顔で言ってくる。私はその笑顔を懐かしみたかったが、袖に手を突っ込み、お札と退魔の針を握った。

 

「ありゃりゃ、話す気はなく、戦う気満々ですか」

 

鏡夜はふざけた感じで言ってくるが、私は一切油断せず、無言で鏡夜を見続ける。というか、一切油断などできなかったし、喋る余裕すらなかった。

 

「じゃあ、ご要望に答えて戦おうか・・・いや、遊ぼうか」

 

ふっと鏡夜は笑うと、体に重りでものっているような圧迫感が部屋を包んだ。多分この圧迫感は、鏡夜が戦闘態勢に入ったせいだろう。

 

「残機は三、スペルカードは三、いいかな?」

 

「ええ、いいわ」

 

そして僅かな沈黙が続き、鏡夜の手が動いた。その瞬間、私は懐からスペルカードを取り出し、スペルカード宣言をしていた。

 

「スペルカード宣言!」

 

「早速か」

 

「霊符『夢想封印』」

 

宣言が終わると、例の四つの虹色の珠が私の周りに出現し、全て鏡夜に向かって飛んでいった。飛んでいった後、私は四つの球の裏から、手に持っていた全てのお札、退魔の針を投げつけた。

 

四つの珠は鏡夜の前後左右から迫り、お札は真上から、退魔の針は真っ直ぐと射抜くように向かった。そして、その弾幕の中心で爆発が起こった。だが、私はそれでも更に、再度握ったお札と退魔の針を投げ続けた。

 

「ハアァァアアアア!!」

 

気合の言葉と共に、次々と投げつけていく。次々に投げた針とお札は、鏡夜を中心に、まるで吸い込まれるように向かい、当たっているのか爆発している。私は即座に終わらせることだけを考え投げ続けるが―――

 

「こっちだよ」

 

突然、背後から鏡夜の声が聞こえた。私は一瞬その声に固まりそうになったが、即座に後ろを向いて退魔の針を投げようとする。しかし、背後には鏡夜の姿はなかった。

 

「い、いない?」

 

「上だよ。霊夢ちゃん」

 

「!?」

 

今度は上を向くと、天井に両足をつけて苦笑いを浮かべている鏡夜がいた。

 

「いやはや、まさか一発目からあんなに撃ってくるとは・・・」

 

「貴方相手に、手加減は無用よ」

 

「それもそうだ」

 

私は先ほど放った四つの珠を再び出し、鏡夜に撃っていく。

 

「同じ手は二度も効かないよ」

 

鏡夜は天井を、どやっているのか分からないが、走って避けていく。鏡夜は走って避けるが、四つの珠は鏡夜の後を追うように飛んでいく。

 

「やっぱり、追尾式か」

 

鏡夜は天井を走るのをやめると、私に向かって跳んできた。

 

「破!」

 

気合の言葉と共に、向かってくる鏡夜に針とお札を投げる。しかし、鏡夜は何もない空間を横に蹴って避けた・・・って、何もない空間を蹴った!?

 

「嘘お!」

 

「ほら、油断しないの」

 

私はその光景に驚いていると、背後から鏡夜の声が聞こえた。バッと後ろを向りむくと、鏡夜が私の額の当たりに人差指を置いていた。

 

「まずは、一つ」

 

「なにを・・・っ!」

 

鏡夜に言葉の意味を理解しようとしていると、背後から突然痛みがやってきた。

 

「ほら、油断しないでって言ったじゃない」

 

「何を・・・」

 

「霊夢ちゃん。自分の放った弾幕の特性は?」

 

「どこまでもいく追尾機能・・・まさか!?」

 

「そうだよ」

 

鏡夜の質問によって、私は背中の痛みがなんなのか理解した。

 

まず、私の放った弾幕は追尾機能が付いてる。これは、鏡夜をどこまでも追うというものだ。つまり、鏡夜と弾幕の間に私という壁が入ってしまい、鏡夜を追っていた弾幕が、私という壁に当たってしまったのだ。

 

ちなみに、何故この前のカロ戦で被弾しなかった理由は、自分の周りにっ結界を張っていたおかげである。

 

「流石」

 

「お褒めの言葉ありがとう」

 

「でも、鏡夜もまずは一よ」

 

「何を・・・!?」

 

私はニヤっと笑い、地面に予め貼っていた御札を起動させ、結界を作る。このお札は攻撃用ではなく、相手を閉じ込める結界だ。

 

「成程ね」

 

お札を結界に投げると、そこには何もないかのように結界をすり抜け、鏡夜にぶつかった。

 

「流石霊夢ちゃん」

 

「お褒めの言葉ありがとう」

 

私はすかさずお札を投げようとするが、その前に鏡夜が地面に向かって足を大きく振り下ろした。

 

「させないよ」

 

大きく足を振り下ろした衝撃のせいか、私の作っていた結界が破壊されてしまった。私は結界を破壊されると同時に後ろに下がり、鏡夜と距離をとった。

 

「さて、じゃあちょっとだけ本気を出しますか」

 

鏡夜は笑顔を浮かべると、スペルカードを取り出した。

 

「スペルカード宣言」

 

私は鏡夜のスペルカードに警戒し、いつでも逃げられる体制をとった。

 

「偽符『嘘つきの炎』(ドッペルフレイム)」」

 

スペルカード宣言が終わると同時に、鏡夜の周りに無数の火の玉が出現した。

 

「さあ、踊ろうか」

 

無数の火の玉は私の周りを囲むと、次々と私に向かって飛んできた。

 

飛んでくるのはいいのだが、厄介な部分があった、それは、一つ一つの火の玉の速度が違うのだ。赤は普通、緑は若干遅い、青は速い、っといったように一つ一つの火の玉の速度が違うのだ。

 

「でもこれぐらいなら」

 

一分ほど避け、そろそろ全ての色(大体十色くらい)の火の玉の速度を覚え余裕で避けていると、急に火の玉の速度が変わった。

 

「く!」

 

突然速さの変わった火の玉に手こずり、再び避けていると、また速度が変わった。そして、そこから二、三回程速度が変わった後、ようやく火の玉が消えた。

 

「おお~よく無事で避け切ったね」

 

「あたり・・・まえよ・・・・・・」

 

当たり前と言ったが、息は切れ内心とても疲れていた。最後の方は無理やり気合で避けていたくらいだ。

 

「そう」

 

「ええ・・・」

 

何とか呼吸を戻し、再びお札と退魔の針を鏡夜に向かって投げた。だが、鏡夜は軽く横に避けるだけで弾幕を躱す。

 

「だから、一度見た弾幕は効かないの」

 

鏡夜はそう言うと、先ほどの火の玉を投げつけてきた。火の玉を躱す時に、僅かにかすった。その時に、普通は服が僅かに燃えると思っていたが、何も起きなかった。

 

「?」

 

そのことに疑問を感じつつ、次々と飛んでくる火の玉を避けていると、突然鏡夜が火の玉を投げるのをやめた。

 

「霊夢ちゃん。周りを見てごらん」

 

私は鏡夜に警戒しつつ周りを見た瞬間、冷や汗が流れた。

 

「な、何よこれ」

 

そこには、先ほど躱した火の玉があったのだ。いや、それは別にいい。問題は、その火の玉が分裂して増えていたのだ。

 

「スペルカード宣言」

 

「ここで!?」

 

私は勢いよく振り向いて鏡夜を見ると、スペルカードを握っていた。

 

「偽符『火竜の怒り』」

 

鏡夜のスペルカード宣言が終わると、背後から炎が燃え上がる音が聞こえた。私はその音に驚き振り返るとそこには―――巨大な炎の竜がいた。

 

「な、なにこれ・・・」

 

唖然とその竜を見ると、竜は大きく吠えた。

 

<ギャァァァァアアアアア!!!!>

 

私は竜の咆哮に一瞬怯んでしまうが、すぐさま龍を睨み、お札と退魔の針を握った。

 

竜は深く頭を下げると、その巨体に似合わない速度で迫ってきた。私はその予想外の速度驚き、躱せなかった。当たると思い、身構えると・・・

 

「え?」

 

竜は私に当たらなかった。いや、正確には竜は私をすり抜けた。

 

「霊夢ちゃん。戦ってる相手を間違えちゃダメだよ」

 

竜が通り過ぎてしまったことに戸惑っていると、背中に衝撃が走った。

 

私はその衝撃で、自分が相手してるのが誰なのか再認識した。そう、戦っているのはあの竜じゃない、鏡夜なのだ。故に、あの竜とは戦わなくてよかったのだ。

 

私はそこに気づかなかったことに悔しさを感じたが、すぐに気持ちを切り替え、鏡夜に向かって飛び出した。

 

<ギャァァァァアアアアア!!!!>

 

「邪魔よ!」

 

鏡夜に向かう途中、先ほど竜が雄叫びを上げ、邪魔をしてくるが、私はその竜が通り抜けられることが分かっているので、竜に突っ込んだ。竜を通りに抜けると、そこには鏡夜がいたため、私はすぐにお札と退魔の針を投げた。

 

避けらると思っていたが、その攻撃は以外にも鏡夜へと直撃した。

 

「臆さずに、よく突っ込んできた。これはそのご褒美だよ」

 

「そう、だったら早くやられて頂戴」

 

「もうちょい付き合ってよ」

 

もう体力の限界も近づいてきた私は、再びお札と退魔の針を投げつけた。当然のように鏡夜は躱すが、私はそれでも構わずに投げ続けた。

 

「おっと」

 

徐々に密度を濃くしていき、鏡夜の逃げ道を無くす。徐々に追い詰めていき、鏡夜はその場に止まった。

 

「そこ!」

 

鏡夜が止まった瞬間、退魔の針を投げる。

 

「そろそろかな」

 

鏡夜は何か呟くと、先ほど鏡夜に投げた針は、鏡夜に当たらず地面へと逸れた。更に、周りにあったお札も地面へと逸れた。

 

「さて、霊夢ちゃん。そろそろ、終わりにしようか。次の攻撃を避け切れたら霊夢ちゃんの勝ちね」

 

鏡夜は笑顔で言うと、足元によくわからない魔法陣が出現した。そして魔法陣は鏡夜の足元から頭の頂辺まで行くと、消えた。

 

魔法陣は消えたのだが、今度は鏡夜がおかしかった。何がおかしかったって、鏡夜の体から電気が流れていたのだ。

 

「霊夢ちゃん。自分の最も最強だと思う結界を貼りなさい」

 

「どうして・・・」

 

「いいから、貼りなさい」

 

訳がわからないが、取り敢えず、最も強固な結界を五重にも張った。結界が貼り終わると、鏡夜はスペルカードを取り出した。

 

「これは、パクリだからあまり使いたくなかったんだけどね。スペルカード宣言!」

 

鏡夜はスペルカードを空高く投げながら、宣言する。

 

「科符『電撃姫の必殺技(レールガン)』」  

 

空高く飛んだスペルカードは一瞬光ると、カードの姿から銀のコインへと変わった。

 

「さあ、これがラストだ」

 

先ほど鏡夜が纏っていた電気は空高く飛んだコインに集まる。そのコインが鏡夜の前にくると、鏡夜はそのコインを指で弾いた。キンっと高い音が鳴ると、そのコインは・・・

 

「え・・・」

 

いつの間にか、私が張った最初の結界に当たった。コインは私が張った結界の一枚を易易壊すと、二枚目に当たった。しかし、二枚目もすぐに壊れ、三枚目、四枚目と壊された。

 

「ちょちょ、まっ・・・」

 

あまりの威力戸惑いながらも、最後の結界に霊力を込める。徐々に結界にコインはめり込んでくるが、コインが半分入ってきたところで、何とか止まってくれた。

 

「ありゃりゃ、やっぱり止められるか」

 

鏡夜はやれやれといった感じで頭を振ると、両手を大きく広げた。

 

「さあ、霊夢ちゃん。止めを差していいよ」

 

「わかったわ」

 

私は鏡夜の元に近づいた。

 

「本当にいいのね?」

 

「ああ、いいよ」

 

「そう」

 

鏡夜の言葉を聞いた瞬間、私は笑顔でスペルカードを取り出した。

 

「スペルカード宣言」

 

「ちょっ、霊夢ちゃん?」

 

鏡夜は若干慌てたように言ってくるが、そんなのは無視して、スペルカードを発動した。

 

「霊符『夢想封印』」

 

「マジで~」

 

四つの光の珠は鏡夜にぶつかると、爆発した。これが、十年間放ったらかしにされた、私の寂しさの威力よ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしょうか? わからないところがありましたら、感想に書いてください。

感想、誤字、批判、アドバイス、お待ちしております

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。