では、第三十四話をどうぞ。
Side鏡夜
さてさて、あのセリフから一年が経ちましたよっと。俺は基本、勉強と常識は教えられないのでパチュリー様に教えてもらった。俺? 俺は家事とか言葉遣いとかだよ。
で、今はというと―――
「鏡夜!」
「鏡夜~」
お嬢様たちとイチャイチャしてました。現在深夜に入った頃くらい。今まで咲夜ちゃんの修行であまりイチャイチャしてなかったせいか、なんかメッチャお嬢様達が甘えてきた。
具体的に言うと、ベットの中に潜り込んで、腕にくっついてきた。
「どうしました、お嬢様」
俺はベットの中にいるお嬢様達の頭を撫でながら聞いた。
「ん~やっぱり鏡夜は暖かいな~っと思ってね」
「そうね~やっぱり鏡夜が一番だわ」
はふ~っとお嬢様達は息を吐くと、お嬢様達は頬をくっつけてきた。もうね、理性とか吹っ飛びそうなんだけど。こう女の子特有のプニっとした感覚とか、それと・・・
などと考えていると、お嬢様達が同時に頬にキスしてきた。
「もう鏡夜~聞いてるの~?」
「あ、はい、聞いてますよ」
「それじゃあ何を言ったか言ってもらいましょうか」
したり顔でレミリアお嬢様は言ってくる。俺はふふっと笑って、お嬢様達をギュッと抱き寄せた。
「私がお嬢様を愛してるって話ですよね」
「違うわよ~も~」
呆れ顔になりながらフランお嬢様は、俺の首に手を回して、耳元でそっと囁いた。
「そうよ、そんな当たり前の事を言う必要はないでしょう?」
レミリアお嬢様も同様に耳元でそっと囁いてくる。
「そうでしたね、当たり前の事でしたね」
「そうよ・・・って事は、さっきの事、聞いてなかったの?」
「さっきのこでなければ聞いてなかったですね、すみません」
俺が謝ると、お嬢様達はもうと言って先ほどの話していたことを話してくれた。
「だから、鏡夜は私達のどこに惚れたのって話しよ」
「そのことですか?」
「そう、今まで一緒にいたけど、聞いたことなかったから。もしかしたら前に一度聞いて忘れてるだけかもしれないけど」
「そうですね、お嬢様の惚れた部分ですか・・・」
正直に言うと、あれは一目惚れだった。まず、血塗れだったにもかかわらずあの少女特有の無邪気な感じの笑顔、なのにも関わらず大人の蠱惑的な魅力があった。そして、あの強さ。
大人の男ですら相手にならない圧倒的な強さ。吸血鬼特有のあの強く、そして気高き姿。多分俺はよく考えると、そんなお嬢様達に惚れたのだと思う。
「鏡夜?」
どこに惚れたのか考えていると、フランお嬢様が俺の顔を覗き込んできた。
「あっすみません、ちょっと考えていました」
「それならいいけど・・・で、鏡夜は私達のどこに惚れたの?」
「そうそう、どこに惚れたの?」
レミリアお嬢様も俺の顔を覗き込みながら言ってくる。俺は、顔を覗き込んでくるお嬢様達に笑顔を向けたあと、お嬢様達の頭を胸に抱き寄せた。
「全てですよ。その容姿、気高き誇りを持った精神、強さ、それら全てに私は惚れたんですよ」
そこまで言うと、胸に抱き寄せたお嬢様達は顔を真っ赤にして胸に顔を埋めてしまった。
「そんなこと言うの、反則だよ・・・鏡夜」
「本当よ、もう素敵すぎるわ」
「ふふ、ありがとうございます」
そのままゆっくりと頭を撫でると、お嬢様達はギュッと俺の服を握ってきた。
「「鏡夜」」
「どうしました?」
「「大好きよ」」
「私もですよ、レミリア、フラン」
さてさて、時は飛んで一ヶ月後。何故一ヶ月後かって? 咲夜ちゃんとの約束の日なんだよ。
約束がわかない人に説明すると、キスの日を約束した日なんだよ。
「で、何故こうなった」
「ですから、キスしてくださいよ~鏡夜さん」
今現在俺は、部屋で咲夜ちゃんにキスをせがまれていた。
なんか、部屋で休んでいたら突然部屋の扉が開いて咲夜ちゃんが入ってきたんだ。そして、何を思ったのかいきなり俺に近づくと、腕を引っ張って、自分ごとベットに倒れたんだよ。ちなみに俺が咲夜ちゃんの上な。
「いやそれはいいけど、何故ベットに引き込んだの?」
「雰囲気的に」
「は~」
俺はため息を吐いた後、体を起こして咲夜ちゃんをベットから起こして、座らせる。
「あのね~駄目だよ? そんなん雰囲気に流される女の子になったら・・・」
と、クドクドお説教を始めると、咲夜ちゃんが頬を膨らましてこちらを見てきた。そんな事を無視して、数分程お説教をした。
「・・・わかった?」
「はい」
頬を膨らまして不貞腐れたように下を向く咲夜ちゃんに、俺は苦笑いした。
「まあ、わかったならいいや・・・で、お嬢様から許可はいただいた?」
「はい、咲夜、鏡夜の一番は私たちだからねって言われました」
「ふむ、わかってるなあ~お嬢様は」
許可が下りたなら何も躊躇することはないので、俺はそっと咲夜ちゃんの顎を持ち上げた。
「鏡夜さん」
顔を赤くしてくる咲夜ちゃんに、俺はそっとキスした。
「ん、ああ~」
唇を離すと、咲夜ちゃんはうっとりとした表情で、自分の唇を指で撫でた。
「あ~いいものですね、キスって」
「ふふ、じゃあ咲夜ちゃん、頑張ってね」
「はい、頑張ってきます」
うっとりとした表情のまま、咲夜ちゃんは部屋を出て行った。俺はというと、ベットに座り、頭を抱えた。
「ふ~甘いのはいい、そして平和なのもいい、だが、だが! ・・・暴れたい」
さて、再び時は飛び、一年後。咲夜ちゃんはというと・・・
「おはようございます、鏡夜さん」
大人びた。一年間、色々なことを教え、それを真面目に覚えてくれたおかげか、かなり大人びた。具体的に言うと、行動の一つ一つ、言葉遣いやその他諸々が丁寧になった。
「おはよう咲夜ちゃん、なんか一年で随分と大人びたね」
「いえいえ、まだまだ子供ですよ」
咲夜ちゃんは笑顔で首を振ると、腰をキッチリと曲げて頭を下げた。なんかおじさん泣きそうだよ。娘の成長ってこんな感じかな。でも、やっぱりナイフを見るとうっとりしてるんだよね。
「では鏡夜さん、先に外で待ってますね」
頭を上げると、咲夜ちゃんは時を止めて扉から出て行った。時を止めるのはいいけど、時の中でも俺は動けるから、あまり意味はないんだけどね。
「さてさて、俺も行きますか」
寝巻きから着替えたあと、俺は庭に向かって歩きだした。
「さてさて、では一年で色々と学んだようだし、そろそろ解きますか」
そう言ったのはいいのだが、今は昼だ。レミリアお嬢様の宣戦布告ができないのだ。
・・・ん? いや出来るか。
「どうしました? 鏡夜さん」
「ああ、ごめんごめん、ちょっとお嬢様の宣戦布告のことでね」
「ああ、そうでしたね。で、一体どうするのですか?」
「それなんだけど、今やろうかなって」
「どうやるのですか? 吸血鬼の性質上太陽に当たったら灰になるか溶けますよ」
咲夜ちゃんは首を傾げて聞いてくる。そんな咲夜ちゃんにふふっと笑いつつ、俺は先ほど思いついた案を咲夜ちゃんに話した。
「成程、それでいいのではないのでしょうか?」
「だよね、じゃあお昼くらいかな、それまで体を休めてて」
「はい、わかりました」
咲夜ちゃんは頷くと、部屋に戻った。俺は咲夜ちゃんが部屋に戻ったのを確認した後、お嬢様達の部屋に向かった。
「お嬢様、お嬢様、起きてください」
レミリアお嬢様の部屋についた後、俺はレミリアお嬢様を揺すって起こしていた。本当は可愛い寝顔をずっと見ていたかったんだけどね。まあ、そんな訳にもいかず、レミリアお嬢様を揺すって起こし続けた。
「ん~鏡夜?」
「そうですよ、起きてください、例の作戦を始めますよ」
「そうなの?」
レミリアお嬢様はのそっと起き上がって、ベットの上に欠伸をした。
「ふあ~じゃあ、ん」
欠伸をした後、レミリアお嬢様はんっと口を俺に向かって唇を突き出してた。俺はその意図を理解し、そっと唇にキスをした。
「ん、ありがとう鏡夜、今目が覚めたわ」
レミリアお嬢様はそう言うと、ベットから降りて、翼を広げた。
「やはり美しいですね、お嬢様の翼は」
「ふふ、ありがとう」
パタパタと羽を羽ばたかせるお嬢様は可愛かった。うん、可愛かった。大事なことだから二回言ったぞ!
「ではお嬢様、フランお嬢様も起こしてきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
俺は一礼した後、時を止めてその場から移動した。
「フランお嬢様、起きてください」
図書館を通り、フランお嬢様の部屋に着いたところで、時を止める能力を解除し、フランお嬢様を揺すって起こし始めた。
「ん、鏡夜だ~おはよう」
二、三回程揺すりながら起こすと、フランお嬢様は目を擦りながら上体をベットから起こした。
「おはようございます、お嬢様」
俺は目を擦ってるフランお嬢様に、そっとキスした。
「ん、もう、いきなりはビックリするよ」
「でも、目は覚めましたでしょう?」
「そうだけどね、ふあ~改めておはよう、鏡夜」
「おはようございます、お嬢様。では、例の作戦を始めるので、起きてくださいね」
「うん、わかった」
笑顔で頷いたお嬢様に一礼して、時を止めてから部屋を出た。
「さてと、これを作らないとな~」
部屋に戻った俺は、あるものを取り出した。
「いつか使うだろうと思ってたけど、本当に使うことになるとはね」
そう言って、裁縫道具を取り出した。気づいている人はいるかもしれないが、今作っているのはメイド服である。咲夜ちゃんが大人になったら着せようと思って、この前からせっせと作っていたのだ。
「それにしても、難しいな」
ひと針ひと針丁寧に縫っていき、約半分位完成してきた。ちなみに、青と白を基調とした上下で、下はミニスカートだ。
「よし、今日はこれまでかな」
そろそろ例の時間のため、丁度いい所で作るのをやめて、元の場所に置いた。
「さて、例の作戦を始めますか・・・っと、その前に」
元の場所に置いたあと、俺はあるものを取った後時を止めて、お嬢様達がいるであろういつもの紅茶を飲む部屋に向かった。
「さて、では始めましょうか」
部屋に着くと、お嬢様達がいた。そして、俺が入ると、続々と皆が集合してきた。
特に皆には集合も何も言ってなかったのだが、どうやら咲夜ちゃんが伝えてくれてたらしい。
「で、始めるのはいいけど、どうやるの?」
「そうだよ鏡夜、今は昼だから私達は外には出れないよ」
「いや、多分大丈夫な方法があります」
首を傾げながら聞いてくるお嬢様達を見ながら、俺はスキマを開いて、あるものを取り出した。
「よいしょっと」
「鏡夜」
「それってもしかして・・・」
「そうです」
俺が取り出したのは、二本の桃色の傘だ。
「これで、太陽の光を遮れば昼間でも大丈夫だと思いまして」
「確かにそうね」
「なんで、今まで思いつかなかったんだろうね」
俺は二本持っている傘のうち、一本を咲夜ちゃんに渡した。
「咲夜ちゃん、お嬢様の内一人に、傘をさしてあげて」
「わかりました」
咲夜ちゃんが傘を受け取ったのを確認してから、俺は窓に向かって歩き始めた。
「ではお嬢様、宣戦布告といきましょうか」
「ええ、いきましょうか」
俺はそっとレミリアお嬢様の前に手を差し出すと、レミリアお嬢様は微笑みながら俺の手を握った。
「さて皆さん、先に私とお嬢様が先に行きますんで、付いてきてください」
窓の扉を開けて傘をさした後、懐から先ほど部屋から持ってきた物を取り出した。
「鏡夜、それは?」
「一応、数人とは面識があるので、素顔を隠そうかと思いまして」
俺は自分の顔に、先ほど部屋から持ってきた仮面を見に付けた。仮面といっても、顔の上半分を隠すだけの仮面だ。
「では、行きますよ」
「ええ」
窓から外に出て、レミリアお嬢様に太陽の光が当たらないように注意しながら、屋根へと向かった。
そして、全員が屋根へと到着したのを確認して能力を解除した後、レミリアお嬢様は息を大きく吸って、邪悪な笑みを浮かべた。
「私、レミリア・スカーレットはここに宣言する! ここら一帯の妖怪共全てを私の支配下に置くと! 逆らう者はここに来い! 我ら紅魔館の住人はいつでも貴様らの挑戦を受けよう!」
あ~疲れた。夜中に書くもんじゃないですね。色々おかしくなってしまいましたよ。
今回、異変の始まりみたいな感じですが、異変開始はもう少し先です。
誤字、感想、アドバイス、お待ちしております。