では、第十六話をどうぞ。
Side鏡夜
「自己紹介は終わったかしら」
「ああ、終わったよ。紫ちゃん」
藍ちゃんとの自己紹介が終わり、握手していると紫ちゃんが話しかけてきた。
「そう・・・どうだった藍?憧れの鏡夜に会えて」
「はい!最高でした!ありがとうございます。紫様」
紫ちゃんは、藍ちゃんに歩み寄って話している。俺は笑顔で二人を見ていると、急に紫ちゃんが話しかけてきた。
「鏡夜、まだ未完成だけど来てみる? 私の作った世界に」
「う~ん、どうすっかな~」
俺は迷っていた。別に明日は休みだし、特に予定も無いから行ってもいいのだが・・・
「・・・ごめんね。遠慮しとくよ」
「そう・・・」
俺がそう言うと、紫ちゃんはションボリしながら答えた。そんな、紫ちゃんの反応に罪悪感を感じるが、急遽用事を思いついたので、仕方がない。
「そんな~鏡夜さん、来てくれないのですか?」
「ごめんね、藍ちゃん。また、今度ね」
「・・・はい」
こちらは、狐耳と尻尾をションボリさせながら返事をする藍ちゃん。とういうか、さっきまでガチガチに緊張してたのに、もう緊張してないよ。
「・・・まあ、仕方ないわね・・・じゃあ、ん!」
「うん?」
納得して帰るのかと思ったら、何故か頭を差し出してくる紫ちゃん。
「どうしたの?」
「わからない?」
「いや、わかるけど・・・」
俺はそう言って、紫ちゃんの頭を優しく撫で始める。
「ふあ~」
撫でられている紫ちゃんは幸せそうな顔をする。そして、藍ちゃんの方を見ると、羨ましそうに紫ちゃんを見ていた。
俺は藍ちゃんに向かって、おいでと手招きする。すると、驚いた顔をしてから、ゆっくりと歩み寄ってきた。
「ふあっ!」
近くにきた、藍ちゃんの頭を優しく撫でると、顔を赤くにしながら幸せそうな声を出した。
俺はそのまま、二人が満足するまで、二人の頭を撫で続けた。
「やっぱり、いいわね~」
「はふ~」
「そんなに良かった?」
二人を撫で続けてから、五分程が経った。
紫ちゃんはいつもの表情だが、藍ちゃんは、ほうけた表情だった。
「ええ、良かったわよ」
「そう・・・それは良かった」
俺が笑顔でそう言うと、紫ちゃんは笑顔になり、スキマを開いた。
「じゃあ、鏡夜、またいつか会いましょう」
「ああ、じゃあね紫ちゃん」
「はふ~」
俺は、今まだにほうけている藍ちゃんの顔に迫り、笑顔で言う。
「じゃあね、藍ちゃん」
「は、はい!」
俺が藍ちゃんの正面で言った瞬間、顔を真っ赤にしながら返事した。
「じゃあ、鏡夜、またね」
「またね・・・っと、ちょっと待って紫ちゃん」
「どうしたの?」
「ちょっとスキマ見せて」
「? 別にいいけど」
紫ちゃんは不思議そうにしながら、俺の前にスキマを開く。俺は開かれたスキマを見て、その構造や使い方を理解していく。
「・・・・・・・・・・・」
「鏡夜、どうしたの?」
「・・・・・・ありがとう、もういいよ」
俺は一通り、スキマの構造と使い方、その応用などを理解した。俺の目の前から、紫ちゃんのスキマが消えると同時に、俺は軽く笑った。
「何したの?」
「ちょっとね」
「? まあいいわ、じゃあね、鏡夜」
「鏡夜さん、また今度会いましょうね!」
「ああ、じゃあね。二人共」
俺は二人に手を振る。二人も手を振り返しながら、スキマの中に入って行った。
「・・・・・・覚えたはいいけど、この能力は危険だな」
俺は一人屋根の上で呟き、屋根の上から飛び降りた。
「さて、紫ちゃんに会ったし、どうすっかな~」
時刻は深夜三時程。部屋に戻った俺は、本格的にやる事が無くなってしまった。
誰かと遊ぼうにも基本、この時間に起きているのはお嬢様達位しかいない。
「・・・・・・お嬢様達とお茶会でいいか」
考えた結果、お嬢様達とお茶会にした。またちょっと気まずい雰囲気になるかもしれないが、まあ大丈夫だろ。あれから何時間も経ってるし。
「さて、じゃあ厨房に行きますか」
俺は部屋を出て、厨房に向った。
Sideレミリア
「どうやったらいいかしらね?」
「何が?」
「鏡夜への謝罪」
「あ~」
私とフランは今、いつも紅茶を楽しむ部屋にいた。今、私はさっきの鏡夜への謝罪を考えていた。
鏡夜にさっき謝ったが、鏡夜は別に気にしないでくださいと言っていた。が、それでは私の気が済まない。
「何か案はある? フラン」
「そうだね~・・・」
フランに尋ねるが、いい案は無いようだ。私も先程から考えているが一向にいい案が浮かばない。
私とフランが頭を悩ませていると、唐突にフランが何か思いついたような顔をした。
「裸で迫るとか?」
「いやいやダメでしょ。また、鏡夜倒れちゃうわよ」
「いや冗談だよ?」
「冗談に聞こえないから」
真面目な顔して言ってくるから、何かいい案でもおもいついたのかと思いきや、全然いい案ではなかった。私は呆れつつ、本当の案を聞いた。
「で? ホントは何をするつもりだったの?」
「う~んとね・・・手料理とか?」
私はフランの意外と良かった案に驚く。確かにいつも鏡夜に料理を作ってもらっているから、たまには作ってあげるのもいいかもしれない。
「手料理・・・いいわね」
「でしょう?」
フランは自慢げな顔をするが、一つだけ問題があった。
「でも・・・私達、料理なんて作ったことないわよね」
「そこは―――気合で!!」
「・・・・・・まあ、大丈夫でしょ。じゃあ、行きましょうか」
「はーい」
まあ、なんとかなるだろうと思い、とりあえず厨房に向かうことにした。
「で、何を作るの」
「さあ?」
「さあ? って、貴方ね~」
「それぐらい、お姉様が考えてよ」
厨房についたのはいいのだが、肝心の作る料理を考えていなかった。
「どうしようかしらね?」
私はとりあえず、今まで食べた料理で再現できそうなものを思い出していく。
(今まで作ってもらった中で、再現できそうなものは・・・)
基本的に、鏡夜は色々な料理を作る。その中でも一番作りやすそうなのは、この前こっそり覗いた時に作っていた卵焼きだった。
「・・・卵焼きにしましょうか」
「そうだね・・・と言うか、それぐらいしか作れないよね」
「それは言わないの」
とりあえず私達は見よう見真似で調理を開始した。
数分後、私達はなんとか、卵焼き? を作った。
「で、作ってできたものがこれなんだけど――――何これ?」
「さあ」
私達の目の前には、真っ黒になった卵焼きがあった。いや途中までは黄色かったのよ? でも、ドンドン自己流にしていった結果、真っ黒に・・・
「・・・どこで、間違ったのかしら?」
「味付けじゃない?」
焼き担当フラン、味付け担当私で調理していたのだが・・・私が悪いの?
「そりゃあ、あんだけ醤油入れたら黒くなるよ」
「え? 多かった?」
「多いよ」
私は醤油が入ってた、透明なボトルの半分くらい入れただけなんだけど・・・
私が内心悩んでいるとる、フランが呆れだした。
「はあ~今度は私が味付けするから、お姉様は焼くのをやって」
「・・・わかった」
そうして、再び調理が始まった。
「何これ?」
「卵・・・焼き?」
「なんで、疑問形なのよ」
私達の目の前には、真っ黒になった卵焼きがあった。
「今回、私は悪くないわよ」
「・・・うん」
実はこの卵焼き、焼く前から真っ黒だったのだ。
「なんで黒くなるんだろう?」
「味付けじゃない?」
「うぐ!」
私は先ほどの仕返しとばかりに言ってやった。フランは悔しそうな顔をしてこちらを見ているが、気にせず、どうやったら美味しくなるのか考え始めた。
(とりあえず、味付けなしで作ればいいんじゃないかしら?)
「・・・とりあえず、そのまま焼いてみよ」
「・・・そうだね」
そうして、また調理を始めた。
「ようやく・・・ようやく出来た」
「長かったね・・・お姉様」
「ええ」
私達の前には、黄色のふわっとした卵焼きがあった。卵を十五個無駄にはしたけど。
「よし、さっそく味見してみましょ」
「うん!」
そうして、一口食べるが・・・
「・・・美味しいけど」
「卵の味しかしないね」
卵の味しかしなかった。まあ、それはそうだろう。一切の味付けもせず、卵をかき混ぜて焼いただけなのだから。
「・・・よし、じゃあ次は味付けして作ってみましょう」
「そうだね」
そう言った瞬間、私達は頷きあって、調理を開始した。
「・・・ついに・・・ついに出来た」
「・・・これが私達の最高傑作」
とうとう完成した。今、私達の前には、綺麗な焦げ目をつけた卵焼きがある。
「これを鏡夜に食べさせれば・・・」
「何を食べさせてくれるのですか?」
「キャアアアアアアア!!!!!!?????」
「うお!? 危ねえ、厨房に防音の結界張っといて良かった」
私は急に背後から聞こえた鏡夜の声に驚き、悲鳴を上げる。
「きょ・・・鏡夜!?」
「そうですよ」
鏡夜は私達の卵焼きをマジマジと見ている。そんなことよりも私は、鏡夜に驚かされた事に対して、頬を膨らましてしまう。
「む~鏡夜!」
「はっ、はい!」
「どうしておどかしたのよ!」
「いや、なんか集中してたので・・・」
「何でそれで、私をおどかすことに繋がるのよ!」
「まあまあ、お姉様。今は私達の料理を鏡夜に食べてもらいましょ」
フランの言葉で私はハッとなる。私は急いで先ほどできた料理を鏡夜の目に持ってくる。
「ま、まあ、さっきの事は許すわ」
「はあ~」
「で、その・・・鏡夜、お風呂の事はごめんね」
「ですから・・・」
「それはわかってる・・・でね、その~お詫びに、私とフランで卵焼き作ったから食べて頂戴」
私は今、顔を真っ赤にしながら鏡夜に卵焼きの乗った皿を差し出す。鏡夜はゆっくりとその皿を受け取ると椅子に座って食べだした。
私とフランはドキドキしながら鏡夜を見る。鏡夜は私達の作った卵焼きを黙々と食べ続ける。
そして、鏡夜は食べ終わると、ゆっくりと私とフランを見る。鏡夜は無表情でこちらをじっと見た後・・・
「美味しかったですよ。お嬢様」
笑顔で言ってきた。私とフランは、鏡夜の言葉を聞いた瞬間、笑顔で喜んだ。
「ホント!? 良かった~」
「良かったね、お姉様!」
私とフランは抱き合いながら、一緒に跳ねる。
私とフランが跳ねていると、鏡夜は私達の元にきて、抱きしめてきた。
「ど、どうしたの? 鏡夜」
「きょ、鏡夜?」
「・・・・・・ご褒美です」
そう言って、私とフランのおでこにキスしてきた。私とフランは一瞬、何が起きたのか理解できず、固まってしまう。
一方、鏡夜はいつもの笑顔で笑っていた。
「フフ、主従関係が逆とか言わないで下さいよ」
鏡夜は人差し指を口元で立てて、笑いながら言う。鏡夜は人差指を下ろすと、私達から離れた。
「それと・・・明日を楽しみにしててください」
私はその言葉を聞いた瞬間、我に返る。
「そ、それはどう言う・・・」
「秘密です。では、お嬢様・・・また明日」
そう言って、鏡夜は厨房を出て行った。鏡夜が出てくと同時に、フランも我に返った。
「・・・なんで私達って、鏡夜の唇にキスしたことあるのに、おでこにキスされただけで固まるんだろう?」
「・・・なんででしょうね」
私達はそのまま、自分たちの部屋に戻った。明日、鏡夜が何で楽しませてくれるのか、考えながら。
Side鏡夜
「・・・まさか、お嬢様達が厨房にいて、俺の為に料理を作っているとは・・・超嬉しかったな~」
時刻は四時ほど。お嬢様達の料理を食べ終えた俺は、笑顔で紅魔館の廊下を歩いていた。俺は部屋に戻り、窓を開いて朝日を待つ。
「さて、もう少したら、朝か」
俺は独り言を呟きつつ、意味もなく鳥たちの動きを目で追う。早く時間が過ぎないかな~と思いながら。
「・・・暇だな~」
仕事がないと、俺は本当にやることは無い。お嬢様達に会いたいが、今は睡眠の時間だ。
俺はしばらく、鳥たちの動きを目で追いながら、朝日が出るのを待った。
「さて、行くかな」
時刻は朝の五時程。俺は朝日が出たのを確認すると、正面玄関に向かう。
「良かった、起きてた。おはよう、美鈴」
「おはよう、鏡夜」
俺が正面玄関から外に出ると、軽い体操をしている、美鈴がいた。
「随分早起きね」
「違う違う、昨日から起きてるだけ」
俺がそう言うと、美鈴は苦笑いした。
「まあ、それはいいんだけど・・・ちょっと俺、これから出かけてくるから」
「え!? もう、出かけるの?」
「ああ」
「朝食は?」
「ごめんね、今日は食べないでいいや・・・あっ! でも夕食は食べるから」
そう言って、紅魔館の門をでる。俺は最後に言い忘れた事があったので、振り返った。
「それと、今日の七時に皆で食堂にいてね~」
美鈴が頷いたのを確認した後、妖力の翼を出して空に飛び上がる。
空に飛び上がった瞬間、俺は自分の幸運の限界を無くす。これで、俺は最高に幸運の状態になった。
次に、加工のできる限界と加工の上手さを無くす。これで、何でも加工でき、超一流の加工もできる。
「さて、探しに行きますか」
そう言って、俺は鉱山に向った。
どうでしたか?
次はもしかしたら、また甘甘になるかもしれません。
質問、感想、アドバイス、お待ちしています。