Angel Beats!~ちょ、俺まだ死んでないんだけどオオオオオオオオ!!~   作:日暮れ

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 最近はすっかりスランプからも抜けて、銀さんがより銀さんっぽくなっていると個人的には思います。
おかげで書くのが楽しくて、ついつい夜更かししてしまいました。
眠たいです。目ぇむっちゃチカチカします。

 よい子は早寝早起きを心がけて、姿勢を正して見るようにね!
 
 そんなわけで第二十一訓です。


第二十一訓

★―女子寮 天使エリア―

 

 私と銀さんは、突如出現した攻撃的な天使の対策を探るため、再び天使エリアこと奏ちゃんの部屋にお邪魔していた。

 

 パスワードとかは前回竹山くんが解読してたから余裕として……問題はここからね。

 

「あった……」

 

 デスクトップにアイコンが表示される。私はその中の『Angel Player』と書かれたものを開いた。

 

銀時「……んだコレ」

 

 移ったのはヒトの体のモデルのようなものと……難しくてわかんないけど何かの統計のグラフのようなもの。

 

 その隣の、おそらく奏ちゃんが作ったスキルのリストがあった。その中のharmonicsをクリックする。でもモニターは私たちの欲しい情報は与えてくれない。

 

銀時「……おい、もう離れるのはわかったから消し方探せって」

 

「出来るんならそうしてるわよ! 予想以上に難解だわ、このソフト……」

 

銀時「予想以上に南海? 何、南に行きたいの? 常夏のワイハーで一夏の過ちを犯したいの?」

 

「奏ちゃんだって、分身を出したまま放置するようなことはしない筈。どこかに絶対消す方法はあるはず。なんだけど……」

 

銀時「無視? ねぇ無視ですか? 寒いギャグ言ったから? 一夏の過ちに箒さん怒っちゃった?」

 

「……! 銀さん、コレ!」

 

 私は半分べソを書いている銀さんに、今さっき見つけたブ厚い本を見せる。背表紙にはやっぱりAngel Playerの文字。

 

「マニュアル、みたいね」

 

 本の埃を軽く払い、適当な一ページを捲る。

 

 ぜ、全部英語……

 

「……一応ダメ元で聞くわ。銀さん、英語わかる?」

 

銀時「カップヌードルのCMに感化されて英語の勉強をしようとしたけどスピードラーニング三十秒聞いて諦めた程度の英語力なら備わってる」

 

「ダメ元でもあなたに聞いた私がバカだったわ……」

 

 だってカッコいいじゃん! ファインサンキューアンドユゥウウウゥウゥゥウゥウゥって! むっちゃカッコいいじゃん!! とボソボソ呟くおっさんはほっといて、マニュアルに目を通す。

 

 ……うん。全然わかんない。

 

「くっそ、ただでさえ時間がないってのに……」

 

銀時「おい仲村、これなんだ」

 

 そう言い、さっきまで騒いでたおっさんは画面を指さす。

 

「何これ……『absorb』?」

 

 銀さんが指さしたそれは、さっきのリストの、ハーモニクスのすぐ上にあった。

 

 見たことないスキル……何かしら。

 

 カチカチと音を立て、そのスキルの詳細を表示する。

 

 デスクトップに別れた二つの体が一つになる映像が表示されるのと、これがハーモニクスを止める方法なのだと私と銀さんが気付くのがほぼ同時だった。

 

銀時「おい……あの立華(バカ)いつのまにかメタモル星に行って来たんだ? こいつぁまさしくあの伝説の技、フュージョンじゃねーか!!」

 

 前言撤回。私が気付いたのとこの銀さん(バカ)がいらん妄想してたのがほぼ同時。

 

「ともかくやったわ! 本来この命令に繋がって、勝手に消えるはずだったんだ……これであの天使を止められる!」

 

銀時「え何? 立華がフュージョンを体得したんじゃねぇの?」

 

「あーもうメンドくさい!! あなた今回ボケてばっかりよ!? 少しはまともなこと言いなさいよ!!」

 

銀時「テメーこそ、今日はやけにツッコミに徹するじゃねぇか。どした? 試験前夜の一夜漬けですか?」

 

「うっ。せ、戦線のみんなの命がかかってるのよ? 真面目にもなるわ」

 

銀時「はーん……」

 

 言えない……この前の天使エリア侵入で銀さんにキスしようとしたのを思い出して気まずいからだなんて絶対言えない!

 

「ま、どーでもいーけどよ。それよりもそっちだろ?」

 

 銀さんが画面を顎で指す。

 

「そ、そうね……発動条件は、」

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

「あーもうわかんない!! 英語って何よ何で英語なのよ気取ってんじゃないわよ!!」

 

銀時「バッカお前冷静さを欠いたらしまいだぜ? ここはみんなの銀さんに任せてみな」

 

「あら、あなたパソコンなんて扱えたの?」

 

銀時「まぁな、要はノリだノリ。見てろ……」

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

銀時「この腐れパソコンんんんんんんんンンンンンンン!!」

 

「あなたが一番冷静さを欠いてるじゃない!」

 

 どこかのドイツの少年の如く、キーボードをバンバンと叩きまくる銀さん。

 

銀時「シネェェェェ!! ドンベエチャン、スゥィイネェェェェェ!!」

 

「あーもう邪魔よ銀さんどっかいけ! こうなったらプログラムを書き換えるわ!!」

 

 ハーモニクスとアブソーブの間にtimewaitというスキルを追加し、この三つを連結させる。これでハーモニクスを使えば、連鎖的にアブソーブが発動するはず!

 

「とっとと消えろ……timewaitは十秒! どうだ!?」

 

 ッターン! とエンターキーを鳴らす音が部屋内に響く。

 

 ……

 

 ……十秒って案外長いわね。何で十秒以下に設定できないのかしら?

 

「ヨガノスゥイーディーデルゥ!!」

 

 ほら銀さんだって十秒っでKBCから修羅パンツにキャラ変わってるし。十秒で人って変わるのね。そりゃ三年もあれば1Dがパン屋からスターにもなるわ。

 

「てか何で銀さんはキャラ見失ってるのよ。そろそろ戻ってきなさい。」

 

銀時「チッ(・д・)」

 

 画面は、ハーモニクスで分裂した十秒後、その分身が一つになるシュミレーションを映した。

 

 つまり、もう一度奏ちゃんにハーモニクスを使わせればアブソーブが正常に働いて、十秒後には分身が元に戻り、この件に片がつくということだ。

 

「ふぅ……何とかなったわね。」

 

銀時「おつかれさん。まぁよくやったんじゃねぇの?」

 

「あなた何もしてない割にはエラっそうね! ……? これは」

 

 連結させた三つのスキルの上に、また見たことのないスキルがあった。

 

「何コレ……howling? 分身の方が作ったのかしら」

 

 消すべきか?

 

 ……いや、ここまで周到にやって来たんだ。そりゃ確かに銀さんのせいでキーボードとか少し壊れてるけど、最低限の修正にとどめないと。

 

 でも、せっかくいいもの見れたんだから。対策はしとかないとね♪

 

「さーってと、とりあえず全部片付きそうね。今日は奮発して高いパフェでも食べようかしら」

 

銀時「なぁ仲村よ」

 

「んー? 何」

 

銀時「もしこの設定で分身に本物の立華隠されたら打つ手なくね?」

 

 ……あ。

 

★―医局 保健室―

 

銀時「おーおー、随分と派手なプレイなさったご様子で」

 

 しくった……。

 

 割れたガラス。飛び散る書類。倒れたイス。そして、空のベッド。

 

 私の目の前には、何者かに乱暴に荒らされまくった保健室が広がる。

 

 もっとも今のこの状況じゃ、犯人も目的も予想できるけど。

 

大山「どこかに出かけたんじゃないの?」

 

銀時「窓からか? 最近のガキは気合入ってるな」

 

直井「この乱れようは攫われたとしか思えない。貴様、何をした」

 

 直井くんが私を指さし、言ってくる。

 

 貴様って。

 

「プログラムの書き換え。もう一度あの子がハーモニクスを使えば、追加した能力が発動してすべて丸く収まるはずだった」

 

高松「そんな事が出来たのですか」

 

「付け焼刃だけどね。でも敵の行動が予想以上に早かった……」

 

 グチャグチャに割れてしまった窓の外に目線を向ける。

 

 奏ちゃんを隠されたら打つ手がない……!

 

銀時「だーから言ったじゃんだーから言ったジャン」

 

「うるさいわね! あなたがもう少し早く言ってくれたらここに護衛を何人か配備したのに!」

 

 いや、何人配備しても無駄だった……天使とまともにやり合える人材は銀さん以外にはほとんどいない――

 

 銀さん置いてくればよかった!

 

「あなた肝心な時に役に立たないわね!」

 

銀時「テメーそれがさっきまで死んでた先生に言う言葉か」

 

松下「どうするんだ」

 

「探すしか、ないじゃない」

 

高松「凶悪な天使の目を逃れつつですか……」

 

藤巻「授業を受けるふりでさえやっとだったってのによぉ」

 

 打開策の奏ちゃんは誘拐された。何処に居るかはわからない。

 

 探そうにも校内には分身が目を光らせている。見つかったら即アウト……

 

 状況は限りなく最悪ね。

 

日向「陽動がどれだけ持つか……」

 

ユイ「ふぇっ? 陽動ってアタシですか!?」

 

日向「お前何のためにガルデモ入ったんだよ?」

 

ユイ「えと、岩沢さんに憧れて……」

 

日向「ガルデモは陽動のためにあるんだよ!!」

 

ユイ「えぇえ!? 無理ムリむりです! あんな怖いの相手に陽動なんて出来ないですって!」

 

日向「しろよバカ!!」

 

ユイ「バカとはなんじゃ何様だおまえ!!」

 

日向「ここじゃ先輩ですが何か!?」

 

銀時「テメーらいちゃついてるとこ悪いが、今回陽動はナシだ。やっこさん下手したら楽器とか設備ごとガルデモをぶち壊しかねねぇ」

 

「そうね……私たちは今できることをしましょう。」

 

「総員に通達! 天使の目撃情報を集めて!!」

 

 

TK「Hey,yo! Check this out! It's moonwalk,it's a moonwalk! Head spin!」

 

★―体育館内―

 

仲村「迅速に集められた情報から、幽閉場所はギルドの可能性が高いとわかったわ。となれば、その最深部ね」

 

「ねぇ今のTKのシーン何? TKが迅速に遊んでただけだよね? 情報集め全くしてないよね?」

 

 とりあえず一ツッコミいれて、仲村の言葉を反芻する。

 

 最深部っつったら、あの派手に爆破したところか。

 

仲村「トラップも稼働したまま。最も危険で、最もここから離れた場所ってわけね」

 

日向「またここに潜れってかよ……」

 

藤巻「前回はほぼ壊滅状態だぜ?」

 

野田「フン……何を臆してるんだ?」

 

藤巻「まっ先に死んでたろお前」

 

 ただでさえこの前は俺と仲村しか残らなかったってーのに今回は分身立華のオマケつきと来た……厄介なことこの上ねーな。

 

仲村「さっきも言ったとおり、今回陽動はなし。正々堂々、天使と闘いながら行くわよ」

 

仲村「いい? 作戦はギルドを降下して、その最深部にて奏ちゃんを保護すること」

 

仲村「オペレーション、スタート!」

 

★―ギルド連絡通路 B4―

 

 昔、ここに突入ぢたのとほぼ同じ陣形で俺たちは歩く。

 

 一番後ろ……てか俺の一つ後ろには野田が、俺の前には仲村が立っている。

 

「最深部……懐かしいねぇ」

 

仲村「そうね、あなたがあの時途中で消えたりしなかったらもう少し懐かしんだりもできたのかも」

 

「あれ、仲村さんもしかして怒ってらっしゃる?」

 

仲村「怒ってないわよ」

 

「そーかい」

 

仲村「……」

 

 仲村がわずかな上目づかいで俺をにらんでくる。

 

 ……?

 

仲村「心配したんだから。馬鹿」

 

「へーへー。過分な心遣い痛みいります」

 

仲村「……馬鹿」

 

 

日向「前のトラップはそのまま放置されてるな、ラッキー!」

 

ユイ「あの、こんなところで天使に出くわしたら漏れそうなんですけど……」

 

「38にもなってションベン漏らすマダオもいる。心配すんな」

 

ユイ「心配してください! 大体マダオって何ですか!?」

 

「まるでダメなオッさん。略してマダオだ」

 

ユイ「まるでダメじゃないですかこのまるで台無しな大人略してマダオ!」

 

「んだコラこのまるで騙されたかのような平らな胸の女略してマダオ!!」

 

仲村「……!」

 

「……おでましだな。まるで堕天使な女、略してマダオが」

 

「――堕天使。言い得て妙ね」

 

 目の前の女はその言葉を聞くなり怪しく笑い、そう返した。

 

 前方30mくらい先の方に、赤い瞳を引っさげて、以前と変わらぬ様子で立華はそこにいた。

 

 立華とは言っても、分身の方だがな。

 

「おいコラテメー立華、この前は世話になったな。どうしてこんなところにいる。世界ふしぎ発見に憧れてミステリーハンティングですか?」

 

「……? 少し考えればわかるでしょ? あなたたちが私を遠ざけるために作ったここは、今の私にとってとても都合がいいからよ」

 

仲村「くっ……」

 

 ……やっぱこの立華、ここまで考え

 

「なぜならここは闇の真影……暗き暗黒が私に(あか)の力をもたらしてくれる!」

 

「いやそっちイイィイィィィイイィイィ!? てっきり今の状況的に考えてっていう意味だと思っちまったじゃねーか!!」

 

 やっぱこいつただの中二病じゃねーか! 若干パワーアップしてるし!!

 

「他にどんな意味があるというの? ここの能力(ギアス)よりすばらしいものがあるとでも?」

 

「いやもういいから喋らなくて! 喋れば喋るほど痛いから抜けられない止まらないから!!」

 

「……私をバカにするのもいい加減にしたらどう? また刻まれたいの?」

 

「もしかして俺が前襲われたのって中二病って言ったから!? どんだけくだらねー理由で殺されてんの俺!! てか中二病って言って怒るってことは自分でも薄々中二病って感じてる証拠じゃねーか!!」

 

仲村「銀さんあまり挑発しないで!!」

 

「だってギアスだもの! 能力と書いてギアスと読んでるもの!! 設定イジリすぎて取り返しついてないもの!!」

 

「っ……死になさい!」

 

「ホラやっぱ図星じゃんんんんんん!!」

 

仲村「総員、構え――!?」

 

 立華は文字通り目にもとまらぬ速さで俺らをつっきっていった。

 

日向「っ、武器が!?」

 

 見ると、野郎どもの武器が全部破壊されている。

 

 わかっちゃいたが、戦いに甘さがない分立華よか厄介だ!

 

藤巻「速すぎだクソ!」

 

松下「対応できない!!」

 

仲村「まだハンドガンがある! 各個射撃!」

 

 仲村の合図で一斉に、目の前の立華に銃をぶっ放す。俺は銃持ってないんだけど。

 

「――Guard skill:Distortion」

 

 弾が自分に当たるすんで前、立華がスキルを発動する。

 

 いくら弾道捻じ曲げようと、流石にこの量じゃきついだろ!!

 

仲村「意外と早くけりが付きそうね」

 

 おいおいそれはフラグだろ……

 

 仲村が言い終えるが早いか、後ろから短い悲鳴が響く。

 

野田「ぐ……はっ」

 

「「「!?」」」

 

野田「なっ……に!?」

 

 ハルバートが落ちる音と、野田が崩れ落ち、後ろのソレが見えるのがほぼ同時。

 

 そして、それの姿を見て、おそらく俺だけが、激しく驚いたのもほぼ同時だろう。

 

仲村「……何よコイツ!?」

 

日向「こんなヤツ見たことねぇ……何だこの()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 いや、この言い方には少し語弊があった。

 

 驚いたんだ。俺もガキどもも。

 

 だが、俺が驚いたのは、そいつにひどい既視感を覚えていたからだ。

 

 ひどく目覚えのある面。間抜けな口、目。すね毛がちらつく足。微妙な加齢臭。

 

 それは――

 

「――え」

 

 それは、俺の知り合いのロンゲがよく連れて歩いてた化け物だった。

 

「エリザベスううぅぅうぅうぅぅうぅうぅうう!!!???」

 

 

★―次回予告―

 

日向「あのペンギンお化けは一体何だったんだろうな……銀さんは何か知ってる様子だったが」

 

直井「ヤツを目撃したという人が絵を残しているぞ」

 

日向「おぉ丁度いい、見せてくれ」

 

直井「ほら、受け取れ愚民」

 

 

【挿絵表示】

 

 

日向「……えと、まぁその、何だ」

 

直井「……ごめんなさい。」

 

日向「直井が謝った!?」

 

日向「えーと、気を取りなおして! じ、次回、第二十二訓! 楽しみにしててくれよな!!」

 

直井「……ごめんなさい。」

 

日向「もういいから!」

 

 ……お、お楽しみにね!




 ……ごめんなさい

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