Angel Beats!~ちょ、俺まだ死んでないんだけどオオオオオオオオ!!~   作:日暮れ

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 EPISODE.7 Alive書き初めて何か月たったよ俺……

ともあれ、angelbeats7話、完結です。


第十九訓

 

 ……あ、もうだめ、死にそう。

 

『――生!』

 

 や、この世界では死なねぇんだっけか? ったく難儀な世界だぜ……

 

『あの、先生?』

 

 死なないんだったらハラすかねぇようにくらいしとけよ! こちとらせっかく教師やってるってーのに前と同じでひもじいだけじゃねーか。

 

『……先生!』

 

 ……ほらどっかから幻聴も聞こえてくるよ?

 

 あの腐れリーダーめ――

 

★―三日前―

 

ゆり「で、報告って何?」

 

高松「本日の食券が不足しているとのことです」

 

 いつもメガネをいじくりまわしてる陰気な参謀の高松がつぶやいた。

 

 は? 食券が不足?

 

「前にトルネードやった分は? 肉うどん100杯分くらいはあったろーが!?」

 

松下「すまん、俺が全部食べてしまった」

 

「何やってんのお前!? 吐きだせ!! 肉一枚でいいから吐きだせ!!」

 

松下「うむ。ちょっと待っとれ……おぶぶぶろっしゃぁああぁぁぁああぁぁあ!!!!!」

 

日向「銀さん落ちつけよ――ってぎゃああぁぁああぁぁああぁぁああぁ!!!!!」

 

大山「うわあ! 日向くんが黄色くて読者の皆様にお見せできないような何かにまみれてるよ!!」

 

ゆり「あーもうそこうるさいってかくっさ!! ちょっとあなたたち久しぶりの本編更新だからって気合入りすぎよ!!」

 

 てゆーかそんなことはどーでもいんだよ!!

 

「メシ!! メシがねぇって事じゃねぇか!! どーすんだこれ!!」

 

藤巻「どうする? ここらでトルネードいっとくか?」

 

ゆり「いや……今回は――アレをやるわ」

 

 デスクにどっかり座って腕を組んでいる仲村が意味ありげに言葉を溜めて言った。

 

野田「ゆ、ゆりっぺ本当にアレを!?」

 

大山「うあぁああぁああぁぁあ!!」

 

松下「ついに来たか!!」

 

TK「絶望のcarnival……」

 

松下「そうだな! まさしく絶望のかーにばるだ!!」

 

日向「ゲロ吐いたのに微塵も口を洗おうとしないお前の精神と口臭に俺は絶望だ」

 

 野郎どもがお決まりのオーバーリアクションをかましてくる。

 

「アレってなんだよ?」

 

藤巻「説明するとだな……絶望のcarnivalってな感じだ」

 

日向「あぁあれは本当に絶望のcarnivalだ!!」

 

大山「すごくカニバルっててデンジャラスなんだよ!!」

 

野田「というかカーニバルって何だ?」

 

「俺に聞くな馬鹿ども勝手にカニバルっとけや。仲村、説明」

 

 脳内カーニバル野郎どもはほっといて仲村に話を聞く。

 とりあえず食料に問題はなさそうだが……何かイヤな予感が。

 

ゆり「えぇ。準備ができるのは三日後よ? それまでのお楽しみ!」

 

 …………は? 三日後?

 

「んじゃ何か? 俺たちに三日間何も食うなってことか?」

 

ゆり「要約するとそうなるわね」

 

「こんの腐れ紫ィィイイィィイィィィィイィィィィイィィィイ!!!!!!」

 

ゆり「んだやんのか毛玉アァアアァァアァァアアァァアアァアア!!!!!!」

 

 

 ……とまぁそんなわけで、三日前から何も食ってないわけである。

 何回死にかけたと思ってんだあの暴君が……

 

『あの!! 先生!!』

 

「いい加減うっせーぞ幻聴のくせに!!!」

 

『ひっ……あの。幻聴じゃ、ない、です』

 

 あ? 幻聴じゃない?

 さっきまで幻聴だと思ってたのが聞こえてきていた方を向くと、いつも見ているSSSの刺繍がない落ち着いた制服を着けている女子生徒が一人立っていた。

 

 左目に付けた眼帯がよく目立つ。

 

「……ついに精神やられたかと思っちまったじゃねーか」

 

 俺が頭を抱えて自分の脳の無事を確認していると、その女子生徒が再度、俺に話しかけてくる。

 

『あの、先生』

 

「……んだよ、俺今糖分どころかカロリー不足してっから気をつけろよ? お前が次のカロリーになっちうかもしれねーぜ?」

 

『へ? それって……私、先生に食べられちゃうってこと? あられもない姿になった私を銀時先生が優しく包みこんで作者の能力ではとても表現しきれないくんずほぐれつアハンウフンなことになっちゃうってこと!? 保健室や体育倉庫や中庭で!? ナニソレ燃える! むしろ萌える!!』

 

 おい、毎度毎度だが何でこんな奴が一般生徒やってんだよ。特徴ありまくりじゃねぇかどっかの生徒会役員の共に出てきそうな勢いじゃねぇか。

 

「オイテメー俺イライラしてるっつったろ、さっさと用件を言え」

 

 あらぬ妄想をしてハァハァ言ってる一般生徒に用件を聞く。こいつはこれ以上喋らしたら危険だ。いろんな意味で。

 

『あぁ、そうでした。あの……先生、これ』

 

 そう言って目の前の人間以上一般生徒未満な女子生徒は俺に包みを差し出した。

 

『あの、あのあの! 先生が最近いつもひもじそうって、友達から聞いて……食べて下さい!!』

 

「……」

 

 ほのかに香る暖かい匂いが俺の腹を掻き立てる。

 後光が、後光が見える……!

 

「天使っていたんだ、本当に……」

 

 神も仏も信じちゃいなかったが、この時ばかりはこの世界の神様に本気で感謝した。

 

 俺は女子生徒にお礼を言い、すぐその包みを受け取り食べようとする。

 この世のすべての一般生徒に感謝をこめて、いただきま

 

仲村「あーいたいた銀さん、例のオペレーション準備出来たわよ! さぁ来なさい!」

 

「え? ちょオイ待て俺の三日ぶりのカロリーが」

 

仲村「レッツゴー!!」

 

「俺のカロリーィイイィィィイィィィイィ!!」

 

 

『やっぱり仲村さん、銀時先生と……』

 

★―植物園―

 

「……で、なぜに立華も一緒?」

 

 俺の目の前には、わずかにおどおどして仲村の背後に隠れている立華の姿があった。

 

仲村「何よ! 奏ちゃんももうウチの戦線のメンバーでしょ!?」

 

「ちょっと前まで天敵だったじゃねぇか……」

 

日向「ついに天使まで仲間入りか……どーなっちまうんだこの戦線は?」

 

直井「なに心配するな、いずれ僕がお前ら全員追い出して銀さんとの愛を育む場所として使う。感謝するんだな」

 

「ちなみにお前も仲間に入れた覚えはないけどな」

 

 てゆーか俺はいいとして、他の奴はだいじょぶなのか?

 

 アイツは今まで戦ってきた争いの張本人なんだぜ?

 すんなり受け入れるわけ

 

松下「うむ。天使ちゃんと釣りなんて夢にまでみたシチュエーションじゃないか。決めるぜ俺!」

 

高松「まぁ、かわいければ何でもいいんじゃないでしょうか」

 

TK「Come On Let's Dance!」

 

大山「た、立華さん憶えてる? この前、君に告白したんだけど……あぁしまった忘れてたよ! この小説では僕告白してないんだった!!」

 

藤巻「おい天使よ、今度麻雀やろうぜ?」

 

ユイ「藤巻先輩カモにしようって考えが見え見えです」

 

ひさ子「私に勝てないからってそこまでするか……」

 

関根「こんな男の人とは付き合えないなー、しおりんはどんな男の人が好み?」

 

入江「えぇ! そんな、どんなって言われても……」

 

遊佐「何でそこで銀時先生を見るんですか?」

 

椎名「流石に既婚者は言うことが違うな」

 

日向「おい椎名!? 何受信してんだよそれ中の人!」

 

 ……そういえばコイツらバカだった。

 もう嫌だこの戦線。

 

「ん」

 

 ふと、俺の裾が何かに引っ張られる。何かと振り向くと、不安そうに表情を曇らせる立華がそこにはいた。

 

立華「駄目?」

 

 ……はぁ。

 

「いいんじゃねーの? お前もう生徒会長じゃねーんだし、一緒にいたけりゃ勝手にしろ」

 

立華「……うん、そうする」

 

★―第二連絡橋下 河原―

 

「……三日も時間置くから何かと思えば、ただの川釣りかよ」

 

 周りを見ると、他の連中が川に釣り糸を垂らして泳いでる魚を釣っていた。

 

 釣れない奴や大量な奴、エサをつけられなくてあたふたしてる奴もいる。

 

「ただの川釣りとは、言ってくれるじゃねぇか」

 

 俺が一人でエサをつけていると、見慣れない麦わら帽子の男が話しかけてきた。

 

斎藤「フィッシュ斎藤だ。よろしくな」

 

 ……

 

「どっかの高校で野球チーム作ってました?」

 

斎藤「? 何の話だ、俺は野球なんてやったことないぞ」

 

「……や、ならいいんだけどよ」

 

斎藤「そうさ、結局野球というより理樹を中心にみんなでワイワイやるだけの集団だったからな」

 

「おい今理樹っつったコイツ? 絶対あの人だよね(21)の人だよね?」

 

斎藤「失礼な! 俺は今まで一度だってロリロリハンターズなんてチーム作った覚えはないぞ!!」

 

「通じちゃったよ。絶対あの人だよこれ、棗な人だようまうーな人だよ」

 

 そんなどーでもいい(ある意味重要な)やりとりを斎藤としていると、どうしていいか分からない様子で釣り竿を睨む立華が目に入った。

 

「何やってんだよ」

 

 立華は目線を釣り竿から俺に向け直すと、少しばつが悪そうに、

 

立華「別に……」

 

 そう返した。

 

「エサ垂らさねーと釣りになんねーだろーが。オラ」

 

 立華から竿をぶんどってエサを川に垂らす。そしてそれをそのまま立華に手渡した。

 

「そーして待っときゃ、何かは釣れんだろ」

 

立華「……ありがとう」

 

 立華はそのまま浮きを見て動かなくなった。

 竿の先がわずかに前後する。自分のエサに何かかかるのを楽しみにしてるのがそれだけで感じてとれた。

 

 アイツは、今までずっと一人だった。

 アイツの生徒会長という立場のせいで、隣にいるだけで、それだけで『人間』はこの世界から消えてしまうからだ。

 そのくせ背中にはいろんなもんを背負って、それでも必死にここで、この死後の世界で死にながら生きてきた。

 

 俺たちに敵対視されながら。

 その身に銃弾をぶち込まれても、

 地下で生き埋めにされても、

 卑怯な手で陥れられても、

 それでも俺らを導こうとした。

 

 一応こいつのやりたいことについてはわかってるつもりだ。

 だけど、少しだけ。もう少しだけなら。

 

 青く澄んだ空を見て、川に目を落とす。

 川はさっきまでの落ち着きをどっかに落っことしたようにうねりを発生させて俺たちを拒むように――拒む?

 

 え? オイさらっと言ったけど、うねりって何!?

 

 俺は立華の方を向く。立華の竿が激しくしなっていた。その糸の行く先にはあの謎の怪奇現象。ここ川だよね!?

 

斎藤「こ、これは……モンスターストリーム!!」

 

「え!? 何その適当な名前!?」

 

斎藤「モンスターストリームはこのオペレーションの名前の由来にもなった現象、この川の主の怒りの象徴だ……」

 

「この川釣りってそんな派手な名前だったの!?」

 

 なんて話をしている間に立華の竿がさらにしなり、わずかにみしみしといった音が聞こえる。

 

「どうするってんだよ!?」

 

斎藤「さっきも言ったとおりモンスターストリームは主の怒り! 普通ならコレが出たら即退散だ……だが!!」

 

斎藤「今まで俺たち戦線とたった一人で渡り合ってきた天使なら!! 主を釣ることができるかもしれない!!」

 

 斎藤が立華の体にしがみつき必死に体勢を立て直そうとする。

 

日向「おいおいお前ら主を釣るのかよ!? 正気じゃねぇぜ……へっ松下五段!!」

 

松下「む?」

 

日向「今度天使の秘蔵プロマイドやっから手伝え!!」

 

松下「ウホホっ了解だ!! 天使ちゃんんんんんんんんんん!!!」

 

 それに続いて日向、松下が天使を支えようとしがみつく。

 

 そんなこいつらを見て戦線の全員がさながら大きなカブのように前のヤツを引っ張り合っている。

 

「「「オーエス!! オーエス!!」」」

 

 ……俺らって何やってんだっけ?

 

 

斎藤「今だ!!」

 

立華「……っ」

 

 斎藤の合図に合わせて立華が自分の身をかがめて、アホみたいな脚力で上空15メートルくらいに吹っ飛んだ。戦線の連中と主とやらを連れて。

 

 ……この世界ってこんな常識外れだったっけ?

 

 

日向「釣りあげやがった!!」

 

藤巻「俺たちごとかよ!?」

 

野田「どっちがモンスターだよ!!」

 

大山「何この状況!?」

 

高松「まずいですね」

 

 重力に従い、連中の体が落下を始める。

 

 その下には超巨大な主の大口が迫る。というか高松何故脱ぐ?

 

松下「このまま落ちたら食われるぞ! 俺の天使ちゃんプロマイドが!!」

 

TK「Crazy for you!」

 

直井「神は落ちなぁああアァァアアァァァァァアァア!!!!」

 

 や思いっきり落ちてんじゃねぇか。

 

 このままだと全員食われる、そんな瞬間。

 

立華「……助けなきゃ」

 

 そう呟き、立華が何かを踏み台にして主に突っ込んでゆく。

 

 ドオオォオォオォォンン――

 

 そう響いた後に俺の目の前にあったのは、見事に切り刻まれた主の体だった。

 

 

日向「やった……やったぞ!!」

 

藤巻「釣った、のか? 主を」

 

松下「信じられん……」

 

野田「へっ、これがこの戦線の力だ!!」

 

大山「それと天使の力、かな?」

 

 

 うおおおぉおぉおぉおおぉ!!!

 と連中が勝手に盛り上がってる中、俺は一人輪の外でアホな顔して突っ立ってるだけだった。

 

「……あり?」

 

 ……この小説って、こんな感じだったっけ?

 

 

 主の肉は俺たちが食べれる量をはるかに超えていて、しょうがないから一気に調理して一般生徒にもふるまうことにした。

 

日向「まるで慈善授業だな」

 

野田「戦線どころか、何かの奉仕団体になってるぞ」

 

 運動場に人が集まる。

 

日向「ってゆうか銀さんもいい加減機嫌直せよ」

 

「……いいんですぅ俺は端っ子でウノしとくから、勝手にお前らだけで川の主でも世界の主でも狩ってりゃいいじゃねえか」

 

大山「……先生どうしたの?」

 

藤巻「いやな? 主を釣る時に置いてけぼり食らったからすねてるみたいでよ」

 

野田「知るかそんなもの」

 

松下「てかこっち手伝え」

 

 何なのコイツら? 慰めるとかないの俺一応先生だよ?

 

 そんな俺の肩をぽん、と銀髪の女の子がやさしく叩く。

 

「おぉ立華、お前なら――」

 

立華「この野菜切って」

 

 ――チョップ。

 

立華「……痛い。何で叩くの?」

 

 立華はわずかに、叩いたおでこを押さえ上目づかいで聞いてくる。

 

「や。何かお前も、アイツら(戦線)に似てきたなぁって思ってよ」

 

立華「……そう」

 

「何でちょっと嬉しそうなんだよ」

 

立華「別に」

 

 それきり立華は口を開かなかったが、

 

立華「…………」

 

 立華の動かす包丁の音が小気味よく響いてきて、少し心地よかったのは秘密だ。

 

 

「そーいや仲村は?」

 

日向「言われてみれば見てねーな……」

 

藤巻「どーせどっかで高みの見物だろ? こんな奉仕活動みてーなことに参加するタマかよ」

 

 そんな問答を繰り返してる時、バタリと。人が倒れるような音が耳を障る。

 

 見覚えのあるSSSの刺繍、見覚えのある――紫の髪。

 

日向「ゆりっぺ!!」

 

野田「ゆりっぺ!? どうした、誰にやられた!!」

 

 見ると仲村の制服はところどころ破け、血が滲んでいた。

 

 そして、仲村の口から出てきたのは――俺たちが予想も出来ない名前。

 

仲村「――天使」

 

「天使、って……立華はずっとここに――」

 

 そして俺は、仲村が俺たちではない、立華でもない、どこか遠くを見ていることに気付く。そこに目をやると……

 

 白銀の髪をなびかせ、こちらを見下すように立っている――立華奏(天使)の姿。

 

「……お仕置きね」

 

 次回に続く

 

 

 





 盛り上がりどころなので多少頑張って書きました。次回もよろしくお願いします!!

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