Angel Beats!~ちょ、俺まだ死んでないんだけどオオオオオオオオ!!~   作:日暮れ

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三話にわたって書かれた野球回、やっとラストです!




第九訓

★―球技大会第一会場 野球場―

 

TK「Fooooooo!!」

 

 カキィィィィイィィィン!!!

 

藤巻「おぉぉおお!!」

 

 TKの振ったバットがボールを見事に捕らえた。ボールははるか遠くへ消えていく……

 

審判『ホ、ホームラン!』

 

 一塁に向けてのんびりと走り出すTKに歓喜の声が上がる。

 

藤巻「うおぉ流石だぜTK! 死ぬまで何やってたか謎だらけだっぜい!!!」

 

 TKはそれに答えるようによくわからないことを口走っている。

 

TK「don't stop dancing!」

 

★―球技大会第二会場 グラウンド―

 

松下「――――フンッッ!!」

 

モブ「うおおホームランだ!!」

 

★―対天使用作戦本部―

 

ゆり「ふむふむ……ゲリラ作戦は順調な滑り出しのようねー。さって、天使ちゃんのご気分はいかがかしら……ふふっ♪」

 

 まるでずっと欲しかった服でも買ってもらった少女のように仲村ゆりは笑いをこぼす。

 

 

ユイ「おぉ!! 我らが戦線チームはどこも順調に勝ち残ってますよー!」

 

日向「んじゃ、いっちょ俺らも、」

 

「フン…………行くとすっか!!」

 

一同「おー!!」

 

 

『またかよ…………』

 

日向「この次に進めんのは俺たちのチームに勝った方、ってことで! ジャンケンしてくんない?」

 

『……どんどんチームが増えてきやがる……』

 

 一般生徒たちは自分らの試合を邪魔されたことでイライラしていた。

 

 まぁフツーの反応ですよねー……

 

日向「だ、だって俺たちだってこの学校の生徒だぜ!? あーホラ! お前もお願いしろよ!」

 

 ヒジでユイをつつく日向。何でそんなのにお願いするかねぇ……

 

ユイ「本気でごいやゴラァァァァァァアアァァァアァァア!!!!!」

 

日向「ドスきかせてどーすんだよぉぉぉぉ!」

 

 ほーら言わんこっちゃない。

 

 ツッコみと同時に卍固めをかける日向。

 

ユイ「あ、だだだだだだだだ!! 関節が砕けます! ホームランが打てなくなりばすぅぅぅ……」

 

日向「そんな期待誰もしてねーよ!!」 

 

 そんなにアイツに卍固め食らわせるとセクハラで訴えられっぞ?

 

 

日向「ここで負けたら罰ゲーム決定だかんなー! 初戦は気合入れねーと……」

 

「まぁ俺は教師だし、いざとなりゃ何とかなるけどな」

 

日向「それ職権濫用じゃねーのか!?」

 

「じゃねーわ馬鹿。信用の問題だよ」

 

日向「それアンタから一番遠い言葉じゃ……まぁいい」

 

 おいよくねーぞどういうことだ!!

 

日向「打順はっと……じゃ、一番! 銀さん頼むわ」

 

「ちっ……うーいいいいいいいい!?」

 

 突然野田が俺を押しのけて日向の前に出る。何だよ!?

 

野田「俺は!?」

 

 それくらい落ち着いて聞けないのかお前はアホかアホだったなすまん!

 

日向「まぁ待て。んで二番が俺、椎名が三番。そして四番が――」

 

 そこで日向は野田の肩に手を置き、

 

日向「――お前だ」

 

 四番に野田を指名する。

 

 言われたとたんに顔が引き締まったところを見ると、こんなアホでも四番の意味くらいは知ってるらしい。

 

日向「走者一掃しねーと、お前の負けだかんな?」

 

野田「フン……いいだろう! ……容易いこと」

 

 お前はそれしか言えねーのか。

 

日向「うっし! 七点以上でコールドだ! 天使が来る前に片付けちまおうぜ!」

 

日向「よーし行くぞ! ファイっおおおおおおぉぉぉぉぉうう!!」

 

一同「……………………」

 

日向「……お、驚くべき団結力のなさだな!! うん!」

 

 自分がスベったの団結力のせいにするなよ。

 

 

審判『……プレイボール!』

 

 一瞬何で先生が参加してんの? みたいな目で見られたがそんなもんはもう無視だ。常識を捨てろ俺。

 

 コールド狙いね……そんじゃ、いっちょ派手にやってみっか!

 

相手ピッチャー『…………っ!!』

 

 俺の後ろのキャッチャーミットめがけて鋭い玉が飛んでくる。

 

「そら……よっとォ!!」

 

 カキィィィィィィィイイイィィンンンン……

 

 うむうむ、狙いどおり。

 

日向「ほ、ホームラン!!」

 

ユイ「スゴイです先生! 戦闘といい無駄にスペック高いです!!」

 

 おいてめぇ後で覚えとけよ。

 

 俺は塁を回る。肩を落としてる相手メンバーを見下しながらゆっくり走るってーのはなかなか心地いいもんだな。

 

 

野田「っ……あれくらいのこと、俺だって出来る片手で出来る!」

 

日向「ほーう? んじゃ俺と椎名が意地でも塁にでるから、ヨロシク四番!」

 

野田「フン……任せておけ!!」

 

 

 ――カキーイイイイイイインン……

 

 ――キイイイイイイィィンンン……

 

 さってと……ベンチ戻ってきたことだしあいつらは…… 

 

 ……ん。順調に塁に出れてるな。次は……

 

野田「ふっ。全く……遊びもいいとこだな……」

 

 ……大丈夫か? バットの持ち方からしてアホっぽいし。

 

 片手は……まぁ椎名もだったからいいとして……逆手で持つなよバットを……

 

 椎名も椎名でホントに片手で箒立てながら打ってたしよ……ホントこの戦線何なの? アホしかいねぇの? 

 

相手キャッチャー『……いいのか?』

 

 ほら相手からも心配されてるよ? 今のうちに直しといたほうがいいって恥ずかしいって!

 

野田「何が?」

 

 あダメだあの子素だわ素であれがホントの持ち方だと思ってるわアホだから。

 

相手キャッチャー『…………っ、来い!!!!!!』

 

 ヤべーよひゃくぱーナメてると思われたよ!

 

相手ピッチャー『……フンっ!!!!』

 

野田「てぁれやぁ!」

 

 キイイイイイイィィィン!!

 

 うおお意外と伸びるよコレ! 伸びる伸びる伸びる……

 

審判『ホームラン!!』

 

 おいマジかよあれで!? 

 

 ……アホってすげぇんだな…………

 

相手キャッチャー『そんなぁ……』

 

 ……まぁ、その後のミーハー軍団はいわずもがなとして……

 

 この回の俺らの得点は……俺がソロ、野田がスリーランホームランを決めたから……四点か。

 

 コールドまであと三点以上……めんどくせぇ。

 

 

 そんなこんなで、相手の攻撃が始まった!

 

「んじゃ日向、テキトーに頼むわ」

 

 俺は日向のグローブにボールを押し付ける。

 

日向「うえぇ!? 俺が投げんのかよ!?」

 

「いやな? 俺が投げてもいいんだが……」

 

日向「だが、何だよ?」

 

「なぜか俺が投げたら野田が変に張り合って試合にならないような気がしてな……」

 

日向「何だよソレ妙に説得力あるな……」

 

 いやなぜだろう。虫の知らせってやつかな?

 

日向「……わかったよ。ただし、俺は変化球投げらんねぇからしっかり取れよ!」

 

「りょーかい……」

 

 

 日向がフォームへと入る……

 

日向「……ふっ!!」

 

相手バッター『うあああっ!』

 

 おお結構速い!

 

審判『ストライク!』

 

 ……なかなかどうして、案外いいチームみたいだな。

 

 

 その後相手の全ての攻撃を0点に抑え、二回に一点、三回に三点取った時点で俺たちのコールドになった。

 

 その時椎名の高く上がったボールをスライディングでキャッチするというファインプレーが箒を装備することによって奇跡的にアホにしか見えなかった。

 

 すごいな、ただの箒にそんな効果が……!!

 

 

遊佐『……日向チーム。三回、コールド勝ちです。』

 

ゆり「……よし、みんな順当に勝ちあがってきてるわね」

 

 望遠鏡を片手に戦線の様子を観察しながらゆりは遊佐へと繋がっている通信機に呟く。

 

ゆり「みんな死より恐ろしい罰ゲームとやらを恐れて必死ね~。滑稽だわ♪」

 

遊佐『戦線ではゆりっぺさんの罰ゲームを受けた者は発狂し、人格が変わると有名ですから。かくゆう私も……』

 

ゆり「そうね……ってどんな罰ゲームよ! それに私あなたに何もしてないでしょ!」

 

遊佐『冗談です。でも数年前の日向さんの()()は少しやりすぎかと……』

 

ゆり「いいじゃんすぐ治るんだし……おおっと、あぶりだしに成功ね……」

 

 そう言ったゆりの望遠鏡に映るのは生徒会長である天使と一般生徒の副会長、そしてその後ろにいたのはなぜかこの学校の野球部レギュラー達だった。

 

ゆり「こっちは武器もなし、あるのはバットとグローブ……はたしてどんな”平和的解決”を求めるのかしら……ってか後ろの奴ら見たらだいたいわかるけど。……楽しみね」

 

 

 俺の目の前に広がる光景は、堂々とここまで一緒にあがってきた仲間たちと、それに立ちふさがる生徒会会長・副会長ならびに野球部レギュラーの方々だった。

  

 なんか、某漫画みたいにドンッッ!! って効果音が似合うような光景だが一体天使が俺らに何しよってんだ?

 

天使「……あなたたちのチームは参加登録していない」

 

銀時「いやいや生徒会長。こういうのは参加することに意義があるのですよ」

 

 ……やっぱりゲリラ参加を咎めに来たか。

 

直井「生徒会副会長の直井です。我々は生徒会チームを結成しました」 

 

 おもむろに隣の一般生徒の副会長が話しに入ってきた。

 

 生徒会チームって……後ろの野球部レギュラー達のことかよ!?

 

直井「あなたたちが関わるチームは、私たちが”正当な手段”で排除させていただきます」

 

 っ……いくらなんでも勝てるわけねーじゃん。

 

ユイ「ハン! 頭洗って待っとけよなオラァ!!!!」

 

 あぁ……コイツはいつでもアホなんだな……

 

銀時「ばっか違げーよ、洗うのは手だ。頭だったら衛生上の身だしなみだろうが」

 

ユイ「あそっかー! 流石先生!」

 

「いやそれも違うから! それも身だしなみだから!」

 

銀時「じゃチ○○(ピー)?」

 

「下ネタかよ今から何すんだよ俺らは!!」

 

 全くよ……何でこんなマイペースかなこいつらは……

 

 

 そっからの戦線メンバーの試合は散々なものになった……

 

 野球部ピッチャーはまともに塁にも出させてもらえず――

 

 出たとしても守備が堅すぎてすぐアウト――

 

 奴らが打つ玉は全て点に繋がり――

 

遊佐『高松チーム、竹山チーム。二回コールド負けです』

 

ゆり「くぅぅぅ!! あんなの反則じゃない!!」

 

 俺達は、窮地に立たされていた。

 

ゆり「はぁ……残りは一チームか……誰のチーム?」

 

遊佐『日向さんのチームです』

 

ゆり「ぐはっ! ……天使にフェアにぎゃふんと言わせるつもりだったのに……全く使えない奴らね! ん……あれ、でも日向くんのチームって……」 

 

ゆり「……ま、まぁ最後の試合だし? ちょっくら応援にでも行ってみようかしらね? 別にだれかれが気になるとかじゃなく!」

 

遊佐『誰に言い訳してるんですか?』

 

 

 そして――

 

審判『ではこれより、決勝戦を始めます!』

 

 俺らの試合が始まった!

 

 

 ――初回、俺らの攻撃。

 

 まずは銀さん、俺、椎名が何とか出塁して満塁に。そこで野田のホームランで大量四得点! 今日だけ大好きだぜ野田!!

 

「……銀さん、ホームランうたねぇのか?」

 

 ベンチで銀さんに聞いてみる。銀さんがゴロなんて珍しいな……

 

銀時「ばっか、かっ飛ばしすぎたらやべぇだろ? 敬遠にされちまう」

 

「あそっか」

 

 そこまで頭回らなかった……

 

「じゃ、野田にもあんま飛ばすなって言った方が……」

 

銀時「あいつに相手が取りにくいボール飛ばせってか? いくらなんでも無理があるさ。アホで不器用だからな、今のままでいい」

 

 取れるだけ取っちまえ、と言った銀さんの顔を見ると、なんとなく……何か大丈夫な気がしてきた。

 

 ……なんだかんだで先生なんだな…………

 

 

 ――一回の裏、相手の攻撃が始まった!

 

 ピッチャーは前の試合に引き続き俺が勤めたが、流石に野球部、難なく飛ばしてくる。

 

 

「…………タイム!」

 

 これはいったんタイムを取って銀さんと話し合うべきだな。

 

「やべぇ……ウチの外野はザルだから飛ばされたらしまいだぞ……」

 

銀時「うし。上出来だ。そろそろピッチャー代わってやるよ……あと、こんな時の秘密兵器を用意しちゃうのが俺みたいな出来る男だよね」

 

「はぁ?」

 

 銀さんが顎で外野を指す。すると、そこには見慣れた柔道着を身につけ外野に立つ俺のマブダチの姿があった。

 

「ま……松下五段!! 何で!?」

 

銀時「いやな? 『俺んとこの助っ人に来てくれたら今度天使とデートさせてやる』って言ったら一瞬で駆けつけてくれた!」

 

 松下五段しっかりロリコンが板についてるがもうソレでいいんだな……

 

 と、ともかく!

 

ユイ「ふぇっ!?」

 

「よくやったぜ銀さん! コレで外野の守備もバッチリだぜ!」

 

ユイ「ダダダダダダイイダイヂアダダダセンパイいたいでずいたいでず!!」

 

 おぉっとはずみで喜びの卍固めしちまったわりぃな!

 

ユイ「イダダダ何でなんでワタシがががががががぁあとで殺す!!」

 

 

 ……その後の松下五段の活躍はソレはもうすごかった! 

 

 外野に行ったボールはどこに飛んでもどんな体勢でも取ってくれる。

 

 ――逆に言えばどんだけ天使とデートしたいんだよって話なんだが……

 

 ……まぁいい! これでウチにも勝ちの目が見えてきたってもんよ! 戦線ナメんな!

 

審判『スリーアウト、チェンジ!』

 

 俺達がベンチへ戻ると……なぜかゆりっぺがいた。なぜかありえないくらいの笑顔で。こわっ恐いよ! 人でも殺したのか!?

 

ゆり「あんたたちやるじゃない! この調子なら勝てるわ! 天使の思うままにならないことがかつてあったかしら……? いい気味ね♪」

 

 おい本音漏れてんぞ。

 

遊佐「ゆりっぺさん、悪役のようですよ?」

 

「っ! うおお遊佐!! お前いつから!?」

 

 突然ひょこっとでてくんなよびっくりするだろうが!

 

遊佐「いえ。あちらの茂みから期を窺っていたもので……それより、レモンのはちみつ漬けを作ってきました。食べてください」

 

 遊佐がタッパーに丁寧に閉じてあるレモンを差し出す。

 

「おぉ流石遊佐気が利くぜ!」

 

ゆり「何よ私は利かないっての!?」

 

 一切れ摘んで口に放る……うおお絶品!!

 

銀時「うおすっげコレうめーわ。サラッとこういうの用意できる女の子っていいよね」

 

ゆり「っ!? …………」

 

 あ、地雷踏んだ。 

 

遊佐「………………」

 

ゆり「………………?」

 

遊佐「……フッ」

 

ゆり「うううウガァァァァァァ!!! 何なのよ!!!」

 

 おいひそかに女の戦い繰り広げんな! 

 

銀時「おいそろそろ行くぞ!」

 

 あんたはこいつら何とかしてから……って気付いてねぇか。この人も結構ニブいな。

 

「…………おう!」 

 

 

 ――そっからはもう点取り合戦だった。

 

 どっちも取って取られて……守るより攻めろって感じだ。

 

 まぁウチのミーハー達は役に立たないとしても……

 

 野田・銀さん・松下五段の三人を敬遠にするのは流石に無理があったらしく、点がどんどん入っていく。

 

 ――そして――――

 

「勝てるかも、しれない……最終回、一点差――」

 

 ――ツーアウト……ランナー二・三塁……

 

銀時「…………タイム!」

 

 ………………………………

 

銀時「やべぇな。ぶっちゃけ俺素人だし、おさえらんねぇ…………」

 

 ………………………………

 

銀時「…………おい、ひできくーん?」

 

「ぇ……?」

 

銀時「どうした? 体調悪いならベンチに引っ込みやがれ」

 

「ぁ、いやいや! 昔……生きていた頃に、似たようなことがあったっけ、ってな」

 

「……スゲー大事な試合だったんだ――」

 

銀時「……おい、お前……震えてるぞ」

 

 え?

 

「は? ……っそっか……? 変だな……」

 

銀時「……話したいことがあんなら言ってみろ。聞いてやっから」

 

 ……この人は本当に――

 

「……よく、覚えてねぇんだけどさ……俺、野球部でさ。……甲子園目指しててさ」

 

「死にそうに暑くて、口ン中泥の味しかしなくて……そういうのは覚えてんだ――」

 

 

「最後の地方大会の最終回。ツーアウトで、ランナーが二・三塁にいてさ……」

 

「……簡単な、セカンドフライがあがったんだ――」

 

 ――カキーンン……

 

「ほぼ定位置……ただ」

 

「それを……取れたのか、落としちまったのか――」

 

「それだけは、思い出せねぇんだ――」

 

「……いや、取れてたんなら忘れるワケねぇよな……」

 

「きっと……取れなかったんだ」

 

《ちっ! かける声もみつからねぇ……!》

 

《みんなの三年間の努力を、一人でムダにしちまったんだからなぁ……》

 

《強烈な疫病神だよ……!!》

 

《あんま言うなよー。さっきから、動いてねぇぜ? アイツ》

 

『――――――――――――』

 

《立ち直れんのかよ……》

 

《俺ちょっと心配だから、センパイに相談してみるよ――》

 

 

《よぉ、話しは聞いたぜ?》 

 

『………………』

 

《大変だったなぁ》

 

『………………』

 

《辛いだろう?》

 

『………………』

 

《そんなお前に今、必要なのは――》

 

『…………?』

 

《こーいうのじゃないか?》

 

「そのセンパイは一つの袋を俺に差し出した。中には白いコナが入ってた」

 

《ダーイジョブ! まぁ……気軽に一回だけでいいから。試してみろよ、な?》

 

《……楽になれるぜ?》

 

『楽に――なれる?』

 

「……楽になれる、全部忘れられる。この苦しみから、この罪悪感から虚無感から!! 全部開放される――」

 

「そのときは、そう思ったよ」

 

 

「……まぁ、結果こんなトコ来る羽目になったけどな」

 

審判『おい! まだ終わらんのか!!』

 

「あ……ハイすいません!! 銀さん、ピッチャー頼むぜ!」

 

銀時「…………おう」

 

 ――――ツーアウト、二・三塁。

 

 みんなが注目して見ている。この試合の結末を――

 

銀時「――――ッ!!」

 

「決めろォ! 銀さん!」

 

相手バッター『……フンッ!!!』

 

 ――カキーンン……

 

銀時「……っくっそ……!」

 

 ……!! 

 

 ――まさか――

 

 セカンドフライ――

 

「あの時と――同じだ――」

 

 コイツを取れば――終わるのか――?

 

 ――そいつは――

 

 ――最高に気持ちがいいな……――

 

銀時「はーいちょっとどいてくれな」

 

 ――へ?

 

銀時「だらっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 いつの間に隣にいた銀さんが……持ってた木刀でボールを無茶苦茶に、がむしゃらにどこかへ飛ばしてしまった。

 

銀時「ふーっ、飛んだ飛んだ」

 

審判『ホームイン!』

 

 あ………… 

 

「…………めぇ」

 

銀時「あ?」

 

「……てめぇ何しやがる!!!!!!!」

 

 銀さんの胸倉に力任せにつかみかかる。

 

「アレ取れてたら勝ちだったのに!! ……いや、んなことはもうどうでもいい。アレ取れてたら!! 俺は――」

 

銀時「消えることができたのに、か?」

 

「――!!」

 

 逆に銀さんも俺の胸倉を掴んでくる。

 

銀時「甘えたこといってんじゃねーよ」

 

銀時「聞いた話じゃお前、戦線立ち上げ時からいる古株なんだってなぁ?」

 

銀時「戦線立ち上げ前からアイツ(仲村)にずっと付いていってたんだってなぁ?」

 

銀時「今までアイツと一緒に戦線支えてきたんだってなぁ!?」

 

「それがどうしたんだよ!!」

 

銀時「だったら!!! 背負ったもん放り投げて勝手に一人で消えようとしてんじゃねぇ!!」

 

「……っ」

 

銀時「アイツを支えるって決めたんだろう? アイツと一緒に戦線背負っていくって決めたんだろう!!」

 

銀時「ならアイツらに背を向けて逃げるようなことしてんじゃねぇよ!!」

 

銀時「消えんなら背負ってるもんに全部カタぁつけて、誰の迷惑にもならねぇようにしてから消えやがれ!!!!」

 

 ……………………

 

銀時「生前はクスリに逃げて、今回はこの世界そのものから逃げるのか?」

 

銀時「もうやめにしようや。そんなこと」

 

銀時「一度くらい前を向いて、立ち向かってみようや」

 

銀時「進めなかったら、俺達がそのきったねぇ背中押してやっからよ」

 

銀時「止まっちまったら、俺達が代わりに進んで、お前の道を作ってやっからよ」

 

 ……………………

 

 銀さんが俺の胸倉から手を放す。

 

 膝から崩れ落ちる俺。

 

「ハハ……何なんだよアンタ、本当に現国の教師かよ? 言ってること全く意味わかんねぇぜ……」

 

銀時「……………………」

 

「だけど――」

 

銀時「……………………」

 

「アンタの言葉は――なんかこう、魂に届いてくる」

 

銀時「……充分だろ」

 

審判『ホームイン!』

 

銀時「あ」

 

審判『ゲームセット!』

 

銀時「………………ひなt」

 

「言っとくが、はたから見たらアンタが勝手にボールかっ飛ばして逆ギレして俺に掴みかかったようにしか見えないからな?」

 

 俺はベンチを指差す。

 

()()()の怒りを買ったのは、多分アンタだけだぜ?」

 

 そこには、なぜだろうか俺が見たこともないような装備を固めたゆりっぺが立っている。

 

 モチロン標的は――銀さんだろう。

 

 ゆっくりと、しかし確実にゆりっぺがこちらに近付いている。

 

 おそらく事情を知らない俺以外のヤツと銀さんには、その足音がカウントダウンに聞こえたことだろう。 

 

 何の、とは――恐ろしくて俺には言えないがな。

 

銀時「ちょ待て仲村話せばわかる落ち着ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲグブェェェェェェェエエェェェ!!!」

 

銀時「裂ける裂ける裂けアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」 

 

 その断末魔の叫び声は、俺達の球技大会の終わりを告げるように、ただひたすら。ひたすらに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………軽いパトロールのつもりだったのに……

 

 私の目の前には、おそらく何か――恐ろしい兵器のようなもので半殺しにされた先生の姿があった。

 

「あなたは何をしているの?」 

 

銀時「……やぁ、ゲリラー・サンクアだよ?(裏声)」

 

 ……………………

 

「Hand sonic:Version2」

 

銀時「えちょっと待ってソレバージョン2とかあったのってか何してんのねぇ! ちょっと!! 立華さん!!!」

 

銀時「ギャァァァァァァアアァァァァァアァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

 

 ―生徒会報告書―

 

 見回り…異常なし。但し、見回り中に巨大な粗大ゴミを発見。これについてはこちらで処分したので問題なし。今後このような事がないように生徒に厳重注意すべき。




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