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心臓に穴を開けられた上、イノセンスも破壊されたアレンはアジア支部に拾われた。
そしてアジア支部の支部長補佐であるウォンは、先の戦闘で疲弊していたクロス部隊の元へと赴きアレンを回収したことを伝える。多少、生死をぼかしながら。確かに、アレンは生きてはいたが危険な状態であることに変わりはないしイノセンスを失った彼がどうなるか分からなかった為だ。
それを伝えられたクロス部隊の面々、特にリナリーは顔を手で多い呆然と立ち尽くす。彼女はあの時、アレンの手を掴めなかったことを後悔していた。
それでも彼らは進まねばならず、リナリーが立ち直るのを待つことなく先へ進む。……飛んできたティムキャンピーと共に。
(これは戦争なんさ……しょうがないことなんさ!!)
ラビは、先の戦闘で使えなくなった船を修復するために派遣されたミランダが運んできた最新式の団服に着替えていた。そんな時にも、落ち込んだリナリーの顔が頭から離れずモンモンと一人考える。
(……ラスロ、それにアレン。二人共、死んだ。いや、ラスロに関してはまだ分からんさ。アレ、存在そのものが謎だし)
それにしても、とラビは思う。
(二人共、クロス元帥に近しい人間。……元帥は一体なにをやってるのさ?)
着替え終えた古い団服を畳み、仕舞いこもうと持ち上げたとき一枚の紙がひらひらと落ちる。それに見覚えがあったラビは、忘れてたと紙を拾い上げ封をきる。そう、以前コムイから渡されたラスロからの手紙だった。
(もしかして、何が大事なことが書かれてるんじゃ……)
失敗した、そう小さく呟いて中に入っていた手紙を広げる。
そしてそこには――
『ラビへ、たまには手紙もいいよな? ちょっと気になることがあったので、手紙に書いておこうと思う』
「ちょっと、気になること? もしかしてノアに関してさ!?」
急いで手紙を読み進める。
それから数行、軽い世間話が入り、そして、アクマのことが書かれていた。
『――それと師匠から聞いたんだけど、アクマのレベル3にはタイプがあるらしい。近接型とか、遠距離型とか。近距離は特に装甲が硬いらしい。まぁ、師匠にしてみれば紙切れ同然の薄っぺらボディだろうけど。それに、能力も強化されてるらしいから気をつけろよ?』
「まるで、その内遭遇するような言い草さ。でも、この情報は助かるさ。それで、次は――ん?」
ラビは二枚目を見て、動きを止めた。
なぜならば、二枚目には大きく、『木・判!!』と書かれていたから。
この時ラビは、ラスロの正気を疑った。
目をこするが、文字は何一つ変わらない。
「これは、スルーするさ。うん、それ前提のものさ」
ラビは無視を決め込んだ。
そして最後の三枚目。こちらは普通だったので、読み進める。
『そう言えば、ラビのイノセンスは能力が多いよな。火判に天判、他にもあったけど俺が凄いなぁと思うのは『木・判!!』だな。いいよな『木・判!!』、天候操作できるんだろ? ピクニックの時大活躍だな『木・判!!』は。雨降っても『木・判!!』使えばからっと晴れに出来るし、逆に日差しが強すぎれば『木・判!!』で雲呼び寄せられるんじゃないか? っていうか、雲の上にいる敵とか厄介だけど『木・判!!』使えば簡単に捕捉できるな!! もう一度言う、雲の上にいる敵とか厄介だけど『木・判!!』使えば簡単に捕捉できるな!! ああ、後は砂漠とか行ってみたら? 雨降らしの神とか使徒として崇められると思う。凄いな『木・判!!』って。『木・判!!』俺も欲しいな。自然物に影響し操作できる、カッコイイな『木・判!!』、憧れる!! それに――――――』
なんか『木・判!!』と言う文字が多く、以上に木判をアピールしていた。ラビは意味が分からない。
(なにさ――!? なんでこんなに『木・判!!』アピール!? 分からない、分からなすぎるさラスロ!!)
より一層、彼に関しての情報収拾の優先度が高まった。ただ、ラビの中ではあまり深入りしたくないという感情が渦巻いていた。いかんせん、考えていることが分からない上に変なペースに乗せられて着地地点が予想できない。会話にせよ、行動にせよ。
「なんか、疲れたさ……あれ、俺ってさっきまで何考えてたんだっけ?」
綺麗に頭がからっぽになっていたラビは、先ほど感じていたモヤモヤが無いことに気づかない。
当然、ラスロはそれまで予想して手紙を書いたわけではない。彼にしてみれば、出航してアクマに襲われたらさっさと木判使ってアクマ倒せよ? と伝えたかっただけである。印象に残る『木・判!!』はその為の物。正直ラビの精神が変に落ち着いたのは予想外である。
「皆のところに戻るさ。……もし、ラスロがヘブラスカに予言を伝えられたならどんな内容なのか気になるさ」
ヘブラスカの予言はよく当たる。
故に、ほんの少しラスロに与えられる、もしくは与えられた予言の内容を聞いてみたいと思いながらラビは出航前に皆の待つ船長室へと歩き始めた。
「ほらほら、早くイノセンス化してみせるっちょ!!」
「無茶言うな! 箱+船の意味不明な置物イノセンス化しろとか無茶にも程があるわ!!」
現在、俺はチョメ助から渡された謎の物体をイノセンス化できるように頑張っていた。ホント、意味が分からない。船単品であればちょっと瞑想して過去の記憶掘り起こしてイージス艦とかそれっぽいものを想像して武器、兵器として認識出来ただろうに、この意味不明な造形にはホント困らされる。
「ていうか、何なんだよこの箱と船は。イノセンス化させたいならもう少し造形を荒々しくとか刺々しくとかするべきだって……師匠も無茶ぶりを。でもできないと、そこの銀から報告行きそうで怖いしなぁ」
そう、俺の隣にはパタパタ浮かぶ銀色のゴーレム(名前はまだない)がいる。師匠が親切にも俺に作ってくれた最新式のゴーレムらしい。ただし、連絡機能についてはほぼ一方的だけど。向こうからかかってきたら、受信絶対。此方からかけても師匠が気に入らなければぶつ切りOK。有り得ない。
「はぁ、せめて酒瓶とかと同じように普段振るわれていればやりやすいのに……」
「酒瓶を武器と認識できるのは、オイラはラスロしか知らないっちょ」
「いや、きっとアレンだってできる。まぁ、アレンの場合はトンカチとかそこらだろうけど。いや、トンカチって皆武器って共通認識持ってるか」
哀れみの視線が注がれる。
アクマに再度、哀れまれた。
……有り得ない。
「そういや、アレン達は無事かな? そろそろ師匠を追って船に乗り込む頃だと思うんだけど」
「随分と的確っちょね。概ね正解っちょ。ただ、一人欠けたっちょ」
何故チョメ助が知っているかなどどうでもいい。それよりも、一人欠けたと言う言葉だ。もしかしたら、という疑念はあった。俺が逸らしたのはティキに殺されるエクソシストの人数であり、ティキが中国に辿り着く時間ではない。何せ、幾ら頑張ったところで彼らノアに距離なんて問題にならない。ロードがいるから。
「アレン・ウォーカーがイノセンスを破壊された上、重傷で運ばれたっちょ」
思考が停止する。
まさか、そこを変化させることはできなかったのか?
確かにあの時、ティキは撃退したし縛り上げておいた。まぁ、あの鎖がどれだけ時間を稼いでくれたか知らないが。それにしても、少し早すぎる。この移動速度、方舟? それともロード?
「ラスロ、ショックなのはわかるっちょ。でも、今はそんな状況じゃ――――――」
チョメ助の言葉に我に返る。
大丈夫、死んではいない。重傷ってことは、まだ生きている。犯人は恐らくティキだから、次にあったときは覚悟してもらおう。徹底的に殴打して縛り付けて動けなくしてやる。
「……ん、分かってる。戦争だ、仕方ない。でもまぁ、どうせ神様に愛されたアイツの事だきっと、平気さ」
「淡白な、いや、信用してるっちょ?」
「そ、信用してる。アレンはそうそう歩みは止めないよ。一時的に止まっても、その後絶対に歩き出す。遅れを取り戻すように」
「兄弟弟子間の信頼っちょ? ……まぁそれはいい事でも、早いとこそれイノセンス化するっちょよ?」
「人がいい事言ってんのに掘り下げるなよ、涙出てくるよ?」
「オイラの胸の中で泣くっちょ?」
「何言ってるの寸胴ボディ? そのアクマボディで抜かすな」
今のチョメ助はアクマにボディコンバートしていた。
そうでないと、飛べないから。
「っちょ、もう直ぐ日本に着くっちょ。そこからは単独行動っちょ」
「着くって言われても、まだイノセンス化できないんだぜい」
「まぁ、オイラの背中に上でイノセンス作られても痛くて困るっちょ」
そう、俺はそのチョメ助に乗って空を飛んでいた。
初めて空を飛んだ感想だったが、それよりもこの船もどきのせいで楽しめなくて特にない。強いて言うなら、この隣飛んでる銀色も凄い速いなーってことぐらいだろうか。コレ、多分逃げてもすぐ追いつかれる。
「あ、でもさチョメ助。俺は単独行動って言うけど、何を目指して動けばいいんだ?」
「えーと、確か――好きに動けだった気がするっちょ」
「好きに? つまり、適当に歩いてればいいって?」
「そうっちょ。マリアン曰く、『馬鹿弟子一号は歩いているだけで災難に襲われる。日本で襲われてくれれば――』」
「OK、分かったもういいです。つまり、だ。俺って歩いてるだけで敵引き付けるから、師匠が動きやすくなるってことだろ? 必要な時は銀のゴーレム通して連絡ってな。ハハハハハハハハハって結局囮じゃねぇか――――――ッ!!」
「ある意味凄い才能っちょ。……オイラ尊敬してるっちょよ?」
「おい、最後なんで棒読み?」
「さ、さぁ、着くっちょ! 頑張ってくるっちょラスロ!!」
「…………………………」
この鬼共め、いつか覚えてろ。
「でも、ちょっと寂しくなるっちょね。オイラ、この後はマリアンを追ってきたアイツラのとこ行かなきゃならんっちょ」
「行ってこい。どうせ忠告しに行くんだろ? その優しさ、俺にも分けてくれればいいのにな?」
まぁ、来ても来なくても彼らは利用されるだけだが。
しかし俺と違って選択肢があるってズルイよね?
「それはマリアンからの信頼っちょ。……ラスロ、頑張るっちょよ!」
「おう、頑張るともさ。……多分、これが最後か?」
「……ちょ。オイラの限界も近いっちょ、当然っちょね。只違うのはちゃんとイノセンスで破壊されるっちょ」
「そうだな、お前、否、チョメ助はいずれイノセンスで破壊される。ちゃんと、魂は解放されるさ」
しかし、チョメ助に生まれた
過去、エリアーデというクロウリーが愛し愛された美しいアクマも同じ結末を辿った。レベル2になって生まれた自我は消滅し、縛られた魂のみが開放された。また、他のアクマと違うという点も同じだろう。エリアーデは、人を、エクソシストではなかったが、イノセンスを使えるクロウリーを愛した。チョメ助もまた、改造され自ら殺人衝動をある程度抑えられるようになった。
結末も、同じなのだ。
「こればっかりは、どうしようも無いんだよなぁ……」
正直、悔しい。
俺は思っていたよりチョメ助を友として認識していたらしい。
居なくなるのは、寂しいと俺も思う。何より、破壊されたあとの自我の行き先が消滅であることが、悲しい。せめて、他の魂同様にとも思うがそうはいかない。本来はあるはずのないモノであり、還る魂とは全くの別物だ。
「ハハ、あぶねぇ……ちょっと
「褒められてるっちょ、それ?」
「ん、褒めてる。結構硬い意志だったのに、中々揺らいでた」
「ちょ! ならばいいっちょ。揺らがせるだけの魅力がオイラにはあるっちょな?」
「ははは、寸胴がなに言ってるのやら」
「ちょ~~~!?」
……チョメ助、お前は俺が破壊してやる。
その時、俺がその場にいなくとも。
破壊するのは、きっと俺だ。
取り敢えず、目標に一つ追加。
どうしようもない、アクマに肩入れしかけてる俺の私怨。
あのデブ公は、最低でも一発殴る。ついでに、師匠も。
目標、帰る、とか掲げておいてこの感情――――――有り得ない。
活動報告にてアンケートを募集したいと思ってます。
基本ルートは以下の三つ。
1、教団ルート
2、ノアルート
3、その他のルート
の三つになります。
詳しくは活動報告にて。
-追記-
あとがき冒頭にあるように、アンケートは活動報告で募集しています。
投票は活動報告にお願いします。