◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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先生の問題

 ゲームが始まり、アイテムのメンバーはそれぞれ動き出した。

 

 その内の一人、フレンダ=セイヴェルンは外に出てまずヒントを持つ人間を探すことにした。

 珱嗄と違って、そのヒントをくれる人間は隠れてはいない。それに、珱嗄の知り合いならば見れば分かるほど変な人に違いない。すぐに見つかるだろう、という考えに従った結果だ。

 

 第七学区の道すがら、色んな人を見るのだが、どうも平々凡々。奇異な雰囲気の人は全く見当たらない。さしあたり麦野以外のレベル5なんかが該当しそうだが、レベル5だって230万人の内の7人。しかもその内のほとんどが暗部に関わる人間だ。探そうと思って見つけられる存在ではない。

 となれば、手当たりしだいに探すしかない訳だが、

 

「あー……全然見つかんない訳よ……」

 

 フレンダは右も左も分からない状態で動くには、少し根性が足りなかった。

 

「……んー、レールガンでも見つかればいいんだけど」

「あたしがなによ?」

「……あ! アンタ!」

「え、な、なに!?」

 

 ふとつぶやいたフレンダだったが、意外にもその呟きに返答があった。項垂れる顔を上げるとそこには、レベル5の第三位……御坂美琴が立っていた。

 

「アンタ! 珱嗄さんの居場所知ってるでしょ! とっとと吐きなさい!」

「ハァ? 珱嗄さんの居場所って……知らないわよそんなの……」

「え? 知らないの? ヒントとか……」

「知らないけど……ヒント? どういうこと?」

 

 フレンダは悟った。こいつは外れ、ハブられてる子だと。

 そして悟った途端にとても生温かい眼を浮かべてにっこり笑う。

 

「ううん、なんでもないわ。大丈夫、ごめんね急に」

 

 フレンダはそう言うと、すぐに美琴の隣を通り過ぎてその場を去る。ハブられた事を知れば彼女はきっと悲しむだろうと考えての行動だ。

 御坂美琴はささっと去っていくフレンダに、首を傾げて怪訝な表情を浮かべる。騒動毎には必ずと言って良いほど首を突っ込む彼女だが、今回は意図的に参加させてもらえないということに、まだ気が付かないでいるのだった。

 

 ハブられ美琴、珱嗄大爆笑である。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 そしてまた別の場所では、絹旗最愛が珱嗄の居場所のヒントを持つ人を見つけていた。

 

「……珱嗄さんの居場所のヒント、超持ってますよね?」

「………なんでそう思ったんです?」

「……見た目が……その……」

「そうですか、見た目ですか、私の見た目が何処かおかしかったですかー?」

 

 彼女の前にいるのは、小柄な彼女よりも頭一つ分位小さい少女。ピンク色のボブカットに、くりくりっとした瞳で睨んで来ている。そう、月詠小萌だ。

 彼女を見つけた絹旗最愛は、最初はただの小学生かと思って見逃した。

 

 しかし、

 

 彼女と擦れ違った後、彼女の事を先生と呼ぶ生徒が現れたのだ。小学生ではなく、『先生』。

 となれば、この学園都市広しといえどもこんなに奇妙な人物はいないだろう。絹旗はすぐに彼女を捕まえた。

 

「その……超若い大人だなぁと」

「ほほお、まぁ良いでしょう……確かに私は珱嗄ちゃんの居場所のヒントを知っています。でも、ただで教えるわけにはいきません!」

「なっ……」

「あれ? 珱嗄ちゃんのメールではこう言ったら『超なっ……!』って返って来るって書いてありましたが、違いましたね」

「何でもかんでも超超付けるわけじゃないです!!」

「超ややこしいですねーふふふっ」

 

 クスクス笑う小萌に、絹旗はぐぬぬと唸る。見た目は子供にしか見えないのに、こうも言い負けるとは、少しだけ悔しかった。小萌は子供の様な容姿だが、それでも大人なのだ。まだ十代である絹旗とは生きて来た年月が違う。

 

「で、どうすれば超教えてくれるんですか?」

「うふふ、先生の出す問題を3問答えられたら教えてあげますよー」

「問題……ですか?」

「はいー、私が出す問題に答えるまでの制限時間はありません。そして、私の出した問題の答えを誰かに聞きに行くのもおっけーです。ただし、私はこの場に留まってはいませんので、答えが分かったらもう一度探して下さいねー、先生も忙しいのですよー。あ、もちろんこの場で分かればすぐに答えてもらって構いませんよ?」

 

 絹旗は思った。なんだこの鬼畜ゲー、と。

 先生、ということは専攻の教科についてはスペシャリストであるわけだし、専門分野のコアな部分を問題に出してくる可能性もある。となれば、自分がこの場で解答出来るかどうかは分からない。いや、恐らく出来ないだろう。つまり、答えを知りに、分かる人間を探しに行って、解答を持って彼女をまた探しに行く。それを三回繰り返さなければならないのだ。

 

 非常に時間のかかるヒント保持者である。

 

「……じゃあ問題超お願いします」

「はいー、それじゃあ一問目いきますよー。先生の専攻は発火能力(パイロキネシス)ですから、それに関する問題です。発火能力者は『AIM拡散力場』に似通った共通点があることが最近の研究で分かっているのですが、その共通点とは何でしょうか?」

「……ちなみに他の問題は?」

「一問目が解けたら出してあげますよー?」

 

 舌打ちする絹旗。その場から踵を返し、何処かの研究施設を当たることにする。答えの分からない自分からすれば、解答を用意しなければいけない。珱嗄を探すに当たってヒントは必須なのだから。

 

「ちっくしょおおおお!!」

「頑張ってくださいねー」

 

 走り出す絹旗に、手を振って見送る小萌。

 

 珱嗄の仕掛けたゲーム、簡単な訳はなかった。

 

 

 


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