◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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二人目の伝説の少女

 沙耶side

 

 

 シーザーサラダ。それは至高の料理。サラダ料理だけでなく、全ての料理において頂点を取る究極の料理。だからこそ、私がこの料理を食べている間邪魔する奴は許さない。邪魔する奴は全員豚だ。踏んでやることすらも、値しない。

 私は小さい頃から、こんな性格だった。周囲の大人は総じて罵ったし、近寄ってくる変な気持ち悪いおっさんは全員蹴り飛ばしてやった。からかってくる男子は能力で叩きのめしたし、平莱に入ってからは女子ばかりだったから安心したけど、それでも高い実力を持った私に嫉妬する女の虐めは、予想外。まぁ全員叩きのめして配下にしてやったけどね。

 

 だからこそ、この瞬間、私の怒りは頂点に達した。

 

 

 

「僕の女神ぃぃぃぃぃぃ!!!! 可愛がってあげるよぉぉぉぉおおおお!!!」

 

 

 

 テーブルを吹き飛ばして、客を押しのけて、静かなで穏やかな空間を破壊して、私達のいるテーブルへと接近してきた豚は、そう大声を上げながら、

 

 

 ――――私のシーザーサラダをテーブルごと台無しにした

 

 

「あ………!」

 

 一瞬で、幸せだった気分は悲しみに包まれた。シーザーサラダが、床に落ちた。そして、豚はそれを汚い足で踏み躙った。悲しみは怒りへと変換され、怒りは精神を暴走させ、暴走した精神は―――能力を発動させた。

 

 

「死ね、この汚物がぁぁッッ!!!」

 

 

 気が付けば、信じられない位速く、信じられない位の威力で、豚を丸焼きにしていた。死んだかもしれない、でも今の私には豚が死のうと死ぬまいと関係無かった。シーザーサラダの敵は、私の敵だ。一片の塵も残さず燃やし尽くしてやっても、足りない重罪だ。

 

「きゃあああ!!?」

 

 常盤台のウェイトレスが悲鳴を上げた。先程まで居た客も慌てて店を飛び出した。食器が地面に落ちて、ガシャンガシャンと割れたり、飛び散ったりして、店内は阿鼻叫喚な音で埋め尽くされた。

 

「う……うう………め、女神……!」

「うるさいわよ、この豚。私の食事を邪魔する罪の重さを知らないの? 頭が著しく悪いのね、正直視界に入れたくも無い汚さだけど、今この一瞬だけは私の視界に入ることを許してあげる。だからここで私に殺されなさい、DNAの一片も残さずこの世から消滅させてあげる」

 

 燃えた筈の豚は、何故かその身体から炎を消していた。横を見ると、あの男……いや、珱嗄……さんがその手で私の炎を弄んでいた。どうやら、珱嗄……さんがこの豚から炎を回収したらしい。

 

「うふひひひ……もっと、もっと罵って下さい……女神さまぁ……! うひひひ!」

「っ!?」

 

 ぞわぞわと、鳥肌が立つような声音で、気持ち悪いこという満身創痍の豚が、此方にずりずりと這いずって来る。とてもじゃないけど、気持ち悪かった。

 

「うるさいわね、この豚がっ!」

 

 だから、私は豚の頭を踏んだ。思いっきり踏みつけてやった。だというのに、

 

 

「うふふひひひひ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 

 豚は屈辱を感じるどころか、感謝感激で喜色の色を見せる始末。気持ち悪い気持ち悪い。何だこの生き物は、踏まれて喜ぶなんて、変態だ。死んでしまえばいいのに。

 なんでこんな奴が生きてるんだろう。意味が分からない。世界にはこんなに気持ち悪い奴がいていいの?

 

「島風ちゃん」

「っ!」

 

 肩にふと手がおかれた。一瞬驚いてびくっと身体を震わせたけど、その手の主は珱嗄……さんだった。出会った時から浮かべている楽しそうな笑みは、少しムカつくけど、それでもこの目の前の豚よりは幾分もマシだった。

 

「下がってな。この汚物はね、消毒しても無駄なレベルの変態だから」

「う、うん……」

 

 何を言っているのか、少し理解出来なかったけど、それでもこの汚物から離れられるのなら不満は無かった。珱嗄……さんは、豚に近づいてしゃがむと、汚物の顔面を掴んで持ちあげた。凄い腕力だ。

 

「ウェイトレスさーん」

「あ、は、はい!」

「警備員は呼んだ?」

「は、はい……も、もうすぐ来ると思います」

「うん、ありがとう。さて、変態君」

「は、放せよ………! 僕と女神たちの逢瀬を邪魔するな……!」

 

 救いようのない変態だと思った。女神っていうのは、きっと私達の事を言っているんだろうけど……気持ち悪過ぎてその呼び方は嫌いになった。すると、珱嗄……さんは変態にむかってにっこり笑うと、店の外へと出て行った。その背中から、なんともいえない威圧感が放たれていて、なんとなく付いていくのが気が引けた。

 

「………」

 

 

 

 ―――ぎゃああああああああああああああああっっっ!!!!

 

 

 

「「!?」」

 

 外から聞こえて来た悲鳴。それは、あの豚のものだった。珱嗄……さんは何をしたんだろうか、知りたい半面………知りたくない感じもした。

 

 

 




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