◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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新たな伝説の始まり

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 常盤台の喫茶店というだけあって、出されるメニューは庶民的であろうが最高質の一級品だった。チョコレートパフェなのに、高級感あふれるデザインとそれを裏付ける味が兼ね備えられており、1000円という値段を出しても食べる価値はあると思わせるようだ。その証拠に、美紀ちゃんが夢中になってパフェに喰らい付いている。流石はお嬢様学校、徹底してるな。

 とはいえ、紅茶一つとってもこの質だ。お嬢様ってのはいつもこんなものを食べているのか、さぞ窮屈だろうな。いや、慣れてしまえば関係無いのか。

 

 そういえば、島風ちゃんはシーザーサラダをもくもくと食べているが、本当に好きなんだな。今までピンと張り詰めていた表情が、シーザーサラダを食べた途端に綻んだ。というか、ずっと食べてるけど今食べてるのでもう五皿目なんだが。一皿ごとにドレッシングを変えてるから楽しみながら食べてるんだろうけどさ。サラダとはいえ、此処まで食べるなんてなぁ。常盤台の生徒達も少し驚いてるぞ。

 

 まぁ、喫茶店というだけで落ち付ける場所であることには変わりない。まして、客が入るのを尻ごみしてしまう程の店だ、客入りは乏しいから静かだ。入る客も上品なマナーを習得しているお偉いさんっぽい人とかだしな。―――ん?

 

「……ふぅ……ふぅ……こくっ……はぁはぁ……ふひひ」

 

 なんか変なのいた。喫茶店の隅の席に一人で座っている男だが、サングラスを掛けて、注文したコーヒーを飲みながら挙動不審に周囲を見ている。というか、常盤台のウェイトレスを見ているようだ。まぁ、メイド服を着た女子中学生、それも上品、美麗、清楚と、三拍子整ったお嬢様というトップクラスの属性を兼ね備えた女の子達だ。多少のお金が掛かるとしても、近くで眺めたい気持ちは分かるよ。気持ち悪いけど。

 あ、こっち見た。とりあえず視線を切って、その男から意識を外した。面倒な事には関わりたくないからな。

 

「ごちそうさまですっ」

「お、食べ終わったのか。どうだったよ美紀ちゃん」

「美味しかったです! あぁ……幸せです……」

「もきゅもきゅ……」

「島風ちゃんは……まだシーザーサラダに夢中だな」

 

 普段の好戦的な性格と振る舞いとは打って変わって、食べている時は小動物みたいだ。ギャップ萌え要素を持つとは、ドS幼女の癖に属性多いな。

 まぁ、歩きまわるよりもこうして静かに時間が過ぎるのを楽しむ方がいいから、幾らでも食べててくれて良いけどさ。

 

「まぁ、こんな時間も……悪くない」

 

 呟いて、紅茶をぐいっと飲みほした。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

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 常盤台中学が出展している喫茶店に入った。中はまさに楽園だった。黒いニーソックスとメイド服との間の絶対領域、少し羞恥の滲む女の子の表情、たどたどしいけれど、一生懸命ウェイトレスとして振る舞う少女達、最高だっ……!

 それにお嬢様だからこそ、世間知らずなあどけなさと男を知らない清純さがあって、まるでメイド服を着た天使みたいだ。うふひひ……おっと、思わず涎が。少々高い出費だったけれど、この楽園に居られるのなら野口や福沢の一枚や二枚、安いものだ。なんてハイクオリティなメイド喫茶! しかもその自覚がないウェイトレス! 天然で出来上がったこの楽園! まさしくパラダイスにしてユートピア!

 

 あの綺麗で小さい顔に、僕の愛情をたっぷりと掛けてあげたい……綺麗だからこそ、汚してやりたい衝動がむくむくと湧いてくる。

 こんな汚い感情で欲情している僕に向かって、ウェイトレスとして無邪気に微笑む天使達……その羽をむしり取って、僕だけのものにしてあげたい……! うふふひひ……!

 

 気がついたらもう2時間も滞在していた。お金もかなり出費してしまっているが、気にならない。大覇星祭様々だなぁ。

 

「いらっしゃいませ」

 

 すると、喫茶店の入り口から新しい客が入ってきた。どうやら男みたいだ、チッ……僕だけの楽園なのに、汚物が……。だが、まぁ僕の邪魔をしないなら別に良い。僕の妄想力を持ってすれば、人一人視界から排除する事くらい簡単だ。

 

 

 が、

 

 

 そうしようとしたその瞬間、電撃が僕の身体を貫いた様な感覚に陥った。入ってきた男の後ろ、そこには女神がいた。二人の少女がいた。

 

 一人は穏やかな顔立ちと、どこか大人っぽさを滲みだしている少女。亜麻色でふわふわしていそうな髪の毛が、優しそうな雰囲気を更に柔らかくしている。

 

 一人は逆に張り詰めた雰囲気を持っている。黒髪と吊り目が刺々しさを醸し出していて、短パンから伸びた細く、縞々ニーソに包まれた足は、思わず踏んで貰いたいと思ってしまう位魅力的。

 

 僕はSでもMでもないけど、穏やかな少女には優しく膝枕でもして貰えば昇天モノだろうし、女王気質な少女には踏んで、罵って欲しい位だ。しかも、二人ともかなりの美少女。将来は多くの男子にモテるだろう素材だ。

 天使、以上に女神だ。視線が離せない。だが、ずっと見ていると怪しく見られてしまう……自分を強く持ってなんとかコーヒーを飲みながら視線をあちらこちらへと彷徨わせた。

 

「……ふぅ……ふぅ……こくっ……はぁはぁ……ふひひ」

 

 へんな笑みが漏れたけど、関係無い。ここは天国だ……!

 さっきの男が此方を見ていた気がするけど、関係無い。僕の視線はゆっくりと二人の女神へと誘われていく。チョコレートパフェを美味しそうに食べている彼女は、まさしく無邪気な可愛らしさを持っていた。理性がぐらつく。今すぐにでも襲い掛かってしまいそうだ。そして、あの無邪気な表情を恐怖と快楽で染め上げてあげたい。でも、僕はそれを必死で抑える。

 

 

 だが、駄目だった。

 

 

 女王気質な少女のサラダを食べている姿が、トドメだった。

 

 

 張り詰めた表情は、綻んで、女王様が思わず見せた小動物の様な一面。ぞくぞくぞく! と身体が震えて、我慢が利かない。駄目だ、これは――――耐えられない! うひ。うひひひひ!!

 

 

 

 気がついたら、僕は椅子を倒しながら勢いよく立ちあがり、女神達の下へと

 

 

 

 

 駆け出していた。

 

 


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