◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
その後、一旦恋人繋ぎの競技は終了した。次の競技は翌日の同時刻に行われる。食蜂達は翌日も同じ様に第二競技に出る―――筈だった。そこで珱嗄達は競技から外されてしまったのだ。何故かというと、強すぎたから。
今回の結果で、殆どの学校が珱嗄達に賭ける様になったのだ。それ故に、競技が競技として成り立たなくなってしまった。結果、統括理事会が……つまりアレイスター・クロウリーが介入したのだ。こいつら参加させたら駄目だろ常識的に考えて、と言って。何せ学園都市に七人しかいないレベル5の一人と、彼をもってして無敵と評される珱嗄のペアだ。勝てと言う方が無理がある。
「あーあ、降ろされたなぁ」
「まぁ大暴れし過ぎたものねぇ……」
とはいえ、珱嗄達もそう簡単に納得した訳ではない。当然反対した……が、最後には土下座で頼まれるという結末に至り、とりあえず平莱小学校が後日なにかしらの謝礼をするということで、珱嗄達は退く事となった。
とはいえ、こうなると大覇星祭での予定がなくなってしまった。結局のところ、珱嗄は珱嗄であるが故に、普通のイベントには中々参加する事が出来ないようだ。強過ぎる力は、常識の範疇から疎外され、切り離される。
「さて、どうしたものかな」
「とりあえず、私は常盤台の競技があるから心苦しくはあるけれど、そろそろ行くわねぇ?」
「はいよ。じゃあな、また何かあればちょっかい出すよ、しいたけ」
「あ、またしいたけって呼ぶの!?」
「恋人繋ぎ終わったし」
「そ、それはそうだけどぉ…………むぅ、もういいわよぉ!」
食蜂は、不服そうに、不満気に、唇を尖らせながら、長い金髪を揺らして去って行った。珱嗄はその後ろ姿を見送りながら、ふむと後頭部を掻いた。
「やることがなくなってしまったなぁ……」
◇ ◇ ◇
珱嗄side
さてさて、やることが無い。しいたけも去って行ってしまったし、恋人繋ぎも降ろされてしまった。レベル5の面々をしっちゃかめっちゃかに弄り倒すのも悪くは無いけれど、木原幻生の一件でもう色々やってしまったからなぁ……仕方ない。被ってしまうネタは総じて好まれないものだ。止めておこう。
という訳で何をしようか。
いや別に何かしなきゃいけないとかそういう訳ではないけどさ。何かしてないと物語として成り立たないんだよね。メタ発言は止めておこうかな。ここはアレかな、困った時の学園長……はいないんだった。理事長だよね。
という訳で、電話を掛けてみた。方法はやはりというか、勘。
「もしもし?」
『………君はどうやら私の電話番号をどこからか入手しているようだな?』
「あ、ピザの宅配頼んで良いっすか?」
『ピザを頼むなら私へ電話を掛けるのは――――間違っている!!』
ぷっつん……ああ、切られてしまった。まぁいいや、とりあえず奴のアドレス名は『役立たずのアレ?胃?スター? 黒売り~☆死ね』で登録しておこう。いつかあのクソ長い髪の毛消失させてやろう。睡眠とかは必要ないそうなので、起きている時に抵抗空しく引き抜かれる感じがいいな、そうしよう。いつかね。
それはさておき、またやることが無くなってしまった。どうしようかな。ヒソカとかクロゼとかがいた時は暇しなかったんだけどなぁ。仕方ない、ここはぶらぶらと大覇星祭の人混みの中を散策するとしよう。さてさて、何処へ行こうかねー。
「あ、お兄さん!」
「んあ?」
と、思ったら聞き覚えのある声に呼び止められた。なんだなんだ、結局イベント起こるんじゃないか、いつもいつも遅いんだよ。
とまぁそう思いつつも、俺はその声の主―――長峰美紀ちゃんへ向き返る。美紀ちゃん一人かと思ったらなんだ、島風沙耶の嬢ちゃんもいるじゃないか。美紀ちゃんが手を引いている所を見ると、彼女を連れて来た、ということなのだろう。ペイント液が綺麗に落とされていて、服も新しい服に変わっている……いや違うな、選択して能力で乾かしたのか。炎使いって便利だなぁ……お日様の香りはしないんだろうけど。大きなお友達達はそれでも幼女の匂いだけで云々かんぬんっと……。
「おお美紀ちゃん達、何の用だ?」
「はい……ほら、沙耶ちゃん」
「うぅ……わ、分かってるわようるさいわね……なんで私がこんな豚に……」
「あ、沙耶ちゃんじゃないか。全国放送で泣きべそ掻いた、沙耶ちゃんじゃないか!」
「うっさいわ!! 蹴り飛ばすわよ!?」
「はいはい、出来ないことは言わないの。何の用なんだ?」
相変わらず気丈な娘だ。まぁ、弱冠10歳でここまでドSだと、将来有望かね? まぁまだまだ弱っちいけどさ。
「………ばーかばーか」
「沙耶ちゃん?」
「う、わ、分かったから……そ、そんな怖い顔しないで……ごめんなさい」
「その言葉は私に言うことじゃないよね?」
「ひっ……さ、さっきはごめんなさい! 年上の人に言いすぎました……!」
おやまぁ……なんというか、この子が謝るとは思わなかった。というかこの怯えよう、美紀ちゃんは何をしたんだ。ちょっとしたことじゃ此処までの変化は無いと思うんだけどなぁ。
という思いを込めて、美紀ちゃんを見てみた。すると、美紀ちゃんは俺の視線に気付いた。そして、悪戯っ子のように、それでいて小学生とは思えない妖艶さを醸し出しながら口端を吊り上げながら、口元に人差し指を立てた。
「ちょっとオシオキしただけですよ」
「あぁそう、良くやった」
「えへへ」
「なんなの……なんなのこの二人……! 意味分かんない、意味分かんない……!」
俺と美紀ちゃんが話してると、沙耶ちゃんは頭を抱えながらぶつぶつそんなことを呟いていた。なんだこの状況は。マジ何をしたのか気になってきた……けどまぁいいや。
「謝りに来たんなら別に良いよ。どうやら美紀ちゃんが色々やってくれたようだし」
「えへっ☆」
「ひっ……」
美紀ちゃんがニコッと笑うと、恥も外聞も捨てたのか沙耶ちゃんは俺の背後に隠れた。でもまぁ俺は盾になるのはいいけど、盾にされるのは嫌いなので、沙耶ちゃんの両肩を掴んで美紀ちゃんに差し出した。沙耶ちゃんの絶望に染まった瞳は、凄く気にいった。
「ところでお兄さん、暇なら私達と一緒に遊びませんか?」
「―――ッ!―――ッ!!」
すると、美紀ちゃんがそんな事を言う。というか、美紀ちゃんに掴まれた沙耶ちゃんが自分で口を抑えて声を出さないようにしている。何をしてんだ美紀ちゃん、その沙耶ちゃんの股間に伸びた手はなんだ?
「いいよ、お兄さんが面倒見てあげよう」
面白そうなので、今日はこの子達のやり取りを眺めながら楽しむとしよう。ああ、面白い。