◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
一時間後。珱嗄は約束の出店の場所で、一方通行と打ち止めと共に食蜂を待っていた。
結局、一方通行と打ち止めは10秒以内という無茶苦茶なルールをこなすことが出来ず、10分という時間を掛けて姿を現した。とはいえ、珱嗄のiphone89sのバックアップ機能はONにされておらず、元々そんなデータは無いのだ。それを知った一方通行は、膝から崩れ落ちた。
「さて、ほらお嬢ちゃん。たこ焼きをやろう」
「わーい! ってミサカはミサカは喜んでみたり!」
「あーん」
「あーむッてあっづい!!?」
「灼熱のたこ焼きらしいよ?」
「舌が! 舌が火傷した!! ってみしゃかはみしゃかは痛みに悶絶してみはい!?」
珱嗄と打ち止めは、見たことある様な勢いのやり取りをする。珱嗄が一方的に幼女を攻撃している光景だ。一方通行はその光景を少しだけ懐かしんで、もう少しだけ見ていよう、と止めるのを後回しにする。彼も分かっているのだ。打ち止めが珱嗄の事を覚えていないことを。普段会話していればそれくらい察する事が出来るのだ。
「どれどれ、見せてみ? あー」
「あー」
「ふむふむ……あー確かにちょっと赤くなってるね、ホイ」
「あッッぢゅい!!? あひっあひっ! あふあふッ!」
珱嗄は小さな舌を伸ばして 涙目の打ち止めの口の中に更にたこ焼きを放り込んだ。その結果、打ち止めはその場を転げ回る。律儀にたこ焼きを口の外へ出さない所が、彼女の食べ物を無駄にしない精神が垣間見えた。
そして、彼女はしばらくあふあふと口の中をもごもごさせた後、口の中のたこ焼きを丁寧に噛んで、飲みこんだ。顔を真っ赤にさせて、涙目を隠さず立ち上がる打ち止めは、ひりひりと痛む舌を出して、怒り心頭といわんばかりにぷんすかと地団駄を踏んだ。
「ほうっ! はひふふほ!! ひひふ! ひはひへなほんはほほひほんはほほふふはんて!(もう! なにするの!! 鬼畜! いたいけな女の子にこんなことするなんて!)」
「ゴメン、何言ってるか分かんね」
「むひょおおおおおお!!! っへみはははみはははふんはいひへひふ!(むきょおおおおおお!!! ってミサカはミサカは憤慨してみる!)」
「お前らそろそろ大人しくしろよ」
「ごめんねセロリ。構って欲しかったのか」
「ほへんね?」
「お前ら俺の時だけなンでそンな息ピッタリなンだ?」
打ち止めと珱嗄は変な所で息が合っていた。やはり、一方通行を少なからずよく思っている者同士だからだろうか? 一方通行が如何にぶっきらぼうな対応をしようが、暴行を振りかざそうが、見捨てないのがこの二人だ。
故に、一方通行も下手に文句を言えない。恐らく、一生頭が上がらない相手なのだろう。単に、感謝の気持ちが心の底にあるから。
「さて……そろそろしいたけが……あ、来た」
「はぁ……お待たせぇ………って何このメンツ!?」
「第一位と第三位のクローンと俺だ」
「意味不明! 貴方この一時間でなにしてるのよぉ!」
「ちょこっとレベル5勢に電話しただけだ」
「貴方の人間関係力に脱帽だわ!!」
明後日の方向を向いて食蜂操祈は叫んだ。通り過ぎる通行人が一瞬びくっと動きを止めた。そして、食蜂操祈がそれに気付き、少し恥ずかしそうにした後能力で今一瞬の記憶を全て消した。
リモコン一つでこの辺一帯全員の記憶を一瞬で改竄出来るこの能力は、やはりチートと言って差し支えないだろう。だが、珱嗄は能力を『逸らし』、一方通行はベクトル変換で防いだ。打ち止めは一応記憶を消されたのだが、ミサカネットワークの共有機能で結局思い出すことになった。この三人、食蜂の能力を全力で拒否っている。リモコンから出る赤外線に乗せて放たれる能力を防ぐ所を見ると、まるで着信拒否の様だ。
着信拒否されるしいたけ。なんともまぁ不憫である。
「レベル5といえば、お前らレベル5ってどれくらい他のレベル5について知ってんの?」
「あン? そォだな……知っての通り第三位の事はある程度知ってっし……他の奴らも序列と能力位なら……」
「私もそんな感じよぉ? まぁ御坂さんは同じ学校だからよく知ってるけどね☆」
「ミサカもお姉様の事ならよーく知ってるよ! ってミサカはミサカは手を上げて自分の意見を主張してみたり!」
こうしてみると、第三位の御坂美琴のネームバリューがどれ程の物なのかが良く分かる。第一位や第五位にもよく知られており、おそらく他のレベル5も良く知っているだろう。普通の一般生徒ですら、常盤台の
だが、一方通行と妹達、御坂美琴の三人はあの実験――――
「つーかレベル5に関してならテメェの方が良く知ってンだろ」
「そうよ、実際此処に来るまで私第一位に会うなんて思っても無かったわよぉ?」
「てかテメェ誰だよ」
「第五位のレベル5よ!」
「あァ悪ィな、他のレベル5には興味ねェわ」
「え、それじゃあ御坂さんだけ知ってるのって……まさか、好きなの!?」
「違ェよ!」
「あれ? でもそのお隣にいる子って何処となくみこっちゃんに似てません? まさか好き過ぎて似てる子攫って来たとか……!?」
「え……そういうことだったの!? ってミサカはミサカは驚きを隠せずに戦慄してみたり!」
「お前らホント打ち合わせでもしたのか!? あァ!?」
一方通行を弄る時に限って何故か他のキャラクターの息がぴたりと合う。一方通行は自分が弄られキャラとして定着しそうなこの状況に対して、少しだけ焦燥を感じていたのだった。