◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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垣根帝督

 アレイスターから第二位の超能力者(レベル5)が暗部にいるという情報を貰って、いい加減電話掛けるの止めてくれと頼まれたのを即答で却下して一方的に電話を切った後の事、珱嗄は暗部に付いて調べていた。例によってiphone89sを使って。

 すると、暗部には珱嗄が入る以前のアイテムと同じ様に、4人構成で作られている組織が幾つかある事が分かった。今確認取れているだけで、アイテム、ブロック、スクール、メンバーの四つ。原作では此処にグループと呼ばれる組織も加えられるのだが、まだ組織というには不完全なのだ。

 そしてその内の一つ、スクールの中に、第二位のレベル5である垣根帝督が所属しているとの事。

 

 という訳で、珱嗄はその垣根帝督に会いに行く事にした。あわよくばメアド強奪してやろうと考えている。

 

「とは考えたものの、そのスクールの拠点は何処なんだろうなぁ」

 

 珱嗄はそう考えてからしばらく街を捜索しているのだが、10分探しても見つからない。どういうことだろうか。いやまぁ10分そこらで見つけられても困るのだけど。

 

「よし、次目に入った建物に入る。それで大体合ってるんだ」

 

 珱嗄はそう言ってくるりとその場で一回転。そして止まった時向いていた先、そこに合ったのは、なんというか廃墟だった。だが、珱嗄はそこへ普通に入っていく。中には地下へと続く穴や、上の階に続く階段、そしてボロボロに壊れた廃墟らしい部屋が幾つかあった。

 

「この穴は……なるほど、地下通路に繋がってるのか。誰か暴れでもしたのかねー」

 

 珱嗄は地下に続く穴を覗き込みながらそう言った。そして、階段を昇りながら誰かいないかと探す。すると、どこからか話し声が聞こえた。どうやら若い男と女の二人の会話の様だ。珱嗄は気配を頼りにその二人がいる場所へと歩いていく。

 

『仕事は終わったんだし、私はもう行くわよ』

『あぁ……ったく面倒な仕事だったぜ』

『文句垂れないの、それが私達の仕事なのだから』

『わぁってるよ。いいから帰るならさっさと帰れ』

『はいはい、それじゃ――――」

 

 珱嗄は一つの扉の前に立つと、中の話し声が鮮明に聞こえるようになり、若い少女が扉を開けて出て来た。そして、その少女は珱嗄を見ると、驚いた様に固まる。珱嗄はそんな少女に対して、

 

「あ、おつかれーっす」

「え、あ、うん」

 

 そう言って擦れ違う様に中に入った。

 

「いや違うでしょ! 誰よ貴方!」

「え? お腹空いた? ったく仕方ないなぁ……ほら、猫缶」

「出すならせめて人間の食べ物出しなさいよ! あと貴方誰よ!」

「なんだ、足りないのか。ほら、どんぐり」

「どんぐりぃ!!?」

「ほら、どんぐりならいっぱいあげるから、森へお帰り」

「おいどういう事だ。私は蟲か? おい」

「ぴーー」

「口笛は蟲笛じゃない!!」

 

 珱嗄は某ナウ○カの様に少女をあしらう。名前は分からないが、背中の開いた丈の短いドレスを着ている。コスプレかホステスとでも言いたいのだろうか。

 

「おい」

「え?」

 

 珱嗄は背後からの呼び掛けに首だけ回して視線を移すが、その視界には真っ白な『何か』で塗りつぶされていた。そして、珱嗄はその白と身体の間に腕を入れて、その白い何かを受け止めた。『触れる』能力は発動済みだ。そして、改めて良く観察してみると、それは白い翼だった。

 

「! ほぉ、受け止めるとは予想外だぜ」

「何コレめっちゃメルヘンじゃん」

「てめぇは誰だ。何をしに来た」

「俺はまぁジョニーとでも呼べ。ちょっと友達を作りにきたんだ」

「友達作りに廃墟に入るのかお前。頭おかしいんじゃねーのか」

「いやメルヘン中二病に言われたくない」

「殺すぞオイ」

 

 珱嗄に白い翼を叩きつけて来たのが、学園都市第二位のレベル5、垣根帝督。その能力は、この世にない物質を作り出す事が出来る『未元物質(ダークマター)』と呼ばれる能力だ。まぁ簡単に言えば思い通りの性質を持つ物質を作り出す事が出来る別次元の力だ。

 

「とりあえず、レベル5巡りしてるんだよ」

「………へぇ、命知らずな奴もいるもんだな」

 

 珱嗄の言葉を、垣根帝督は『レベル5に挑んで回ってる』と捉えた。

 

「で、この俺で何人目だ?」

「えーと、第一位三位四位五位には会ったから……五人目だね」

「で、どうだったんだ? 前の四人は」

「ん、中々骨のある子達だったよ」

「勝ったのか?」

「ん?」

 

 珱嗄は垣根帝督の勘違いに気付いた。そして同時に、これは面白い、勘違いさせとこうと考え、応答を続ける。

 

「でなきゃ五体満足じゃいられねーよ」

「ッハハハハ! 第三位や四位はともかく、第一位のクソまで負けたのかよ! 傑作だな!! で、一番梃子摺ったのはどいつだ?」

「そうだねー……一番(弄りやすかったの)はしいたけかな」

「しいたけ?」

「第五位」

「ああ、確か精神感応系最強だっけか……まぁ厄介だわな」

 

 珱嗄の言動を悉く勘違いする垣根帝督。やはり同じレベル5としては他のレベル5の話は興味があるようだ。

 ちなみにドレスの少女は猫缶とドングリを抱えて帰って行った。もう付き合いきれなかったようだ。だが持って帰る必要はないと思われる。

 

「で? 俺とも殺んのか?」

「その前にメアド教えてくれない? 会ったレベル5のメアドを貰う様にしてるんだよ」

「ハッ、俺に勝てたら教えてやるよ」

「ああそう。順位が上がるとやっぱめんどくせぇなぁ」

 

 珱嗄は一方通行とメアドを巡って戦った事を思い出し、面倒臭そうに眼を細めた。レベル5というのは良くも悪くも好戦的すぎる。好戦的すぎて他人に迷惑掛ける所なんて全員に当てはまるではないか。まぁその最たる存在は御坂美琴だが。

 

「仕方ねーな……じゃあいっちょやってやるよ。えーと……そうだな、何処でやる?」

 

 珱嗄は頭を掻きながらそう言う。すると、垣根帝督は凶悪に笑ってその背から『未元物質(ダークマター)』で作りあげた三対の白い翼を生み出し、珱嗄を攻撃した。

 

 

「此処で」

 

 

 完全な不意打ち。正直、垣根は瞬殺だと思った。勝ったと思った。翼の速度はこの至近距離で出来る人間の反応速度を完全に超えているし、今度は受け止められない様に『防御を貫通する性質』を持つ物質で創られている。例え珱嗄が受け止めた時に使った、おそらく防御の能力を使おうが吹き飛ばせると思ったのだ。

 だが、

 

「不意打ちは感心だな。でも不意打つならちゃんと当てろよ」

 

 その翼は何かに『逸らされる』様に珱嗄の身体から矛先を変えて地面を攻撃した。床が壊れ、二人は一回に落ちる。

 垣根は翼で飛行し、珱嗄は一回にくるっとまわって着地した。

 

「……何をしやがった?」

「教えると思ってんの? おめでたい頭……ああ、ゴメンメルヘンだった」

「申し訳なさそうに言うんじゃねぇ!」

「それにしても、なんで翼?」

「この方が使いやすいんだよ。ほっとけ」

「ああ、そう。まぁいいけど……さて、不意打ちは失敗した。正々堂々―――掛かって来いよ。第一位共々手加減しまくって叩きのめしてやるから」

 

 珱嗄の言葉に、垣根帝督は青筋を立てて歯を見せながら笑った。

 

 


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