NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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読者様から頂いた案を元に書いてみました。

3話構成です。では、どうぞー。


096.赤砂人形新喜劇 前編

 独立暗殺戦術戦略特殊作戦部隊『宵』。

 

 通称、ギニュー特戦隊・・・というのは冗談で。

 

 オレはこの決して表の世界には存在しない組織のトップに君臨しているわけだが。

 

 表面上は大蛇丸が務める暗部部隊のひとつということになっている。

 つまり、正確に言うと兼任している。

 

 あるはずのない地下室を拠点(アジト)と化して活動を行っているオレたち『宵』は、多種多様で多忙な任務を日夜行っている。

 

「よぉ・・・カルタ」

「サソリか。久しぶりだな。パクラの体調に変わりはないか?」

 

 宵のアジト内で、オレがいなかったときに処理された案件の報告書を読んでいると。

 今は産前休暇を夫婦共々取らせているサソリがやってきた。

 

「それはおかげさまで。あともう予定日まで1ヶ月かそこらで何ともないんだがな・・・今日はちょっと相談があってな」

「相談?悪いけど、休暇ならこれ以上は延ばしてやることはできないぞ」

「いや、休暇じゃなくてだな・・・」

 

 どうにも歯切れの悪いサソリ。

 普段の姿からは想像しにくいサソリだった。

 

 その煮え切らない態度に痺れを切らしたオレが「じゃあ何なんだよー」と、投げやりに聞くオレに対してバサッと一瞬で視界から姿を消した・・・。

 

「金が底をつきそうなんだ!なんとかしてくれ!!」

 

 姿を消したわけではなく、土下座をしていた。

 

 なるほどな。土下座をしていたから視界から消えたように錯覚したのか・・・ていうか。

 

 うわぁ、引くわ。まじで。

 10歳も年の離れているオレにお金を工面してくれと土下座をしてくるなんて・・・。

 

「えぇぇ・・・うち、貸金業者じゃねぇし」

 

 いつまでも頭を上げないサソリに「お前さぁ・・・帰れよ」と何度も言いそうになったが。

 

 とりあえず、サソリの土下座という気持ち悪いものを見せられ続けるのは苦痛だったので、普通に椅子に座らせて話を聞くことにしたのだった・・・。

 

 

 

 サソリに話させた話は特に言い訳や回りくどい表現が非常に多かった。

 だからオレが理解した範囲でその話をまとめると。

 

 要は今までもらっていた給料の貯蓄額を考えずに、サソリの持つ傀儡の改造資金に回していたらしい。

 

 オレやサソリが属する『宵』に限らず、木ノ葉隠れの里に所属する多く存在する役無しの忍びの給与は全て歩合制(ちなみにオレは表向きには存在しないとはいえ一応、部隊の長ということで毎月微々たる額が懐に入っている)。

 任務を多くこなせばその分、給与は多くなるし。困難な任務をこなせばその分、ひとつの任務当たりに貰える額の単価は高くなる。

 暗部組織である『宵』が行う任務のほとんどがAランク任務かSランク任務。したがって今までの給料の総額はしばらくは遊んで暮らせるだけの額があるはずなのである。

 

 とはいえ当然ながらその貯蓄も無尽蔵にあるわけでもなく。しかし、それとは反比例に任務がない分、時間は有り余っているし、傀儡の改造にこだわり始めたら際限が無くなるしとジャンジャンお金を投資していったことにより、次第に金欠になり。

 よりにもよってコイツは、自分の貯蓄が無くなったからと言って「少しくらいなら・・・」とパクラとの共有している夫婦の財布にも手を出し、気が付いたらそれも当初の半分くらいにまで減り。

 それでようやく「ヤバい!これはバレたら殺される!」と気付いて、元の金額に戻すために残り半分の金額を賭け事に費やした。

 その賭け事も最初の内はビギナーズラックというものか、上手くいって目標金額に到達することができたらしい・・・のだが。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!?」

「いやな、だってそんなに勝ち続けたら『俺、もしかしたら博打の天才なんじゃないか?』と思うだろ。フツー」

「お前さぁ・・・バカじゃねーの?」

 

 よりにもよって、そこで止まらずに自分の傀儡改造資金もここで稼いでしまえと賭け事を継続。

 そして泥沼に嵌ったサソリは、とうとう元手の資金すら全てつぎ込んで負けてしまい。今度はそれを取り戻すために借金をしてまで賭け事を継続。

 

 これはもう。バカとしか言いようがない。大馬鹿者である。

 

「あと少しで出産だってのにパクラに心配かけたくねぇし。もうお前しか頼れる奴がいなくてな・・・」

 

 憔悴しきっている様子でそう言うサソリには同情の欠片もする必要はないと思うが、確かにパクラは可哀そうだとオレも思う。

 そう思ったオレは助言や手助けくらいならしてやろうかな。という気にもなる。

 

「じゃあ、自分のもの売れよ。お金になりそうなものくらい持ってるだろ」

 

 例えば・・・普段使ってない傀儡とか。と、そう提案するのだが。

 

「それは無理だ!」

 

 と、あっさり拒否される。

 

「俺の芸術作品を完全に理解できる奴ならまだしも。ただの興味本位程度の奴らに触られるのは反吐が出る」

「でもお前、砂隠れの里に置いてきた傀儡だってあるだろ?」

「あれらはまだ未熟だったときの俺が造ったやつだからな。今の俺が求めている芸術とは程遠い」

 

 そんなこと言っていられる立場かよ。とも思うが、まぁサソリの商売道具でもあるしなと口出しするのはやめておく。

 

「じゃあ、お得意の人形制作で子ども受けする玩具を作って販売するとか」

 

 それじゃあ、名案を思い付いたとオレが提案するが。

 

「ふんっ。俺の芸術がガキどもに理解できるとは思えん」

 

 これもサソリは拒否。

 

 流石にカチンと来たオレは何も言わずにノーモーションからの。

 

 鳩尾に右ストレート。

 

「かはッ・・・な、なにしやがる」

「いいからやれ」

 

 やらないなら、()るぞ・・・と、万華鏡写輪眼で睨みつけるオレに「ま、待て。話せばわかる!」と五・一五事件の犬養毅首相よろしく懇願してくるサソリであったが。

 

 問答無用。

 

 私刑宣告。

 

 私刑執行。

 

 これから父親になるというのに、家族の金を浪費するバカ野郎に人権は無いと言い放つオレに。

 絶望感を漂わせて、死んだ魚の目をするサソリ。

 

 材料を揃えるだけのお金もないだろうと材料費だけはオレのポケットマネーからくれてやり、お人形作りを強要させる。

 

 これなら長期任務で家を空けることもなく。お金を稼ぐこともできるだろう。

 

 子どもが遊ぶサイズのカラクリ人形なんか家でも作れるだろうしな。

 

 それにサソリの作った人形ならセンスも性能も良いだろうし、間違いなく売れるだろうと。

 

 そうなったら、メシでも奢ってもらえば今回のことはチャラにしてやってもいいと。

 

 オレはこのときまではそう思っていた。

 

 そして後日。現実に直面することになる。

 

 

 

 商売ってそんなに甘いもんじゃない!!・・・と。

 

 

 


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