ーInfinite Stratosー~Fill me your colors~   作:ecm

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新年初投稿。今更ですがあけましておめでとうございます。


第四十九話:他愛なし

――???――

 

夜の闇に支配された、廃棄されて久しい高層ビルの森。そのビルを覆う濃い霧の中、男は何かに追われる様に走っていた。

 

「ッ!」

 

途中、建物の残骸――元工具店の様だ――に飛び込む様に身を隠し、持っていたアサルトライフルをその場に放り出して床にドサっと腰を下ろした。

 

(何故、何故っ!?)

 

男は疑問を己に問いかける。

 

自分たちの作戦は完璧だった。犠牲は多少払ったが計画通りにIS(・・)――仮称S1を誘き寄せ、罠に嵌めた。後は狩るだけだったのに、どうしてこうなった?

 

――それはただただ圧倒的な暴力。

 

男の記憶に蘇るのはS1が用意した罠に掛かり、やれると思って全員でかかった瞬間に罠が脆くも破られ、その圧倒的な力によって蜘蛛の子を散らすように逃げる仲間達を無残な肉塊へと成り果てさせるS1の作業風景だった。

 

ただ一人生き残った男は恐怖と悔しさに頬を濡らす。

 

「……チッ、情けねぇ」

 

少し落ち着いた男は自分の下半身が熱く湿っていたことに気付いた。男は不快感に顔をゆがませながらなんて無様な、と己を罵るが、どうしようもなく身体は、そして心は素直だった。

 

「行くしかない、か」

 

恐怖を無理矢理押し殺す。そう、いつまでもこの場にいる事はできない。いずれこの場所もバレてしまう。S1はそれを可能とする力を持っている。ISとはそういうモノなのだから。

 

男はアサルトライフルを拾って立ち上る。

 

「……どうする」

 

男は思考する。

 

味方は自分を除いて全滅。援軍は望めない。更に敵は最後に残った自分を血眼になって探している。そこから導き出される答えは状況が圧倒的不利である、という事だ。子供でも解る答えだ。ならばその上でどれ程の選択肢があるのだろうか?

 

――逃げる?

 

否。現実的な判断だが、ヤツからは逃げられない。今の状況はただの幸運から得られただけ。そしてその幸運すらも最早二度とは訪れる事はないだろう。

 

――戦う?

 

否。非現実的な判断だ。元々罠に嵌めるのが前提の作戦だったため、奴には手持ちの武器では有効打を与えることができない。爆薬が手元にあれば建物を崩壊させるなりして話が違ったかもしれないが。そして代用できるものは周囲には見当たらない為、準備時間も含めて実行不可だ。

 

――降伏?

 

断じて否。煩わしく飛び回る蠅に、如何なる価値があろうか?

 

考えれば考える程男が置かれた状況が如何に絶望的なものかを教えてくれる。選択肢などもとより存在しないも同義だろう。しかし男は考える事を止めなかった。

 

何故なら考えるの止めればそこで全てが終わりだと知っているからだ。だからこそ考えて考えて、例え見つけた可能性が那由多の果てであっても、男にとってそれは十分に賭けるに値するのだから。

 

考えて考えて、考え抜いた上で男は一つの決断を下し、実行に移すべく準備を始めた。

 

そしてその時が来た。

 

「……きやがった」

 

微かだが、段々と近づいて来るのがわかる独特の飛翔音(・・・・・・)

 

ヤツだ。仲間を殺したヤツがここに来る。

 

男は自然と早鐘を打ち始める心臓と恐怖を理性で抑えつけながら息を潜める。そして最適と思えるタイミングを待つ為に聞こえてくる音に集中したが―――しかし、

 

「ぐッ!?」

 

突然男の近くの壁が轟音と共に吹き飛んだ。

 

同時に男も瓦礫とともに道路へと吹き飛ばされ、激痛に顔を歪めながらも立ち上がる。そして立ち上がった視界の先にゆっくりと漂いながら近づいてくる不自然な物体に気付いた。

 

そしてその黒い物体の正体を、初見である筈の男は直感で言い当てていた。

 

「ダミー!?」

 

S1はある特定の条件を満たさない限り特殊な音を発しているので音での事前の察知が可能なのである。最も、それはどのISにも当て嵌まるのだが――ともかく、それを利用して今回の作戦(結果的に失敗だったが)を取ったのだ。しかし、このダミーが存在することを男は知らなかった。

 

否、たった今知った。

 

――まさか……!!

 

男が急いで振り返ると、ゆっくりとS1が建物の中から(・・・・・・)から現れてきた。

 

そう、S1は既に男の居場所を突き止めていたのだ。しかも直ぐには仕掛けずにわざわざ男の準備を待ったうえでデコイを使ってまだ探していると言わんばかりの演出をして。全てお見通しだと言わんばかりに作戦を逆手にとって。

 

「ヤロウ……!!」

 

――遊んでいやがる。

 

巫山戯やがって、と男が激情のままつぶやくと、まるでその言葉に反応するかの様にS1は血濡れブレードを向けた。そしてS1がブレードを向けた瞬間、ビル街を覆っていた雲が切れ、月の光がS1を幻想的に映し出した。

 

「……!!」

 

美しい、と男は場違いにそんな感想を思った。立ち尽くしたままでは死んでいると頭では解っている筈なのに。刹那のこの瞬間が、目の前の死神を何よりも美しいと感じさせたのだ。

 

しかし、ハッと気づいて身構えた瞬間には何もかもが遅かった。

 

何時の間にか間合いを詰められ、そして目の前に迫る回避不可能な刃。

 

「私、ヤローじゃない」

 

男が意識を失う瞬間、場違いなほど美しい声音での指摘と『Game Over』という文字が視界の端に映っていた――。

 

 

 

 

――川崎本社・地下VR訓練場――

 

「――はぁ?」

 

頭に特殊な機械を装着した男――ライル・アークスが意識が覚醒した瞬間の第一声が疑問符だった。同時に下半身に不快感を感じ、マジだったのかよ、と呟きながら野性的なその顔を顰めた。

 

さっさと処理してしまおうとライルが身体を起こすと、丁度上官であるドミニク・サンダースと看護兵の腕章を付けた男が近寄ってきた。

 

「さて、気分はどうだ、ライル」

「実に最高な気分だ。このままトイレに直行したいぐらいには」

 

ライルは機器を専用の場所に置きながらドミニクの問いに返し、看護兵に簡易的な身体検査を受けて問題無いというお墨付きを経てからゆっくりとVR装置から立ち上がった。

 

「一応感想も聞いておこうか。どうだ、初めてのVR訓練(・・・・)は?」

 

ライルが行ったのはVR-―Virtual Reality(仮想現実)を用いた対IS用戦闘訓練。そう、先程までライルは仮想現実において一人の兵士としてISを相手取っていたのである。結果は周知の通りだが。

 

話は逸れるがそもそもこのVR訓練、ひいてはVRの発想自体は昔からあったのだ。だが、過去の技術力では未だ実現不可能とされていたのである。少なくともライル達が使用していた代物ともなると実用化するのには1世紀近くはかかるのではないか?と冗談めいたこともささやかれていたのだ。しかし奇しくも希代の天災科学者篠ノ之束によってISコアによる膨大な演算処理能力を用いることによって実用化させたのである。

 

閑話休題。

 

さて、このVR技術の扱い方は千差万別であり、特に医療や軍事面では正に夢の様な技術なのだ。なんせ軍事で言えば弾は撃ち放題で周りを一切気にしなくてもいいのだから。多少の感覚の差も実弾演習で充分であろう。これによるその影響は計り知れない。しかしながらISコアでは女性しか扱えない上にVR訓練を行う場合、一人につき一つのコアを使用する制約があるである。

 

勿体無い。余りにも勿体無いのだ。

 

当然数多の技術者がISコアのブラックボックスを解析したが終ぞ叶わず、時間と金と人は別に向けるべきだという国や経営陣の判断のもと、結果としてVR技術も半ば在る様で無いようなものとなってしまっていたのである。当然、川崎もVR技術に目を付けていた集団の一つだ。利用できるのならそれに越した事はない。それを手に入れた時のアドバンテージは何よりも大きいのだ。

 

そして彼等は諦めていなかった。

 

数多の技術者が諦めている中、彼等は決して少なくない費用と10年の歳月をかけて一つの結果を出していたのである。そしてそのの結果とは決して小さいものではなかった。

 

『1つのコアで複数人数対応』

 

言葉で表すのであれば単純である。しかしそこには一人につき一コアという制約を騙すための試行錯誤が数えきれないほどされており、最終的に『VR装置を一つの装備として認識させ、予め登録させた世界観に登場するNPCの操作をさせる』ことで実現させたのだ。諸々の処理は依然としてISコア任せだが、これは大きな一歩であるということは確かであろう。しかしながらこれには二つ問題が浮上していた。

 

「技術者連中が自信満々に言ってたもう一つの現実ってのは嘘じゃなかった。でも、まさか本当に現実にも影響が受けるなとは思いもよらなかった」

 

その問題とは、普段よりも感情が直情的――正確には感情が表に出やすくなる――になることや、仮想現実における極度な興奮状態や戦闘による負傷等がそのまま現実に影響することである。

 

そう、痛みは幻肢痛の如く、そしてライルが仮想現実で恐怖から失禁したのがそのまま現実でも起こったように、だ。IS搭乗者本人には何ら影響は無かったのだが、そこは本来ない仕様のための弊害だとみるのが妥当だろう。当然ながら目下改良中である。しかし、現状でも充分成果は発揮できるとして彼等は使用しており、その際には上記の問題の対策としてオムツを訓練前に着用の義務と医療班を同伴させることにしているのである。

 

余談だが、戦闘機乗りは高G等によって飛行中に漏らしてしまうこともあるため着用している。よって語弊はあるが一般的なことである。

 

「ホント、ガギじゃあるまいし」

 

ライルは苦々しい顔をしていた。その心境は察するべきであろう。

 

「カカッ、あんま気にすんな。直ぐに慣れる。因みにそこのオカマ野郎は毎回クソ漏らしてるぞ」

 

そう言って白人の男――ビスティスを指さしながら肩を叩くのは同僚であるマックス。

 

「適当な事言ってんじゃねぇぞゴラァッ!?」

「うっせぇ、開幕で死にやがって」

「はん、鼻水垂らしながら逃げまくって何言ってんのよ。中々に傑作だったわよ?」

「あぁっ!?」

「何よ!」

 

いがみ合うオカマのビスティスとマックス。まさに一発触発と言った状態に外野もいつもの事だと言わんばかりに騒ぎを静観しながら各々紙おむつを処理するためにVR訓練場を出ていっている。実にシュールな光景である。

 

「……はぁ」

 

ライルは溜め息をつきながらお前らホント仲良いな――と言うと二人してキレてくるので心の中で呟いた。

 

「……ほう、貴様達はまだそんな元気があるのか。ならこの場で腕立て100回か私と格闘訓練かどちらか好きな方をを選ばせてやる。どうだ、嬉しいだろう?」

「「sir!喜んで腕立てします!!」」

「よろしい。他の者はこいつ等がさぼらない様に厳しく丁寧に(・・・・・・)チェックしろ」 

「「「へーい」」」

 

下卑た笑いをしながら一斉に頷く第一小隊一同。この笑みが何を意味するのかはお察しの通りである。ビスティスとマックスは覚えてやがれ、と呪詛の念を込めながら二人揃って仲良く腕立てを始め、それを外野が煽りの言葉を投げかけながら厳しく丁寧にカウントを始めた。

 

「……やれやれ。0まぁ、貴様も味わっただろ?これが我々とISとの差だ」

 

歴戦の兵士が集い、然るべき作戦を練っても有効打を与える事すらできずに全滅。相手が自分たちの事をよく知っている(・・・・・・・・・・・・・・)のはこちらも同じとは言え、こうも歯が立たないのだ。しかしそれが本来の現実でもあるのだ。以前の戦闘における勝利なぞは正に奇跡に等しい。

 

「あぁ、改めて実感した。あんな化け物、どうやったって勝てない」

「だが、我々はそれでも挑む」

「だから、考えるのを止めない、か。あんま頭のデキは良い方じゃないが、そういうのは嫌いじゃない」

 

強くなる為に国に忠誠を誓う為に力を求め、その為にたゆまぬ努力を重ねてきたライルには寧ろ通ってきた道なのだ。今まで通り振る舞えばよい。彼にとってそれは何てこともない、とてもシンプルな答えなのだから。

 

「当面はとっとと慣れてこの紙おむつとはおさらばだな」

「よろしい。それともう一つ、この後の訓練についてだが――ふむ」

 

ライルの答えにドミニクは満足げにうなずいていたが、台詞の途中で何かに気付いて視線をライルから移した。釣られてライルも同じ方向に視線を向けると――そこには女神が居た。

 

まるで冬の妖精を思わせる様な肌、深い銀色の長髪とその髪と同じ深い銀色の瞳、そして洗練された抜群のスタイル。第一小隊紅一点の女神にして第一小隊が有する最強戦力、ソフィア・ヴェールヌイ・グラズノフである。

 

ソフィアは男達に軽く手を振りながらライル達の方に近づいてきた。そして目の前で立ち止って腰に手を当ててライルを睨み付けた。妙に様になっているのは正しく美女の特権であろう。

 

そして一言、

 

「私、ヤローじゃない」

 

爆弾を落とした。

 

「「「なんだって!?」」」

 

――ここでそれを言うんじゃねぇ!?

 

ライルは心底そう叫びたかったが、これ以上周りにいる今にも飛びかかってきそうな同僚達(バカども)を刺激するわけにもいかない。よって、ライルはあくまでも紳士的に接することで誤解を解こうと口を開いた。

 

「あれはだな……そう、言葉の綾だ。決して、ソフィーを野郎だと思ったことは神に誓って、ない」

 

因みにソフィーとはソフィアの愛称である。気に入った相手にしか愛称で呼ぶことを許していないのだが――そのソフィアは睨み付けた視線を固定したまま器用に笑みを浮かべて見せた。

 

「うん、知ってる」

「こぉんのヤ、いや、ソフィーッ!!」

 

この女、とんでもない悪女である、とライルは思った。

 

(ホント、油断ならねぇ)

 

もしこのまま感情のまま叫んでいたら飢えた狼の群れに極上の霜降り肉を投げる様な事態に陥ったであろう事は目に見えていたのだ。ライルのとっさの気転は評価に値するだろう。

 

だがしかし。

 

「ふふっ、冗談」

「チッ」

 

そう言って浮かべた微笑みに内心思わず見惚れてしまっているのは男の性故か、敢えて言葉を選ばずに言うのであれば色仕掛けでコロッといった男と変わりがない状態になっていた。本人は舌打ちをして誤魔化している様だが、隣に居るドミニクは微かに口の端を歪ませ、腕立て伏せをしているマックス達に野次を投げていた男達は羨ましそうに呪詛の念をライルへと送っていた。

 

「でも、ちょっとだけ傷付いた」

「……悪かったよ。なんだ、気を付ける」

「ん、許してあげる」

 

男は女の笑みにイチコロである。

 

それは例え歴戦の兵士であっても例外ではなかった。

 

「……で、何の用だ?まさかおちょくるだけに来ただけじゃないんだろ?」

「うん。ドミニク、私から言っておく」

「なら短くしろ。ライルは未だ処理(・・)してない」

 

ドミニクはそう言って二人から背を向け、ライルの処理が終わったら反省会だ、と部隊の面々に大声で言い放ってVR訓練場から姿を消した。

 

「……そう、漏らしたんだ」

 

ソフィアがポツリと一言漏らした。

 

「視線を下げるな、憐れみを向けるな」

 

もしここが古巣ならライルは不機嫌にならずに寧ろ嬉々として下ネタの一つや二つは軽く言っていただろう。しかししながらここではそれ即ち死を意味するのは火を見るよりも明らかなので言えないのだ。

 

「簡潔に話す。夜もVR訓練。実戦形式じゃないけど、そこに椿君も参加するから、無様な姿は見せちゃダメ」

「俺が一番馴れてないから、か?」

「そう。部隊の沽券に関わる、から?」

「から?じゃねぇだろ……。まぁ、了解した」

 

新兵の前で無様な姿をさらす熟練兵ほど見ていていたたまれないものはない。特にそれが最精鋭部隊ともなれば一体どこに信用が生まれるのだろうか?情けない教官がいるのに一体どうし新兵がついて来れようか?笑いごとで済まされる類のものではないのだ。

 

「因みに、アマカセはどんな人間だ?」

 

ライルにとって天枷椿とは川崎にとって重要人物(VIP)にして未熟だが戦力の一つである、という認識である。以前に同僚から聞いた話からでは人物像が全く分からなかった故に、この際だから会った事があるであろうソフィアに人物像を聞くことにしたのだ。

 

「とっても真面目。ちょっと古臭い。あと、可愛い弟君」

「……OK、可愛いの一言で全部胡散臭くなった」

「ライルはとっても失礼。会ったら絶対解る」

「野郎を可愛いと思ったらダメだろう」

 

男からしてみれば”可愛い”と言う一言は心を抉る無自覚の罵倒である。悪意がないのが尚更性質が悪い。男は言葉は違えど本質そのものは変わらず、ただ格好良く在りたいからだ。無論、男が男を可愛いと言うのも世間一般からしてみればとても受け入れがたい。ライルも例に漏れずその一人だ。

 

閑話休題。

 

絶対解る、とソフィアは尚も食い下がろうとしたが、それをライルははいはい、と手を振って流す。ついでそろそろ着替えたい、とその旨を伝えると今度は食い下がらずに素直に頷いた。

 

「じゃぁ、また後で」

「おう」

 

ソフィアはライルから背を向け、軽い足取りでVR訓練場から去った。途中、マックス達や他の同僚たちに対しての挨拶を忘れずに、である。

 

(……ホント、ISがなきゃただのいい女なんだが)

 

容姿よし、多少の性格の難もそれはそれで良いアクセント。ライルからしみればこれが先程までVR訓練とはいえ容赦もなく本気で己を含む仲間達を”狩った”人物と同一人物であるとは到底思えないのだ。

 

一体どれ程の経験をして殺しの術を覚えたのだろうか?

 

何がソフィアを動かしているのだろうか?

 

(まぁ、深くは考えないか)

 

ここに居る者達は全員が全員浅かれ深かれ脛に傷を持っている。ライルのは浅い部類に入るのかもしれないが、誰であれ他人の事情に踏み込むのは野暮というものであろう。これは部隊の、ひいてはK.I.C.PASOGの不文律と言ってもいい。だから、ライルは敢えて考える事を止めた。

 

(精々、アマカセが解かりやすい性格であることを祈るか)

 

仮に椿と行動を伴う場面に出くわした時、性格を把握しておいた方が後々に良い方に動くのだ。例えば直情型の人間であれば何がトリガー(・・・・)になるかを把握しておけば御しやすい、といった具合に。

 

「さて、さっさと着替えちまおう」

 

その前に、とライルはちょっとした悪戯をする事にした。主にマックスとビスティスに向けて。

 

「マックス、ビスティス、今のちゃんとやってないからノーカウントな」

「「Fuck(クソッタレが)!!」」

 

マックスとビスティスは同タイミングで片手腕立て伏せの状態にながらライルに向けて中指を突き出した。何とも器用である。対するライルはお前らサーカスに出た方ら一躍有名人だな、と皮肉を返して手をヒラヒラとさせながら更衣室へと向かった。

 

「じゃぁカウントし直しなだなぁ、おい?」

「ゆっくりとだぞ、ゆぅ~っくり。OK?」

「おいおいなんだその腕立ては?そんなに腰ふりたきゃ俺達の見えないとこでヨロシクヤッとけよ」

「「テメェ等――!!」」

 

――この後、ライルが去ったVR訓練場からは二人の男から発せられる怒声とその他大勢の男達による罵声と笑い声がドミニクが訓練場に戻るまで続いたという。

 

 




今回は裏側。相変わらず話のテンポが遅い。もうちょっと速くしたいのですが……。
取り敢えず、これで今後2週間に及ぶ主人公強化スケジュールが完成しました。

~1日の流れ~

授業

放課後に一夏と共にエメリーの訓練

アリーナ使用時間限界まで楯無とエメリーと訓練

VRを用いたソフィア達との訓練

基礎→応用→実戦の流れですね。VRに関しては以前主任が椿に送っておいた物(四十一話古鷹の台詞)です。それでは




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