ーInfinite Stratosー~Fill me your colors~ 作:ecm
さて、一週間が過ぎ、対抗戦まで残すところ2週間となった。
結局、弍式が完成することは無かったが、8割程完成した。本来ならば、2週間もあれば完成するので続けるべきなのだが、如何せんこれは勝負事。しかも優勝したクラスにはデザート半年フリーパス(本溜さんの一番高い奴除く)が貰えると解っている。これは甘い物に目がない女子にとっては何が何でも見過ごせないだろう。
よって完成したとしても乗り慣れない弍式よりも既に乗り慣れた打鉄で訓練した方が良い、と言う結論に簪は至っている。それに、なんやかんやで簪は4組の中心にいるようで、皆の期待に応えるつもりらしい。そして機体作成最後の日に私にこう宣言してきた。
『クラス対抗戦まで椿は敵。絶対に負けない』
絶対に負けない、は本当なら一夏に向けて言うべきでは?と疑問に思ったが、直ぐに疑問が溶けたのでそこは突っ込まなかった。まぁ、間接的にも私は一夏の強化訓練に携わっているからな。つまり、一夏を通して私と勝負しよう、と言う事なのだろう。なので私は受けて立つ、とだけ返した。
因みに、簪に約束した106㎜砲(実際には別物を用意)であるが、設計はそこそこ進んでいる。元々何時か作ってみたいと思っていた構想があったので、それを元に進めている。また、偶に古鷹が私の為に必要な情報とデータ整理をしているので今は順調と言えるだろう。
そして現在私は第3アリーナで一夏の前に立っている因みに私の隣には箒(打鉄装備済み)とセシリアがいる。具体的に言えば、一人の訓練生に三人の教官が付いている、といった感じだな。
振り分けは私が総合でセシリアが射撃、箒が近接。
うむ、バランスは丁度良いか。
「さて、約束の時が来たな」
「おう!で、何やるんだ?」
「まぁ、と言ってもやる事は単純だ」
「ん?単純?」
一夏は単純、という部分に疑問符を浮かべていた。
「あぁ、そうだ。これから2週間やるのはただ実戦あるのみ。なんやかんやでお前にはこれが早い。無論、悪い点は指摘するし、見つけ次第治させるがな。」
これは初めて一夏と戦ってみて思ったからこその判断だ。
何故、と言われれば答えは単純。セシリア戦よりも遥かに動きのキレが良かったからな。それに、私が来るまで散々技能訓練はしただろうし、次いでに私もアドバイスした。なら、これ以上は全ての集大成である『戦闘』で伸ばすのが断然良い筈だ。
更に箒達から聞いたことなのだが、つい先日織斑先生にも一度指導を受けたとかなんとか。
よって、瞬時加速を使えるようになったらしい。まぁ、私も楯無や千歳さんとの訓練の果てに使えるようにはなったがな。そしてその過程で思いついた
まぁその応用は状況次第では使うことになるだろう。
「わかったぜ!」
一夏はそれに頷いた。どうやら私と再戦するのを心待ちにしていたらしい。
全く、解りやすい奴だな。
「まぁそう言う訳だ。セシリアやせっかく打鉄を借りてきた箒には悪いのだが、管制室の方にいてくれないだろうか?合図と一夏の動きの確認を頼みたい」
そして矢継ぎ早にプライベート通信で一言。
〈一夏の正面からのベストショット、期待するといい〉
「「解った(ましたわ!)!」」
私の二言に箒達は元気良く返事を返した。所謂交渉成立、である。
「よろしい。では箒は一夏の雪片の扱い方を、セシリアは一夏の避け方でダメな部分があったら指摘する様に。これも一夏の為だし何よりも自分の為だ、適当にやるなよ?」
「勿論だ」
「無論ですわ」
私の一言に箒達はそう言って一度ピットの方へ向かっていった。そして箒達が見えなくなったのを確認して一夏に問う。
「あぁ、そうだ。一夏、お前に聞きたい事がある」
「ん?何だ?」
「お前にとっての『夢』とはなんだ?」
「何だよ藪から棒に」
「気にするな。で、どうなんだ?」
「ん~そうだな」
一夏は顎に手を当てて少し考えていた。
そして暫く唸りながら考えて答えを出した。
「俺にとっての夢は家族を、引いては『皆を守る事』、だな」
「臭いな」
本当に主人公属性を持っているのだなお前は。何をナチュラルにご大層なことを言ってくるんだ。
「聞いてきたくせに失礼だなおい」
「あぁ、すまんな。でもう一つ聞くが、お前にとっての『強さ』とはなんだ?」
「すげぇ難しい事ばっか聞くな。悩んでるのか?」
一夏は何気なく心配してくる。
「有り大抵言えばそうだな。まぁ、生活に支障をきたす程の問題はないから気にするな」
「……そうか?じゃぁ言うけど俺にとっての強さはさ、『心』の在り方だと思うぜ」
今度は唸ることなく、考えることもなく答えてきた。どうやら最初からそう思ってきたらしい。
まぁ、一夏らしいといえば一夏らしい、がな。
「そうか」
「参考になったか?」
「あぁ、だが一つ言わせてくれ」
これから言う一言は一夏にとって少々酷かもしれないが、先に言った方がこれから先、タメになる筈だ。現実は理想の様には甘くはない、と言う事を。
「何だ?」
「力なき理想は夢物語でしかない」
「なっ……!?」
私の一言に一夏は驚き、次いで何かを言おうとした。だが、私はその前に言葉をもって制した。
「まぁ、最後まで聞け。……そして反対に理想なき力は暴力しか生みださない。私にとっての『強さ』とは、『心』と『力』が釣り合って初めて『強さ』なのだと考えている。」
理想だけでは人がついてこないように、力だけでは人の理解を得られないように。それは過去の偉人達が身を持って証明している。そして私は優れた装備と優れた教官、潤沢なバックアップの中で鍛え挙げられて来た。だが、私には夢が無かった。あったとしてもその理由を他者に預けている。
それではいけないのだ。だからこそ私は問う。
「だからこそ、俺はお前に問いたかった。お前の夢の在り方を」
そこで一度区切り、一夏を見る。一夏は私の言葉を真摯に聞いていた。一言も聞き逃さないように、と。私はそれを確認して言葉を再開する。
「そして聞いて改めて確信した。お前と俺は対極の位置にあるのだと」
私が自分の位置を明言しなくても、一夏なら解ってくれている筈だ
一夏が力のないただの夢物語で、私が心の伴わないただの暴力であることを。
「故にな、一夏。お前と俺、二人揃って漸く一人前だと俺は考える」
「……あぁ、そうだな」
一夏は私の言葉に深く頷いてくる。まぁ、これから言う台詞は、少々青臭いが、そこは夢と希望に満ち溢れる15歳の少年には丁度いいだろう。
「共に『強く』なろう。一夏、お前の夢を俺に魅せてくれ、俺はお前に力を貸す。協力は惜しまない。そして何時か誰にでも誇れる強さを手に入れよう」
あぁ、本当に青臭い。だが、それでも今の私には的確な言葉だと思う。私は何度も何度も『大切なモノ』を失う訳にはいかない。本当の『強さ』を手に入れて、今度こそ守り通す。それが今の私のささやかな『目標』だ。
いつか自分の本当の『夢』を見つける過程の為の目標。
私は夢を手に入れる為にはどんな労力も惜しまない。
悪いが、一夏にもこの私の計画に一枚噛ませる。まぁ、一夏の利にもなるのだ。それに、ギブ&テイクは成立している。問題は無い筈だ。
「あぁ、そうこなくちゃな!」
一夏は爽やかに笑いながら答える。
……ふむ。この笑顔、貰いだ。
私は一夏にはバレない様に密かに箒達用の写真を激写しておいた。
「では始めよう。最も、幾ら一夏の為の戦闘訓練でも負けるつもりはないがな」
「言ってろっての……今度は勝つ!」
「全力で受けて立つ。かかってくるといい」
先ずはお互いに軽口を言い合い、一夏は白式を、そして私は古鷹を身に纏った。
さぁ、早速第五世代技術である『射出型拡張領域』のお披露目だ。その身でじっくり味わうといい。
私はそう思いながら『良い』笑顔になる。
今の私はとても極悪なのだろう。最も、フルフェイスマスクのお陰で誰にも見られていないがな。
そして箒達が管制室に着いた様で、カウントダウンが始まった。
私はそれに合せて武装を展開する。
武装展開
背部武装
R:120㎜滑腔砲 初弾 HEAT-MP(多目的対戦車榴弾)
L:大型荷電粒子砲 収束開始
主武装
R:.50Cal Beowulf Le16
L:40㎜電磁投射砲 充電開始
特殊
『射出型拡張領域』選択:閃光弾
「あの日以来……こうして対峙するのが懐かしいぜ」
一夏は初めて戦った頃を思い出していた、か。まぁ、懐かしいな。
「あぁ、そうだな」
「てか、肩の部分に砲みたいな何かがついてるな?何だそれ?」
一夏は早速この射出型拡張領域に興味を持った様だ。
まぁ、と言っても見た目は只の発射口にしか見えないがな。
何故、その形状をしているのか。それは第五世代技術を未だ世間に公表するつもりがないからである。何らかの要因で第五世代技術がバレるのを防ぐ為、見た目をこの様な形にしたらしい。
「それは戦いながらのお楽しみだ」
「何か嫌な予感するぜ……」
「気のせいだ」
勿論嘘だ。一夏の予感は正しく、気のせいではない。まぁ、直に味わうといい。
尚、相変わらずであるがギャラリーは多い。まぁ一夏だから、と言う一言で済むのだろう。そして一夏は雪片を展開して体を楽な姿勢にし、いつでも回避できる体勢に移った。私はそれに合せ、照準を合わせる。
あの時は外したが、今度は外さん。それに初手のやり方はこの一週間、散々考えてきたのだ。その成果、お前で試させてもらう。
『通知:電磁投射砲、エネルギー充電完了』
古鷹ではない、本来の戦術AIが無機質に告げる。
彼奴は今でも制作に夢中なのだ。物寂しく感じるが、頼るばかりではいけないだろう。
そして合図が鳴った。
「受け取れ」
私は先ず、開幕と同時に電磁投射砲を発射する。
虹色の光輪が現れ、そしてのその中心を40㎜の弾丸が青白い閃光を纏いながら一夏を貫かんとする。
「っぐ!?」
一夏は回避行動を取ろうとしたが、電磁投射砲の弾丸を見切れず、直撃した。
それもそうだろう。元々電磁投射砲は光学兵器並みの速さを誇るのだ。そして光学兵器よりも命中しやすい。元々避けれるのがおかしい、と言うツッコミは無しにして、以下の理由がある。
その一つが視認性。
簡単に言えば光学兵器が『派手』で、電磁投射砲が『地味』だ。そしてその『地味』が戦闘において如何に嫌味でになるのかは想像すれば解るだろう。それに、先程も言った通り、弾速においては対等な立ち位置に居るのでな。
そしてもう一つが発熱量だ。
まぁ、光学兵器と実弾兵器を熱量で比べるのはおかしいのだが、一応、電磁投射砲は発射する為に電力を必要とするので、必然的に熱が発生する。無論熱量は光学兵器以下だ。よって遠距離になればなるほど発見が遅れるのだ。そしてそれは実戦においては致命的である。
今回は距離が近いのでその効果はあまり無いが、荷電粒子砲も同時に充電していたので本命の電磁投射砲の良い隠れ蓑になっただろう。
そして私は電磁投射砲が直撃したのを確認、素早く120㎜滑腔砲の引き金を引く。
一夏は電磁投射砲の直撃でよろめいていた直後の為、ろくな回避機動を取れずにいた。よって避けられる事無く着弾。成型炸薬が爆発して、装甲貫通力のある超高速ジェット流、爆風、破片が容赦く一夏のシールドエネルギーを奪っていく。
だが、私はそこで終わらない。
更に私は荷電粒子砲を爆風の中心に撃ち込む。
川崎製の高出力の粒子ビームが最大出力でまっすぐに一夏へと襲いかかる。
だが、一筋の青白い一閃が、爆風と共に粒子ビームを斬り払った。どうやら土壇場で体勢を立て直し、零落白夜で防いだらしい。その証拠に一夏の手に持つ雪片が青白い刃を纏っていた。
それを確認した私は次の為に素早く武装を変更する。
背武装
R:120㎜滑腔砲 次弾 Canister
L:30㎜ガトリング砲
主武装
R:.50Cal Beowulf Le16
L:Stoner M63
「ッてぇな……」
一夏は鳩尾を軽く抑えながら呟く。
あぁ、直撃したのはそこか。さぞや痛かったのだろうな。
「お味は如何だろうか?」
「最悪だぜ……一体何だよそれ、前の奴と違うじゃねぇか。二種類だけじゃないのかよ」
一夏が正直な感想を言ってくる。
「誰が二種類だけと言った。……まぁ良い。あれはHEAT-MP.多目的対戦車榴弾と言うモノだ。使用用途は簡単に言えば文字通り対戦車用でな、先ず戦車の装甲を貫通、そしてその貫通でできた孔を通して爆風と高温ガスを侵入させ、中にある機器や乗員を破壊・殺傷する、といったものだ。その他にも実際に味わったから解るだろうが、破片や爆風でその他の車両や人員、資材を破壊する」
本当ならモンロー効果や金属ジェット、ユゴニオ弾性限界等も説明するべきなのだが、流石にそこまで詳しく言っても意味はないだろう。それに話も長いから一夏も嫌がるだろう。私もソレを理解するには苦労したからな。要は直撃したら尋常ではない痛みを伴う、と覚えればいい。
「えげつねぇな、それ」
「因みにだが、これは世界各国の戦車に採用されているメジャーな砲弾だ」
「うげぇ……」
私の一言に凄まじく嫌な顔をしていた。まぁ、それ程痛かった、という事なのだろう。
だからと言って手心を加えるつもりは更々ないがな。
「さぁ、俺の講義は終わりだ。避けろよ」
「ちいっ!?」
私はBeowulfとStonerの引き金を引き、苛烈に攻め立てる。
「はぁぁあああああ!!!」
一夏は迫り来る弾幕を右に傾けてに避ける事で回避し、雄叫びを上げながら時に円を取りながら、鋭角い曲がりながら、そして上下に複雑に動いたりと、以前では見られなかった機動を交えて距離を詰めようとしてくる。ふむ……努力の成果は実っているようだな。しかし、だ。
以前の私であれば近付けない様にさせただろう。だが、今回はそれに敢えて応じ、自らメインブースターを出力最大で吹かして接近、一度交差を仕掛けた。
「なっ!?」
まさか交差してくるとは思はなかっただろう。
予想外の速さで逆に接近してきた私に急いで刺突を放ってくるが、零落白夜を纏わない一撃は古鷹の重装甲の前では有効な攻撃とはならず、弾かれてすれ違う形になった。
それを見て一夏は急いで反転、追撃をかけようとしたが、私もまたメインブースターと各スラスターを吹かし素早く反転、先に仕掛ける。
「喰らうといい」
一言呟き、射出型拡張領域から閃光弾を放つ。そして放たれた砲弾が一夏に迫る。
「チィッ!?」
一夏はそれを身をよじることで避けようとしたが、それは無意味である。何故なら一夏と私の間で閃光弾が炸裂し、一時的に視覚を奪う強烈な光が起きるからだ。
丁度中間地点で炸裂。
下手をすれば失明しかねない光が一夏を襲う。
「っ!?!?」
何も構えてい無かった一夏は強烈な閃光をモロに受け、大きくバランスを崩して地面を転がった。
当然古鷹には対閃光防御が施されているので効かない。そして絶好の攻撃チャンスを見逃す程私は甘くはない。私は素早く転んでいる一夏に照準を合わせ、全力火力を叩き込む。
散弾、30㎜弾、12.7mm弾、5.56mm、そして射出型拡張領域から76㎜ロケット弾の計5種の火力をもって容赦なく一夏を地面に縫い付け、そしてシールドエネルギーを奪い続ける。
程なくして、一夏のシールドエネルギーが無くなり、試合終了の合図が鳴った。
(……不意打ちでは効果あり、だな)
「ぐへぇええ……」
そして試合が終わると一夏が奇妙な声を発した。見ると一夏は目をこすりながら体の各所をさすったりしており、軽くグロッキーな状態になっている。
うむ、あれだな、やりすぎたか?
ギャラリーもまさかこんな終わり方になるとは思っていなかっただろう。それに先程の閃光弾で目をやられた者も何人か見受けられる。……後程何かしら言われそうな気がするな。
「一夏、大丈夫か?」
「……これが大丈夫に見えるか?」
「見えんな」
見るからにアレだ、うむ。痛々しいな。
「……次から閃光弾無しで頼む」
「あぁ、そうしよう。これでは訓練にならん」
取り敢えず、一夏が慣れない閃光弾を受けて気分が悪くなっていたので箒とセシリアに介抱する様に頼んだ。そして私は悩む。予定外だったのだ、まさかこんな結末になるとはな。
そして一夏達が去った後、私は暫く考え込んで、答えを導きだす。
「設計図の作成の再開でもしようか」
私は先程の事を軽く反省しつつ寮へ向かった。
――――――――――――――――――――――――
さて、今回は何時もの様な楯無の妨害は無かった。と言うより、あの日以来接触はない。恐く、暗部の仕事で色々と忙しいのだろう。まぁ、それをを気にしたとことで仕方がない、か。生憎ソレは私の領分ではないからな。首を突っ込むには知識と経験が足りない。
私はそんな事を考えながら荷物を置き、PCを起動させた。そして製作途中の図面を開く。
今回私が作るのは106㎜無反動砲の改良型だ。使用方式はクロムスキット式。
因みにクロムスキット式とは、砲弾の薬莢には多数のガス噴出用の孔が空いており、発射時にはその孔より噴出したガスを大型の薬室に一時溜め、適度な初速を得るのに必要な砲腔圧力を発生させた後、砲尾から噴出させる、と言ったモノである。解りやすく言えばガン●ムに出てくるザ●が持っているザ●バズーカや某種割れ主人公のガン●ムに登場するジ●の500㎜無反動砲がそれにあたるだろう。
しかし只の改良型の無反動砲では意味がない。
何故なら106㎜無反動砲は既にアメリカや日本で一般の歩兵部隊の対戦車用や支援火器として作られているからだ。だったら一々作るよりも買って持ち手を改良する方が早い。
そこで私が考えたのが特殊弾の開発による無反動砲の専用化だ。
具体的に言えば砲弾の発射薬を液体火薬に変える。つまり発射時に液体火薬をプラズマ化させて放つのだ。これにより、通常よりも遥かに早い初速を得ることができる。
故に、クロムスキット式をプラズマに対応させる必要があるのだ。無論、通常弾を撃てる事も考慮する。理由はプラズマ炸薬だけでは、余りにもコストが高いからである。
そして現在私は薬室と砲尾をプラズマに耐えられる様に改良中なのである。
因みに仮名称は『106㎜プラズマ炸薬式対応型無反動砲』である。まぁ、そのままだな。
暫く時間が経つと、本音が帰ってきた。
「ただいま~」
「あぁ、おかえり」
「あれ~?あまっちはおりむーのお手伝いしてたんじゃないのー?」
「そうなのだがな、如何せんやり過ぎた。お陰で一夏は保健室行きだ」
「そ、そうなんだ~」
本音は少し顔をひきつらせていた。
確かに、言葉だけなら私が相当な事をやらかしたと思うだろう。まぁ、実際にそうだったのだから否定はできないのではあるが。
「それで、本音は何処に行っていたんだ?」
「んとね~かんちゃんの応援~」
「ほう、簪の応援か」
やはり、親友想いなのだな。
「でもでも、どうだったのかは教えないよ~?」
「当たり前だ。……と言うより寧ろ俺達に情報を渡すべきだと思うがな。同じ1組だろう?」
まぁ、冗談なのだが。一応理屈には適っているだろうがな。
「う~~……流石にあまっちのお願いでもダメ~」
親友を売りたくないのか、本音は頑なに拒否する。
……そろそろ止めておくか。
「冗談、冗談だ。やるなら一夏本人に行かせるさ」
もしくは他のクラスメイトに偵察に行かせようと思う。彼女達もデザートフリーパス券の為にはそれぐらいの労力は惜しまず提供してくれる筈だ。そして2組の鈴の偵察にも怠らない。残りの3組に対する偵察は、であるが……正直言って意味が無い。戦力を過小評価するつもりは無いのだが、如何せん3組以外の相手は国家代表候補生なのだ。例え初戦で3組と当たったとしてもこれを軽くいなせない様では鈴や簪と渡り合う事等は到底不可だ。よってノーマークである。
「ふぅ~よかった~」
「まぁ良い。さて、徐々食堂も開くだろう、夕食にしようか」
「あいあい~」
私の提案に本音は同意した。それを確認した私は一度設計図を保存、PCをシャットダウンさせて立ちがり、本音と共に食堂へ向かう。そして暫く歩いていると本音が話し掛けてきた。
「ねぇねぇ」
「ん、何だ?」
「あまっちは日曜日ひま~?」
「あぁ、予定は空いているな」
急用があれば別であるが。
「じゃぁじゃぁ一緒に買い物に行こ~」
「それは構わないが……どうした、いきなり?」
「あまっちにもアニメや漫画の素晴らしさを伝えるのだ」
そう言った本音の顔は何時ものほにゃりとした顔ではなく妙にきりっとしていた。どうやらそこそこ本気らしい。語尾も伸びて無かったからな。
「まぁ、確かにその手の知識は疎いが……ふむ。ちょっとした暇つぶしには良いかもな」
「ふっふっふーそのまま趣味にすればいいんだよ~」
本音が主任みたいな笑い方をしている。
……あの狂気が思い出されるのでそれは少々勘弁して欲しい。
「……趣味にするかどうかは後回しにするとして、取り敢えず予定は作っておこう」
「やたー!」
本音は妙に嬉しそうにしていた。同志を増やせるかもしれない、とでも思っているのだろうか?
まぁ、趣味が殆ど皆無だった私にはこれぐらいが丁度良いのかもしれん。
「では早速なのだが集合場所は――「集合場所って何?」む?」
「ほえ?」
集合場所を決めようとした私の声を遮る者がいた。
そして声が聞こえた方に振り返ると、後ろに簪が立っていた。シャワーを浴びた後なのだろう、仄かにラベンダーの香りが漂ってきた。
…
…しかし、近づかれたのに全く気付かなかった。流石は暗部の家系、と言ったところか。
「あぁ、日曜日に本音と買い物に行くのでその集合場所をな。どうやら俺にアニメや漫画の素晴らしさを伝えてくれるらしい。そうだろう、本音?」
「う、うん……そうだよ~」
本音は何か無念、と言った表情をしていたが……何故だろうか?
「私も、付いて行って良い?」
「俺は別に構わんが……本音はどうだ?」
「……いいよ~」
本音は渋々といった風に同意した。
「……?まぁ良い。取り敢えず夕食だ、行こう」
「うん」
「うぃ~」
そして私は歩き出したのだが、何故だか彼女達は何時もの様に私の隣を歩くのではなく、後ろで密かに何かを話していた。一体何の話だろうか?さり気なく耳を済ませて見たが―――
『何処に行くつもり?』
だの
『抜け駆けはダメ』
だの
『意外に鈍感?』
だの
『何を薦めるか?』
―――だのと、途中聞き逃した部分もあるが、恐く私の為に色々と相談しているのだろうと判断する。
そして暫くして食堂に着き、3人で夕食をとることになる。
はい。地味でしたね、射出型拡張領域。でもエグいです、閃光弾。
今回はちょっとだけミリタリー風。
武装考察は素人考えなのでおかしい所がありましたらご指摘下さい。
そして次回はデート回!?っといきたいのですが、次回は閑話です。
やりたいネタとか小説形式を試したいのでそっちを優先します。
それと、活動報告で武装案の募集を始めてみました。
もし、協力してくれる方がいたら協力して頂ければ幸いです。
それでは次回もお楽しみに!