そして新たなオリキャラ登場です。
そんで持って今回は前編です。
それでは本編をどうぞ。
え~…先日の事になります。
低軌道ステーションの『真柱』の一部重力ブロックが、ちょっとした事故の所為で、地球に落ちかけたようです。
しかも、その中には沙慈とルイスも居たらしいです。
…いや~焦った焦った。
何せ友達が巻き込まれたというのもあったけど、それ以上にまさかキュリオスが、(エクシアとデュナメスの援護付だったとはいえ)重力ブロックを安定軌道にまで押し戻してしまったとは思わなかった。
事前にマイスターの情報は貰っていたし、その人柄も知っていた
「まさかあんな事するとはねぇ~」
思わず口から言葉が漏れる。
あの後、一時的に営倉に入れられたキュリオスのマイスター、“アレルヤ・ハプティズム”は戦術予報士の“スメラギ・李・ノリエガ”に、自身が持つ人革連の超兵特務機関の情報を渡した後に、ミッションプランに従って出撃。
人革連所有コロニー“全球”第14区画にある“人革超人機関研究施設”を強襲し施設を完全に破壊した。
…貰った情報によると、彼もそこの出身であったらしいが……
「…というか、“超兵”、ねぇ……なんでそんな無茶苦茶な事やってたんだか人革連も」
さて、此処で今出てきた“超兵”とは何かを、俺が知っている限りで簡単に説明しよう。
超兵とは、物凄く解り易く言えば、『薬物や手術等で無理矢理反応速度や身体能力を異常に引き上げられた兵』…つまり他所で言う“強化人間”の事だ。
しかもヴェーダからの情報によると、どうやら超兵にカテゴリされている人は、その殆ど(と言うほど多くは無いが)が、イノベイド並に強力な脳量子波が使えるらしい。
…ただ、その超兵になるための施術の弊害か何かは分からないが、“超兵”はときたま解離性同一性障害――――つまり多重人格になる事があるらしい。
実際問題、前述のキュリオスのマイスター“アレルヤ・ハプティズム”は、自身の中に“ハレルヤ”というもう一つの人格を内包しており、驚くべき事にそのもう一つの人格“ハレルヤ”と主人格である“アレルヤ”はお互いに意思の疎通が可能であるらしい。
閑話休題
さて話を戻すが、それでもこの超兵という存在には、様々な問題があった。
例えば、超兵一人を戦場に送り出す為にかかる資金と年月が、それなりに掛かってしまう事。
他には、前述の解離性同一性障害もその一つだし、脳量子波の影響で“人の生の感情に触れてしまった場合、錯乱する可能性がある”という事もある。
ただ、これらはあくまでもほんの一部の人物にしか当てはまらない。
特筆するべきなのは、“能力が高すぎる”という問題である。
今現在、人革連の主戦力は、その殆どが“ティエレン”系統の機体である。
以前俺も訓練で乗ってみた事はあったが、あれは酷かった。
何せ機体の操縦は立ちっぱなしだし、モニターはヘルメットの内側に直で映し出されるので目が疲れる。
追従性が少し悪いので、思うように動いてくれない事もあった。
……まあ、戦闘訓練で出てきた時は、中の人のデータが物凄く強くて地獄を見たがな!!
つーか、地上用ティエレンのカーボンブレイドだけでビーム弾を受け流すってどんなバケモノだ!?
お蔭で一瞬固まってしまって、その隙にコックピットのハッチの装甲と装甲の隙間を狙われて撃墜されたわ!
つーか誰だよ『東洋の黒亀』って!?『ロシアの荒熊』じゃねーのかよ!!??
閑話休題
まあ、前述した通りに、ティエレンは追従性が少し悪い。
なので、ある程度能力が高いと、機体がパイロットの動きについてこられず、関節等がガタガタになるといった弊害が起こってしまうのだ。
故に近年では、そんな彼らの能力について来られるように、超兵専用機が開発されたりしているのだが……
「……“チーツー”の銀色って言うのは解るんだけど……なんで“タオツー”はピンクなのかね?」
思わずそんな言葉が口を付いて出てきた。
……よく考えてみたけど、結構どうでも良いな、これ……
そんなお馬鹿な事を現在進行形で考えている俺が今何処にいるかというと、ヨーロッパ南部に位置する小国“モラリア共和国”である。
ここは、人口は十八万と少ないが三百万人を超える外国人労働者が国内に在住しており、約4000社ある民間企業の二割がPMC――――傭兵の派遣、兵士の育成、兵器輸送、および兵器開発、軍隊維持、それらをビジネスとして行う民間軍事会社の事――――で、誘致した民間軍事会社を優遇して国を発展させてきた。
で、今回此処に俺がいる理由は、(聡明な読者の方々ならばもう解っているかも知れないが、)ぶっちゃけ実働部隊が此処に武力介入する事になったから、それのサポートも兼ねて監視しに来たのである。
(まあ、そっちの方は、実は建前なんだけどね……)
そんな事を考えながら、俺はOガンダムを飛ばす。
今回は別に実働部隊に見つかっても大丈夫なので、結構ゴツイ追加兵装を施す事になった。
その名も『F
…まあ、ぶっちゃけて言っちゃうと、肩とか足とか胸部とか腰とかに追加装甲を取っ付けて、左腕に専用の小型シールドを取り付け、その上から専用アタッチメントでいつものシールドを取り付けている。
とは言ってもただ単に重量が増えて機動力が下がっては困るので、追加装甲であるアーマーの幾つかには小型スラスターとブースターを搭載し、その結果機動力はむしろ向上しているのだが。
右腕には追加装甲に左腕に付いているのと同じアタッチメントでナドレ用のビームライフル2丁を改造して連結させた、試作型2連ビームライフルが取り付けられている。
因みにこの試作型2連ビームライフル。元になっているのがナドレ用の物な為、ビームサーベルとしても機能させる事ができる。
が、デカイうえに腕に直接取り付けられているため、慣れていないと以外に使い難かったりする。
また、ビームサーベルは腰のサイドアーマーに増設された専用ラッチに移され、代わりに背面のGNドライブのコーンの右側には、固定式の実弾キャノン砲が装備されている。
「何故実弾?」と思った人はちょっとキャノンをビームに変えた場合のこの機体の粒子消費量を考えてみようか。……とんでもない事になるのがお分かりになるだろうか?
まあ、(一応)オリジナルの太陽路(の筈である)このOガンダムならそこまで問題にはならない筈だが……念には念を入れて、個人的に変更しておいたのだ。
その分弾の所為で機体重量が重くなってしまったが。
因みに反対側には、射撃戦を主体とするこの機体のサポートの為に複合センサーが取り付けられている。
GNABCマント?勿論頭からスッポリと被っているし、ビームガンだって両手とマントの内側に計4個装備して、挙句の果てにビームサーベルをもう一本隠してありますが何か?
(…にしても、モラリアの軍事演習にAEUまで参加してくるとは思わなかったな。…どうやら外交努力のたまものっぽいケド…実際には、ガンダムっていう、超技術の塊が欲しいだけかな…)
実は此方にもソレスタルビーイングのエージェントとして活動をしている人達は、様々な情報を送ってくれている。
ただし、その情報は実働部隊やヴェーダに送られる物よりもかなり断片化されていて、ハッキリ言って役に立たない物が多かったりする事の方が多い。
…ただ、どんなに断片化されていたとしても情報は情報。
それらを繋ぎ合わせていけば、実働部隊等に送られている物には無い物が見えてくる事もある。
今回もそんな感じで導き出された情報から、AEUが今回の軍事演習に参加する事と、その部隊の中にPMCから派遣されたパイロットが、AEUから提供された新型機で参加するという事がわかった。
…新型機、とは言ってもイナクトのカスタム機らしいので、性能的にはそこまで警戒はしなくて良いとは思うが…
「…なんか、嫌な予感がするなぁ…」
主に俺に降りかかる厄介事的な意味で。
アムロがモラリアへと到着するおよそ3時間ほど前。
PMCトラスト 武器格納庫内部ハンガー
「合同演習ねぇ…まさかAEUが参加するとは思わなかったぜ」
そこに一人の男がいた。
中東系の顔立ちに、赤毛の髪と髭を蓄えた、野生的な…というよりも、何処か狂気的な物を感じさせるその男は、PMCに所属しているアリ-・アル・サーシェスという。
基本的に中身までその見た目通りな彼はこの格納庫に呼び出されて早々、自分の上司に対していつもの軽口をたたいた。
「外交努力の賜物だ。我々ばかりがハズレを引くわけにはいかんよ」
彼の上司はサーシェスの軽口を気にもとめず、苦々しく呟くように答える。
「そういう訳だから、偶にはAEUにも骨を折ってもらわんとな」
「ハッ、違いねぇ」
そんな話をしながら二人が奥へ進んでいくと、ライトが付いていない部屋に出た。
明りこそないが、そこには巨大な何かが二つほどある事だけは分かった。
(ん?コイツは…?)
アリーがそれを訝しげに思い、上司に質問しようとした瞬間ライトがつけられ、それは照らし出された。
紺色にカラーリングされたボディに鋭い翼を持った戦闘機。
…そして暗い赤色―――所謂ディープレッドにカラーリングされた全く同じ機体が、そこには鎮座していた。
「この機体をお前に預けたい」
「…へぇ…AEUの新型か…しかもカスタムされているとはな…」
AEUイナクト。
奇しくも、世界で最初に(というのは実際には正確ではないが)ガンダムに倒されたMSである。
「開発実験用の機体だが、わが社の技術部門でチューンを施した。」
「開発実験用?そりゃまた豪勢なモンを。こいつでガンダムを倒せと?」
サーシェスの顔に凶暴な笑みが浮かぶ。
元来、彼の本質は戦う事(というよりも戦争する事や、強い敵と殺しあう事)に喜びを見出す、戦闘狂(というより戦争狂)である。
故にガンダムの以上とも言える戦闘能力を耳にしてからは、思う存分そいつらと戦争がしたいと思っていた。
その念願がようやく叶うのだ。笑みの一つくらい浮かぶという物である。
…しかし彼のそんな期待は次の上司の言葉によって裏切られる。
「鹵獲しろ」
「…チッ…言うに事欠いて
上司の言葉を聞いたアリーは舌打ちを一つしてから、不満の声をあげる。
しかし凶暴な笑みはそのままだ。
何せ『鹵獲しろ』とは言われたが、『どんな状態』でとは指定されていないのだ。
…つまり、重要なデータが集中しているであろうコックピットさえ狙わなければ後は何をしても良い、とアリーは考えたのである。
「…成功すれば一生遊んで暮らせる額を用意してやる」
「(ヒュ~♪)そいつは大いに魅力的だな。やる気が出るってもんよ」
そう言うサーシェスだったが、実のところ彼らの提示している金など、彼にとってはどうでもいいことだった。
ただ、あの機体――――ガンダムと殺し合いができると言うだけで胸が躍る。
(クククク……さぁ、て…デッカイ戦争を始めるとしようや…ええ!?ガンダムさんよ!!)
これから始まる“デカイ戦争”…それを思い浮かべて、アリーは内心大きな笑い声を上げた。
「あ!先生こんなところにいたー!」
この声が聞こえてくるまでは。
「…おい、何で手前ぇがここにいんだ?」
さっきまでの凶暴な笑みから一転。急に疲れたような表情になってアリーは後ろを振り返る。
いや、事実彼は一気に疲れを感じていた。いつもの事だが精神的に辛いものがあるのだ。
すると…
「ドーン!!!」
という言葉と共に、アリーの背部に一つの人影が突っ込んできた。
「グオオオォォ!?」
突然の攻撃に、流石のアリーも衝撃に耐え切れずにもんどりうって倒れる。
そして彼の背中に体当たりをかました人影は、そのまま彼の身体に頬擦りをし始めた。
「わーい!わーい!先生だー先生だー!!」
「グゥゥゥゥゥゥ…ええい!コノ…クソッ…放しやがれこのストーカー野郎!!!!」
「えー?やだー♪それに私は女だから、“野郎”じゃなくて“
そう言いながら、人影は一向に彼から離れようとはしない。
そのままアリーは何とかその人影を引き剥がそうと四苦八苦していたが、何分か経ってからどうやら諦めたらしく溜息を一つ吐いて、自身の背中にしがみ付いている人影を見た。
人影の正体は少女だった。
アリーと同じ赤い髪をぼさぼさに伸ばし、彼が着ているパイロットスーツの色違いの黒い物を着ている。
瞳は赤く、肌は中東出身の人間とは思えないほどに白く、髪の色がもっともっと薄ければ、アルビノと言っても文句は無いくらいだった。
顔からして、おそらく歳は16~7歳程度だろう。
しかしそのプロポーションは見事な物であり、アリーが着ている物の色違いなだけだというのに、その姿からは大抵の男なら魅了できそうなくらい濃厚な色気が漂っていた。
というか彼の上司の男なんぞ、既に若干前屈みになっている。
“ハディージャ・アリエフ”。
彼女は最初アリーに拾われた時にそう名乗った。
彼女は元々、アリーがKPSA――――今は無きクルジス共和国の反政府ゲリラ組織に所属していた時に、とあるかつて民家だったと思われる廃墟の中でたった一人ポツンと居た所を、「何かの役には立つだろう」という理由で拾った、(おそらく)戦災孤児だった。
元々はここまで感情を顕わにするような性格ではなかったのだが、長く彼と一緒に生活していた所為か、何時の間にかこんな『
しかもその根本も彼と同じ様な物(戦争狂等)になってしまった為、当のアリーからしてみれば、鬱陶しいやら同属嫌悪で胸糞が悪くなるやらで、かなり苦手な人種であった。
しかも彼女はアリーとは違い、異常性癖持ちである事も、アリーにとっては都合が悪かった。
以前一度だけあまりにも鬱陶しくなったアリーは一計を案じ、適当な理由で彼女に殴る蹴るといった暴行を徹底的に行った事があった。
アリーとしては、これで自分を嫌いになってくれれば万々歳……だったのだが、次の瞬間彼女が言い出したのは、次のような事だった。
『私は……変態です……あなたに蹴られて殴られて罵られて感じている、変態エロガキです。だから………やめないで。もっと、もっと蹴って、殴って……ねぇ?どうしてやめるんですか?お願いだからもっと踏んで下さい。あんなの、あんなの初めてだったの。力を加えられる度に電気が走って、私が虐げられている事実が溜まらなく興奮して……お願いします!もっと……もっと踏んでっ!さっきのがもっともっと欲しいのっ!人を殺したり、傷を作るだけじゃダメだったあの快楽をもっと、もっと頂戴!!!いけない私をもっと罵ってっ!』
…………その場に居た全員が(アリー含め)、いきなりこんな事を言い出した彼女に対してドン引きである。
つまり何が言いたいかというと……彼女はドMなのだ。
しかも真性の。
しかもコレを行った場所が、KPSAのメンバーが多数集まる所でやったのだから尚更マズかった。
この発言により、アリーと彼女―――ハディージャは『ただの保護者と被保護者という関係ではない』という誤解がメンバーの中に生まれてしまい、その後当分の間彼は好奇の目に晒されるだけではなく、“ロリコン”という不名誉なあだ名を付けられる事となったのだ。
閑話休題
「…ったく…さっきの質問、もう一回言うぞ。“何で手前ぇがここにいんだ?”」
色々と諦めた表情で、アリーは再び先程自分が彼女に投げかけた疑問を口にした。
そもそも今回、この仕事は自分一人しか派遣されなかった筈なのである。
…だというのに、このたちの悪いストーカーもどきドM娘までここにいるというのはどういう事なのだろうか?
すると、その疑問の答えは意外なところから返された。
「それは私から説明しよう」
つい先程まで彼らのやり取りに一切口を挟んでこなかった上司がそう返す。
それを聞いてアリーは少し眉間に皺を寄せて彼を見る。
そんな彼の視線を意に介さず、何時の間に取り出したのか上司の男は両手で小さなネットブック(すごく簡単に言うと(厳密には違うが)ノートパソコンを小さくしたもの)を持っており、それで何かの動画を再生していた。
動画はかなり画質が悪く、それがまともな物で撮影された物ではないという事を示していた。
「これを見ろ」
そう言って上司の男はネットブックをアリーに差し出す。
アリーはしばらくネットブックのディスプレイで再生されている動画をつまらなそうに見ていた。
……しかし、ふととある処で彼の視線がある一点に釘付けになる。
動画に映っていたもの。 それはとある何処かの海の海面だった。
しかし動画から聞こえてくる音の中に、波の音に混じって独特な言語―――――日本語が聞えた事から、アリーは動画の場所を、今やユニオンの経済特区となっている“日本”の何処かの港か、もしくは日本近海のどこかと推測した。
だが、これだけでは彼の興味を惹く物にはならない。
彼の興味を惹く物が映ったのは、動画が丁度2分45秒を指したときだった。
突然、海面が丸く盛り上がる。
そのことにアリーが少々驚いているうちに、『ソレ』は姿を現した。
茶色い外套をすっぽりと被った、巨人。
そうとしか形容できそうもないように彼には思えた。
よくよく見てみると、外套の中はかなり重装備なのか、ちゃんと収まりきらずに所々該当の表面を膨らませている。
頭と思われる所からは、ライトグリーンに光る目が二つほど覗いており、その巨人に何処か人間っぽさを纏わせている様な感じがする。
巨人はそのまま海面から出た後、2~3秒ほど空中を見つめていたが、突如として緑色に光る粒子を撒き散らしながら空へと飛び上がり、やがて地平線の彼方へと消え去っていった。
動画を見終わってからしばらくの間、アリーは言葉が出なかった。
が、だんだんとその顔に狂笑を浮かべつつ、彼は上司へと口を開いた。
「オイオイオイオイ…………大将。この俺の勘からして、ひょっとするとコイツは…」
そう途中まで言った彼の言葉を聞いて、上司の男はこう言った。
「…ああ、そうだ」
少しの溜息を混じらせながら。
「おそらく、まだ世界中の誰にも確認されてはいない“ガンダム”だ」
……その場をしばらくの間沈黙が支配する。
やがて先に口火を切ったのは、上司の男の方だった。
「この映像は、たまたま付近を通り掛っていた子供が、偶然、携帯端末で撮影した物だ…さて、ここまで見せれば、なぜ彼女がここに連れてこられたのか理解できるな?サーシェス」
そう言いながら、上司の男はハディージャを指差して、アリーに問いかける。
それを聞いたアリーは、先程から浮かべていた狂笑の中に若干の諦めと疲労を浮かばせながら、こう言った。
「……つまり、合同演習へ参加して、今世間を騒がせている方のガンダムを鹵獲しろって言うのはカモフラージュ…本命は…」
「……彼女と協力して、このガンダムを鹵獲しろ。ただしこちらに至っては、コックピットさえ残っていれば良い。思う存分にやれ」
そう言って、上司の男は彼らに背を向けた。
おそらくこれから合同演習参加のための手続きなどをするのだろう。
そんな彼の後姿を見送りながら、アリーは内心踊りだしたいような気分だった。
何せ“まだ世界の誰にも知られていないガンダム”という存在と、これから思う存分にやり合う事が出来るのだ。
戦争狂の彼にとってこれ以上の喜びはなかった。
しかも今回は上司から直々にコックピット以外は如何なっても良いという御許しまで出ていると来ている。
正に言う事無しだ。
「………うにゅ?先生、お話終わった?」
――――――………こいつさえ居なければな!
そう思いながら、アリーは再びハディージャを見る。
どうやら彼にしがみついたまま寝ていたらしい。
溜息を吐きながら、アリーはハディージャに問いかけた。
「……で、だ。ハディー、手前ぇ本当になんで此処に来た?ただ俺に会いに来たって言うんなら、お望み通りにボコボコにしてやるが?」
「……そっちの方が良いかもしれないなぁ…(ボソッ」
「なんか言ったか?」
「ううん。何でも無いです」
慌てて手と顔を振るハディージャ(愛称:ハディー)。
しばらく彼女はそうやっていたが、ある程度経ってから、突如真面目な顔になってこう言った。
「……感じたから、かな?」
「…あ?そいつはどういう「なんだかは分からないです」…んだと?」
「でも…」
「でも…何だ」
そして次の瞬間。
彼女は先程までのアリーの狂笑にも劣らないくらいの獰猛な笑みを浮かべて、こう言った。
「でも…久々に、あたしがすごく殺したがってた懐かしい顔に合えるような気がするんです」
そう言って、彼女はクスクス笑い出した。
そんな彼女を見て、アリーは内心彼女の標的となっていた二人の少年と少女を思い出す。
肌の色や瞳の色以外はそっくりで、もしかしたら双子なのでは?と思った事もあったその少年と少女の顔を思い浮かべて、彼は内心二人に合掌した。
普段の彼ならば絶対にやらないようなことである。
勿論あの二人があの状況下で生き残っているとは考え難い。
ただ、漠然と「生き残ってそうだな」という思いを、彼は不思議と抱いていた。
「おおおおおおおおぉぉぉう!!??」
その頃、モラリアの上空を飛んでいたとあるガンダムの中で、一人の少年が盛大に身震いをしたが……これが原因だったかは定かではない。
そして時間は戻り、アムロがモラリアへと到着してから1時間後。
「……っし。予定されたポイントへと到着。後は…『ピピッピッピッピピ』……と、繋がった。ハロ、ボイスチェンジャー起動。音声サンプルはNo.5で」
「リョウカイ!リョウカイ!」
ハロの言葉と共に、コックピット内部の正面コンソールの脇にある赤いランプが点滅を始める。
これでボイスチェンジャーがONになったという事が分かった。
それを確認した俺は、すぐに通信のスイッチを入れた。
「エージェントへ。此方【O-01】。所定の位置へと到着完了。これより実働部隊の支援及び援護を行う。AEU及びモラリア軍の現在の動きを求める」
とりあえず所定の位置へと到着した俺は、今のセリフの中でも言った通りに一番近い所で待機しているCBのエージェントに連絡をとる事にした。
…そういえば、CBのエージェントも、俺の事はどんな人物だか良くは知らない、と師匠が言っていたな。
……大丈夫なのだろうか?組織的な意味で。
『始めまして【O-01】。此方エージェントの“
前述のようなアホな事を考えていると、突然に通信が帰ってきた。
表面上は普通にしながらも、内心慌てて通信用モニターに目を移すと、やや翠がかった髪をストレートに下ろした、東洋系の顔立ちをした少女がそこに映っていた。
年の頃は…俺よりも1,2歳くらい上っぽい。
名前から、おそらく中国の人だろう。
とにかく相手が自己紹介してくれたのに、自分は何も言わないというのは失礼な気がするので、一応此方も自己紹介することにした。
「自己紹介ありがとう、お嬢さん。もう知っているかもしれないが、私の名前は【O-01】という。よろしく頼む」
いつもと口調が違うって?
察してくれ。
基本演技が下手糞な俺は、こうやって口調やキャラを変えないと、ぽろっと元の口調で喋りそうになってしまうんだよ……
『…勿論偽名ですよね?』
「…存外、いきなり凄い事を聞いてくるな君は。…勿論偽名だ。残念ながら本名は明かせないのでね」
苦笑しながら彼女の質問に答えを返す。
まぁ、ミッション以外で普段活動する時は、本名なんだけどね。
(ホッ)『…そうですよね(ボソッ……失礼致しました。それで、AEU及びモラリア軍の現在の動きでしたね?』
……オイ。取り繕えたと思っているようだけど、おもいっきしホッと息を吐いた音ともう一言聞こえたぞ。
もしかしなくても、【O-01】っていうのを本名だと思いやがったな?
しかし俺は今の心の声を口に出さずにグッと我慢した。
……まぁ、出した所でまた面倒な事になるのが目に見えてただけなんだけどさ…
「ああ、そうだ。大まかでいいから、教えてくれないか?」
『分かりました。ミス・スメラギの戦術予報と此方で収集したデータを元にして、AEU・モラリア混合軍の現在の動きを今後考えられる動きのシミュレーションデータと共に逐一そちらに御送り致します」
「助かる」
俺がそう言うと、留美さんは『それではくれぐれもお気をつけて』と言って、通信を切った。
と同時に、先程彼女が言っていたデータが送られてきたのか、ハロが目から立体映像を展開して、おそらく此処らへん一帯の地形データと思われる物を映し出した。
その立体映像の所々に、紅い光点がかなりの数で密集しているのが見受けられる。
おそらくこれが、AEU,モラリア混合軍の機体なのだろう。
そしてその光点の塊からピンク色の光点がブワーっと広がっていく。
そのどれもが規則性のある動きなどをしている事から、たぶんこれがシミュレーションデータだと考えられる。
で、どの赤い光点の一団からも同じ距離だけ離れた所に、ポツン、と一つだけ光っている青い光点がある。
おそらくはこれが俺――――Oガンダムなのだろう。
立体映像の地形と周囲の地形が殆ど合致している事から、これはもう間違いない。
「…ってことは、ついさっきから左下に移ってる水色の5つの点は……」
そう言いながら、その5つの光点を見ていると、それぞれの光点があるポイントまで来たと思うと、一斉に別々の方向へと向かっていった。
つまりこれは……
「…実働部隊の“ガンダム”…ってワケ、ね。…こいつらが出てきたって事は…」
俺がそう呟いた次の瞬間だった。
突如として、正面のコンソールにCBのマークが出てきたかと思うと、次の瞬間そこにはこんな事が書かれていた。
【ミッションスタート】
と。
「…そんじゃ、始めますかね。ハロ。サポートよろしく」
「マカセロ。マカセロ」
そう言って言葉を返してくる相棒を見て、俺は苦笑を一つこぼすと、予め決められていた次のポイントへと、Oガンダムのステルス状態を保持したままゆっくりと移動し始めた。
ガション・・・・・ガション・・・・・ガション・・・・・・
徒歩で。
「……今思ったけど、これってミッションに規定された時間までに、ポイントまで辿り着けるんだろうか…?」
思わずそんな言葉が口を突いて出てくる。
師匠曰く、ステルス状態を保持する為にこの移動方法なのらしいのだが……
「本当に意味あるのか?この移動方法…?」
因みに後日聞いた話だが、やっぱりこれは師匠が俺をからかって面白がるためのデマだったらしい。
師匠曰く、
「まさか本当にやるとは思わなかった。でも面白かったし、結果的に規定時間内に到着できていたし、ステルスも本当にそこそこ保持できていたっぽいから、後悔も反省もしていない。むしろもう一回くらいやらせてみたい」
だそうな。
え?その後どうしたかって?
無論殴りかかりましたよ?
“ペ○サ○流星拳”とかいうので迎撃されたけど……
如何でしたでしょうか?
どうも、雑炊です。
今回は、冒頭に、私なりに超兵というものがどんなかを纏めて見ました。
…すみませんナマ言いました。
本当はキュリオスが重力ブロックを押し返す話に主人公が介入できそうも無かったから、その分入れてみただけです。
不快になった方が居たらすみません。
で、新オリキャラ登場でございます。
彼女はにじファン時代の読者様が感想で書き込んでくれたアイデアを基にしています。
で、留美さん初登場です。
口調あっているか分かりませんが(汗
そしてOガンダムが、次回から本格的に活躍開始でございます。
フルアーマー装備の方は、OO公式の物ではなく、基本的にFA-78-1の装甲をOガンダムに取っ付けたような物をイメージしていただけると幸いです。
それではまた次回!