ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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今回は外伝からちょこっとだけあのキャラが登場です。
それと少しのキャラ崩壊もあります。
それが駄目という方は気を付けてください。

それでは本編をどうぞ。


四話――――買い物しました。ついでにちょこっとミッション行ってきました

前回までのあらすじ

 

アムロ、ガンダムマイスター二名と同居開始 → あれれ?おかしいなぁ?一名荷物が少なすぎるよ? → 服が無さ過ぎるぞ……(汗 → デパートに買いに行きますよー←今此処

 

 

 

 

 

 

 

 

……これは一体どういうことなんだろうか?

そう思いながら目の前の光景に頭を抱える。

あの後、私と刹那は周辺の地理の把握を踏まえて、刹那の服を買いにエージェントの少年―――確かアムロと言ったかな―――と共に、デパートに来ていた。

で、今は刹那の服もある程度買い終わり、食料品も買ったので帰ろうとしていた所だったのだが…

 

「……………………」

 

…この様に、突如としてアムロがとある物の売り場の前で、ある一点を凝視したまま動かなくなってしまったのだ。

何度か声を掛けたものの、全く動かない。

それが今から10分前。

流石に見かねたのか、

 

「このままでは今後の活動に支障が出る。私が連れ戻してくる」

 

と言って彼に近づいていった刹那が、そのまま彼と同じ状態になったのが、今から5分前の事だ。

 

「……お~い二人とも~…そろそろいい加減にしてくれないか~…」

 

……反応は、無い。

…泣いてない。泣いてないからな!?

いっそ此処まで綺麗に無視されたら、気持ち良くなってくるぞ!?

………ごめんなさい。本当は少しだけウルッと来ました。

 

「…にしても、二人とも何を見ているんだ?」

 

思わず口に出してしまったが、本当に気になる。

あのアムロという少年とは今日が初対面だからどうかは分からないが、刹那とはそれなりに付き合いがあるので、大体その性格は把握している。

彼女の性格は、簡単に言えば“無口な超ガンダム馬鹿”だ。

以前彼女の目の前で思わず口走ってしまったが、そのときは今まで見た事が無いくらいに満面の綺麗な笑顔を浮かべていた。

…どうやらガンダム馬鹿と呼ばれた事が物凄く嬉しかったらしい。

 

(……そのガンダム馬鹿が、あそこまで惹かれる物とは一体何なのだろう……?)

 

流石に物珍しく思った私もだんだんと彼らへ近づいていった。

…………因みに此処は何処かというと、デパートの二階にあったおもちゃ売り場の、ゲームソフトのコーナーだ。

……結論だけ言わせて貰おう。結局私もそれに魅入られて、その後三人で50分くらいその場に立ち続けてしまった。

 

因みに私達が1時間と5分間ずっと見ていたそのゲームの名前は『スーパーロボットジェネレーション VS:MAXON 』という名前だった。

……パッケージにガンダムに良く似た機体が書かれていたが……刹那。お前が立ち止まってた理由って、まさかソレじゃないだろうな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……迂闊だった。

まさかこんなもんが売られていたとは……ええ、買いましたとも。買いましたともさ!!だってしょうがないじゃん!このゲームなぜか知らんけど師匠が結構気に入っていて、ソレスタルビーイング号の中に第一作から全部あるんだもん!ヒマな時に誰かがやり始めると、そのまま強制的にトーナメント開始ですよ!?師匠と俺とブリング兄さんとデヴァイン兄さんなんか、ほぼ全部の機体の全コンボ制覇してるからな!!そんだけやり込んでんだから最新作出てたら買うしかないじゃないか!!!???

…失礼。

 

と、言うわけで、アジトへと帰ってきてから、即行で夕飯を作って食い、マイスターの内の一人の刹那の服のお披露目会をした後、買って来たゲームを早速プレイしているわけだが……

 

「…ユリ…って言ったっけ?」

 

「ああ」

 

「一つだけ訊いていい?」

 

「なんだ?」

 

「………なんで射撃系の機体使ってんのに、わざわざ接近戦仕掛けてくるん?」

 

「う、うるさいな!私はこういった戦い方のほうが好きなんだ…ってああ刹那!?後ろからブラックホールキャノンなんか撃つな!!」

 

「……シュッツバルトなぞで接近戦を挑んでいる貴様が悪い」

 

「ですよねー……と、ダウン寸前のところスマンが、スプラッシュブレイカーでとどめっと」

 

画面に映る俺の機体―――アシュクリーフの肩から青いボールが飛び出して、ユリの操るシュッツバルトに殺到する。

対するユリはシュッツバルトの右手に持たせたアサルトライフルで幾つかを打ち落とすが、やはり全ては無理だったらしく、打ち漏らしたブレイカーに当たってご退場と相成った。

と、此処でユリの所属しているチームの戦力ゲージが0となり、彼女の負けが確定。

当の本人はボコボコにされたのが悔しいのか、地団駄を踏んでいる。

が、個人的な意見を言わせて貰うなら、基本中距離~遠距離戦向けの機体であるシュッツバルトなどで勇猛果敢に接近戦を仕掛けて来るなと言うもんである。

そんな機体特性ガン無視な戦法はもっと上手くなってからやれや。

 

因みに今の状況は、とりあえずアーケードモードをスーパーアースゲイン等で何回か回った後、隠し機体を全部出した状態で今はフリーバトル祭り第15ラウンドといったところか。

なお、最大で8人対戦が可能なこのゲーム、主な対戦方式は個人戦かチーム戦。基本的なルールとしては、全員1000のコストゲージ(戦闘開始前に500~10000の間で500間隔で変更可能)が表示され、そのコスト分がなくなったら負けとなる。

因みに、ゲージがまだ残っている場合は何度やられてもまた復活でき、ゲージの残りが使用している機体のコストよりも足りなかった場合は、再出撃時に自機の体力が半分以下になってしまう。

ただ、一部の機体はそういった時に若干性能や姿を変えてくるので、一部の人やお遊びでわざと最初からコストオーバーで戦う、なんて事を平然とする奴もざらである。

 

因みに今俺が使っているのは、本作品中全体的にバランスの良い性能に仕上がっている“アシュクリーフ”だ。

コイツは、今さっき使った遠隔兵器の一つであるスプラッシュブレイカーに加え、高出力ビーム砲のビットガン。威力、飛距離、命中精度ともに申し分ないビームカービン。更に近接専用のビームセーバーに可変機構まで搭載していると言う、全体的に射撃系の機体だ。

だというのに、コンボの殆どは格闘攻撃から入るものが殆どで、最初期の作品から使っている俺に言わせて見れば、“射撃系機体の皮を被ったバリバリの格闘系機体”である。

 

対する刹那が使っているのは、ヒュッケバインという機体だ。

コイツはブラックホールキャノンという必殺武器がある以外は、基本アサルトライフルとビームセイバーといった基本的な武装しか持っていないため、初心者にも扱いやすい仕様になっている。

が、その分コンボの数が半端ではなく、直前の行動をキャンセルして別の行動が出来る行動キャンセルというシステムを持っているため、使いこなせるとかなりの強機体と化す。

しかもブラックホールキャノンは、出が遅い代わりに威力と範囲が半端ではなく、特定のコンボから止め技として繋げられると、ハッキリいって殆どの機体はそれだけでワンキルされてしまう。

……顔がなんとなーくガンダムに似ているのは気のせいだろう。うん。

 

因みに師匠がよく使う機体は、意外な事にスーパー系の“スーパーアースゲイン”。もしくは“ゲシュペンストMk-2タイプS”か、“バンプレイオス”と言った俗に言う“スーパー系”の機体が多い。

本人曰く「必殺技が格好いいじゃないか!特に蹴り技が!!」との事。……あなたむしろ(ネタ的な意味で)蹴るよりも殴る方が得意ですよね?

あと、低確率で“ダイゼンガー”を使ってくるが、これで勝った後師匠の顔は何故か物凄く劇画チックになる為、本人は気にしないが周りが気にして彼にダイゼンガーを使わせようとしない。(因みに原因は不明)

そういえば先日連絡したときに自分専用のスーパーロボットを作るとか冗談いってた気が…本当に冗談だよな?

 

他の皆の機体も挙げていくと、

 

ヒリング姉さん:基本的に“ビルトシュバイン”。ただし状況に応じて様々な機体を使用。大体接近戦を挑んで来るので、いつも遠距離武器でボコボコにされている。

 

リヴァイブ兄さん:“グルンガスト三式”、または“スレードゲルミル”を使っている。このとき、彼は何故かドリルブーストナックルを凄い頻度で多用し、しかもこの時だけ人が変わったかのような熱血キャラになる。しかし何故か斬艦刀やシシオウブレードといった武器はあまり使わない。

 

ブリング及びデヴァイン兄さん:二人とも何故か確実に“R-2”を使用する。しかし、ハッキリいって何に乗っても高確率で勝ちを攫っていくので、R-2を選んでいるのはただ単に好みだからだと思われる。俺の知る限り二人よりも強い人ってあまりいないと思う。

 

リジェネ兄さん:強機体、または厨機体の一つに数えられる“ダークブレイン”や、“アストラナガン”。“ディス・アストラナガン”や“ツヴァイザーゲイン”や“ケイサルエフェス”等を多用してくる。が、毎度の事のように一番最初に負けてボコボコにされる。特に師匠が敵でいる際には、速攻で彼の使っている機体を師匠が潰しにかかるため、下手をするといつの間にか負けていたなんて事が無くはない。多分一番下手。

 

グラーべさん:“アルトアイゼン”系統の機体を多用してくる。が、ある程度様子を見てから突っ込む癖があるので、そこを狙われて撃墜される事が多い。

 

ヒクサーさん:“ヴァイスリッター”などの狙撃系機体を使ってくる。基本的に格闘はしない主義の人。グラーべさんと組まれるととてもえげつないコンビネーション戦法を見せてくる。

 

と言った感じか…って!!

 

「ブラックホールキャノン発射!!」

 

「でえええええええええ!?」

 

ちょっと物思いに耽っている間にチャージしていたのか、刹那がブラックホールキャノンを打ってきやがった!

咄嗟に変形して逃げるが、そこを狙っていたのか、刹那のヒュッケバインはキャンセルダッシュを使って発射をキャンセルしながら此方へと突っ込んでくる。

 

「チッ!最初(ハナ)からコイツ(コンボ)が狙いか!」

 

「可変状態からでは格闘攻撃へ対処は出来まい!」

 

そう言いながら刹那はビームセイバーで切りかかってくる。

確かにこの戦法は可変状態の機体に対しては結構有効だ。

だが……

 

コイツ(アシュクリーフ)に対してその戦法はミスだ!」

 

そう言いながら、俺はスプラッシュブレイカーを射出する。

この武器は基本的に近~遠距離までオールラウンダーに使える武器なので、こういう時に役に立つ。

それを見た刹那は慌ててキャンセルダッシュで距離を取るが、元々追尾機能のあるスプラッシュブレイカーは、そのままヒュッケバインを追いかける。

その間に俺はアシュクリーフを人型に戻し、必殺技のチャージを開始。

 

「私に……触れるなっ!!」

 

チャージが半分くらい経った所で、今まで逃げていた刹那が反撃に出た。

ヒュッケバインにビームセイバーを持たせた後、ロックをアシュクリーフから、自身を狙っていたスプラッシュブレイカーの一つへと変更。

そのままタイミング良くセイバーを振るってスプラッシュブレイカーを切り払いながら、こっちへと再び突撃してきた。だが―――――

 

「……掛かったな?」

 

既にこっちのチャージは――――――

 

「っ!!しまった!!!」

 

「さぁ、景気良く―――――――」

 

―――完了している!

 

「吹っ飛べやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

次の瞬間、アシュクリーフを中心に青い波動がフィールドに広がる。

これがアシュクリーフの必殺技である、“スプラッシュブレイカー(MP)”である。

この技は一度発動すると、この様に青い波動がフィールドに広がり、その範囲内の敵に大ダメージを与え、運が良ければ、そのままコンボに発展できる。

今回はギリギリ範囲内という部分だったのでコンボには繋げられなかったが、まだビットガンがある。

俺がそれで止めを刺すために、武器を構えると、向こうもこの距離では間に合わないと判断したのか、咄嗟にブラックホールキャノンを構える。

そのまま両者は手に持った砲門から光を放つ。そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1P:WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っしゃあああああああ!!見たかぁぁぁぁぁぁ!!これが素人と玄人の違いじゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

結果は俺のアシュクリーフの体力が残り10%以下ギリギリで残り、刹那のヒュッケバインが撃墜され、彼女の戦力ゲージが0になった事で俺の勝利となった。

喜び過ぎだ?

馬鹿野郎。もしこれが師匠だったらどこぞの悪役の如く「フフフフフフ……フハハハハハハ!ハーハッハッハッハ!!」などと高笑いを上げながらこちらを見て来るんだぞ。

これぐらいはまだマシである。

 

「……私は…ガンダムには…なれない…!」orz

 

刹那がそう言いながら床に倒れ込む。

というかお前、やっぱりヒュッケバインをガンダムと認識していたな?

そのネタは色々と危険だから今度からやめるように。

心の中でそんな事を言いつつ、次の試合の準備をしようとすると、

 

「なあ」

 

と、ユリに止められた。

 

「ん?どした?」

 

「いや、熱中していて今まで気付いていなかったのだが……」

 

そう言いながら彼女は窓の外を指差した。

なんぞや?と思いながらも、彼女の指の先へと目を向けると……

 

ピピピピ……

チュン、チュチュン

 

「……もう、外が明るいんだが………」

 

「…あらまぁ」

 

俺が唖然としながらそう呟いた瞬間に、

 

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!

 

そんな目覚ましの音が鳴る。

見れば只今の時間は朝の6時。

それが示す所はつまり………

 

「…て、徹夜してしまった……」

 

そのまま呆然としている俺とユリを横目に、刹那はそのまま次の試合で使う機体を決めたらしく、「まだか?」と此方に言ってきたが……ハッキリ言ってそろそろ朝飯作らないと駄目な気がするので、とりあえずゲーム大会はお開き、という事になった。

 

……だからって刹那。そんな不満そうな顔をすんな。そんなに気に入ったのか?このゲーム?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許さぬ」

 

そう言いながら僕の隣にいる人物――――リボンズは険しい顔で腕を組んでいた。

……まあ、確かにその気持ちは分からないでもない。

分からないでもないのだが………

 

「許さぬ」

 

「…あの、そろそろそうやって怒るの止めたらリボンズ?まぁ、あのゲームの最新作先に彼に買われて悔しいのは分かるけど…」

 

僕がそう言うと、リボンズは僕の言葉を鼻で笑ってこう言った。

 

「ハッ。そんなみみっちい事で、僕がここまで怒るとでも?」

 

「いや、話の流れ的にそっちでしょ。…じゃあ何で怒ってたのさ?」

 

「そんな事簡単さ」

 

そう言ってから、彼は少し溜めた後、目をカッと見開いてから、

 

 

 

 

 

 

 

「スーパーアースゲインは僕が一番上手く使えるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

と叫んだ…って。

 

「ハァ!?そんなくだらない事で君は今まであんなに怒ってたのかい!?」

 

「当たり前じゃないかリジェネ・レジェッタ!スーパーアースゲインは僕が一番上手く使える事など君達にとっては周知の事実だろう!?だというのに彼はそれを使い、あまつさえそれでアーケードモードを最高難易度でノーミスでクリアするなど………!!」

 

「……君、この間彼の使うスーパーアースゲインに負け「何か言ったかな、紫ワカメ!?」……いや、何も言ってないよ。うん」

 

…もう突っ込むのも面倒臭いので、僕は彼を放置する事にした。

まぁ、彼の怒りでいつも被害を受けるのは、基本的にアムロ唯一人なので、放置しておいても問題は無いだろう。

とりあえず……

 

「よし。とりあえず彼の部屋に、他のプトレマイオスのクルーを何人か追加で潜伏させるとしよう。それに彼の事だから、男を向かわせるよりも女の子を向かわせた方が彼にとっては大変だろうから……そうだな、とりあえずフェルト・グレイスとヒリングを追加させて、それから………ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ……」

 

「……リボンズ~?あんまり彼を虐めないであげてね~?下手したらフラグ乱立させて凄い修羅場になっちゃうかもしれないし……」

 

どうやったらアムロを困らせられるか考えているリボンズを止める事にしよう。

 

「修羅場?修羅場だと!?そうかその手が…!」

 

…………はぁ…………

 

「…最近思うようになったけど、君とアムロってホントに似てきたよね、その変な思考回路」

 

「ハッ。それは心外だな。ヘッポコゲーマー紫ワカメの君如きが何を馬鹿なことを…」

 

「……」

 

……あったまきた。

 

「………よしリボンズ。今からスパジェネVS:MAXON買ってくるから勝負だ。今日こそ僕のツヴァイで冥府魔道へ落としてやる」

 

「そっちこそ、僕のゲシュペンストMk-2TypeSで蹴り潰してあげるよ?」

 

「オッケェィ……その言葉…忘れるなよ?」

 

そう言いながら僕は踵を返す。

上等だよリボンズ。今日こそそのニヤケ面を絶望に染めてやるよ。

 

 

 

 

……まあ、結局その後絶望に染まったのは僕の方だったけどな。

 

「フフフフフフ…フハハハハハハ!ハーハッハッハッハ!!みたかい!?これが君のようなヘッポコクソゲーマー紫ワカメと神も同然たる師匠ことこの僕、リボンズ・アルマークとの違いなのだよ!!!」

 

「……」

 

……リボンズ…やっぱりアムロと君の思考回路って絶対似てるよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なんだ?今の電波?

何か師匠とリジェネ兄さんが言い争っているような気がしたけど……

 

『……どうしたの?』

 

「…いや?別に?」

 

『その間は一体何なのよ…?』

 

あの徹夜事件から大体1週間くらいが経った。

今俺は中東でとあるミッションを遂行している、ソレスタルビーイングのサポート組織『フェレシュテ』、そこが所有している“ガンダム”の様子見に向かっている。

勿論乗っている機体はOガンダムだ。GNABCマントも頭からすっぽりと被っている。

因みに今回はヒリング姉さんが“GNセファー”で同行してくれている。

え?刹那とユリはどうしたって?二人は2~3日ほど前に、次のミッションの為にプトレマイオスへと戻っていったが、何か?

 

「…と。姉さんそろそろポイントに到達するから準備して」

 

『はーいはいっと…んじゃ、ドッキング始めるわよ』

 

姉さんの言葉と共に、GNセファーの後部ブロックが、機首と分離する。

そのまま後部ブロックはOガンダムとドッキングし、コックピットのモニターの一つにドッキングが完了した事を告げる画面が表示される。

 

これが最近Oガンダムに追加された、GNセファーとのドッキング形態。

その名も“Oガンダム・セファー”である。

これは元々“ガンダムラジエル”の支援機として作られたGNセファーを、他の機体にもドッキング出来ないかテストする為の形態で、変わった事と言えばGNプロトビットが2つ使えるようになり、セファーの後部ブロックはそのままGNコンデンサーと同じ働きをしてくれるので、せいぜいGNビームガンの威力がちょっと上がるだけである。

…つまりちょっと強くなるだけで、そこまで元々の性能に変化は無い。

しかも元から付けられていたマントのお蔭で、その見た目は結構不恰好な物になっている。

……が、文句は言えない。

 

『ちょっと、あれじゃない?』

 

GNセファーに乗っていた姉さんが何かを見つけたらしい。

見れば近くの岩山から黒煙が上がっているのが見えた。

 

うん、どう考えてもあそこだな。

 

「姉さん。おそらく姉さんの言う通りターゲットはあそこだ。俺がステルスモードで先行するから、後からゆっくりと来てくれ」

 

『はぁ?何言ってんの?あたしが人間如きに負けるわけ無いでしょ』

 

…いや、ね。

 

「……戦闘機よりも酷い脱出ポッドもどきで戦う気ですか貴女は?」

 

『うっ……』

 

これが姉さんの悪い所だ。

イノベイドという人よりも高い能力を持つ存在の所為か、彼女は基本的に身内以外を見下す傾向がある。

実際俺も会ったばかりの頃は見下されていたし。

因みに彼女が俺を見下さなくなったのは、模擬戦で二回勝ったぐらいだから――――――大体5~6年位前か?

ま、何はともかく…

 

「ハロ。敵とターゲットの機体識別しといて。それなら最悪戦闘になってもある程度は対処できる筈だ」

 

「ソコマデワカラン」

 

「……あ、そう」

 

……何だかなぁ……

今俺が声を掛けたハロは、何だか何時の間にかOガンダムに乗っかっていた奴だ。

色は明るい黄緑色で、目は他の奴と同じく赤い。

それだけではなく、こいつは他のとは違い、小さいが手足があり、単独で飛行できたりと結構多機能で高性能だ。

元々は、俺が地上へと降りる前に、ガワと中身の部品だけ貰って個人的に作っていた物だったのだが、どうやら師匠が面白半分に色々とつぎ込んだ後、完成させてしまったらしい。

因みにこれ(ハロ)が乗っている事に気づいたのは、今回のミッションの為にOガンダムに乗り込んだ時だ。

話を聞く限り、この間の実働部隊の監視の時には既に乗っていたらしいが……全く気付かなかったorz

 

と、落ち込んでる場合じゃないな。

 

「ハロ。ステルス実行。ただし完璧にはし過ぎるな?」

 

「ナンデダ?ナンデダ?」

 

「さあ?何故でしょう」

 

そう言いながらステルスが発動した事を確認した俺はOガンダムを飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おおう…こいつは、酷いな……」

 

ターゲットがいると思われるであろうポイントに到着した俺の目に飛び込んできたのは、人革連のものと思われるMSの残骸。そして、指揮車が今まさにビームに打ち抜かれる瞬間。

 

そしてそれを行っていたのは、血に濡れたかのように全身を紅く染めた、エクシアに似た機体。

 

「……あれが“アストレアTypeF”…“フォン・スパーク”の駆る“フェレシュテ”保有のガンダム、か……」

 

ソレスタルビーイングのサポート組織である“フェレシュテ”は4機の“第二世代のガンダム”を保有しており、その内の3機を偽装して使っている……らしい。

で、今俺の目の前で暴れに暴れまわっていた紅く塗装された機体がエクシアのプロトタイプとなった“ガンダムアストレア”である。

本来は白を基調として、所々が青い機体なのだが、今はフェレシュテが保有していると言う意味と、偽装の役割も兼ねて紅く塗装されている。

 

「…懐かしいか?相棒?」

 

思わず口からそんな言葉が漏れる。

元々、フェレシュテが保有し、今あそこで大暴れをかましたアストレアに搭載されているGNドライブは、このOガンダムがまだ師匠の愛機だった頃に搭載されていた物だ。

故のこの言葉だったのだが……この鋼鉄の巨人が何かを返してくれる筈も無く、結果として何故か俺が一人でボケて勝手に滑ったみたいな感じになってしまった。

 

まあ、それはともかくとして。

 

で、その肝心のアストレアはそのまま気が済んだかのように、それへと飛んで行こうとした。

…そう、飛んで行こうとしたのだ。

が、突然空中で体勢を整えたと思えば、アストレアはそのまま手に持ったビームライフルを構えるとそのままそこからビーム弾を放って…!?

 

「まさか!?」

 

ハッとしてビームの行く末を予測する。

するとその射線上にあったのは、姉さんの乗っていたセファーの機首部分だった。

 

(マズイ!!)

 

そう思った俺は、咄嗟にビームガンから同じ様にビーム弾を放つ。

打ち出された弾は、上手い事ライフルの弾へと直撃し相殺する。直後に姉さんも今何があったのかを正確に把握したのか、一目散に其処から離れた。

が、ホッとする間もなく、アストレアは此方を見つけたのか、今度はGNビームサーベルで此方へと切り掛かってきた。

 

「ウッ!?」

 

あまりに咄嗟の事だったので、思わずビームサーベルでそれを受ける。

そのまま両者は拮抗し、動かなくなる。

 

先に動いたのはアストレアの方だった。

このままでは埒が明かないと思ったのか、此方のどてっぱらを蹴っ飛ばしそのままビームライフルで此方に撃ってきた。

俺はそれをシールドで受けながら、ビームガンとGNプロトビットで反撃する。

因みにGNプロトビットは脳量子波の使えない俺の代わりに、ハロがコンピュータ制御によって動かしている。

が、師匠と俺のもはや魔改造としか思えない性能アップによって、その動きはイノベイドが動かしているのとはなんら遜色無い物になっている。

GNプロトビットとビームガンから放たれたビーム弾がアストレアに殺到する。

しかし当の本人はそんな物がどうしたと言わんばかりにそれらを避けながら、Oガンダムへと突っ込んでくる。

それを見た俺は、ビットでは対処できないと判断して、再びビームサーベルを抜き放ち、もう一度アストレアと切り結ぶ。

そのまま当分の間、また弾いて、射撃戦して、再びビームサーベルで切り結んで、といった攻防を繰り返していたが、流石に時間の方がおしてきたので、俺は頃合を見てシールドから煙幕弾とジャマーを発射し、そのまま全速力で離脱した。

流石にあれ以上戦闘を続けて消耗する気は毛頭無かったし、それ以前の問題にあのまま戦っていても勝ち目が一切無いと思ったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫らく飛んでから、溜息を一つ吐いた。そしてこう呟く。

 

 

「……負けた」

 

 

そう、ただ一言だけ。

因みに別に性能差で負けたとは思ってはいない。

第一世代の機体とはいえ、このOガンダムは結構強化されており、やろうと思えば第三世代のガンダムを一手に引き受けても、圧倒は出来ないにしろギリギリ一体くらいは大破できる程度に戦えるほどの性能は有している。

 

だというのに勝てる気がしなかった。

 

これは詰る所単純に言えば、腕の差。

つまりパイロットとしての技量が、向こうの方が遥かに上だと分かった結果だった。

実際先程の攻防で、Oガンダムは掠った程度とはいえ被弾している。

向こうには鍔迫り合い等の時の傷しか付けれていないのに……

 

「……あ~…クソッ…」

 

そう言いながら俺はメットを外して頭をわしゃわしゃと掻き毟る。

そして、

 

「……もっと強くなりてえなぁ…」

 

極めて自然に、そんな言葉が出た。

生まれて初めて呟いた言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(気に入らない)

 

あたしはそう考えていた。

本当は認めたくは無いが、あたしの弟的なポジションにいるアムロ・レイというガキは、はっきり言ってあたしの身内の中では大好きなリボンズの次くらいにMS戦では強い。

だからこそ、今日遭遇した、あの赤いアストレアには腹が立った。

 

(気に入らない)

 

それはあたしの乗っていたGNセファーのステルスが、見破られたというのもある。

だが、本当はもう一つ腹が立ったことがある。

 

……見ていて分かった。

 

あいつはMSの腕はアムロよちも遥かに上だと。

 

つまりそれはアムロよりも弱いあたし達一部のイノベイドよりも強いということだ。

 

(…本当に、気に入らない)

 

だからこそ腹が立つ。

アストレアのマイスターは元犯罪者の只の人間だったはずだ。

…しかし、その“只の人間”にアムロは負けた。

 

(…気に入らない)

 

だから、あたしは、

 

(……殺してしまう?)

 

アムロよりも先に、

 

フォン・スパークを、

 

 

 

 

 

 

 

潰す事にした。

 

 

 

………何時になるかは分からないけど。

 

 

 

 

『……もっと強くなりてえなぁ…』

 

不意にそんな声が聞こえた。驚いて見れば、“あの”アムロがメットを外して頭を掻き毟っている。

 

「…ふふっ」

 

そんな彼を見てたら、なぜか少し笑ってしまった。

とりあえず戻ったら、アムロに思いっきりスイーツでも奢って貰おう。

だってあいつはあたしの弟で、

 

 

 

 

 

 

 

……あたしはこいつの姉なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ。なんだ、もうオシマイかよ?」

 

「アンノウン撤退確認、アンノウン撤退確認!!」

 

「…本当にそう思うか?下手すりゃそう見せかけてるだけかも知れないぜ?どうもあっちもガンダムっぽかったからな。隠れてこっちが気を抜いた瞬間にズドン!……そんな常套手段が来るかもしれないぜ?陳腐過ぎて俺様だったらやらないがな」

 

「……センサーニ反応ナシ!!センサーニ反応ナシ!!驚異確認デキズ!!驚異確認デキズ!!帰還!!帰還!!」

 

「…ハッ。分かった分かった。大人しく帰るさ…シャルの奴に小言を言われるのはゴメンだしな」

 

そう答えながらも俺様は思考を続ける。

当然ながら、たった今、明らかにこの場に在るのが不自然、且つ、面白そうなもんを見っけたからだ。

……あの所属不明のアンノウン……いや、GNセファーを取り付けたMS。

時々マントの隙間から見えた白い装甲や使っていた武器からして、カラーリングは変わっていたがおそらくあれは“Oガンダム”だと分かる。

元々はオレが今いる組織である“フェレシュテ”が管理する筈だったMSだ。

だが、実際にはイオリアのじじいの計画が発動する少し前に保管場所が変更され、今の今まで行方不明だった“筈だった”、んだが…

 

「…それにしてもあのOガンダムのパイロット、腕は“アレ”だが意外と頭は回るみたいだな」

 

あのGNセファーのパイロットから感じた違和感はよーく覚えてる。

あれは、オレ様がCBにスカウトされる前に偶然見つけた“違和感”……“まったく痕跡を残さない完璧すぎるが故の違和感”だ。

……あんなのは、あんときのだけだと思ってたんだが…まさか今更同じようなのを見っけるとはな。

 

…いや、それよりも興味深いのはあの“Oガンダムのパイロット”の方だ。

あのパイロットは、おそらくその“完璧すぎるが故の違和感”を無くす為に、敢えてステルスに穴を作ったのだろう。

センサー自体には引っ掛からなかったが、よくよく考えてみれば視界の隅で極小さくだが何かがはためいていたし、気になるか気にならないかのギリギリのラインだったが微かにアストレア以外のMSと思われる駆動音もしていた。

 

GNセファーのパイロットから感じる違和感と、周囲の人革連のMSの残骸から聞こえる音に紛れて上手く隠れていやがったが……詰めが甘かったな。

自分の相方が狙われた途端に慌てて飛び出てきたんだから、ありゃ相当な甘ちゃんだな。

 

「……ま、どうだっていいさ。甘ちゃんだろうがなんだろうが……楽しめるんならそれはそれでも……っと、んん?」

 

…そうだ、イイ事を思いついた。シャルのやつに今回オレを監視していたMSがOガンダムだと教えてやろう。

 

きっと面白い反応をするに違いない!

 

そう考えると、自然と俺の口からは笑い声が出ていた。

 

「あげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!!!」

 

さあ!Oガンダムのパイロット!

今度会ったときには今回以上に俺様を楽しませてみせろ!!!

度肝を抜かせてみせろ!!!

 

イオリアのジジイの計画よりもそっちの方が何千倍も楽しそうだからなぁ!!

 

 

「あげゃ、あげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!!!」

 

 

 




如何でしたでしょうか?
どうも雑炊です。

今回はちょっとほのぼのパートを入れるつもりで、あんなゲームを出してみました。
某所でチラッと見かけた気もするのですが……うん。そこらへんは出来ればスルーでお願いします。
でも実際にあったらやってみたいと思いませんか皆さん?
因みに今回出てきたプレイヤー機体は、もう完璧に私の趣味です。
スーパーアースゲインとかアシュクリーフとか分かる人いるのだろうか?

で、出ました外伝キャラ“フォン・スパーク”!本名“ロバーク・スタッドJr”!
はっきり言って口調が合ってるかすごく不安ですが、皆さん如何だったでしょうか?



というわけで今回はここら辺で。

ではまた次回!




追記

今更ながら某所の小説とちょっと似てない?
と言われたので、全編にわたり現在それっぽい部分を絶賛改訂中です。


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