ガンダム00  マイスター始めてみました   作:雑炊

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今回は親睦会です。
…が、もしかしたらそこまでハッチャけられてないかも…
あと、一部の人間に激しいキャラ崩壊がありますので、そういうのが苦手な方はご注意を。

それでは本編をどうぞ。


九話――――親睦会やりました(一応家主の筈俺になんの断りも無く話は進んでおりました)

「という訳で3日後に親睦会やるよー!!!」

 

「とりあえず色々と言いたい事は多々あるが、これだけは言わせてくれ師匠。どうやって入ったし」

 

………疲れた身体を癒す為に家に帰ってみたら、何故か師匠と姉さん達が物凄く寛いでいました。

何がおきているか分かりませんでした。

幻覚とかそんなちゃちなもんではなかったと思います……あれ?作文?

 

等と阿呆な事が余裕で考えられるくらいに俺は混乱していた。

とりあえず視界の隅でリヴァイブ兄さんが何故かメイド服着せられて、グラーベさんとヒクサーさんが頬を引き攣らせながらそんな彼からお酌されているというカオスな光景が見えた事は確かである。

……つーか何やってんのさ、兄さん。

アンタそんなキャラじゃな…何?スパジェネの試合で最下位になったからバツゲーム?

有り得ないだろ。第一リジェネ兄さんが居るんだからそんな事あるはず無い……筈。

そう思いながら、テレビの方を向くと、其処では……

 

 

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」

 

「ばっ馬鹿な!?この俺がリジェネ如きにやられるだと!?」

 

「ちょ、ブリングだいじょ……って、シシオウブレード振り被りながらこっちに来るなぁぁぁぁ!!」

 

「っ!ヒリング援護す「見え見えなんだよォォォォ!!!!」なっ!?シシオウブレード片手に、J(ジャイアント)T(トンファー)R(リボルバー)で牽制だと!?」

 

「遅い遅い遅い遅いィィィィィィィィ!!!!そんなんじゃァこの僕の新たな愛機である“R-1改”には何時まで経っても勝てないYOoooooooooooHoooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「うるっさいわ、このポンコツ発狂紫ワカメがぁぁぁぁ!!!アンタのそんな合体も出来ないR-1なんぞ、あたしの“ART-1”で真っ二つにしてやるわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「っ!!待てヒリング!!迂闊に突っ込むな!!!デヴァイン!挟み込むぞ!!!」

 

「言われなくても分かっている!!!」

 

「WRRRRRYYYYYYYYYYY!!!!!貧弱貧弱ゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

……おおおおおお!?

リジェネ兄さんがあろう事か、ただシシオウブレード装備しただけの“R-1改”でうちらの中では“4強”に数えられるブリング兄さんとデヴァイン兄さんのタッグと、それなりに強いはずのヒリング姉さん相手に無傷で立ち回ってるよ!?

一体如何したんだろうか……?覚醒か?覚醒したのか?

等と考えながら兄さんの動きを良く見ていると、俺はある事に気が付いた。

 

(…あれ?以前と動きも戦法も大して変わって無くないか?精々変わっているとすれば、武器を両手持ちしている程度……)

 

と、其処まで考えて俺はある考えに行き着いた。

 

元々リジェネ兄さんは、R-1よりもサイズのデカイ大型から超大型の機体をメインで使って、小回りを利かせて相手を翻弄するという今R-1改でやっている戦法で戦っていたのだ。

…だが、その戦法は本来であれば今彼が使っているR-1等の中型から小型の機体でするべき戦法である。

 

つまり、彼は本来するべき戦闘スタイルではなく、全く違う、ある意味間違った戦闘スタイルで戦っていたのだ。

 

本来、彼がいつも使っていた“ツヴァイザーゲイン”や“ケイサルエフェス”といった大型又は超大型の機体は、基本どっしりと構えつつ、パワーとコンボ等のテクニックで押し切るような戦法が正解なのだ。

だというのに、兄さんのように小回りを利かせて相手を翻弄するのが主体の戦法なんぞとってたら隙が大きいのを利用されてボコボコにされるのは当然なのだ。

……が、三人が一方的にやられている理由はそれだけではないだろう。

 

考えられる事は、おそらく三人ともいつもと違う敵の機体サイズに戸惑っているのだろう。

このゲームでは機体サイズが大きくなればなるほどに、攻撃の当たり判定部分が大きくなっていく。

そのため、大型から超大型の機体。その中でも特にスーパー系と呼ばれるような機体は、挙動もリアル系と比べると少しゆっくりしている為、攻撃が当て易いのだ。

たぶんだと思うが、三人はリジェネ兄さんのいつもの動きをしている物がいきなり小さく、そして挙動もスピーディーになっている為動揺してしまっているのだろう。

 

……ただ、その事に気付いている人が、今此処に果たして何人いるのやら……

俺の予想では、とりあえず師匠とグラーべさんと、ヒクサーさんあたりは気付いていると思うが…

 

そんな事を考えながら、三人へと視線を向ける。

三人は俺が向けている視線の意味をリジェネを見た瞬間に分かったのか、苦笑して返してきた。

……残念ながら、絶賛女装中のリヴァイブ兄さんには伝わらなかった様だ。

 

それにしても兄さん。

何でそんな恥らったような表情とか仕草してんのですか。

もっと逆に堂々としていなさいよ。身内しか今居ないんだから、誰に見られたって困るもんじゃないでしょう?

ただでさえ見た目が中性的だから女性に一瞬見えてしまって、いろんな意味で胸クソ悪くなるのですが。

主に一瞬とはいえ「カワイイ」と思ってしまった、自分とかに。

 

そんな感じで暫らく経つと、『フィニッシュ!!』という音声と共に、決着が着いた。

結果はなんとリジェネ兄さんの一人勝ち。しかもパーフェクト。

恐るべき事態である。

あれだけ以前俺達から徹底的にボコボコにされていたリジェネ兄さんが、俺達の中では随一の実力を持つブリング兄さんとデヴァイン兄さんのタッグと、決して弱いとは言えないヒリング姉さんの三人を相手にパーフェクト勝ちしているのだ。

どれだけ兄さんとR-1改相性良いんだ?

 

逆に最下位になったのは、大方の予想を裏切る事無くヒリング姉さん。

まあ、あれだけ突っ込んでいれば真っ先にやられても不思議ではない。

(因みにブリング兄さんとデヴァイン兄さんは、二人纏めて仲良くT-LINKソード(投擲)の餌食となって、2位タイ)

 

「……と、言う訳で今姉さんはバツゲームである黒猫服(露出の多い奴。一瞬水着と間違えた)にお着替え中…と。しかも俺と会わない間に、身体女性にしてもらったのね。良かったじゃん。細いドラム缶体型から脱却して、少し凹凸が付いて」

 

「あたしのこの姿を見て第一声がそれか!?もっと他に言う事無いの!?」

 

「結構似合っててカワイイです」キリッ(`・ω・´)

 

「バッ、真顔で言うな!!!」/////// (//_//)

 

あらあら真っ赤になっちゃって。

いつもの仕返しも兼ねて言ってみたんだけど、こういう一面があるから姉さんは地味に可愛かったりするんだよな。

……勿論弟としての意見ですよ?

男としてじゃないですよ?

 

……で。

 

「リジェネ兄さん、勝負しようぜー」

 

「フハハハハハハ!!!今のこの僕に自ら勝負を挑むなど無謀な!!!その思い上がった性根を叩きなおしてくれるわァァァァァァァン!!!」

 

……馬鹿め。

俺がやるといった瞬間に目が思いっきり光った人間が居た事に気付かなかったのか。

そう思いながら、テレビの前まで言って、コントローラを握った時だった。

 

「では、僕も混ぜてもらおう」

 

そう言いながら、ズイッという擬音が聞こえる様な勢いで、師匠が俺の隣に座った。

そのままコントローラを操作して、機体を“スーパーアースゲイン”に決定し、俺に目線だけで話しかけてくる。

 

こんな形で少し不満だが、そろそろここいらで決めようじゃないか。

 

と。

最初何を言っているのか分からなかった俺だが、少しその目を見返しているうちにその意味を理解した。

同時に俺も、機体をスーパーアースゲインに決定する。

…つまり師匠が言いたかった事はこうだ。

 

『いい加減にどちらが真の“スーパーアースゲイン使い”か決めようじゃないか。』

 

…と。

…あまり認めたくは無いが、俺も基本的に“アースゲイン系統”の機体はよく選択するし、尚且つ師匠と同じ様に“スーパーアースゲイン”はその中でも一番使いこなせていると言っても過言ではない。

故に師匠のこの密かな申し出を断る理由は無い。

というかこのクソ師匠から逃げるという選択肢が浮かばない。

 

(…望む所だ、クソ師匠!!!)

 

そんな感じで俺と師匠の間に緊張した空気が走る。

リジェネ兄さんがその空気を読めずに何か言っているが、既に火花を散らしていた俺達にとってその声は別に気にするほどの物ではなくなっていた。

そうこうしている内に、画面に試合開始のカウントが表示される。

コントローラを握る手に汗がじんわりと浮かぶ。

意図せずに息を止める。

始まる瞬間を見逃さんと、目を見開く。

 

そして次の瞬間、

 

始まりのブザーが鳴ると同時に、

 

俺と師匠は、

 

自身の倒すべき相手に対して開始早々に、

 

最大級の攻撃をぶっ放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「WRYAAAAAAAAA!!!!シシオウブレ「「奥義!!!鳳凰光覇ァァァァァァァァ!!!!!!!」」アッー!!!!」

 

結論:どんなになっても、やっぱりリジェネ兄さんはリジェネ兄さんのままだった。……というか何でGIOGIO?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「買出し~。買出し~ブギ~…っと」

 

「は、ははは……アムロ、なんだかご機嫌だね」

 

「沙慈よ。本当にそう見えるのならお前の目玉今すぐ刳り抜いて眼科に持っていくぞ」

 

「いきなり怖い事言わないでよ!?ちょ、スプーンなんてどっから出したのさ!?」

 

「は、ははは…相変わらず二人って絡むと漫才始めるよね…ちょっと羨ましい」

 

「「ルイス何言ってんの!?」」

 

……あれから2日が経った。

師匠達は相変わらずアジトに居て、思いっきり寛いでいる。

ただ、師匠以外の皆は兎も角、師匠自身はどっかのお偉いさんの小姓やってた筈である。

大丈夫なのか?と、不安になり聞いてみた所、どうやらヴェーダの場所が何処にあるのか調べて来るという名目で此処に居るとの事。

だから精々1ヶ月程度であればブラブラとしていても大丈夫らしい。

 

そんな訳できっと今頃アジトで俺のゲーム機を勝手に引っ張り出してスパジェネでもやっている頃だろう。

他の連中は……イマイチ良く分からない。

姉さんは勝手に俺の部屋を物色しているか、どこぞへと買い物に出ているかなのだが……あの人数の中でたった一人だけで買い物に行くような人じゃないし……リヴァイブ兄さんは……パソコンでMSの各データ閲覧……とか?

ブリング兄さんとデヴァイン兄さんは…なんだろう?

よく考えてみると俺、あの二人がゲームマニアでコーヒーマニアで読書家って事位しか分からな……って、分かってますね。たぶん師匠に便乗してゲームしてるか、自分達でオリジナルブレンドのコーヒー作って読書タイムに突入してるかですね。

リジェネ兄さんは……たぶんスパジェネで師匠に勝負挑んで返り討ちされて真っ白になってるかな?

で、グラーベさんとヒクサーさんは、アジトに在るシミュレータの調整かな?

地獄の修行が、なんかもっとパワーアップしてそうで怖いんだけど…(汗

 

因みに只今は明日の夕方からある親睦会の料理の材料を買いに行っている最中である。

何故沙慈とルイスが居るかというと、ただ単に途中でデート中の二人に会ってしまい、そのままズルズルと一緒に行動する事になってしまっただけである。

 

「しかし…何もこんな時に出かけなくたって」

 

ふと、沙慈がこう呟いた。

それに反応したルイスが、訝しげに彼に問いかける。

 

「何?まだモラリアのこと気にしてるの?」

 

「…うん。まあね……って言うか、ルイスこそAEU側じゃないか。気にしないわけ?」

 

「モラリアなんて行ったことないし、わかんないって……そういえば、アムロは?」

 

「悪いが、俺は生まれも育ちも此処だし、あっちの方の事には基本興味ないのよ」

 

そう言いながら、俺は再び歩き出す。

どうやら二人は授業の合間にソレスタルビーイングに関するニュースを見ていたみたいだ。

それを見ていた沙慈の心境は複雑なものなのだろう。

以前も言ったと思うが、以前二人は謀らずしも結果的にソレスタルビーイング―――厳密に言うと、キュリオスにだが―――助けられている。

しかし、その自分とルイスを助けてくれたガンダムとその仲間が、今度はあの時とは正反対の行動をしている。

きっと、それを見ている沙慈の心の中にはこんな疑問が渦巻いていることだろう。

 

『何故、自分達を助けてくれた彼らが、新たな憎しみの連鎖を生みだすような事をするのか』

 

と。

 

そんな彼に、もしも俺が、あの時ガンダムに乗って当事者の一人になっていたと言ったらどんな反応をするだろうか?

冗談だと笑い飛ばすのか、それとも――――

 

(…止めよう。俺らしくない。所詮はIFの話だ)

 

心の中でそう呟いて、俺は思考をストップした。

 

一方で、そんな沙慈とは正反対に、ルイスは一向に気にしていない様子だった。

 

「で?お前ら今日は何処に行こうとしてるんだ?」

 

いつまでもこんな話題では、話が続かないな。てか気が滅入る。

そう思った俺は、二人に差当たりのの無い質問を投げ掛ける。

そんな俺たちの隣を一台のバスが通りぬけていく。

チラッと、そんなバスの中から不穏な気配を感じ、目だけを其方へと向ける。

すると、本当に一瞬だけだが黒い服を着た男が見えた。

しかし、次の瞬間その不穏な気配も霧散してしまい、俺はその事を気のせいだと思って其処まで気にするほどの事ではないと、直ぐにその事を思考の外へと追いやってしまった。

 

「ウフフ、まずは洋服を見て、洋服を見て、洋服を見る」

 

「洋服見るしかないし………第一、それみんな自分のでしょ」

 

「全くだな…せっかくのデートだっつーのに、そんなんで良いのかよ?」

 

「良いのよ~♪」

 

沙慈が呆れてため息吐き、俺が興味なさ下に頭を書いて口を出し、そんな俺たちからの言葉を一切気にしない様子で、ルイスが笑い、それを見て俺達が再び溜息をを吐こうとした、その時だった。

 

(……っ!?)

 

突如として、ゾワっとした嫌な感覚が、全身を駆け巡る。

 

「伏せろ!!!」

 

咄嗟に俺は叫んでいた。

同時に沙慈とルイスに覆い被さる。

と、次の瞬間!

 

ドウゥン!!!

 

そんな音と共に、つい先程俺たちの横を通り過ぎて、およそ8M先のバス停で止まっていたバスが突然大爆発を起こした。

爆風の衝撃波で周りの建物のガラスが割れ、黒い煙があたりを包み込み、バスの周囲に居た人や乗用車が吹っ飛ぶ。

 

「っく……!なんだ…!?」

 

起き上がった沙慈が、前方を確認する。

同時に俺もそちらを見た。

 

其処には地獄が広がっていた。

 

倒れている人、転倒した車と小さな火がいくつも道路上に存在している。

そして、バスの周りには目を向けるのも躊躇われるような状況が広がり、周囲の空気には生き物の焼ける酷い臭いと、鉄臭い血の臭いが充満していた。

咄嗟に沙慈とルイスの口と鼻を覆うようにして、肩から掛けていたバッグからタオルを取り出し、押しつける。

 

「バスが…!!」

 

沙慈の言葉に反応して、バスの方を見る。

気の毒だが、あれでは中の人はもう誰も生きては居ないだろう。

と、その時、周りが騒ぎ始める中、関西弁の男が声を張り上げる。

 

「テロや!!これはテロやで!!」

 

「う…?テロ……って?」

 

その声で意識を取り戻したルイスだったが、いまだに状況が把握しきれていない。

 

「ここから離れよう、ルイス!早く!」

 

沙慈はルイスの手をとり立たせると、周りには目もくれずその場を後にしようとした。

しかし、俺はその後に続こうとしたとき、ある者を視界の隅に入れてしまったため反射的にそちらへと走り出した。

後方から、「アムロ!?」という沙慈の叫ぶ声が聞こえたが、構っている暇は無いので、後で謝る事を決意しながら先程目に入れた者を追う。

それは黒い服を着た男だった。

さっき、バスの中にいた男だ。

男は、追ってくる此方に気づいたのか、慌てて駆け出して、人混みの中へと逃れようとする。

……が。

 

「甘いわ!!!」

 

そう言いながら、俺は瞬間的にズボンのポッケから財布を取り出すと、思いっきり男の頭目掛けて投擲する。

一瞬のタイムラグの後、

 

ゴビン!!

 

という、財布にあるまじき音と共に、男の後頭部にそれが突き刺さり、堪らず男はぶっ倒れる。

その隙を見逃す俺ではない。

一気に距離を詰めると、男の背中に急降下式の全体重を乗せたとび蹴りをお見舞いし、バックから荒縄を取り出すと、一瞬で手と足を縛り上げる。

そのまま顔面をメリケンサック嵌めてラッシュラッシュラッシュ!!!!

 

できれば【オラオラオラオラオラオラァ!!】とか【ドラララララララララララァ】とか言ってみたいが、流石に其処は自重した。

 

で、見るも無残なまでに顔面が崩壊した男。

俺はそのまま懐に手を突っ込んで調べると、まあ出て来るわ出て来るわ銃刀法なんぞ完全にブッチしている物品の数々。

同時にリモコンのような古典的な物品も見つけたので、それは手袋を取り出して着けた後に適当な袋に入れて、そこら辺に転がしておく。

十中八九、先程のテロはコイツの仕業だろう。

とりあえず警察に連絡を入れた後、猿轡を噛ませて自殺できないようにし、器用に身包みを剥いでから、その他の持ち物を調査する……お、財布見っけ。迷惑料と慰謝料として少し抜いとこ。

ん?こいつはIDカードか?一体何処の……って、これモラリアに本拠地がある、PMCの個人情報特定カードじゃん!

って事は、この男の目的はこないだのモラリアで、出張ってきた俺達(ソレスタルビーイング)への警告か、もしくは意趣返しの為にあんなテロを起こしたのか……後で師匠に渡しとこ。

 

……何?半ば追い剥ぎじゃないかだと?人の命を自分のエゴで奪うような奴は、自らの人権を放棄している物と俺は考えているから、別に追い剥ぎでもなんでもない。うん。

お前が言える立場かって?……自覚してるよ?うん。

それにしても、主犯がこんな事になってるって言うのに一切仲間が出てくる気配が無い。

見捨てられたのか、或いは単独犯だったのか……何れにせよ、そこらへんの仕事は警察が本来やるべき事なので、俺はもう首を突っ込みませんがね。

 

ピーポーピーポーピーポー・・・

 

おおっと、うわさをすれば影、とは良く言ったもので、古き良き音を立てながらパトカーが付近に到着した事をそのサイレンが告げる。

基本、俺は警察や、お上の方々には本来顔を見られてはいけないので、到着される前にトンずらこくとしますかね…くわばらくわばら…っと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、親睦会当日である。

つーか昨日のテロ騒ぎの翌日である。

 

あの後、帰って早々にテロに巻き込まれた事を師匠に報告。

そして、沙慈とルイスに連絡し、無事な事を報告する。

どうやら沙慈はともかく、ルイスも大いに心配してくれていたようでさっきまで半泣きの状態だったらしい。

変わってもらったら、物凄い剣幕で怒られた。

曰く「勝手に何処行ってた」だの「沙慈と一緒に散々心配したんだから、まず最初に顔を自分達の所へ出せ」だの、いろんな事を言われた。

その内、緊張の糸が切れて一気に疲れたらしくソファーで寝てしまったと言うのは、散々怒られてから代わってくれた沙慈の談だ。

…まあ、心配を二人に掛けてしまった事は本当なので、その内何らかの形で返したいと思う。

 

そんな事を考えながら、ただいま俺は親睦会のメインとなる料理―――鍋を作っている。

具材は色々。

只の鍋と侮る無かれ、キチンと出汁をとり、尚且つ野菜や肉も火が通り易いように、考えて切っている。

……のだ……

 

「……姉さん。いくらお腹が空いたからって、生野菜をまんま食べるのはどうかと思うんだが……それと師匠。その手に持っているツナの缶詰は何だ。入れろってか。入れろってか?」

 

「「……テヘッ☆」」

 

「可愛く返しても駄目です。ただし師匠のツナ缶だけはギリギリ譲歩して入れてやる」

 

                                 ,.へ

  ___                             ム  i

 「 ヒ_i〉                            ゝ 〈

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. ヽ、    `` 、,__\              /" \  ヽ/

   \ノ ノ   ハ ̄r/:::r―--―/::7   ノ    /

       ヽ.      ヽ::〈; . '::. :' |::/   /   ,. "

        `ー 、    \ヽ::. ;:::|/     r'"

     / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ

     | 答 |     ッシャァ!!!      │|

     \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ

 

                                     」

 

「師匠。キャラ崩壊してるから。戻して戻して……つーかコロンビアって懐かしいなおい。そしてグラーベさん。何故にコンビーフの缶詰を持って俺の隣に立っているのですか。そしてヒクサーさんはなんでコンソメのブロックを持ってその隣に立っているのですか」

 

「……駄目か?」「駄目なの?」

 

「駄目です」

 

「「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」」

 

「そんな残念そうな声を出しても駄目です。…そういえば二人とも、今日は髪形違いますね。何かあったんですか?イメチェン?」

 

そう言いながら、俺は二人の頭に注目した。

グラーベさんは…あれだ、何故か髪型がサイドポニーになってる。中性的な見た目なので其処まで違和感無いんだけど……何で普通に後ろで縛らないんだろう?なんかの罰ゲーム?

 

そしてヒクサーさんはまさかのオールバック。似合ってるんだけど……何だろう?この“コレジャナイ”感?

 

そんな事を俺が思っていると、何故か肩に『ポン』と手を置かれる感触。

何じゃいなと思ってそちらを見ると、何故か師匠と姉さんがまるで「あんまり気にしちゃダメ」とでも言いたそうな、それでも何処か込み上げる笑いを我慢しているような微妙な表情でこちらを見ていた。

その瞬間、俺は全てを悟る。

 

「………あ~…もしかして二人とも、実働部隊の中に知り合い居る?」

 

「……厳密には私達ではなく、私達の複製元のイノベイドが…だがな」

 

「俺の大元は、今の所無気力症患者みたいな物になっちゃってるけどね~……ま、グラーベちゃんの方と違ってまだ生きてるから、少し見た目を変えるなりなんなりして色々細工しとかないとメンドクサイ矛盾が生まれちゃうんだ」

 

「成程」

 

それなら納得。

そう考えながら、俺は調理へと戻るのだが……

 

「…………」

 

「「「「…………………………………………」」」」

 

……ヘーイ。なんかめっちゃ視界の隅にチラチラと映るんですけど。

うわー反応したくない。したくないったらしたくない。

……しかし、ここで突っ込まないとこの人達は何時まで経ってもこれをやり続ける…!!!

 

「……もうあんまり反応したくないので一気に行くけど、リジェネ兄さん何故増えるワカメを持っている、リヴァイブ兄さんはまだメイド服外してないのかって言うかその手に持っている業務用アイスクリームの箱は何だ、そしてブリング兄さんとデヴァイン兄さんは何故インスタントコーヒーのビンを持っている!!」

 

結局、折れた。そして次の瞬間返された返事の内容は……!

 

「「「「…駄目 (か)(かい)((なのか))?」」」」

 

ブチ

 

「駄目に決まってんだろうがァァァァァ!!!!!!!!!!!!!いい加減にしろォ!!!!つーか、あんたら全員にボケられたら、流石の俺でも突っ込みきれねえよ!!第一これ鍋だっつってんだろうが、ああ????!!!!もっと入れても大丈夫なもんをせめて持って来いや!!!!闇鍋でもしたいんかおどれらァァァ!!!!」

 

「おお、以前よりも突っ込みのキレが良くなってきたね。これなら安心だ」

 

「うるせぇ!!つーか何がだ師匠!?」

 

――――――……ハァ…ハァ…だ、駄目だ。このままでは親睦会が始まる前に、俺の体力に限界が来てしまう。実働部隊の連中はまだ来ないのか……?

 

流石に限界を感じた俺はそんな事を思ってしまう。

 

と、その時であった。

 

ピンポーン

 

と言う音が、部屋中に響き渡る。

 

救いの神、降臨である。

 

(ついに来たか!!実働部隊!!!)

 

今度は以前のような事が無い様に慎重に。それでも幾らか急ぎ目で玄関まで向かう。

そしてドアの前に立ってから、深呼吸を一つすると、意を決してドアを開ける。

そこに居たのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あんれまあ団体さん?そして刹那。何で土下座しとる?」

 

「ごめんなさい。謝るので3日間おにぎりだけは勘弁してください」

 

「服が汚れるし、ご近所から誤解されるから止めなさい。つーかむしろ今ので冗談で言ったあの言葉を実行しようと思った」

 

「!!!!!!????????」Σ(゚д゚lll)

 

「なんでそんなショック受けたような絶望的な顔すんの…?とりあえずもう直ぐご飯だからさっさと服とかの汚れ払ってから入りなさい。後ろの団体さん方もどうぞお入りください」

 

「…了解……ただいま、アムロ」

 

「はいはい、お帰り刹那。ユリとフェルトもお帰り。言い方は悪いですが、その他の皆様方、いらっしゃいませ」

 

そう言いながら、俺は全員を迎え入れた。

しっかしこれから起きるであろう騒動の事を考えると……手放しで楽しめそうも無いな、こりゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳で、自己紹介とかすっ飛ばしていきなりお食事始めるよー!!!!」

 

「音頭とってねえで手伝えクソ師匠!!!!」(#゚益゚)コォォォォォ

 

台所から凄まじい剣幕でアムロが私達の前で音頭をとった黄緑色の髪を持ち、中性的な顔立ちをした男に思いっきり怒鳴り散らす。

その声に驚いて、フェルトと刹那とクリスが一瞬身を縮こませた。

話を聞くところによると、今“師匠”と呼ばれた人物の所為で、用意する料理が一品増えてしまったそうだ。

で、その責任を取って少しは手伝え、という事らしいのだが……なんか、言い方がキツ過ぎないか?

そう思って以前聞いてみた事があるのだが、彼曰く「いつもの事」なのだそうだ。

……まあ、師匠と呼ばれている人物自身も其処まで気にした様子は無いから、大丈夫だとは思うが…

 

「アムロー、もうご飯食べちゃって良いのー?」

 

其処まで考えた所で、以前会った事のある女性……確かヒリングとか言っていたな。

彼女が台所に居るアムロに、食べだして良いかを確かめるために声を掛ける。

そんな彼女に対してアムロは先程とはうって変わって穏やかな声で答えを返す。

 

「あ、うん。冷めない内に食べちゃいな。刹那も今日だけ暴走さえしなければおにぎり地獄解禁を許す。腹いっぱい食べなさい」

 

「…何故かな?僕の時とは反応が違わないかい?」

 

「自分の胸に手を当てて、何故俺がこんな口調で返しているのか考えなさい師匠」

 

そう言って再び料理に戻るアムロと“師匠”。

次の瞬間、私の目の前にある鍋を中心にして地獄絵図が始まる。

最初に動いたのは刹那。

まるで今までの鬱憤を晴らすかのように、一気に鍋の中にあった肉を全て取ろうと腕を伸ばす。

次に動いたのはヒリングだ。

彼女も刹那に負けじと、凄まじい勢いで鍋へと腕を伸ばす。

しかし二人の箸が後一歩で肉へと届くか届かないかという所になった所で……

 

ガキィッ!

 

という音と共に、二人の箸が複数の人間の物によって、横合いから止められた。

刹那を止めたのは、ロックオン、アレルヤ、ティエリア。

ヒリングを止めたのは、薄い紫の髪と赤い瞳を持った、これまた中性的な顔立ちの……少年?と、赤い髪に赤い瞳を持った、長髪と短髪の男だった。後述の二人は顔があまりにも似ている事から、一卵性の双生児なのだろう。

 

「おいおい刹那…禁止令が解かれたからって、いきなり肉を取ろうとするのはマナー違反ってもんじゃねえのか?」

 

「彼―――ロックオン・ストラトスの言う通りだ、ヒリング。食べても良いと言われたからと言って、いきなり暴走するな」

 

「「う……」」

 

ロックオンと、赤髪の長髪の方にそう言われて、二人は言葉を詰まらせた。

二人がそのまま押し黙った所で、赤髪の短髪の方が、私達に謝罪の言葉を掛けて来る。

 

「申し訳ありません、実働部隊の方々。我が家の愚妹がお見苦しい物を見せました」

 

「あ、いえいえそんな……此方も一人暴走しかけたから、お互い様ですよ」

 

「全くだな」

 

短髪の男に対して、アレルヤが慌てて返事を返し、ティエリアが、それに続いた。

それを聞いた刹那とヒリングが、ますます小さくなる。

と、次の瞬間、

 

クゥ~

 

という可愛らしい音が、私の腹から響き渡る。

咄嗟に顔に血が上って真っ赤になるのが分かった。

 

(…こ、このタイミングで鳴るのか…?…物凄く恥ずかしいぞ……!

 

そう思いながら私は俯いた。

が、次の瞬間、

 

グゥ~

 

という音と、

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

という音が、ほぼ同時に鳴る……ってちょっと待て!?最後のは一体なんだ!?

見ればフェルトがお腹を押さえているが、彼女も最後の音に驚いている方なのだろう。

その目には驚愕の色が浮かんでいる。

 

では誰が……!?

 

まさか刹那か!?

そう思って刹那の方へと目を向けようとした瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ワリィ。腹の虫鳴っちまったわ」

 

そんな能天気な声が、台所から聞こえてきた。

見れば周囲の私を含めた人間の目は其方へと向いており、誰の目にも。こんな感情が渦巻いているのが見えた。

 

――――――よりにもよってお前かい!!

 

と。

そのまま5秒ほど私達は硬直していたが、いち早く再起動を果たしたスメラギさんが、ロックオンにこう提案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ま、まあ、とりあえずせっかくの親睦会なんだし、楽しまなきゃ損ね。そんな訳だからロックオンと、それから…「ブリングです。ブリング・スタビティ。彼は私の双子の弟である、デヴァイン・スタビティです」そう。自己紹介ありがとうね♪そしたら、ブリングさん。悪いんだけど、各自の皿に適量だけ鍋から具を盛ってあげてくれないかしら?下手をすると、また暴走する可能性があるし…」

 

「OK、ミス・スメラギ。んじゃ、こっちは俺がやるよ。ブリングつったっけ?アンタはそっちの方を頼むぜ」

 

「承知した。それではリヴァイブ、皿を出せ「え~!?あたしは!?」…お前は最後だヒリング」

 

「刹那も一応最後な?安心しろって。ちゃんと肉も残しといてやるよ。んじゃ、まずはカワイイ音を鳴らしたフェルトからだな。ほら、皿貸しな。ユリはその次で良いよな?」

 

「ああ、それで良いぞ」

 

私がそう言うと、ロックオンは「そりゃ良かった」と言って、フェルトの皿に具を盛っていく。

ふと隣を見ると、既にトレミークルーの大人組の一部は酒を開けて飲み始めていた。

……と、言うか、スメラギさん。大吟醸持ってきたんですか?

って、ああ!リヒティ!!リヒティがおやっさんとモノレ博士に無理矢理飲まされて大変な事に!!

と言うか、以前リヒティって自分から「お酒飲めない」って言ってた事忘れたんですか二人とも!?

って、ラッセさん!?その手に持っているツマミはなんですか!?

え!?自分で持ってきた!?

料理出るって言われてましたよね!?

っと言うか、スメラギさん、笑ってないで止めてくださいよ!!

ああ!もう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おーい。ちょっと目を離した隙に、ユリが大人組の対応に追われてんだけど、何で誰も助けてあげないの?」

 

「アムロ、良いタイミングだから良い事を教えてあげよう。この世で最も対応が厄介な物。それは“自然災害”と、“自分勝手な正義を振り翳す者”。“性質(タチ)の悪い政治家”に、“腹黒い商人”。“狂信者”と、最後に“性質の悪い酔っ払い”と、昔から相場は決まっているんだよ……」

 

「…納得」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、師匠リクエストの最後の料理がやっと出来上がったわけなんだが……もう殆どの人間が出来あがってんな。とりあえず、この鍋置きたいから、テーブルの上ちょっと片付けてくれ…ってうわぁ、何この状況?テラカオスすぎる」

 

やっと出来上がった、“ツナ缶鍋”を持って台所から出ると、そこには凄まじい光景が広がっていた。

 

実働部隊の大人組(マイスターとオペレータ除く)は何時から飲み始めていたのか、日本酒のビンを何本も開けていまだに飲んでるし、イノベイド組の何人かもそっちに巻き込まれている。

と、言うか、よく見たら巻き込まれていたグラーベさんの顔が青い。

どうやら何とか誤魔化し切れたみたいだが、そのままずるずると巻き込まれて悪酔いしてしまい、結果ナノマシンでも分解しきれない量のアルコールを摂取してしまって気持ち悪くなってしまったようだ。

おそらく人前で吐く事は無いと思うが……注意するに越したことは無いな。一応後でエチケット袋持っていくか、さりげなくトイレに誘導するか。

…とぉ、そんな事気にしている場合じゃなかったわ。

 

「あのー…そろそろ腕が限界なんだけど…」

 

「あ、ゴメンゴメン」

 

そう言って、マイスターの内の一人である“アレルヤ・ハプティズム”が、テーブルの上の空になった皿を重ねて、隅に置いてくれた。

その空いたスペースに鍋を置くと、俺も箸を持って席に着く。

 

「って、殆ど料理無くなってるな…」

 

ふと、テーブルの上を見渡して思わずそんな言葉をこぼしてしまった。

そんなに時間を書けたつもりは無かったが、意外と人数が多かったのと、酒という不確定要素を甘く見すぎていた為か、当初それなりの量があった料理の数々は今や殆ど影も形も無くなっている状態となっていた。

チラと隅を見れば、刹那とフェルトとユリが三人並んで仲良く夢の中。

おそらく刹那はお腹が一杯になったから、眠気が襲ってきてそれに負けたという感じ。

フェルトはおそらく単純にいつもはこの時間帯寝ているのだろう。

因みに今の時間帯は、深夜0時。

で、ユリはおそらく酔っ払った大人組の対応に疲れたのだろう。

今でこそ何人か撃沈して少し沈静化しているが、先程までは台所にまでそのドンチャン騒ぎの音が聞こえていたから。

その上から、プトレマイオスオペレーターのクリスティナが、三人を起こさないように毛布を掛けてあげていた。

 

「あ、すみません」

 

つい謝罪と感謝の入り混じった声が出てしまう。

彼女はそんな俺を見て少し微笑むと、「全然気にしてないよ」と言って再び席へと戻っていった。

あ、イイ人やこの人。

そう思っていたそんな所で、今度は隣から声を掛けられた。

 

「よう、お疲れさん」

 

声を掛けられたほうに目を向ける。

そこに居たのは、デュナメスのマイスター、“ロックオン・ストラトス”だった。

咄嗟に反応して頭を下げる。

 

「あ、どうも初めまして。アムロ・レイって言います」

 

「ご丁寧にどうも。データは見ていると思うが、マイスターのロックオン・ストラトスだ。好きに呼んでもらって構わないぜ」

 

「んじゃ、ロックさんで」

 

俺がそう言うと、彼は突然微妙な顔になってこう言った。

 

「すまん。それは何か危険な感じがするから止めてくれ」

 

「それじゃ、ロックオンさんで」

 

「…さんはいらねえよ。もっとフレンドリーに呼んでもらって構わんぜ?」

 

「いや、でも一応目上の人ですし…」

 

「……お前って、結構変な所で生真面目なのな」

 

「…まあ、よく言われますよ……あ、そういえば、料理どうでした?お口に合いましたか?」

 

「ん?ああ、凄く美味かったぜ。少なくともトレミーのA定食よりかは何百倍…いや、何千倍もな」

 

「は、はははは……そう言ってもらえると、ちょっと恐縮しちゃいますね」

 

そう言いながら苦笑いしつつ、少しの間、俺は彼といろんな事を話した。

例えば、狙撃銃を使う時の注意とか、マイスターの中で誰が一番手の掛かる奴だとか、最近の刹那のポンコツ可愛さは異常だとか、刹那まじカワイイよ刹那とか、ユリがテラ不憫だとか、フェルトマジ天使!!だとか……本当にいろんな事を話した。

で、気付けば、只今の時間帯は、午前の1時。

流石にこれ以上夕飯の時間が延びるのはヤバイ。

さて、それじゃ……

 

「いただき……」

 

其処まで言った所で、俺の目の前に師匠が座る。

その手には箸。口元にはニヒルな笑みが浮かべられ、その目には剣呑な光が湛えられていた。

…なんか、最近こんな事ばっかりなような気がする…

しかし、売られた喧嘩は逃げられないのであれば、正々堂々真正面から買ってやるのが礼儀と言うもんである。

……相手が師匠ならなおさらな!!!!

 

箸を持つ手を上に上げつつ、左手を構える。

無論、師匠もほぼ同じ型で、此方を待ち構える。

…緊張が、走る。

少しの衝撃で、今にも爆発してしまいそうな空気が、俺たちの間に流れる。

……そして次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふ、あ~ぁ……」

 

「あれ?ティエリアでも、欠伸ってするんだ」

 

「あ、ホントだね」

 

「…クリスティナ・シエラ。そしてアレルヤ・ハプティズム。君らは僕を一体なんだと「「頂きまりゃアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!(バキィ!!)」」思っ!!??」

 

「えっ!?」

 

「んなぁ!?」

 

ガンダムヴァーチェのマイスターである、ティエリア・アーデの何気ない欠伸によって、一気に決壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここからはお好きな戦闘BGMを流してご覧下さい。ただし流す流さないは個人の自由です)(例:作者の場合『Ride The Tiger』)

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

「フゥーハハハハハハハハ!!!!フハハハハハハハハ!!!!!!」

 

「「10年早いんだよォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

 

ガキン!!ガキッガキッ!ズガガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

(一体コイツら何やってんだ!?)

 

突如として始まった、アムロとその師匠と呼ばれている青年―――リボンズ・アルマークの箸と素手によるガチバトル。

それに呆気に取られていた俺は、直ぐに二人を止めようと、行動を起こそうとした。

……が、それを実行する事はできなかった。

何故かって?そいつは、今の二人の手の動きを見れば一瞬で分かるだろう?

…何?こっちは文でしか見れないから、よく分からない?

ああ、スマンスマン。こっちとそっちじゃ、画面一つ挟んで、全く違う物しか見えないんだったな。

簡単に説明すると……ハッキリ言って、俺にも良く分からない。

いや、ふざけている訳じゃないんだ。

ただ、二人の手の動きが尋常じゃないくらい速過ぎて、上手く目で捉える事が出来ないんだ。

辛うじて分かる事と言えば、二人の箸が時々間にある鍋の中の具を摘んで口の中に持っていったり、それを阻止せんとお互いの箸を自分の箸を使って妨害したり、箸を持っていない方の手で相手の顔面などを狙って、正拳突きを放つも、捕まれて阻止されたり……そんな所だ。

 

…って、俺は今一体誰と話してたんだ?

 

流石に深夜を回って少し酒の入っている自分の頭に一抹の不安を持ちつつ、俺は周囲を見渡した。

見ればアレルヤも俺と同じ様に二人を止めようとしていたらしいが、俺と同じ理由で断念したらしい。

此方からの視線に気付いたのか、俺の方に顔を向けると気まずそうに顔に苦笑を浮かべた。

次にティエリアを見る。

基本的にミッション等以外には無関心なティエリアの事だから、きっと傍観しているだけだろうと思ったが、意外な事に果敢にもアムロの方に駆け寄って、何とか二人の戦いを止めようと四苦八苦していた。

よく見てみると、リボンズの方にはティエリアそっくりな顔の“リジェネ・レジェッタ”という中性的な少年が駆け寄って、ティエリアと同じ様に四苦八苦している。

余談だがこの二人は当初、あまりにもその顔が似ていた為“実は生き別れの兄弟…一卵性の双生児では?”と周囲から言われていたのだが、アムロの「本当に一卵性双生児なら、声まである程度似てないとおかしいだろJK。それにリジェネ兄さんは、俺が師匠に拾われたくらいの頃からその見た目だから、その線は無い」と言うセリフによって、その疑問は払拭されたのだが。

 

閑話休題。

 

で、次のこの騒動をあっさりと収めてくれそうな人達…ウチの俺達マイスターを除いた大人組と、向こうのブリング、ヒクサー、グラーベ、ブリングと呼ばれた男達の固まっていた方へと、あまり期待しないで目を向ける。

で、目を向けた先では案の定酔い潰れずにまだ起きている酔っ払い達が、二人の大喧嘩を肴にまだ飲んでいやがった。

俺もあっちに混ざりたいぜ……とと、ちょっと本音が出ちまった。

……て、よく見たらその隣ではリヴァイブと呼ばれた少年とヒリングと呼ばれた少女が顔を真っ赤にして、焼酎のビンを枕にして爆睡していた。

…あれは絶対しこたま飲んでるな。うん。

 

兎も角、これでまた増援と成り得る存在が離脱してしまった事に溜息を吐きつつ、今度はクリスの方へと目を向ける…って、いない?!

一体何処にと周囲に目を向けると……居た。

なんと彼女はもう既に毛布に包まって寝てしまった、ウチの三姉妹に混ざって寝息を立てていた。

 

(…アレは逃げたな。夢の中へと……)

 

等と少し気障な事を考えながら二人へと目を向ける。

どうやら鍋の中の具も、茶碗の中の白米も全て食べ尽くしたらしく、何時の間にかその手から箸は完全に消えて彼らの足元にある箸置きに綺麗に乗っかっている。

…何時の間に置いたんだ?

そんな事を考えている内に、二人の攻防は次のステージへと移った。

突如動きを止めたかと思うと、次の瞬間二人とも綺麗に回転しながら飛び上がり、そのままテレビの前へと着地する。

そしてアムロがゲーム機をセットして、それを起動させ、リボンズはテレビをつけて、モードを“ゲーム”へと切り替える。

と、次の瞬間テレビの画面に、最近刹那やユリが嵌っていたゲームのオープニング画面が流れ、そのまま二人は大戦モードを選ぶとそのまま遊び始めてしまった。

再び俺達は呆気に取られる。

 

…と、不意にアムロが突然何かを思い出したかのように此方を向くと、テレビが置いてある台の下から、何を思ったか突然コントローラを取り出してそれらを本体に接続させる。

そして、俺達に手渡してきた。

ほんでもって一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に遊びませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう、だな……たまにはゲームで徹夜するのも悪か無えか」

 

そう言いながら、俺はアムロの隣に腰掛ける。

…こんな風に、ゲームしながら一夜を明かす、と言うのは何時ぐらいぶりの事だろうか?

フッ、と瞼の裏にもう長い事会ってはいない、双子の弟の姿が浮かび上がる。

まだ俺達が子供で、父さんも母さんもエイミーもまだ生きていた頃、しょっちゅう二人で新しく買ってきたゲームで遊びすぎて徹夜してしまい、母さんに二人一緒に怒られていたっけっか…

今はもう戻る事の無い、大切な、大切な記憶だった。

 

(……いつか、また会えたらその事を肴に酒でも飲めるだろうか?)

 

そんな風に感傷に浸っていると、俺の隣にティエリアとアレルヤが腰掛けた。

アレルヤは苦笑しながら。ティエリアは憮然とした顔で。

一方リボンズの隣には、リジェネの奴が苦笑しながらも、目を爛々と光らせて腰掛けていた。

…どうやら結構乗り気らしい。

 

そんな事を考えながら、俺は機体を“ライン・ヴァイスリッター”に決定する。

狙撃も出来るし、動きも早くてバランスが良いからしょっちゅう使ってはいるが……何故か俺がこれを使うと、刹那の奴がブスッとした顔で拗ねてしまう。一体なんだというのだろうか?

まあ、R-1も好きなんだけどな。ただ、やっぱり俺は殴るよりも狙撃する方が好きだ。

 

と、他の連中も、自分の機体を決めたらしい。

画面が変わり、戦闘画面になる。

そしてそのまま、画面でカウントが始められ、ゲームが始まった。

 

(…そんじゃま、ちょっと気合を入れますか。)

 

そう思いながら、俺はいつものセリフを呟いた。

……いつもよりも、遥かに気楽な感じで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狙い撃つぜ…っと」

 

 

 

 





如何でしたでしょうか?
どうも雑炊です。

今回は親睦会の話と、紫ワカメ大暴走の話と、アムロ君、テロに巻き込まれるな話でした。
しかも色々詰め込みすぎて、結構いつもより長いし……

あ、途中のAAは試験的に入れてみたものなんで、変にしか映らなかったら後で消します。

因みに途中でアムロが言っていた、「何らかの形で返す」というのは、実はちょっとしたフラグです。
覚えておくと便利です。

…というか、前回からも思ってたけどロックオン兄貴の口調、これで合っているかしら…
なんか、アムロの時とあんまり変わってない気が……一応変えたつもりではありますけど、あまり変わってなかったらすみません。

そしてリボンズとリジェネ大暴走。
特に後者は中の人ネタ(最近は違いますが。あと、そのキャラの身内でしかない人のセリフも出してます)がねぇ…
思ったよりも動きましたこいつら。
以降はこんな感じはナリを潜めますが……もしかしたらまたでてくるかも?

で、次回は一気にハレルヤ初戦闘の回まで進みます。
その後は、また一気に飛んで…どこだろう…?
なるべく早く進めたい所ですが…次回だけで一気に其処までいけるか?

そんなわけで、次回もお楽しみに。

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