Fate/Meltout   作:けっぺん

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「■■■■――――ッ!」
別に放送禁止用語大音量でぶっ放しているわけではないんですよ?
これが駄目なら、
「██████▅▅▅▃▄▄▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▃▃▄▅▅▅━━━━――――!!」
こんなのもあるんですけど、どちらにしましょうか?
環境依存文字ですけど。


二十五話『狂える理性、助く心』

 

 

 全てを溶かしてしまう程の熱は、ラニを中心に広がっている。

 既に決戦場は所々が融解している。

「……は?」

「貴方は……!?」

 両者が驚愕の表情になる。

 無理もない。

 ありえない筈の闖入者、この決戦場に第三者が来る事など、あっていい筈がないのだから。

 驚くラニの周りを渦巻く魔力が僅かに緩む。

 しかし、ラニのサーヴァントである偉丈夫は、驚愕もせず此方に敵意を向ける。

「■■■■――――ッ!」

 あの狂気に溺れた咆哮。

 ラニのサーヴァントはバーサーカーだろう。

「凛、ラニを止めなきゃ! 手伝って!」

 いきなり来ておいて、あまりにも馬鹿げた言葉だろう。

「アンタ……自分が何言ってるか理解してる?」

「分かってる、でも――」

「ハク!」

 メルトの声に振り返ると、バーサーカーが矛を振り上げていた。

「■■■――っ!」

 間一髪で避けるも、第二撃が襲い来る。

「凛、頼む!」

「――もう、後で説明してもらうからね! ランサー!」

「まぁ、それも良いだろう。サーヴァント、暫し手を貸せ」

「言われなくても。精々足手まといにならないでよね」

 凛のサーヴァントであるランサーは、細身の男性だった。

 両肩、そして右腕のみと、黄金の鎧を中途半端に身に着け、槍兵の証である槍を持っていない異質なもの。

 ……いや、外見を見ればメルトの方がよっぽど異質だが。

「私が隙を作るから、アンタがとどめを指して!」

「分かった!」

 武器を振り上げるバーサーカーの懐にランサーが走る。

 その蹴りの一撃を鎧の中心に受け、後退するも、それはとどめを指す程の隙には至らない。

「■■■■――ッッ!!」

 絶技無双。矛、交えるに能わず。

 今までと一点、力任せではなく隙の少ない攻撃に転じたバーサーカーはまさに無双を称するに相応しい。

 高い実力を持ったランサーであっても、それを相手にするのは苦難なようだ。

 だが、その口元は笑みを浮かべている。

「見事だ、狂戦士。お前の様な武人と相見えた事、誇りに思う」

 バーサーカーを讃えながら言うランサー。

 言葉を閉じると同時に、バーサーカーの鎧が爆ぜる。

 大きく仰け反ったそれを見て、ランサーがメルトに告げる。

「やれ、サーヴァント」

「任せなさい!」

 メルトが放つ衝撃波が、バーサーカーの胸部を貫く。

「■■■■――――……」

 力なく崩れ落ちるバーサーカーに構わず、ラニに向かい走る。

「ちょ……!? 待ちなさいハクト君!」

 凛の制止を聞き受ける訳にはいかない。

 きっとそろそろ――

 

 ――

 

 バーサーカーとラニの状態を確認し、敗北と判断したのか、それともイレギュラーの侵入を感じ取ったのか。

 どちらかは分からないが、凛とラニの間に障壁が出現する。

 ラニの側に走っていた僕は凛と離れ、ラニ側に居る。

「――」

 だがラニは未だに爆発寸前の炉を抱えたままだ。

 どうにかしなければ、そう思った矢先、

 

「■■■■――――ッ!!」

 

 巨人が吼えた。

 その瞬間、バーサーカーを形作る魔力が極端に減少していく。

「ぁ――」

 ラニが短く呻く。

「これは一体……?」

「バーサーカーがパスから魔力を逆流させているのね。ラニの心臓の暴走を無理矢理抑え込んでいるんだわ」

 それは、理性を無くしたバーサーカーに出来るはずもない手段。

 ラニと意識を同調させることで、マスターの危機を察知して動いているだけなのか。

 唯でさえ魔力を余計に喰うバーサーカーは、マスターからの魔力供給も断ち、サーヴァントが持つ魔力そのものをマスターに送っている。

 敗北という結果も相まって、バーサーカーの体はかなりの速度で崩れていく。

 それと同時期に、自分を強制退出させようとセラフが指示を出す。

「っ、ハク、ログアウトして。巻き込まれるわ!」

「でも……!」

 見捨てるのか? ここまで来て?

 ラニはまだ助けられるかもしれない。

 諦めるわけには行かない。

 ――気がつけば、走っていた。

「ラニ!」

「――どう、して……貴方だけでも、逃げ、ないと――」

 そんな事知らない。

 独白を無視し、ラニを抱き上げる。

 高い熱を放っていたが、バーサーカーの抑制で幾分マシになっているようだ。

 このまま強制退出が出来れば、ラニも一緒に戻れるはず。

 だが、それは叶わない。

 バーサーカーに限界が訪れたのか、再びラニは高い熱を帯びていく。

「ハク!」

 メルトの叫びが何を意味しているかは分かる。

 ラニの心臓は間もなく全てを融解させる。

 このままでは、真っ先にその餌食になるのは自分だ。

「……頼む、バーサーカー、あと少しだけ、保ってくれ!」

 ラニの魔力が切れれば、心臓の暴走も収まるはず。

 自分に心臓の魔力を抑える手立てがない以上、バーサーカーに託すしかない。

「……」

 バーサーカーが此方を見る。

 理性がない筈なのに、その眼には何か、熱いものを感じさせる。

「――、■■■■――――ッッッ!!」

 決戦場を揺るがす咆哮と共に、再びラニから熱が失われていく。

 ラニの魔力をありったけ、バーサーカーが吸い上げているのだ。

「バーサーカー……」

 暴走する心臓の魔力諸共、収束した熱を内部に取り込んだバーサーカーの体は、瞬く間に溶け、四散していく。

「ハク、早く戻るわよ!」

「っ、メルト!」

 メルトの言葉に従い、今度こそ退出する。

「――――」

 無言のまま此方を見つめるバーサーカー。

 消滅していく彼の最後の表情は、忠義を全うできた武人の、穏やかなものだった。

 

 

 

 

 気がつけば、視聴覚室に戻ってきていた。

 手には数を減らした令呪。傍らにはメルト。そしてラニ。

 どうやら成功したようだ。

「ここは……どうして……?」

 ラニは呟いてすぐ、気を失った。

 もう心臓に、暴走の気配はない。

 それにしても、あんな異常な事が出来るなんて、やはりラニは特別なマスターなようだ。

 スクリーンには何も映っていない。

 いや、そんなことはいい。

 ともかくラニを保健室に連れて行く事にした。

 

 

 倒れたラニを保健室に運び、しばらく経った。

 容態を伺いに来たものの、その瞳は苦しげに閉じられたまま。

「一度眼が覚めたんですが、すぐにまた昏睡状態に陥ってしまいました」

「そうか……」

 桜の説明を受ける。

 肉体的な異常はなく、精神力の急激な消費が原因のようだ。

 一時間ほど経ったころ、ラニの瞼がぴくりと動く。

「……」

 ラニがゆっくりと目を開き、二、三度瞬く。

「私……は……負けた……」

 感情を篭めずに、ラニが呟く。

 瞳には何も映っていない。

 その姿はまるで、壊れた人形のよう。

「ラニ……」

 名前を呼んでみるも、反応はない。

 そのままラニは目を閉じ、緩やかな寝息を立て始めた。

 当分の間目を覚ます気配はない。

 次に目が覚めた時は少しは回復しているといいが。

 ……そういえば、決戦場を出て以降、メルトが一切口を開かない。

「メルト……怒ってる?」

「そうね、どちらかといえば怒っているわ」

 平然と言い放つメルトに申し訳なさを覚える。

 敵を助け、尚且つ令呪を使うなんて愚考、サーヴァントが許すはずもない。

「まぁ、良いわ。甘いけど、嫌いじゃないわよ」

 言ったきり、メルトは姿を消してしまった。

 本当は怒っているに違いない。

 しかしそれを表に出さないのなら、それに報いるしかない。

 保健室を出て行くと、そこにはいつからいたのか、凛が立っていた。

「さて、どういう事か、説明してもらおうかしら」

 凛の瞳は、怒りと敵意が篭っている。

 燃えるような激しい色。

 命を懸けた戦いに割り込まれたのだから当然だろう。

 他人の戦いに乱入できたら聖杯戦争のバランスは完全に崩壊する。

 二人を相手にして勝てるマスターなど存在しない。

 凛の言葉の一つ一つは、実に的確なものだ。

「決戦場を見ることは令呪の奇跡を以てしても無理な筈よ。どんなカラクリを使ったわけ?」

 嘘を言ったら殺す、そんな意思の篭った瞳。

 ユリウスの様な違法呪文(ルールブレイク)を持ち込んでいる可能性も十分にありえる。

 戦いは避けたい。正直に話すしかないだろう。

「……視聴覚室の映写機を使った。多分ユリウスが何か仕組んだんだと思う」

「……成程ね、アイツの仕業か。まぁアンタがあんな反則紛いの事をするなんて変だとは思ったけど」

 凛は腕を組んで何かを考えている。

「でも、私も前に調べてみたけど、あの障壁を破ろうとすれば攻性プログラムで逆に脳が焼かれる筈だけど?」

 確かに、攻性のプログラムらしきものに遭遇した気がする。

 だが、特に何事もなく治まってしまったが……

「そんなはずないわ。たとえこっちの体が無事でも本体が耐えられない。あ……でも、確か貴方……でも……」

「え?」

「……ま、いいわ。今のは独り言だから、忘れて」

 気になるが、凛は話すつもりはないようだ。

「どっちにしてもこれからも戦い続ける気なら、私達は敵同士、それは変わらないわ」

「……うん」

覗き(ピーピング)も次にやったら見逃さないわよ。肝に銘じておきなさい」

 頷くと、それでおしまいと凛は去っていく。

 そして何歩か歩いたところで立ち止まり、振り向く。

「ねぇ、貴方。トワイス・ピースマンって名前に聞き覚えある?」

「トワイス……?」

 記憶にはない。

 どこかで名前を聞いたかもしれないが、それがどうかしたのか。

「ないならいいわ。貴方を見て少しそういう人を思い出したってだけだから」

 今度こそ凛は去っていく。

 トワイスなる名前には気になるが、とにかく疲労が溜まっている。

 ありすとの戦い、そして凛とラニの決戦への乱入。

 三回戦の最終日は、あまりにも多くを体験したのだった。

 

 

 +

 

 

「っ、ふぅ……」

「お疲れ様です、シラハさん」

 辛うじて勝利することが出来た。

 星の触覚だとか言う、なんだか良く分からないサーヴァントが相手だったが、狂戦士の(クラス)だったおかげでその真価が発揮できていなかったのは幸いだった。

「ガトオオオオォォォォッッッ!!」

 少女の姿をした星の触覚、バーサーカーはマスターの名を叫びながら消滅する。

 そう、今回の勝利は相手のマスターに救われたところもある。

「あぁ世は正に終焉(ラグナロク)! 我が神は滅びたぁぁぁッ!」

 ガトーさんと言ったか、マスターは最後まで訳の分からない事を喚きながら消えていった。

 確かに罪悪感は感じている。

 だが、自分は今、生死を別つ戦いの中に居るのだ。

 自分にどんな欠落(バグ)が発生していても、吹っ切れて戦うしかない。

 次の対戦相手はどんな人だろうか。

 その人も、殺さなければならない。

 どんな願いを持っていたとしても、それを踏みにじらなければならない。

 それを考えると、やはり気がめいる。

 今は気にしないほうがいいだろう。

 これまでどおりやっていけばいい。

 このサーヴァントが居る限り、負けはしないのだから。

「さて、行こうか」

「はい」




書き溜めがかなり減ってきたため、勝手ですがしばらくの間、更新を二日に一度にさせていただきます。
というのも、四回戦を完全なオリジナル展開にすることもあり、原作をベースにしたさくさくとした進行が不可能でして。
四回戦が終わった頃には元の更新ペースに戻せるように努力します。


どうでも良いですけど、前書きで二つのバサカのパターンを並べたら作中の台詞が凄く弱弱しく思えてきました。
おかしいな、メモ帳を見ると普通に思えるのに。

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