Fate/Meltout   作:けっぺん

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劇場版HF詳細発表、EXTELLA発表、EXTRAアニメ化。
色々あってwktkが止まりませんがFGOでメルトの実装はまだですか。
いつになったらアルターエゴ+BBで旅が出来るんですか。

という訳で、夢の対決その1です。タイトル詐欺予告します。


夢の対決-1 騎士との邂逅は異変にて…?

 

 その日、白羽さんから受けた報告は今までにはない異常だった。

「――サクラ迷宮に、新たな階層が?」

「うん。間違いなく、昨日まであんなものはなかったよ」

 月の治外法権たるそこで発生した事件が収束してから、もう随分と経った。

 あれからヴァイオレットと白羽さんが月の裏側を再構成し、廃棄データを集積すべき場所は復活した。

 その後、白羽さんは日々の作業の裏で単独で旧校舎及びサクラ迷宮を復元していた。

 曰く、「色々と思い出がある場所だし、カタチくらいは残しておきたい」とのことらしい。

 完全に元通りとはいかないものの――といっても、NPCがいなかったりエネミーが存在しないだけだが――迷宮は完璧ともいえる復元ぶりだった。

 それに今更、何かしら手が加えられるなんてこと、ある筈がないのだが……

「……迷宮、二十五階か。詳細は、掴めない?」

「ダメだった。不確定要素の塊みたいになってて、一つ一つ観測してったんじゃキリがないと思う」

 どうするべきか。いや、不確定が許されない月において、調べないという答えはないのだが。

 赴いてみるにしても、危険が伴う可能性がある。

 事は慎重に進めなければ――

「どうしました? センパイ、シラハさん」

「あ、BBちゃん。それが……」

 怪訝そうに近付いてきたBBに白羽さんが事情を説明していくと、みるみるうちに複雑な表情に変わっていく。

 何と言うか……大変なことを忘れていたといった感じ。

「……BB?」

「え、あー、あのですね。これは、そのー……」

「覚えがあるのか?」

「あ、あると言えば……ある、かな……?」

 しどろもどろとしたBBは、誤魔化すように一切言葉を切らず口早に説明してきた。

 

「えっと、実は八階層を突破した後“サプライズですビックリしましたセンパイ?”的な感じで用意してた階なんです結局没にしちゃいましたけどあの階には特殊な召喚陣が仕込んであって超強力なサーヴァントでセンパイもメルトも一網打尽やったねBBちゃん大勝利ってなる予定だったんですよ」

 

「……」

「……」

「……てへ」

 要するに、あれはBBの隠していた最終兵器だったと。

 僕は八階層を突破したと思ったら、また新たな階が出現していた。何を言ってるのか……といった具合の展開でも狙っていたらしい。

 多分、元々八階層まで増設した頃から用意していたのだろう。

 だけど、ノートを討った頃には状況が状況だった。結局使えるものではなかったということだ。

 そして完全に再現した結果、隠されていたこの場所まで復活してしまったと。

「……うん、つまり放っておいても問題はない訳だ」

「でも、なんでいきなり起動したんでしょうね。……あれ? 二人とも、これ……」

 BBの指す場所――二十五階の位置情報の部分を見ると、何やら信号が発生していた。

「救難信号? もしかして……」

「……用意していたサーヴァントから、でしょうね……」

 出られなくなった、ということだろう。

 BBに付き合って召喚に応じた結果、よくわからない迷宮の一角に幽閉されたなど笑えない話である。

 そうだというならば、出向かない訳にもいかない。

 月の都合で散々に迷惑を掛けているのだから、僕たちが行くべき……なのだろう。

 迷宮の内部情報までの観測をある程度進めなければ、このサーヴァントを戻すことも出来ない。

 どうやら、これが今日解決すべき案件のようだ。

「えっと、センパイ?」

「……仕方ない。ちょっと行ってくる」

 これが仕方ないことだと思えるようになった辺り、この環境による毒され具合も随分なものになった気がする。

 まあ……それが楽しくないかと聞かれれば――楽しいのだろう。

 

 

 メルトに状況を告げると、新たな頭痛の種になったとぼやきつつも付いてきてくれた。

 あまり大事にしたくないため、白羽さんとBB以外の面々には知らせていない。

 ナビゲートは二人に任せ、久しぶりに月の裏側を――サクラ迷宮を踏みしめる。

「……で。問題のサーヴァントはどこにいるのかしら」

『そのまま直進……で、良いのかな。BBちゃん、この階、どんな構造なの?』

『大広間に繋がる道以外に、色々はずれの小道を付加してますが……今の道で合ってますよ』

「なんでそんな面倒な構造にしたのよ……」

 愚痴を吐くメルト。あまりに同意であるが、嫌がらせのネタとしては間違ってない。

 没になった筈のそれが日の目を見ることになったのは決して喜べないが。

「……あれ、かな」

 暫く歩くと、開けた場所に出てきた。

 そこにあるのは、BBが用意したのであろう召喚陣。

 そして――

「――あ」

 見つける。相反して立つ、二人の騎士の姿を。

「やっと……やっと来やがった」

 赤と青の、二人の少女。そのうち赤の方が、待ちに待ったとばかりに苛立ちを向けてきた。

 布面積の小さい赤装束に身を包んだその少女には見覚えがある。

 月の裏側の事件が起きる前、何度かメルトが戯れに喚んでいたサーヴァント――

「……モードレッド?」

「ああ……そうだよ。お前、また何かやらかしたんだろ。こんなところで、こんな状況で、こんな長い時間閉じ込めるとか……正気かよ。絶対違うんだろうけど、正気なのかよ?」

 マジで()キレる()五秒前()……否、既に怒り心頭である。

 モードレッド。アーサー王伝説に登場する円卓の一席に座す、叛逆の騎士。

 アーサー王の子にして、その王政に終止符を打った者だ。

「ハクトにメルトリリス、だったよな。それで、何か釈明とかあるか? 何なら聞くだけ聞いてやるけど」

 不機嫌を隠さず、肩に剣を置いて歩み寄ってくるモードレッド。

 言葉を交わしたことがなければ、すぐにでも切り掛かっていたのではないかとさえ思える。

「えっと、モードレッド。その前に、彼女は……」

「――」

 迫ってくるモードレッドと対照的に、一歩たりとも動かない青の少女。

 その容姿は、モードレッドと瓜二つと言ってもいい。

 あの英霊は……何処かで見たことがあるような――もしかしたら聖杯戦争ですれ違っただろうか。

「……何か?」

「いや……」

 気のせいだろう。

 というより、心の根底が思い出すなと警鐘を鳴らしている。

「ああ……あの人、な」

 気まずそうに少女に目を向けるモードレッド。

 年齢は然程離れていない、というより同年代に見えるが……

「……アーサー王」

「は?」

「アーサー王。オレの父上だ」

 ……この、重苦しいというか、あまりにも生暖かい空気の理由が分かった。

 なるほど気まずいだろう。あろうことか、この二名が共に召喚されてしまうとは。

 アーサー王――ブリテンの伝説的な君主。

 『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を担い、あらゆる騎士たちの羨望と憧憬の先に立った、偉大なる騎士王。

 しかし……モードレッドは“父上”と言っていたが、そこにいるのは紛れもなく少女だ。

 そもそも男ではないし、その少女は親となれるような年齢にも見えない。

 そんな疑問を察したのか、モードレッドが説明してくる。

「……色々あるんだよ。全部母上(モルガン)のせいだ」

 モルガン……モルガン・ル・フェ。アーサー王の姉にして、モードレッドの母。

 邪悪なる魔女で、アーサー王の王位簒奪を企んでモードレッドを影から操っていたという。

 モードレッドの母はモルガンで、しかしアーサー王は女性。それで子供を成すとなれば、モルガンは実は男で……

「言っとくけど、母上は女だぞ」

「……」

「ハク、安心なさい。私もまったく理解できてないわ」

 良かった。僕が異常な訳ではなかったらしい。

 事情はよく分からないが、まあ……アーサー王伝説の知らなくても良い裏側なのだろう。

 既に、目の前に知らなくても良い真実が二つほど存在しているのだが。

「――んで? 早く説明しろっての。オレと父上をここに召喚した理由はなんだ?」

 話を戻すモードレッド。アーサー王もそれを疑問に思っていたようで、数歩前に出てくる。

「ん、何から話すべきか――」

 とりあえず、少しずつ掻い摘んで説明する。

 月の裏側の事件の概要からこの階層の作られた経緯、何故それが使われず、ここまで放置されるに至ったのか。

 そして、話の終幕とばかりに先程のBBの言葉を伝えた瞬間――

「――――」

 首元を掠めるように、一本の剣筋が通り抜けていった。

「……」

「ああ危ない。剣振ってから“やっちまった”って思ったぜ。首飛ばしちまわなくて良かった」

 ――少し、声が低い。

「おい、ハクト。そのビービー? って奴呼んで来い。今すぐ。オレがこの手で叩き切ってやる」

 今までの姿とは真反対に、全身を覆う無骨な鎧に身を包んだモードレッド。

 鬼の如き二本角が特徴的な兜の内から零れてくる籠った声は、彼女の苛立ちを痛感できるものだった。

「も……モードレッド?」

「いいか? この際手駒としてオレらを喚んだことは置いておく。だけど流石に、オレとアーサー王を同じところにこれだけ放置したってのは何時間文句言っても足りねえからな」

 見れば、アーサー王も決して居心地良いとは言えない表情である。

 互いが互いを良く思っていないのは今この場の状況からしても明白。

 どうしてこれまで戦闘に発展しなかったのかが不思議なレベルだ。

「ほら、早く連れて来い。それとも代わりにお前らが負債を払うか?」

「……BB」

『えっ。え、えーと……お断りしたいです。今の私、そのお二人どうにか出来る戦闘能力ないですし』

「今の声か。大人しく出てきた方が良いぞ。さもなければ、月の主人たちが消し炭になるぜ?」

 気付けば僕たちは脅迫の材料にされていた。

 モードレッドの怒りも分からないでもない。寧ろ当然なのだが、これで何もしない訳にもいくまい。

 どうせ何をしなくても僕たちがソードオアデスすることになるのだ。

 仕方ない。ここは僕たちがどうにかして穏便に済ませようか。そう思った矢先、

「――ちょっと。先に今ハクにしたことの清算はしてもらうわよ」

「へ?」

 モードレッド同様にトーンの下がった声が、隣から聞こえてきた。

「一瞬たりともハクに殺意を向けたこと。私たちの月を脅かす発言。どっちも許し難いわ」

「その理由作ったのはどっちだっつーか、二つ目明らかに後付けだろ。そっちに関してはハクト切りかけたこと関係ねえし」

「許せないことに変わりはないわよ。どっちも極刑に値すこと、分からないくらい頭が残念なのかしら?」

「オーケー。良いぜ、まずテメエからで。月だろうと太陽だろうと気に入らねえモンはぶった切る。二度と大言壮語を聞けないようにしてやるよ」

 ……アーサー王と、目が合った。

 互いに心境は複雑なれど、今この二人の言い合いを見て思ったことは同じだったらしい。

 片や、(オレ)ルール。片や、(わたし)ルール。

 “大変ですね、貴方も”“そちらこそ”そんなやりとりをしたような気がする。

 穏便に済ませようなんて思っていた僕が甘かったらしい。流石に中枢生活で浮かれ過ぎたか。

 瞬く間に戦闘に発展しかけている状況をどう収めるべきかと考えるも、穏便には済まないという結論に至るまでは早かった。

「やりたいなら相手するわよ。私のレベルを分かってて歯向かってくるなら、だけど」

『あ、メルトちゃん、そこ月の治外法権だから規格外のレベル通用しないよ。強制的に99に戻ってる』

「……」

 一瞬、メルトの表情が素に戻ったのを見逃さない。

 兆を超える数えるのも馬鹿らしいレベルから、二桁にまで戻っていたのはこの階層に入り込んだ時から把握していた。

 しかしどうやら、メルトは失念していたらしい。

「おいおい、月の主とあろう者がまさか逃げる訳じゃねえよな?」

「……まさか。ええ、相手してあげようじゃない」

 モードレッドの挑発に、退けはしないと乗ってしまう。

 ――いや、正直拙いのではないか。

 どちらか一人なら、戦い方を考えればどうにかなるかもしれないが、二人となると勝ち目はないに等しい。

 騎士道の体現者である、輝けるアーサー王。そして彼女と匹敵する力を持つモードレッド。

 流石に分が悪すぎる。

 圧倒的優位を知ってか、モードレッドは宝剣を構え、赤黒い魔力を零しながら開戦の声を上げる。

「よし、行くぜ父上! この馬鹿二人に制裁を――」

「私は貴方を息子と認めた覚えはありません。それと、私は別に戦うつもりはありません」

「えっ」

 断固、キッパリと断りを入れるアーサー王。

 モードレッドの兜の下の表情は見えないが、さぞ珍しい表情なことだろう。

 この時ばかりは共闘し、迷宮の一フロアという監獄に幽閉した僕たちと戦うことになると思っていた。

 あまりに予想外な戦闘拒否。

 発端となったのは此方の事情とはいえ、流石にモードレッドに同情してしまった。

 

 

『……どうします? いつでも回収できますけど』

「…………いっそそうしてくれ。なんか知らねぇけど剣が重いんだ」

 ――あれから、半ば自棄になったようなモードレッドと戦闘になった。

 元々荒いのだろう剣筋がより荒くなり、喩えは悪いが獣のように、得物である宝剣を激しく打ち込んできた。

 しかしそれでも、いつもの実力を発揮できていないことは明白だった。

 暫く戦って、何故戦っているかよく分からなくなったらしい。

 少し落ち着いたモードレッドは、召喚した本人であるBBの問いに無気力気味に答えた。

「覚えてろよ父上。オレはいつか貴方に絶対に勝つ」

 既に兜を外しており、疲れを見せつつも威圧的な鋭い目を向けてくる。

「お前らもだ。いいか、ここより先オレ以上の強敵が」

 よくわからない言葉の途中で、モードレッドは消えた。

 モードレッド以上の強敵なんてそうそういないと思うが……

 強いていえば、目の前のアーサー王が今から剣を抜いてくるという状況。

 しかし、そういうことにもならないらしい。

「ふぅ……ガウェインともまた違う剣筋だったわね。戦いづらかったわ」

「お疲れ様、メルト」

 戻ってくるメルトには、目立った外傷は見られない。

 モードレッドの調子が普通通りであれば、こうはいかなかっただろう。

「おや、ガウェインと面識が?」

「ええ。少し前に世話になったわ」

「本当に。彼がいなければ、どうにもならなかったところもあるよ」

「そうですか。ガウェインは私の治世には勿体ない程だった騎士です。午前の加護も相まって、円卓で彼を超える武功を立てられる者もそうはいなかった」

 実に誇らしげに、アーサー王は微笑む。

 その笑みには懐かしさと、小さな物悲しさのようなものも見られる。

 しかし、それを指摘するのは正しいとは言えない。

 聖杯戦争で聞いた、ガウェインが王に抱いていた念も、ここで語ることではあるまい。

「――モードレッドと共に呼び出したことに不満はありますが。その埋め合わせは次にでもしてもらいましょう」

 ふと、デジャヴを感じた。

 そんな契約をしたような記憶がある。

 アーサー王は何も覚えていないようで、此方にも実感がない以上、気のせいなのだろうが。

「さて、では私もお願いします」

 その言葉を最後に、アーサー王も消える。

 この階にいたサーヴァントは、これでいなくなった。

 階の探索という役目は完遂したと言っても構わないだろう。

 久しぶりの戦闘で疲れを見せるメルトは観測をしているBBたちを睨むように、虚空に視線を向けながら。

「BB、後で覚えてなさいね」

 実刑宣告を言い渡した。




夢の対決(戦闘描写があるとは言ってない)
すみませんごめんなさい勢いで書いてたら結構纏まっちゃったんです。
アルトリアとモードレッドでした。GO編で本格的に頑張ってもらいます。
その2からは普通に戦います。普通……?

ところで連日更新って二年前の五月以来ですかね

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