外見で「ん?」ってなる
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台詞でほぼ確信を持つ
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もう一回見直す
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CV.宮野がじわじわ来る
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笑いが止まらなくなる←いまここ
開戦の証となった咆哮を隙と見たのか、一番槍としてランサーが跳ぶ。
黒く染まったバーサーカーに向けた、正確無比な刺突。
「っ」
だが、その槍はバーサーカーへの攻撃ではなく、自身に向かってくる何かへの迎撃のために振るわれた。
予期していたかのようにノートから放たれた刃。
迎撃で生まれた僅かな隙を、今度はバーサーカーが突く。
防御は可能だが、ノートがいるとなると話は別。
バーサーカーをメインとして戦わせ、相手に生まれた隙をノートが討つ。それが、彼女の戦法か。
しかし、複数サーヴァントがいるのは此方も同じ。
「ガウェイン!」
「御意に!」
レオの指示で、ガウェインが。
「セイバー」
「承知――」
ユリウスの指示で、セイバーが動く。
ガウェインが振るわれる矛を受け止め、弾く。
そして――セイバーの聖剣とランサーの槍が、バーサーカーを切り裂いた。
「ッッッ――」
声にならない呻きを上げ、崩れかけるバーサーカー。
だが、空いた傷は唐突に黒く染まった。
「あれは……」
「
バーサーカーは、倒れたところを宝具『女神の繰り糸《エルキドゥ》』によって黒く染まり、生かされている存在。
幾ら傷を受けても、女神の泥によって埋め合わせてしまえば死なない。
そうなのだとしたら……ノートを倒さなければ、バーサーカーを止めることも不可能なのか。
「せっかくの私の手駒なのですから、この程度で倒れてしまっては困ります」
「ノート――貴女は……!」
再び立ち上がるバーサーカーにラニは悲痛な目になりつつも、その目はより敵意を持ってノートに向けられた。
まるで道具に対するような扱いに、良い目を向けている者は一人もいない。
「落ち着いて、ラニ。怒る前に、どうにかしてバーサーカーをあの束縛から解放してあげないと」
「っ……そうですね。ありがとうございます、ミス遠坂。取り乱しかけていました」
「良いのよ。当然の事なんだから。でも、冷静でないとアサシンも安心しないわよ」
普段の様子に戻ったラニ。ランサーたちはノートとバーサーカーの攻撃に一旦後退し、態勢を整える。
「やはり、一筋縄ではいきませんか」
「当然。まさか貴方たちも、これだけで音を上げることはありませんよね?」
当たり前だ。元より諦めるつもりも、そして、手を抜くつもりもない。
刻限は迫っている。全力で突破しなければならないのだ。
ノートは凄まじい力を持っているが、それでも万能ではない。
事実、四階層では倒す一歩手前にまで追い詰めていた。
きっと弱点はある。故に、様々な状況に対応できるこのメンバーで挑んでいる。
「バーサーカーへの治癒も、限界があるだろう――ラニ」
「はい……構いません」
ユリウスが求めた同意に、ラニが頷く。
口に出さずに提示した戦法――即ち、『
アサシンの例を見る限りでは、『
バーサーカーは体を剣山のように串刺しにされながらも、ラニのために戦っていた。
あの傷が残っているのだとしたら、彼の体は限界をとうに超えている。
ノートと同時に戦わなければいけないが、だからこそその内にノートの供給には限界が来る筈だ。
「なら、私とレオでノートを相手するわ。メルト、貴女はそのまま。ハクト君、ラニ、ユリウス。それからリップにアーチャー。バーサーカーを」
凛の言うそれは一見、無茶に思える。
強力極まりないノートを相手に、戦闘メンバーを減らして戦うというのだから。
だが、戦力を分散させることで、混沌なる戦場で状況把握に混乱するという事態を避けられる。
一刻も早くバーサーカーを倒し、かつノートを少しでも消耗させられる。
利に適っている。問題は、それにノートが乗ってくるかだが、
「構いませんよ。私はそれでも」
ノートはこの戦いを愉しんでおり、此方が提示した作戦を戯れとして興じてくる。
此方がどれだけ知恵を巡らせ、どんな手段で立ち向かってくるか。愉悦としてそれを見ているし、ゆえに真正面から受け止める。
傘を何処かに仕舞いこみ、右手に無骨な大斧を、左手に彩色豊かに煌く剣を握り込む。
どちらも、見たことがある。斧は二階層、バーサーカーとの戦いで。剣はアルジュナの戦車の上で。
あの斧はノートが『お気に入り』と言っていた。そして、剣はあのときこそ加速装置として使われていたが、あのエネルギーを攻撃として使えばかなりの威力になるだろう。
ガウェインとランサー。二人を相手取るに相応しい二丁の武器だ。
『あれは……』
「……? カズラ、どうかした?」
『はい……あの斧、十分に気をつけてください。心や思考を削る、対心宝具です!』
――対心宝具。
メルトやリップの宝具が該当する、対象の心に作用する宝具の分類。
あの斧も、それに該当するのか?
ノートは不敵に笑うばかりで、その答え合わせをしようとはしない。
しかし、カズラの声色には確信がある。事実と見て良いだろう。
「そんなものを此処で出してくるって事は、よっぽど高ランクの宝具なのかしら」
「そういう訳ではないだろう。ただあの斧を誇示したいだけに思えるが」
「いや、まさかそんな事……」
凛はランサーの憶測に呆れているが、強ち否定もしきれない。
幾つも持っている宝具の内で、ノートが『お気に入り』としているもの。
宝具コレクターとしての側面を持つノート。
ならば、マスターやサーヴァントが多くいる場で見せようとしても、あまり不思議ではない。
「では、バーサーカーはお任せします――ガウェイン」
レオの一言で、今度はガウェインはノートに向けて跳ぶ。
「ランサー!」
そして、ランサーもそれに続く。
「ふ――」
斬撃と刺突。ノートは二つを嬉々として受け止める。
「よし……僕たちは――」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!」
ノートが戦いを始めるのを待っていたかのように、バーサーカーが咆哮する。
振り下ろされた矛を、セイバーの聖剣が迎え撃つ。
「メルト! リップ!」
「ええ――!」
「はい――!」
セイバーは英雄の中の英雄だ。
今のバーサーカーでは、彼の相手で手一杯。
その隙に、双方から攻撃を仕掛ける。
「■■■■■■■■■■■■■■■■!!」
棘と爪による、同時攻撃。相応のダメージは負った筈だが――再び、喪失した部分に泥が足される。
「ふむ……小僧、暫し時間を稼ぎ、出来るだけあやつに損傷を与えろ」
底の見えない再生に歯噛みしていると、アタランテが口を開く。
「アタランテ……何か策が?」
「セイバーの宝具は温存しておくべきだ。
「それは、確信の持てる手段か?」
「私は、私の矢を信ずるまでだ。矜持を抜いて言うならば、お前たちが稼いだ時間をそのまま威力に還元しよう」
良く分からないが……つまりは、稼いだ時間の分だけ威力を増せるという事だろうか。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」
セイバー、メルト、リップの三人を相手に、バーサーカーは攻撃を受け続けながらも気にした様子なく反撃している。
あの底知れずな泥に対しての対策を、アタランテは思いついたのか。
「考えている時間はありません。アーチャー、お願いします」
「心得た」
アタランテは跳躍し、安全圏にまで避難する。
そして、天に向かって弓を構える。傷を負った右手に握られた矢は以前ほど引き絞られてはいないが、それでも神話の狩人に相応しい力が篭っている。
三階層で見せた宝具と同じ構えだが、紡がれる祝詞はそれとは違った。
「昇れ大熊、手向けに七つの星を捧ごう」
一本の矢が天へと昇る。しかしそれでは終わらない。
続け様にもう一本、同じように矢が空へと向けられる。
「紫藤、余所見をするな。バーサーカーに集中しろ」
「ッ――ああ」
そうだ。あれは宝具の準備段階に過ぎない。
その時間を稼ぐのが僕たちの仕事だ。
「三人がかりでも――少々厳しいですか」
バーサーカーは疲れなどないように、一切動きは鈍らない。
傷を修復する時間で僅か停止はすれど、その間に三人では倒しきることは出来ない。
セイバーの宝具を解放しようにも、まだ戦いは序盤。ここであれほどの威力を持った切り札を切るのは得策とはいえない。
アタランテの宝具がバーサーカーを倒しえる威力になるまで時間を稼ぎきる、それさえ簡単なことではない。
尋常ならざる耐久力に、此方は不利になる一方だ。
「アサシン、貴女も力を貸してください。ただし、絶対に真正面に立たないように」
『うん――わかった、
迷宮の何処からか、ジャックがラニの言葉に返答する。
霧の宝具を発動こそしていないまでも、アサシンとしての気配遮断能力は高い。
一級のサーヴァントでも場所の察知は難しいだろう。
アサシンクラスの気配遮断能力は、基本的に攻撃に移ると能力が大きく落ちる。
だが、それを補うのがジャックの固有スキル、霧夜の殺人だ。
「ッッ!」
背後から誰とも知れずに接近したジャックが迫り、バーサーカーの首元のナイフを突き刺す。
限界を超えて暴走しているゆえにその気配を察知することも出来ない彼にとって、正に不意の一撃だっただろう。
今までの大きい威力の攻撃とは違い、正確な致命傷を狙った攻撃。
「――――!」
命を奪うという一点に特化した一撃は、本来であれば耐久に秀でたサーヴァントだろうと確実に命を刈り取るものだ。
だが、
「――退避してください、アサシンッ!」
「ッ」
何事もなかったかのように、バーサーカーは背後にいる暗殺者に矛を振るう。
「拙い――!」
咄嗟に魔術を発動する。
敏捷低下と敏捷上昇、同時発動により開いた速度の差。
どうにかジャックの上下分断は免れた。
「っ、ぐ――ぅああっ!」
「アサシン!」
わき腹に大きく開いた切り傷を抑えながらも、ジャックは後退してくる。
自分たちとは違う方向に矛が向けられた隙にメルトたちも攻撃したが、やはり致命傷とはなりえない。
「アサシン、大丈夫ですか?」
「ん――、うん。まだまだ、へいき」
治癒をしながらの問いに、ジャックは苦痛を無理矢理笑みに変えて答える。
「……アサシンの攻撃でも駄目か。ともなればやはり、高い威力が必要か……」
供給される泥がある限り、不意を突いた攻撃でも通じない。
やはり、アタランテの攻撃に頼るしかないか。
いや、倒しきることは出来ないまでも、消耗させることがより確実な打倒に繋がるはずだ。
「――ラニ、ユリウス。バーサーカーの動きを止められる?」
「……僅かな時間ならば、可能だ」
「私も、同様です。……何か策が?」
「ああ。アタランテの宝具で確実に倒しきれるように、少しでもダメージを与えておこう」
サーヴァントには及ばないまでも、僕も攻撃に参加は出来る。
出来るだけ消耗は避けたいが、確実を期するためならば惜しまない。
それに――何度も使用し、慣れている変質だ。効率の良い魔力の回し方は把握している。
「ハクトさん……まさか」
「うん。構わないかな、ラニ」
「……はい。お願いします」
魔術回路を励起させる。
かつて、この能力において一番最初に発現させた力。
そして、事あるごとに頼ってきて、最も多く使用している力。
「ラニ、行けるな」
「ええ――!」
ユリウスがバーサーカーの周囲に発生させた鎖。
数十になるだろうそれを、ラニは高い演算能力から数瞬のうちに把握して、全てを強化する。
鎖の存在を察知して、サーヴァントたちが離れる。
「■■■■■■■■!」
巻きついた鎖。バーサーカーは力任せに引き千切ろうとするが、一度の挙動では不可能だった。
それでも、そう保ちはしない。故に素早く、術式を紡ぐ。
「
鎖の全てが断ち切られた瞬間、発現した槍を投擲する。
バーサーカーの武器が持つ攻撃法の一つ、刺突。それを最も色濃く発現させた槍という形態。
その効力で、僅かに動きが停止したバーサーカー。その隙に、更なる変質を槍に与える。
「■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!」
射撃。槍を瞬間的に攻撃的エネルギーに変換し、爆砕する。
胸に大穴を空けたバーサーカー。
「アタランテ!」
その穴が再び埋まる前に、決定的な攻撃を叩き込む。
「良かろう――いざ降り注げ、カリストの星よ!」
稼いだ時間、アタランテはひたすら矢を天に放っていたようだ。
一つでも十分に強力な矢。それら数多くが集まり、一つになる。
そして、それが再び七分割。北斗七星を形作る。
「――
準備段階において放った矢の威力を集約させる、アタランテが持つ宝具において最大威力を出しえる攻撃。
「さらばだ、狂える武人」
降り注ぐ七連撃。凄まじい威力を持った一つ一つが直撃し、その爆風にバーサーカーが呑まれる。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!」
「……お別れ、ですね。バーサーカー」
ラニがぼそりと呟いた言葉には、悲壮が見えた。
しかし、バーサーカーが最期に見せた表情には、悲しみはなかった。
とはいっても、狂化の影響がある。それが本当の表情かどうかは分からなかったけれど。
――どこか、笑っているように見えた。
「……終わったな」
「おや……バーサーカーが」
戦闘中のノートが、僅かに此方に意識を移す。
七つの流星は、バーサーカーを完全に葬った。
爆風が消えたところには、黒く染まった赤き武人の姿はなく。
ただ、罅割れた迷宮の床だけが残っていた。
Q.なんで黒アサシン先生はリジェネ掛かってなかったの?
A.ノートが監督してなかったからじゃね(適当)
これで呂布さんは本当に退場となります。お疲れ様でした。
呆気ないといえば呆気ない。ただ、戦いの前哨戦みたいなものですしお寿司。
『北斗の七矢』は姐さんの没宝具。ルビは自分で付けましたが、確か「北斗七星」とかそんな意味です。ド直球。
効果は簡単に言えば、準備段階で放った矢の威力合計を七分割するみたいな感じです。
手軽な『訴状の矢文』と使い分ければ威力も範囲もしっかり補えます。優秀。
ジャックのダメージ? 多分大丈夫ですよ。多分。