Kazuradrop.にてカズラがレリーフになるとこっちのルートに。
ただし根が良い子なのですぐ終わり、幼女を虐めるのは実に良……もとい、気が引けるので過激さも一切ありません。ゴールデンタイムで放送できるレベルです。
おいたをした子を優しく諭す親みたいな光景を想像しながら読んでくれると良いと思います。
『If/Meltout THE PUNISH ~もしもカズラだったら~』
この空間も、かれこれ三度目になるか。
凛、ラニと続けて、次はアルターエゴの一人であるカズラドロップ。
突き放してしまったのは、間違いだったかもしれない。正しい選択をしていれば、この場で戦わずに済んだかもしれないのだ。
「ハクトさん……」
「……ごめん、カズラ。でも――」
「良いんです」
「え――?」
「悪いのは、私ですから。ですから、あの……」
何か、言い淀んでいるカズラ。しかし、程なくして微笑みを向けてきた。
「いっぱい、お仕置き、してください」
……被虐願望なんてSGは、彼女にあっただろうか。
いや、SGというよりは本心なのかもしれない。
それほどまでに、カズラは罪悪感を感じ、贖罪を求めているのだ。
「……なんで、そこまで……?」
これから僕は、カズラの心を暴かなければならない。
それは彼女にとっても嫌なことであるはずなのに――何故カズラはここまで肯定的なのだろう。
「……同属嫌悪、自立願望、インセクトイーター……私のSGは全部、ハクトさんに迷惑を掛けてしまいました。だからです」
なんと。SG三つを指摘するまでもなく、自分で認めてしまった。
同属嫌悪――七階では、メルトやリップ、桜にまで拒絶の意思が力を発揮し、負担になってしまっていた。
八階での自立願望は……もしかして、あの集落の中で散々にSGを捜し歩いていたことを言っているのだろうか。
九階の戦いは、カズラに悪気があったとは思えない。ある種仕方の無い、彼女に逆らえない何かがあったのだろう。
しかし、それら全てにカズラは責任を感じている。だからこそ――裁いてほしいと。
「ここまで迷惑を掛けてしまったのは、私の弱さが原因です。だから――」
「違うよ、カズラ」
「え――?」
しかし、それは思い違いだ。
最初から、その“弱さ”に責を求めることが間違っている。
「カズラは迷惑を掛けないために、色々やってくれた。それが裏目に出たからって、責任を感じることじゃないよ」
BBや他のエゴからの妨害が掛からないようにした。
そもそも、戦いというものをしなくて良いように。
そして――傷つけないように。
「だ、駄目ですっ! それだと納得できません!」
「僕はそれで納得してる。それでも駄目?」
「う……」
カズラは、僕に贖罪を求めている。
そこが間違いなのだ。僕が「それで良い」と納得している事に「駄目だ」と反論されるとそれこそ困る。
故に、カズラが反省するべき点は一つ。弱さを罪と考えることだ。
「カズラ、君は戦闘能力――戦う要素を排除して作られたエゴだろう? だから、弱くて当たり前。それで良いんだよ」
突き放した、ひどい言葉かもしれない。
だが、それがカズラの救いの言葉なのだと思う。
「でも……強くないと、私は誰の力にもなれません……」
「誰かの力に、なりたいのか?」
「当然です! 私だって、アルターエゴの一人ですから、お母様の力になりたい。ハクトさんの力にだってなりたい! だけど、弱ければそれも――」
「弱さは理由に出来ないと思うよ」
「っ――」
元より、カズラはBBによって作られた非戦闘用アルターエゴだ。
戦う力は最初からなく、これから先、力を得ようとしても上手くはいかないだろう。
しかし、BBはそれを分かった上で、戦闘に向かないエゴを作った。
それはカズラなりの役目があったから。
役割とは人それぞれだ。僕が迷宮を攻略するように、レオたちがその補助を務め、メルトが僕の代わりに戦ってくれる。
全てをこなすなど出来る筈もなく、かといって自分に向かない役割をこなせというのも無理がある。
「カズラは無力じゃない。自分なりに出来ることを探せば良いんだよ」
「……でも、それは一体……」
「それは僕じゃなくて、カズラが探さなきゃならない事だ」
自分の役割を誰かに求めることは、それこそ間違っている。
確かに、カズラはBBに役割を与えられた存在だ。
それを認めるならば、それで正しい。別の道を探すのも正しい。
ただし、別の道を探すならば誰かが定めた道では駄目だ。カズラが自分で道を探し、自分で道を定めなければならないのだ。
「……出来るでしょうか」
「僕が手を貸す。きっと、皆も手を貸してくれる。だから、ほら」
手を差し出す。カズラは、一人で背負いすぎた。
だから不可能が多かった。だけど、それに手を伸ばしてあげれば、やれることはきっと多くなる筈だ。
カズラは善を目指した。カズラは悪になりきれなかった。二つの道を、少しの躊躇いで選べなかった。
だから――善の中に悪を呑めば良い。きっとカズラは、新しい道を選ぶことが出来る。
「頼っても、良いんだよ」
「ハクト、さん――」
おずおずと、小さな手が伸ばされた。
「ありがとう――ございます」
これが、カズラの決定。懲罰など必要ない。カズラは、大きな一歩を踏み出せた。
「ハクトさん――」
「ん、何?」
答えを得たカズラが、柔らかく微笑む。
握られた手に、もう片方の手が乗せられる。
きっとそれは、カズラの大きな一歩の一つで――
「大好き、ですっ」
――紛れもない、本心なのだろう。
『アンデル先生出張講義 サーヴァントの事聞いてみた』
「さて、読者諸君、毎度お馴染みアンデルセンだ。めでたくないが二回目だ。
この講義ではサーヴァントについて綴る。予めここにFate/EXTRA materialがある。真名は分かっているぞ。
初めに言っておくがこれはFate/EXTRA CCCで俺が章毎に語るアレほど掘り下げていない。
まぁそれは作者の頭とかメタ的理由だが。文句や抗議は作者宛に送りつけてほしい。
と、テンプレで始めさせていただく。では今回の題目はこれだ」
・キャスター(男)
・ランサー(黒)
・アサシン(赤)
「赤だの黒だの、どっかの外典みたいだな。
赤アサシンと言っても、カメムシ女帝とは違うぞ。
それでは語っていこう」
『キャスター ~饒舌に御伽を紡ぐ童話作家~』
「キャスター……ありすと契約した、もう一人のキャスターだ。
真名はルイス・キャロル。本作のオリジナルサーヴァント。
本名をチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。イギリスに生きた男だ。
数学者であり、論理学者であり、写真家であり、詩人であり、作家。
全世界で聖書とシェイクスピアの次に読まれているという『不思議の国のアリス』の作者として知られている。
……正直、コイツを語るのは俺としては気が引けるのだが。嫌味か何かか。
……ああ、分かった分かった。ギャラははずんで貰うぞ」
ハク「先生、彼はどんな人物なんですか?」
「緑……アーチャーとは違う意味で軽い人物だな。飄々としている。
言葉に重みがない。自身に誇りもない。何ら確たる意思もない。ついでに力もないないない尽くしのサーヴァント。
力がないのは作家系サーヴァントであれば共通だがな。俺たちは戦闘は専門外だ。
だが、言葉に重みを載せないのは珍しい。作家系からしたら異常なほどにな。
これは、ルイス・キャロルの特異な部分だ。彼は即興で物語を紡ぐことに長けている。
その場で物語を紡ぐには、言葉を軽くしないとならない。故に普段の言葉にもそれが現れているんだろう。
極自然に思い描き、完成度の高い世界を創る――それがルイス・キャロルだ」
キャスター「良い批評だ。まったくその通り。アンデルセン、君の人間観察スキルも相当のようだな」
「良い皮肉だ、まったくその通り、と返させてもらおう。
何で俺より売れてる作家の批評を俺がしなければならんのだ。意味が分からん。
さて、その即興詩人たるルイス・キャロルだが、根底、というより存在理由にまで昇華されているのが少女の存在だ。
美しいもの、可愛らしいものをこいつは愛でる。その最たるものだな。
それが風評となり、
サーヴァントであるこいつは、ありすがいない場合、吃音スキルが発動しやすくなるらしい」
キャスター「間違っても、手は出さんがね。YESロリータ、NOタッチとは良く言ったものだよ」
「……頭の螺子が飛んでるのだろうな。憐れなものだ」
『ランサー ~血塗れの串刺平原に立つ護国の鬼将~』
「ランサー。ランルー君なるピエロのサーヴァントだ。
真名はヴラド三世。ルーマニアに名高い串刺公。
傲慢な貴族を粛清し、敵対するトルコの兵二万を串刺しにしたワラキアの守護者だ。
しかし、その苛烈さと厳しさゆえに配下に背かれ、暗殺でその生涯を終える。
悲劇は死後も続く。生前名乗った『
分かりやすい無辜の怪物だな。彼は彼なりに、国を守ろうと尽力した。
それが今となれば、怪物だ。トルコから見れば、こいつは紛れもなく悪魔。その部分が強く現代に反映されたのだろう」
ハク「先生、彼はどんな人物なんですか?」
「凄まじく深い信仰心が精神を侵し、独自の世界を作っている。
自らが信じたもののために動き、自らが信じぬものは排斥する。それがヴラド三世の全てだ。
こいつの価値観は絶対的で、何があろうと揺るがない。
高すぎる信仰の加護によって人格に異変はあれど、根底はこのスキルが無くとも絶対。心の強さは英雄の中でも指折りだろう。
例えば決定的な弱みを突きつけられたとしよう。それでもこいつは微塵たりとも怯まない。
彼が信ずるものに綻びはない。弱みも絶対的であれば、そこに槍を突き立てようが貫けない。
それもまたヴラド三世だ――平然とそう言ってのけるだろうよ」
ヴラド「然り。オレは妻のためにあらゆる障害をも跳ね除けてみせよう」
「……言葉が通じんな。CCC編では若干落ち着いたと聞いていたが。
これはこのヴラド三世の絶対的な世界が不可侵たる故だ。
世界が絶対であれば、他者が踏み込む場所はない。
自身の決定は事実、世界の決定である。領王たるヴラド三世の精神はそう固まっている。
故に、マスターを重んじることを決定したならば、何があろうとも動くことはないという事だ」
ヴラド「ああ、妻よ! オレは全てをそなたに捧げるぞ!」
「……会話が出来んのだが。まあ、これがこいつの長所であるのかもしれんがな」
『アサシン ~生涯全てを拳に懸けた魔拳士~』
「アサシンはユリウス・B・ハーウェイと契約したサーヴァントだな。
真名は李書文。十九世紀から二十世紀に生きた中国の拳法家だ。
八極拳士としては非常に名高く、李氏八極拳の創始者でもある。
二の打ち要らず、一打あれば事足りる。こんな伝説、凡そ史実とは思えんな。
その逸話の仕組みは圏境によるもの。八極の極みたる圏境に至り、天地と一つとなった拳は文字通り、一撃必殺という訳だ。
また、八極拳は六合大槍を学ぶための前段階とされているが――八極を極めた李書文は、槍使いも凄まじかったらしい。
渾名は神槍。契約したのが暗殺に特化したユリウスでなければ、槍を万全に振るえるランサーのクラスで召喚されていただろう。
その末路は毒殺とされている。あまりに多く殺めた魔拳士は、あまりに多くの恨みを買った、という事だろうな」
ハク「先生、彼はどんな人物なんですか?」
「戦いに悦楽を感じ、それを通して殺すことは定めと、殺しにも悦楽を感じている。
決して善人ではないが、かといって悪人でもない。戦いとは即ち殺しと同義。
戦いは気安いものではない。互いの拳を交え、互いの生涯をぶつけ合うものだ。
故に、始めたからにはどちらかが死ぬまで終わらない。一戦するならば、一殺すべし。
非常にさっぱりした英霊と言えるだろうな。戦いに感慨は持たず、一瞬の感覚を全てとする。
勝っても負けても、それは同じだ。たった一つの命を失えば、終わりなのは明白だろう?
その合理を李書文は弁えている。負けたらそれまで。未練は持たない。それが李書文の在り方だ」
アサシン「分かってるではないか。儂と相反の道を往く者ゆえ、期待はしてなかったが」
「そうか。まあ、俺にはお前の生き方はまるで理解できんが。
お前はただ単純に、強さを追い求めた存在だろう。晩年に見出したのは信念の中にある武か。
子供たちを弟子としたのもそれが理由だな。単純な強さは極めつくしたとも言えるだろうが。
ああ、無論この男にも、嫌悪の対象となるものはある。合理性を失ったものだ。
どこまでも合理性を重んじる性格だからな。普通の善悪を差別はしないが、合理の有無こそが李書文にとっての善悪だ。
そう言った面では――まあ、良識人となるか。
ちなみに、暗殺への適性からユリウスとの相性は良い。だが、殺しの価値観がまったく逆だからな。その辺り、話はかみ合わんだろう」
アサシン「呵々、その通りだ。あやつは事務的すぎるからのう。もっと愉しむという事を学ばなければ」
「どこぞの英雄王が愉悦を極める組織を立ち上げていると聞いた。勧めてみたらどうだ?」
「さて、今回はこれで終いだ。如何だっただろうか。
何とか全員分終わりそうな気もするな。面倒だが、オーダーならば仕方ない。
それでは、終わるとしよう」
先生「今までに比べると、大分短いな。二本だとこうなるか。嵐の前の静けさって奴だろうか」
ハク「一体、次章で何があるっていうんだ?」
メルト「嫌な予感しかしないのだけど」
先生「的中すると明言しておこう。作者の筆も良く乗るぞ? 欝展開は大好物だからな」
ハク「それじゃあ、七章章末でまた」
メルト「グッバイアルブレヒト。お付き合いいただき感謝するわ」
先生「ご苦労だったな。季節の変わり目だ。作者は自堕落のあまり体を壊しかけているが、同じ轍を踏むんじゃないぞ」
文句は受け付けます。
しかし書き直しはしません。ごめんなさい。
次回からは七章。
最初からぶっ飛ばしていきます。