あんな人生歩んでてEは無いだろEは。
露骨な誤字でしたっていうか何でEって書いてたのか分かりません。
そんな訳でノート戦後半、どうぞ。後書きに色々書き連ねてます。
開放されたノートの真の宝具。
その真名――『
「まずは、空」
鼓動を刻む鎖は、空へと伸びていく。
空に刺さる。空に巻きつく。空に沈む。
空気そのものが拘束されたかのように、重圧は増していく。
「次に、地」
仄かな光を纏った鎖は、地へと吸い込まれる。
地に刺さる。地に巻きつく。地に沈む。
この大地こそは我のものだと宣言したかのように、踏み締める足場は減っていく。
「
二つを縛らぬ鎖は周囲の空間に溶け込んでいく。
空と地では届かぬ広大な世界を捕え、全てを束ねる。
「これは……」
「っ……」
体が動かない。
魔術回路が完全に停止している。
まるで、周囲の鎖が体にも巻き付いているかのように。
「どうやら、オレたちが動けぬという概念を創り上げているのだろう。ここまで大規模な展開は必要ないだろうに、まだ張れる見栄は残っていたか」
「言ってる場合か! どうにか出来ないの!?」
「難しい。原初の秩序による万象は、オレの力の及ぶところではない」
原初の秩序……それが、あの宝具の正体。
何よりも最初に存在しそれゆえに何よりも上に立てる創造の概念。
「……メルト、動ける?」
「無理、ね。私に組み込まれた女神より遥かに高位。私には干渉しきれないわ」
一体どうすれば。
回路が動いていないことから、術式の使用も不可能だ。
メルトとランサーの魔力消費も一時的に停止している可能性が高いが、このままでは何も出来ない。
それに、この宝具の真髄はただ相手を拘束するだけではないだろう。
「動けまして? 原初の王さえ凌駕する神の泥、鎖に使えばさぞ恐ろしいものになりましょう」
近づいてくるノート。
これでは何も出来ないまま倒されてしまう。
『くっ……此方からの補助は……?』
「無理!
「その通り。では、まずはその槍から――」
ここまでか――そう思った瞬間。
「始まりの神話といえど――少々勝手が過ぎますよ」
「ッ――!」
咄嗟にノートは背後に振り返り、出現させた漆黒の傘を振るった。
黒い斬撃が何かを撃ち落とす――矢。
「……アルジュナ」
迷宮の奥から歩いてくる黄金の英霊。
左手には巨大な弓を持ち、右手には二撃目の矢を備えている。
矢を番え――射。ノートに向けて放たれた矢は再び傘による斬撃で撃ち落される。
「ジナコの迷宮でこれ以上の勝手はさせません」
「何を。迷宮への侵入、その罰は与えなければならないでしょう」
「世界への干渉はジナコへの負担になります。これ以上の暴挙を行うならば、相応の手段で応じますが?」
アルジュナの深い目がノートを射抜く。
「――衛士のサーヴァントを傷つけたくはない。だからこそその弓を奪わずにいる。分かっていますか?」
「さて、どうでしょう。少なくとも、貴女にこの弓を渡す道理などありません」
ジナコのサーヴァントであるアルジュナ。今回はジナコが衛士である以上敵対する存在かと思っていたが……
まさか、僕たちに手を貸してくれるのか……?
「……では、貴方はどうするのですか?」
「貴女が彼らを縛る限り、貴女とは敵対します」
ノートの手に力が込められるのが分かる。
「……ふっ」
そして、鎖を伸ばす左手がアルジュナに向けられた。
対象に選んだ以上、アルジュナもその呪縛からは逃れられない――が、それはあくまで、一度捕えられたらの話。
「――降れ」
「が――――ッ!」
空から落ちる、雷の矢。
それがノートの腕を焼き、伸びる鎖を引き裂いた。
どうやら、束縛の力に秀で過ぎているためか外部からの攻撃には弱かったらしい。
動ける――鎖の呪縛が無くなったと確信し、弾丸を放つ。
「っ!」
瞬間的に動きが止まったノート。そこにメルトが燃え上がる棘を突き刺した。
「くっ……」
鎖を焼き、ノートの力を吸収していく。
瞬間的に出来たチャンス、これを無駄にするわけにはいかない。
「ダンさん!」
『うむ――標的指定』
周囲に刺さる鎖に手を伸ばそうとしていたノートに凛が指を向ける。
これは、ダンさんに渡された術式――
「
「なっ!?」
凛が取っておきと称する術式のうち、一つが解放される。
伸ばした手は鎖には届かず、引き剥がされる。地に開いた黒い大穴に沈み込むように中心にノートは捕らわれた。
強力な拘束術式。重力波にも似た性質でノートをその力諸共中心に引きずり込んでいるのだ。
「こ……この、程度……!」
内部からの膨大な魔力に術式が軋む。
だが、破壊の兆しは見られない。一度捕らわれてしまえば、決して逃がさぬ絶対の術式。
「たった二十秒よ。その間に仕留めるわ、ランサー!」
「心得た」
短く受け答え、ランサーは術式の中心に迫る。
しかし、ノートは凄まじい魔力を放出することでその接近を防いでいる。今まで攻撃に使用していた魔力を、全面的に防御に使用しているのだ。
「駄目ね……下がってランサー!」
『ミス遠坂、まずは魔力の流れを断ちます。術式起動』
「OK!
ラニが起動させた術式を凛が確たるものにする。風が発生し、大いなる蛇の口に吹き込んでいく――
「
四方八方から吹き込む風の中心にいるノートの体が白く染まっていく。
「これは――」
凍っているのか? 魔力の勢いは徐々に失われていき、抵抗が無くなっていく。
やり返したかのように、ノートの魔力の動きは停止した。
これも恐らく、そこまで長い時間持つものではないだろう。だからこそ、凛は次の攻撃を即刻準備しようとしている。
「アルジュナさん……!」
「おやおや。一度鎖の制御を断っただけで、随分と窮地に陥るものですね」
アルジュナは再び矢を番えている。いつでもノートを貫ける。ランサーもメルトも攻撃の準備は万端だ。
「さっさと終わらせるわよ。シラハ!」
『う、うん!』
凛が放った五つの宝石が直列に繋がり、白羽さんから転送された起動術式で魔力を放出し、槍の形をとる。
「
輝く白銀の槍が深淵の口へと走る。
魔力を制限された状態のノートでは防御も出来ない。
刺さった槍は、しかし外傷をつけることなくノートに溶け込み沈んでいった。
「く――ぅああああ――――ッ!」
「内部を乱して再構成する攻撃術式よ。宝具を山ほど体の中に持ってるなら、さぞ暴れまわって苦しいでしょうね」
「っ、ぐ……ぅ」
まだ余力は残っている。ノートは倒れず、限界を迎えたらしい大穴は消滅した。
「これ、で――」
「逃がすと思う?」
だが、ノートの逃亡は叶わない。
大穴の消えた箇所から伸びる拘束具がその腕を捕らえた。
ノートの表情が再び驚愕に戻り、その動きが唐突に停止した。
「
軽く見ただけでも、Aランクを超える束縛術式。
先程までの大穴をも超える術式によって、再びノートは捕らわれていた。
「さて――終わりにしましょうか。攻撃の準備をしておきなさい」
「あ、あぁ……」
凛の言葉にランサーとメルトは黙って頷く。
僕もコードキャストの準備をする。恐らく今から、凛は残る術式――レオに渡したものを使い最後の一手に出るだろう。
ノートを倒すための最後の攻撃――その為か、凛は両手に持てる限りの宝石を取り出す。
「レオ! 最後の術式よ!」
『了解しました。起動――さあ、展開します』
「
凛の前方に巨大な魔法陣が展開される。
それぞれに一つずつの宝石を用いた、計八つの魔法陣。
ノートはそれを見て、その目に僅か、絶望を持たせた。
陣を介して発射される術式の火力の瞬間的な増幅。拘束した相手を攻撃するなら、確かに切り札といえる。
「終わりよ、ノート」
両手の宝石を放る。それは魔法陣に収束されていきただでさえ多量の魔力を更に増幅させていく。
今までのものとは更に桁が違う、凄まじい術式。
「
ただでさえ強力な術式を、この魔法陣によって更に強化する。
これは、生徒会のメンバーに渡された起動術式によるものではない。
それほど高度な術式ではない。ただ多大な魔力を含んだ宝石を数に任せて使用し、通常魔術師では一度に扱いきれない魔力量を限定的に放出する機関だ。
更に陣によって増幅され、まさに規格外の魔力量となっている。
「
「くっ……!」
その体を束縛する拘束具は離れない。
未だに白く染まった体を流れる筈の魔力は止まっている。
そろそろその術式も効果を失くすだろうが、凛はそれよりも先に決着をつけるつもりだ。
「皆、一斉に撃って」
ランサーが、そしてメルトが頷く。
アルジュナも反応は無くとも矢を番える手に更に力を込める。
僕も、出来うる限りを火力を。弾丸を両手に五つずつ展開する。
同時展開――魔力の消費は単発ずつ放つものとは比べ物にならない。だが、ノートを倒す千載一遇の好機。消費を気にしている場合ではない。
「こんな、事で、私が倒れる、とでも……?」
「震えた声で言っても情は沸かないわ。覚悟しなさい」
時は満ちた。
魔力のチャージを終えた魔法陣が呻りを上げる。凄まじい魔力は今、解き放たれんとしている。
限界を超えた魔力。それは解放するだけで破壊の奔流となり、ノートを飲み込むだろう。
凛は決して、それを否定しない。強大な敵を倒すべく、宝具にも等しい術式を放出する――!
「
「
「ジゼル――!」
「
「裁けよ、インドラ」
ランサーの灼熱が。メルトの鋭い斬撃が。合わせて十の弾丸が。ノートの後方から雷の矢が。
凛の解放した膨大な魔力と同時に放たれる。
如何な耐久力を持ったサーヴァントであろうとも、この火力の攻撃に耐え切れるはずがない。
――だが、それは、
「――――素晴、らしい――ですが」
あくまで、“その攻撃力を対象にそのままぶつけられれば”の話だ。
「自惚れが、過ぎますわよ――!」
相応の力で軽減される。或いは――それ以上の何かがあった場合、確実は消え去ることとなる。
「ッ、まさか……!」
黒が、広がっていく。
いくつもの力の中心となり、蹂躙していたであろう一点から滲む黒が、全てを喰らっていく。
それは、無だ。
何事にも例えようのない、純粋な無。
生を与えられず、死すら赦されず、路頭に迷う何かが行き着く境界であり、それでいて何者をも通さぬ絶対の門を持った終末。
悉くを飲み込み、最後に黒は凛の陣から放たれていた凄まじい魔力を飲み干し、担い手の姿を再び見せた。
「――魔力の流れを停止させる術式の時間制限を僅かにでも延ばす、若しくは、私がこれを手に取る前に槍を刺す。どちらかが適っていれば、私は今この場にいなかったでしょう」
傘だ。
悠々と笑うノートが持つ傘から、その黒は放たれていた。
間違いなく、それもノートの宝具。他のサーヴァントのものではない。『
当然、傘の形を取り、ここまでの力を持った宝具など存在しないだろう。恐らくは
「本当ならば、屈辱の味を貴方方にも教えたい。ですが、正直私も長持ちしないのも事実。ですので、猶予を与えます」
ノートは肩で息をしている。
それほどまでに、凛の術式は強力だったのだ。
既に枷も消え、自由の状態となっている。これ以上僕たちは手出し出来ない。
「私がこの傷を癒す間――この階層に限り、リンさんとランサーさんの同行を許可します。精々、囚人同士でその首を奪い合いなさい。そして、突破した暁には、この場の誰かから、命諸共宝具を頂戴します。ゆめ、忘れぬよう」
そのまま広がる黒に飲まれ、ノートは消えた。静かな憎悪に染まった死刑宣告を残して。
嵐は去った。だが、その痕跡は途轍もなく大きなものだった。
「……」
雷の槍で蹂躙され、そして、黒に侵食され
それを鋭くなった眼差しでアルジュナは見ていた。
自らのマスターが衛士となった迷宮を崩されることに、やはり思うところがあるのだろう。
「……ハクト、リン。お二人が迷宮を攻めるのならばご自由に。ですが、ジナコが命じるならば私はお二人と戦います」
「ま、そうなるわよね……でも、ありがと。貴方が来てくれて助かったわ」
そうだ。アルジュナが来なければ、今頃ノートを撃退出来てはいなかった。
勝因に等しい彼が敵となる事に、やはり抵抗があった。
「いえ。私が戦う理由は先程言った通りです。ジナコに危害を加えるのなら、それを殲滅するのが私の任ですから」
最後にアルジュナはランサーを一瞥し、転移した。
今後はジナコが言わぬ限り前には出ないという事か。
だが、確信めいたものがあった。彼とは必ず、敵として戦う事になる、と。
最強の
『
プリヤより。黒い大穴の中心に対象を引き擦り込む術式。
周囲に存在する相手の武器や魔術もまとめて引き寄せる性能がある。
『
オリジナル。対象の魔力の流れを一時的に制限する術式。
『
オリジナル。槍を刺した対象の内部を乱す術式。起源弾とは似て非なるもの。
『
プリヤより。瞬間契約クラスの魔術。強力な束縛術式だがその他特別な効果はない。
『
プリヤより。術式の威力を増幅させる魔法陣。
『
オリジナル。多数の宝石による単純な威力攻撃。本来は広範囲攻撃だが魔法陣で収束させて範囲を狭くしその分威力を上げている。
ノート戦は一応終了。
女神の繰り糸は概念を作り出す宝具。なので鎖といっても天の鎖との比較はできません。
「動けない」という概念を作ってしまえば神縛った天の鎖よりも拘束力は高くなるでしょう。
まぁ外部からの攻撃には弱いんですが。一長一短。
予告はお休みなんで以下は色々と二日ほど前の型月の発表について。
snアニメはUBWだそうで。これは正直意外でした。
また、劇場アニメとしてHFルート。
楽しみではあるんですが、Zeroの続き的に書くと思ってたのでこの2ルートをやるというのが意外。
四次からの続投キャラが誰かしら不遇なルートな気もしますし……AUOェ。
そしてFateルートは無料配信。これを機会に布教してみます。
fakeの文庫化も決定ですね。これは、ようやくエルキドゥの詳細が明かされると期待して良いんですよね?
キャスターのビジュアルも公開され、最恐ライダーもようやく詳細が出る……長かった。
個人的に一番の楽しみはGrand Orderなるオンラインゲー。
今度こそ遂に実装されるんですね。新サーヴァントにも期待。
今年は本当にFateの年だと思います。なのに何故こんなに忙しいのか。
とりあえず、それぞれの始動を楽しみにしつつクソ忙しい期間を乗り越えたいと思います。