Fate/Meltout   作:けっぺん

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け「ドレインってロマンない?」
K「ごめん、わからん」
け「貧乳と巨乳だったら?」
K「巨乳」
け「じゃ、じゃあメルトとリップだったら?」
K「リップ」
け「……」

これでもこの小説の協力者。


十二話『緑の毒』

 

 

 昨日手に入れた情報――イチイの毒について図書室で調べようとして向かったところ、廊下の先から誰かの話し声が聞こえた。

「はじめまして、サー・ダン・ブラックモア。高名な騎士にお目にかかれて光栄です」

「こちらこそ。ハーウェイの次期当主殿にこのような場所でお会いするとは……」

 レオとダンさんの二人だ。

「そう驚くこともないでしょう。僕はただ、我々の手に在るべき物を回収するために来ただけです」

 レオの傍には、相変わらず忠節の騎士が立っていた。

 誰の前であろうと自分の手を明かす辺り、レオの自信が感じ取れる。

「いまだ戦場を知らぬ若輩者ですが、一族で協議したところ適任者は僕でしたので」

 それも、貴方を前にしては恥ずかしい話ですが、と言いつつも、その表情には変化がない。

 そんなレオの言葉に疑問を持ったようだ。

「ふむ、聖杯は貴方の物であると?」

「ええ。あれは我々(ハーウェイ)が管理すべき物です。所有権が空席なら尚更の事」

 人の手に余る奇跡は人の手に渡るべきではない。

 その管理は王の手にあるべきだ。

 それこそがレオの考えだった。

「聖杯戦争という手続きは、聊か面倒ではありますが……」

「――王は人にあらず、超越者であると。成程、貴方ならそれを口にする資格がある」

 ダンさんは目を瞑り、レオの言葉を胸に刻むように一度頷く。

「これはいよいよ聖杯も真実味を帯びてきた。正直なところ、儂は半信半疑でしたが……いやいや、年甲斐もなく楽しくなってきた。まさかこの歳で聖杯探求の栄誉に関われるとは」

「もちろん聖杯は真実です。少なくとも貴方の国にとっては」

 ダンさんの国にとっては?

 どういうことだろうか。

「ほう。それはいかがな理由で?」

 ダンさんも同様の疑問を持ったらしく、レオに問う。

「それは貴方ですよ、サー・ダン。軍属でありながら女王陛下に騎士勲章を賜ったほどの戦士。その貴方を派遣したことが何よりの証に思えます」

「何を仰る若き王よ。儂はこの通り老兵だ。生還の保証のない戦いと知り老い先短い儂に声がかかっただけの話でしょう」

 謙遜をするダンさんにレオは笑みを浮かべたまま言う。

「女王陛下の懐刀である貴方が? 風聞ですが陛下は現在の同盟体制に一言あると聞きましたが?」

「さて、女王の意向は分かりかねますな。所詮は一人の軍人に過ぎませんので」

「――あぁ、なるほど。これは失礼しました。では僕はこれで。行きますよ、ガウェイン」

 レオは真名を隠すことなく、当然の様に呟く。

 それに御意、と短く応えた騎士は此方に歩んでくるレオの後ろにつく。

 レオと目が合うと、彼は足を止めた。

「お久しぶりですね、シドウさん」

「あぁ、うん。久しぶり」

 そういえば、レオと会うのは二回戦が始まって初だ。

「次は二回戦ですね。どうかお気を付けて、と言いたいところですが……」

 何か含みのある声で、レオは言葉を止める。

「……何?」

「どうなんでしょうね。黒騎士の槍は折れている。いえ、槍を剣に持ち替えたのでしょうか」

 意図の分からない言葉に、聞き返そうとするも、

「もし彼の信念が以前と違うものなら或いは、貴方にも勝機はあるのかもしれません」

 それだけ言って、レオは去っていってしまった。

 気がつくと、ダンさんの姿もそこにはなかった。

 何を話していたのか、結局分からなかった。

 ただ、一つだけ分かったのは、彼ら二人とも、僕の様に曖昧ではなく、本気で聖杯を手にしようとしている。

 未だ仮の願いすら決まっていない僕と違い、確たる願いを芯として戦っている。

 彼らが命がけで欲する聖杯。

 曖昧なままそれに辿り着いたとしても、きっと僕には後悔しか残らない。

 本気で挑まなければ勝ち目がないという事をはっきりと自覚し、今まで以上に真剣になる必要があった。

 

 

 図書室でとりあえず片っ端から植物図鑑を引っ張り出して調べてみると、イチイについてはすぐに見つかった。

 他の情報収集に来たであろうマスター達に「何で植物図鑑なんか」という顔をされた。

 まぁ、それはそうだ。

 英雄の文書を探しに来たならまだしも、植物図鑑なんて聖杯戦争に関係ないと思うのが普通だろう。

 しかし、今回の相手はこの情報こそが正体に繋がるかもしれないのだ。

『イチイの毒について。

 イチイ、別名アララギ。

 イチイ科イチイ属の植物。

 果実は甘いが種は苦く、含まれているアルカロイドの一種タキシンは有毒。

 種を誤って飲み込むと呼吸困難で死に至る場合がある。』

 この説明から考えるに、あの毒はイチイの種を基にして作ったものだろうか。

 残念ながら、これはそこまで有益な情報にならなかった。

 ラニの頼みもあるし、今日はアリーナに向かいダンさんに関わる物を探しに行くとしよう。

 

 

 そしてアリーナに入り、昨日結界の基点である木があった場所に行ってみると、そこに何かが落ちていた。

「これは……?」

「鏃ね。矢の先端に付ける物よ」

 間違いない、あのサーヴァントの落し物に違いないだろう。

 これならばダンさんの星を詠む事にも使えるかもしれない。

 ただ、これだけでは多分不完全だ。

 ラニに正確な情報を貰うためにも、もう少し何か無いか探してみよう。

 エネミーを倒しながら先に進む。

「そういえば、メルト」

「何かしら?」

 ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

「ライダーを倒したときの攻撃、あれって使えるのか?」

「えぇ、勿論。ハクの成長で元の力を一つ取り戻したみたいね」

 メルトはあの攻撃について説明してくれた。

 ――踵の名は魔剣ジゼル。

 どうやら本来は敵に止めを刺す事は出来ず、簡単に言えば相手の力を一定量削る攻撃だったらしい。

 しかしライダーを倒せたという事は、効果が変化しているという事なのだろうか。

「この辺りは私も良く分からないわ。まぁ、いざというときに使うのなら適役な攻撃よ」

 確かに、あの攻撃の威力は目を見張るものがあった。

 明らかに普段のメルトの攻撃よりも高い攻撃力を持っていた。

 ただ、隙が大きい以上使いどころを誤らないようにしないと。

 と、考えながら探索していると、脚に何かが触れた。

「ん? これ、何だろう?」

 燻した一本の細長い棒。

 折れてはいるが、矢の一部だろうか。

 これもあのサーヴァントの物だとしたら、鏃に棒、後は羽根があれば一本の矢が出来上がる。

 落し物とすれば、聊か出来すぎているものではあるが、羽根がある可能性も高い。

 そう思い、さらに探索を続けていると、通路の行き止まりに本当に在った。

 矢に使う風切羽根だ。

 これで一本の矢が出来上がった。

 ラニに渡す物に関してはこれで十分だろう。

 その後、トリガーを入手して、その日の探索を終える。

 とりあえず、今日のところはいいだろう。

 ひとまず休んで、明日ラニに見せに行こう。

 今回見つけた矢は重要なヒントだろう。

 単純に考えるなら、あのサーヴァントのクラスは弓兵、アーチャーという事になる。

 それを決定付けることが出来るかもと期待しつつ、眠りについた。

 

 

 猶予期間の三日目を向かえた朝、ラニに矢を渡しに行こうと個室を出ようとすると、メルトが声を掛けてきた。

「ハク、気をつけて。何か嫌な気配がする。校内を歩くのなら十分用心して」

「え?」

 メルトの直感だろうか。

 校舎内では危険はないと思うが、彼女が言うなら注意したほうがいいだろう。

 個室を出ると、嫌な気配は僕でも感じ取れる程になった。

 いつもに比べ、静か過ぎる。

 マスター達が一斉に居なくなったような人気の無さ。

 そして、此方に向けて突きつけられる明確な殺気。

 階段の前まで来ると、明らかにそれは背後から此方を狙っている、と確信できた。

「振り向かないでハク、振り向けば、踏み込まれるわ」

「っ……!」

 あのサーヴァントに狙われている。

 やはり彼の独断だとは思うが、まさか校舎内で仕留める気なのだろうか。

 今居るのは二階。

 一階か三階、どちらに逃げるかと考えれば、三階に逃げるのは論外だ。

 一階、アリーナに向けて逃げるのが最善だろう。

 それをメルトに静かに伝えると、一度だけ頷く。

「呼吸を小さくして。気取られないように。息を合わせて……」

 1、2、3――!

「今よ!」

 メルトの合図で走り出す。

 全速力で階段を降り、アリーナに向かう。

 そのままアリーナの扉を開き、そこに飛び込んだ。

「っ、はぁ……はぁ……! これで、もう……」

「油断しないで、ハク。この殺気、まだこっちに狙いを定めてる」

「なっ!?」

 まさか独断でアリーナにまで入ってくるなんて。

「もう少し走るわよ。いける?」

「……大丈夫!」

「頑張って、迎撃が出来る広場で迎え撃ちましょう!」

 更に走る。

 二階からアリーナに来るまでよりも遥かに長い距離。

 狙われているという恐怖も相まって、疲れが出てくるのが早い。

 途中で何度も倒れそうになりながら、何とか広場についた。

 いつしか殺気も消えていた。

 逃げ切れた、のか?

「予想通りだな。分かりやすいマスターで助かったぜ」

「っ!!」

「ハク、上!」

 目に映ったサーヴァントが、何か行動を起こし――

「はっ!」

 メルトがそれを蹴りで弾いた。

 だが……

「死角から狙ってくるなんて、徹底してるわね、アーチャー」

「おぉ、お見事お見事。オレの一撃止めるだけじゃなく、クラスまで見抜くなんてな。だがちょっと甘いぜ?」

「っ、ハク!?」

 ――鈍痛。

 腕に走る微かな傷。

 傍に落ちている矢を見て確信する。

「――二つ矢……」

 一回の攻撃行動で、二本の矢を放つ技術。

 彼の弁から見ても、敵のクラスはアーチャーに間違いない。

 だが、そんな事を考えている間にも、意識が遠のいていく。

「毒……ハク、気をしっかり!」

 メルトの声で、絶たれそうになる意識を振り絞る。

 だが、身体を蝕む意識が行動を阻害する。

 毒が回りきる前に一度学園に戻り、解毒しなければ――

「っ…………」

 口が動かない。

 足に力が入らなくなり、倒れそうになるが、腰に手が回される。

「ハク、頑張って、戻るわよ……!」

 遠のく意識に鞭打ち、精一杯の力で走る。

 途中、何度かメルトが矢を弾く音が聞こえた。

「その内、呼吸も出来なくなるさ」

 サーヴァント――アーチャーの言葉が、一層焦らせる。

「ハク、焦らないで。心を落ち着けて……」

「チッ……しぶといなアンタ」

 メルトの言葉で落ち着きを取り戻し、必死で走る。

 そして、遂にアリーナの入り口が見えてきた。

「……ヤロウ、辿り着きやがった」

 アーチャーの言葉を気にかける事など出来なかった。

 最早意識を保つだけで精一杯で、メルトに引き摺られているようなものだった。

 最後の一歩を踏み出し、アリーナの外に出る。

「ハク、大丈夫!?」

「……保健、室」

 震える口で、必死に言葉を紡ぐ。

 保健室ならば毒の治療も可能だろう。

 メルトに伝えると、力強く頷き、僕を抱えた。




次回予告的な何か。
け「白衣って良くね?」
K「それは分かるわ」
け「じゃあこんなネタどうよ?」つプロット
K「おk、やろう」

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