Fate/Meltout   作:けっぺん

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け「ジークフリート」
友「体力タイプ三倍」
け「クーフーリン」
友「バランスタイプ三倍」
け「……出典」
友「勇 者 降 臨」

皆! 神話を学ぼうZE!
そんな訳で今回の茶番は長めです。どうぞ。


Rani=Ⅷ.

 

 

 一体何が起きたのか。

 バーサーカーの咆哮が明確に変化し、それにラニは不測の事態に慌てている。

「■■■■■■■■■■■■!!」

「バーサーカー!」

「メルト、何が起きてるんだ?」

「さあ? ラニがバーサーカーの制御でも失敗したんじゃないの?」

 バーサーカーの制御を……?

 そもそもラニは現在、バーサーカーとの契約を断っている。

 ラニの事だ。それを考慮し、利便性と効率を重視した完璧な制御を行っている筈だが……

 ――利便性と、効率。

 普段のバーサーカーとは変異している部分があるのだとしたら、その制御術式は意味を成さなくなるのではないか。

「きょ、狂化A+……!? 何故そんな――」

 A+ランク。理性を奪うバーサーカーのクラススキルがそこまでの高ランクで……?

「ちょ、ラニ……? 大丈夫なんでしょうね!?」

「くっ……落ち着きなさいバーサーカー。A+ランクの狂化を抑えるプログラムなんて……!」

 フランのスキル、虚ろなる生者の嘆き。

 常人を恐慌へと誘う狂気の叫びに宿る、他者の狂気を誘発する力。

「フラン、もしかして……」

「……ヤァァ……」

 或いはディーバの宝具とぶつかりあって効果が変貌したのか。

 恐慌の叫びを聞いたバーサーカーは狂化のランクを一時的に上昇させているのだ。

 だとすれば、これはチャンスか。

 どうやらラニを襲う雰囲気は無いようだが、此方に襲ってきても不思議ではない。この状態であってもバーサーカーはラニの味方に違いないからだ。

 ――だが、果たしてディーバをバーサーカーは味方と認めているだろうか。

 もし、主を狂わせた張本人だと、狂える理性でも感じているのだとしたら。

「……やってみるしかないか」

「ハク、何か策が?」

「うん。メルト、フラン。二人でディーバの足止めを。きっと、決着を付けられる」

 不確定事項だが、バーサーカーが真にラニを思っているのであれば、きっと成功する。

「……信じるわよ」

「うん」

「ゥゥ……!」

「協力なんて嫌だけど……邪魔はしないでよね!」

「ゥゥァアア!」

「なっ……!」

 突然の襲撃にディーバは咄嗟に対応する。

 しかし、既に片方腕を切り裂かれている以上動きは鈍り、槍の冴えも落ちている。

「ディーバ……! くっ……!」

 ラニは連続する不測の事態に対応しようとし、しかしホムンクルスゆえの完璧な計算を求める性からか頭を抑えている。

 ディーバの足止めは出来ている。後はバーサーカーを信じるだけだ。

「バーサーカー!」

「■■■■■■■■!!」

 相対した偉丈夫の凄まじい殺気に気圧される。だが、今は僕の考えを伝えるしかない。

「ラニを助けたい! ディーバの打倒に協力してくれ!」

「なっ……! ハクトさん、何を!?」

 左手に宿った純白の令呪に魔力を込める。

 極僅かな時間のみの本来ありえない奇跡を可能とする光。ただしそれは、バーサーカー本人が了承した場合のみしか効果はなさない。即ち、本来の契約とは異なるサーヴァントとの擬似的な契約。

「白紙の令呪を捧げる! バーサーカー、ここに瞬間の契約を望む!」

「ッ――――――!」

 バーサーカーの言葉は分からない。たった一つだけ分かる事は、

「ディーバを倒してくれ!」

「■■■■■■――――――――ッ!!」

 賭けに勝利したことだった。

「バーサーカーの契約が……」

 令呪の魔力がバーサーカーに流れていく。狂化のランクは未だ高いままだ。消費する魔力も相当で、すぐに使いきってしまうだろう。

 だったらそれだけの魔力でバーサーカーは標的を粉砕しようとする筈だ。命令は行っていない。バーサーカーに全て任せた上で彼の一撃に託す。

「――軍神五兵(ゴッド・フォース)

 驚愕に目を見開いたラニの呟きは、宝具の真名だろうか。

 弓へと変形した長柄の武器は、ただ一点。メルトとフランが交戦するディーバへと向けられている。

「メルト、フラン! 離れろ!」

「ッ」

「――!」

「■■■■■■■■――――――――――ッッ!!」

 放たれた圧倒的な砲撃は戦場を打ち砕きながら真っ直ぐ標的へと奔っていく。

「え――――っ、は――」

 乾坤必中。全てを飲み込むような凄まじい衝撃を伴うバーサーカーの一撃はディーバの心臓を的確に奪い去った。

 左半身を飲まれそこを中心とし、爆発するように黒いノイズが広がる。

 それは紛れも無く、聖杯戦争の敗者に訪れる死の宣告。

 今度こそ、ディーバというサーヴァントを打ち倒したのだ。

「か、は……くっ……ぁ!」

 ようやく何が起きたかを悟ったらしいディーバは、それでも尚唇を噛み締め、血走った眼でこちらを睨む。

 華奢な体では到底考えられない、強烈なプライドが崩壊寸前の肉体を支えているのだ。

「…………ま、だ……よ。私は、痛みなんかに屈しない……!」

「諦めなさい。勝負はついたわ、エリザベート」

「っ、覚えてなさい……私は不滅で、永遠な、至高のアイドル……絶対に、復活して……貴方達を……地獄へ……!」

 呪詛は紡ぎ終わることなく、竜の娘は消滅した。

 ラニを利用し血液を搾取した謎のサーヴァントは、同じ主に忠誠を誓った狂戦士によって倒れた。

 濃厚な血の匂いを残して。

「……ふん」

 その跡を暫く眺めていたメルトだったが、やがて此方に近づいてくる。

 あぁ、そうだ――ディーバを倒してもまだ解決はしていない。

 ラニを解放する上で、後一つだけしなくてはいけない事が残っているのだ。

「……バーサーカーの契約を奪ったところで、私の勝利は揺らぎません」

 ラニの意思に呼応するように、視界が黒く飲み込まれていく。

衛士(センチネル)を破る方法はただ一つ。もうご存知でしょう」

「……あぁ」

 更に奥の、心の最深層へ。

 蝕まれていく思考の中で、やはり最後に見たものは笑みを浮かべたメルトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おはようございます。私の分身を蹂躙し、ついにここまで来たのですね」

 ラニの本体が現れた。後は彼女を、心で打ち負かすしかない。

 だが、既に勝機は見えている。“その道”のエキスパートをラニが引きこんだ時点で勝敗は決しているのだ。

 メルトは暫く此方に任せると目で伝えてきた。多分最後しか動くつもりはないだろう。

「しかし、本体である私を倒す事は不可能です。私には不合理な感情も、隠さなくてはいけないような嗜好もありませんから」

「……本当にそうなのかな」

「当然です。私はアトラス院のホムンクルス。完全な人間としてデザインされました。貴方はここでは無力です」

 確かにラニは凛とは違って寡黙な人物だ。

 そこに付け入る隙は一見ないようにも思えるが。

「自律系オールグリーン。私の内面に改めるべきエラーはありません」

 自らの状態を確かめるようにラニは言う。これ自体、ラニのSGの一端ともいえるのだ。

「バグがあるとしたらそれは貴方。バグはこのまま潰します。そう――ぷちっと。ぷにっと。ぽろっと。むにゅっと。優しく、触れてくれれば……」

 やはり、ラニの言葉にはどこか弱さがある。凛とは逆の、招き入れるような脆さ。

 ラニに異常がないというのは正しい。SGは元々持っているものだ。既にあるものが異物な訳がない。

 “早く直して楽になりたい”。その“直す”こそラニのSGだ。

 ラニはSGを恥だとは思っていない。恐らく、師によって作られたからこそ完璧だという価値観の下だろう。

「私に従ってください、ハクトさん。合理的に優れたホムンクルスの思考ルーチンによって管理される事こそ、人類の益になるでしょう」

「合理的に優れた、か。なら何故、さっきの戦いに負けたんだ?」

「力の話ではありません。知性が貴方より優れているから――」

「敗北はサーヴァントの運用の問題だ。それは知性で劣っていた事になるだろう」

「ち、違うのです。何故この構造的美しさが分からないのですか!?」

 構造的な美しさ。全ての民が統一された価値観の下で生きる世界。

 全てをマザー・コンピューターでありビッグ・ブラザーが支配する世界。

 それが正当だとラニは言っているのだろう。

 だがそれは、

「その根底にあるのがラニのSG、管理願望だ」

「っ……違います。間違いを訂正してください。私は並列思考による多元的な客観を元に合理的判断を下しているだけです……」

 間違いを訂正してほしい、か。

 確かにそれは大切だ。非を認める事は精神の成長に繋がる。

 では、訂正しよう。

「じゃあ、ラニは自分の思った通りに物事が運ばれるのが好きなんだね」

「な……再度、訂正を要求します。まるで私が幼稚で独善的みたいではないですか」

 反感を示すラニ。とりあえずはそれに耳を傾ける。

「貴方の意見は主観によっています。人間は偏った嗜好に振り回され争いが絶える事はありません。その点、私は何があろうと冷静です。私の思考を選択すれば無用の争いは――」

 ……冷静、か。

 では一つだけ試してみよう。手をあげてラニに告白する。

「実は僕、戦闘中ずっと“はいてない”状態だったんだ」

「っ……!?」

「……! ……はぁ、素晴らしい、解放的な姿勢ですね……私も、はいてませ」

「まぁ嘘だけど。今のラニは偏った嗜好が発露しているよ」

「っ、貴方が合理性に対して理解を示してくれた事を評価しているだけです!」

「それは合理性じゃない。結局、ラニは露出(それ)が好きなんだ」

「……!」

 露出癖。それを突きつけると、ラニはへたり込んだ。

「……すごい、心だけじゃなく……礼装(ドレス)まで剥がれていくよう……再度、訂正を要求します」

 まだラニは敵意を見せている。だが、此方も最後のSGは残っている。

「私のライフスタイルは、断じて嗜好などではなく、気持ちいいから……快適さに基づいた合理性です」

 自分は人間より優れている。

 よって自分が快適だと感じるものこそ正しい。

 ラニはそう言いたいのだろう。

「私の考えを証明します。今度こそ証明しますから……ゲームをしましょう、ハクトさん」

「……勝負?」

「チェスでも将棋でもお好きなものを。頭脳戦こそ私のステージ。思うままに、翻弄して差し上げます」

 頷く訳にはいかない。

 偶然性のないゲームではラニには勝てない。

 ゲームを始めてしまえばラニの心から出られなくなってしまう。

「さあ……早く。理性的な行為で、体を冷まさないと……熱暴走してしまいます」

 もう十分暴走しているのだが。

「ラニ。君にとってのゲームは互いの能力を測り過程を楽しむものじゃない」

「っ、それは……」

「自分が勝ったという結果が欲しいだけ。ジナコに最強厨って言われるのは当然だよ」

「は、あぁぁあああ……!」

 これでラニに三つのSGを指摘した。

 負けを認めてくれれば良いのだが、そうラニも甘くない。

「やはり、人間は野蛮です。相手の欠点を論い、無遠慮に追い詰めていく。やはり、こんな生き物は私が管理するべきです」

 虚空を見上げ、胸に手を当て、ラニは言う。

「師よ、私は遂に第三の目を開眼しました。人間はもっともっと身軽になるべきです。人類の命運は人類が背負うには重過ぎます。ですので――」

 

 ――人類全てを、私が脱がす。人々からあらゆる虚飾服飾を取り上げ、裸の王国を作るのです……!

 

「……」

「……」

 とんでもない結論が出てしまった。

 しかし、これがラニの心に巣食った病巣、BBの洗脳部分に違いない。

 人類の管理。結構だ。だが、ラニも“人類”には変わりない。

 まずはその過ちから糾す。メルトは若干放心気味なようだし、今回も僕から始めるしかない。

「この――――脱装飾救世主義者(のーぱんメサイアコンプレックス)め!」

「きゃぁあああぁああ!」

「!? ――ハク、貴方何を!? 貴方をそんな風に育てた覚えはないわよ!?」

 育てられた覚えもないが。何故メルトから責められなければならないのだろうか。

「さいあく、さいあくです! 貴方の表現には品位の欠片もありません!」

 ラニに対しても中々の衝撃を与えられたようだ。此方は効果的だったか。

 ともかく、今のは事実だ。ラニとて万能ではない。人類の命運なんて、それこそ一個人には重すぎる。

「ラニだってマスターの一人だ。願望の為に月にきた時点で自分が万能じゃないことを認めているんじゃないか?」

「……その帰結は、間違っていません――あぁ、表面温度が冷めていきます……悔しい? そんな事はありえない。私にそんな無意味な感情なんて……!」

「悔しさは無意味な感情じゃない。成長にも反省にも繋がる心だ」

 自らを機械的だというラニだがそれはあくまで“的”なだけだ。

 ラニは機械ではなく人間。たとえホムンクルスだとしても、その在り方は人間なのだ。

「ラニ、もっと自分を好きになっていいんだ」

「私に……好悪の感情はありません! そんな不合理な感情……!」

「自分自身を見つめるんだ、ラニ!」

「……自分、自身を……」

 何故だろう。メルトが唖然としていて動かない。

「……どうして。今まで、何とも思わなかったのに。なんだか、恥ずかしくて、胸が高鳴って、すーすーしちゃい、ます……」

 恍惚とした表情のラニ。恐らく後一歩だろう。

「もしかして、これが好きという事……? いえ、それは、許されません。私は巨人の蔵(アトラス)の最後のホムンクルス――個人の感情によるなんて、ただの失敗作です」

 ただ自分にだけに言い聞かせるように、ラニは独りごちる。

「師よ、何故こんな風に私を作ったのですか? 単純な機械のように作られていれば、こんな矛盾に苦しまないのに……」

「――そんなラニが、好きだからだよ」

 空間の闇が晴れていく。

 罅の入るような音と共に全てが解放されていく。

「――好き。好き……好き……」

 視界が暗転し、外へと弾き出される感覚に支配される。

 二文字を反芻するように繰り返すラニに、もう敵意はなかった。

「これが、好きという事……好きって、気持ち良い。私の、私だけの――秘密――!」

 ようやく終わった。結局メルトは今回何もしていないが、不調だろうか。

 だとしてもこれで解決だ。後はBBを捕えるだけ。それが敵うかは分からないが、力の限り取り組むしかない。

 考えを纏め、暫し感覚に浸る。僅かな共同戦線も、じき終わりを告げる――

 

 

 戻ってきた迷宮。そこには未だキアラさんが待っていた。

『ハクトさん、お疲れ様でした。ラニも無事なようですね』

 レオの通信は安堵が含まれていた。確かに、これで不測の事態は終わりを告げるのだ。

「お帰りなさいませ。鮮やかな調伏でした」

「戻ったか。これで俺の役目も終わりな訳だな」

「殺生院 キアラ……旧校舎に逃げ延びたマスターの一人ですね」

「はい。初めまして、ラニさん。悪夢はじき終わりですが、最後に知り合う事が出来ましたね」

 どうやらラニとキアラさんは初対面か。

「では戻るぞ。後はこいつらに任せておけキアラ。俺は俺で仕事がある。役に立たないというのに何度も迷宮に連れ出すな」

「もう……サーヴァントとしての責務くらい上辺だけでも務めなさい。ではハクトさん、私は旧校舎に戻りますので。健闘をお祈りしていますね」

「はい」

 キアラさんとアンデルセンは旧校舎に転移していく。

「フラン、君も一旦戻ってくれ。周囲の魔力を吸収する宝具を持ってても連戦は厳しいと思う」

「……ゥゥ」

 一度頷くと、フランも同じように転移していった。

 残るはラニと、仮の契約も切れ自由となったバーサーカー。狂化の暴走も戻り、Aランク相当になっている。

「……ラニ。バーサーカーを」

「はい……バーサーカー、もう一度契約を。私の勝手につき合わせましたね」

「……――」

 小さな唸り声。だがそれは敵意を持ったものではなく、温かな肯定に満ちている。

 令呪が光る。新たな契約の証。バーサーカーはついに主の正式なサーヴァントに戻ったのだ。

「じゃあラニも旧校舎へ――」

 

「――こんにちは、センパイ。健闘お疲れ様です」

 

 瞬間、僕とメルトは転移していた。

 光の柱が立ち上る暗い空間。ここは――迷宮の終着点?

「っ、BB。どういうつもり?」

「いつまで経っても来ないから招待してあげたんです。そんな状態でエリザベートを倒したご褒美ですよ」

 微笑むBB。その表情は、あまりにも余裕で満ちている。

 ――通信は切れている。レオ達はこの状況を把握できているのだろうか。

「逆境に立ち向かう生粋の主人公体質……本当に、鬱陶しいです」

「ッハク!」

 認識できないほどの速度で迫ってきた何かを、メルトの脚具が打ち払う。

「え――」

 鞭のように細く鋭い何かによる攻撃。それは違わず頭を狙ってきた。

 続けて迫る、二つの斬撃。メルトはギリギリ、それにも対処した。

「反応は上々。腐ってもエゴの一人ですか」

「良いんじゃないの? 手に入れるならこうじゃなくちゃ」

 二人……いや、二体。

 そしてその後方に現れる更に二体。うち一方は見覚えがあった。

 宙に浮かぶ単眼は、それらと同じ“何か”に該当する存在。計五体の圧倒的存在がそこにいた。




メルト仕事しろ。

最後の二つの声の内、後者は最後のオリキャラ。
個人的に必要と感じた属性を保管しただけです←

↓この予告より下は茶番なんですぞ予告↓
「ごめんなさい。ミス遠坂とは違い、私は障害にしかなれないようです」


zeroの母の日の乱を思い出してわざとらしく日にち調整した茶番。
案の定EXTRA編終了後のお話。
ただし茶番劇場発動中のためカオスにつき。

メルト「今日は母の日……とは言っても特にする事はないわね。BBいないし」
ハク「僕もNPCもムーンセルに作られた存在だし母親として設定されたものなんていないな」
メルト「そもそも母の日って何すればいいのよ。よくわからないわ」
ハク「感謝を表す日、らしいけど」
メルト「感謝、ねえ……私とBBは普通の親子の関係じゃないし……とりあえず、聞いてみましょうか」
ハク「何を?」
メルト「母親ってものの価値観かしら。とりあえずサーヴァントを召喚してみましょう」
ハク「サーヴァントに普通の母親を持った人なんているのかな……」
メルト「聞いてみない事には変わりないわ。さあ、来なさいサーヴァント達」

「チッ……いきなり呼んで何を聞き出すかと思えば。これはアレか? 復讐なのか? 生憎だが大して応えんし質問にも答えんぞ。マッチ売りの少女でも読んでおけ」
「そなたは余の頭痛の種にしかならぬのか? ……複雑なものよ。母がいなければ余はおらず、奏者にも会えなかった。という訳でメルトリリスよ、どこの並行世界か知らぬがさっさと元の時空へ返すが良い」
「母、か……確かに恨むべきが当然だろうが、オレは感謝している。鎧を与え、生を与えてくれた。それだけで十分だ」
「聞くんじゃねえよ。つーか誰だよ。何で似ても似つかねえ父上の人形が飾ってあんだよ」
「おかあさん、どこにいるの? おかあさん。おかあさん。おかあさん……」
(ナミ)ですか? そんなに覚えてませんし、特に思う事もありませんねぇ。っていうか、さっさとこのスイーツ空間から解放してください。嫉妬の化身、タマモジェラシーを倒しに行く最中なんですから」

ハク「メルト」
メルト「どうしたの?」
ハク「わざとやってるでしょ」
メルト「ふふふ、なんの事かしら」
ハク「まっとうな母親に対する意見が返ってくるサーヴァントが一人もいないんだけど。五人は見たこともないんだけど」
メルト「安心しなさい。私も二人見たことないわ」
ハク「じゃあ何で呼んだの!?」
メルト「母親が伝説に強く関わってる英霊で検索したら出てきたから」
ハク「はぁ……皆、混乱させてごめん。今すぐ座、もしくは元の時空に返すよ」
嫁王「まったく……まさかそなたがここまで幸福になる世界があるとはな。もう奏者は良いのか?」
メルト「その節はどうも。白野はもう顔すら覚えてないし、今となってはどうでもいいわよ」
キャス狐「ご主人様をどうでもいい扱いされるのは癪ですが……そちらのお方も中々のイケ魂……チッ、不相応な優良物件じゃねーですか」
メルト「あげないわよ?」
キャス狐「私はご主人様一筋です! にしても、広大な庭園つきのお屋敷ですねぇ……一応先人からの助言ですけど、贅沢は破滅を招きますよ?」
嫁王「うむ、どこの誰だか存じぬが同意だ。皇帝特権バリバリの余が言っても説得力が無いがな」
メルト「問題ないわよ。貴女たち以上には上手くやれているわ」
嫁王「む……? 聞き捨てならんな。余と奏者の蜜月ほど甘いものなど存在せぬ。昨晩など正に星を馳せるが如く二人の情熱をだな(ry」
キャス狐「うふふ、私とご主人様の幸せ四畳半生活こそ一番に決まってるじゃないですか。ご主人様のお気に入りはこの尻尾とお札を使った(ry」
メルト「ただの熱々とかコスプレプレイとか今時古いのよ。知ってる? このムーンセルの機能で性転換とか感度調節(ry」

ハク「……あー、収集つかなくなってきた」
アンデルセン「界隈でも型月は厄介か。淫蕩皇帝と淫乱狐のマスターが同一人物だというのにあの二人は特にいざこざが起きないな。つまらん」
ハク「火事とかそういうレベルじゃない事態になりそうだから良かったよ……」
カルナ「それにしても、お前たちは輝ける王まで打ち破ったのか。どんな選択をしたにせよ、お前たちが幸福であるのならばオレは祝福しよう」
ハク「う、うん。ありがとう」
モード「良く分かんねえけどさ。関係を間違えんなよ? 血迷いが原因で国が滅びるなんざ良くある事だ」
ハク「あぁ……気をつける」
ジャック「おかあさん。おかあさん。おかあさん。おかあさん。おかあさん。おかあさん。おかあさん。おかあさん。おかあさん」
ハク「なんかヤバイ……! 全サーヴァント強制送還!」

嫁王「時々甘えてくる奏者がまた愛いのだ! しかしそれでも奏者のパルナッソス山は衰える事なく余のマリネリスの谷に――」
キャス狐「そんなの序の口です! 私なんかちょっと夕餉に呪術を込めてみたら! 狙い通り××で××な夜に――」
メルト「晩御飯に術……! さ、さすがは経験豊富な狐……これは試してみるしか――あ、消えた」
ハク「ちょっと待って。今なんの話してたの?」
メルト「なんでもないわ。うん。今晩は楽しみね」
ハク「本当になんの話!?」
メルト「さてと。結局母親の価値観とはズレた話をしちゃったわね」
ハク「ちょ、答えてよ! 割とシャレにならない気がするから!」
メルト「まあとりあえず、空にBBでも投影させてスティンガーでもぶっ放せば良いわね」
ハク「いや駄目だよ!?」
メルト「貴女は私の――本当の家族よ。癪だけど」
ハク「ストップ! ストップ!!」

BB『何考えてんですか!? この恩知らず!』


**
今だ、撃てーっ!
母の日はスティンガー撃たなきゃいけないと思うんです。
そんな訳で謎茶番でした。友情出演のモードさんお疲れ様です。

あ、どんな話してたかはご想像にお任せします。

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