昼寝なども避け、夜十一時~一時頃の強烈な眠気に耐えれば一周回って目が冴え、妙なハイテンションになります。
その状態だといつもより三割くらい執筆速度が上がり、朝起きるとアレなシーンは完成しています。
筆が乗る(?)ピークは二時くらい。通常時だとピークは十時から一時間くらいですが、夜更かしモードだと最大明け方まで続きます。
ただし反動は大きいので翌日が休みじゃないと使えません。
ここまで書いてて何となく感じましたが、夜更かしって危険な薬みたいですよね。
今回はそんなテンションで書いたお仕置きタイムです。どうぞ。
気付けば、世界は一変していた。
現実感のない空間は、未だに暗闇の中のようで居心地が悪い。
出る手段など無さそうだが、空間自体は僕を追い出そうと圧力を与える。
――恐らく、これは凛の彫像の内部。心の中から出さんがために閉じ込めたのだ。
「ふぅん……まさか入れるとは思わなかったけど。誰の心も変わらないわね」
「……メルト」
メルトも同じく閉じ込められたらしい。しかし一切の動揺もみられない辺り、この事態を予想していたのだろうか。
対する僕も動揺しているかと問われれば、そうでもない。
「あら――落ち着いているじゃない。出る手段の無い密室だってのに」
現れた凛は勝ち誇ったような、不敵な笑みを浮かべている。
「ま、密室ってより牢獄ね。ここは私の心。貴方たちは一生閉じ込められるのよ。私を殺しても出ることなんてできないわ」
心の深層に存在する凛の中心。
淀みの凝り固まった、
「……パニクらないの? もう誰も助けに来られないのよ? 出口もないのよ?」
なぜ落ち着いていられるか。
確かにこの状態なら、絶句するなり叫ぶなりするのが普通なのだろう。
しかし、ここが凛の心の中であるのなら――
「そう。出る方法はただ一つ。貴女を言葉で打ち負かせば良いのよね、リン?」
言い方はどうかと思うが、メルトの言うとおりだ。
「なっ!? 打ち負かすって、私を!? 私に捕まったくせに!?」
「……凛がやったことは許せない。だから――」
「体罰よリン。貴女は逃げられない。ハクだけじゃなく私をここに閉じ込めたこと、後悔しなさい」
台無しだ。確かに凛がやったこと――二階の件と、僕を捕える前にNPCを拷問したこと。
あれが僕を助けるためだったとは言え、それ以前のことは咎めなければならない。
その二点について言及するつもりだったのだが、メルトはどうやらそれで済ますつもりはないらしい。
「の、望むところよ! 貴方たちなんかに負けないんだから! 何を言われても、否定してやるわ!」
何故かまた戦いが始まろうとしている。
「えっと……メルト、どうすれば?」
「まぁ、いつか私がいない状況があるかもしれないから、良く見ておきなさい。それと、意思だけはしっかり持って。契約で繋がってる私は貴方の意思でここに存在してるようなものだから」
とりあえず、メルトがどうにかしてくれるらしいが彼女だけに任せる訳には行かない。
ともかく、凛の悪行を咎めなければ――!
「くっ……何、この意思力……意思、力? だ、ダメよ飲まれちゃ……全力で拒絶しないと!」
何故かメルトがノリノリなのは置いといて、僕も個人で考えていこう。
「体罰だの何だの言ってたけど、具体的に私の何が悪いってのよ!」
まずはおさらい。何が悪いのかとは言っているが、まさか忘れているわけではないだろうか。
凛は僕に対しても、その悪行を向けてきた。
そのお陰でレオに求めていない負債を負ってしまい、更にそれを理不尽な理由で取り立てられた。
味方の刃から逃げるためにサクラ迷宮を走り回ったあの出来事、凛は忘れているか。
「……お金を巻き上げていった事とか」
SGとしての名称は拝金主義。
まるで、この世はお金が全てだといわんばかりに執着する金の亡者。
「そ、それのどこがいけないのよ! そりゃ、確かに可愛くないかもしれないけど……お金は未来なのよ!?」
たじろぎながらも、凛は食い掛かってくる。
「研究するにも、戦争するにも……そう、デートするにもお金が必要なの!」
「相手もいないクセに語るわね」
「なっ!?」
鼻で笑うメルトの冷たい視線。
辛辣な言葉に反応するように、空間内に何かが刺さるような音が響いた。
あぁ、ここは凛の心の中だ。心の傷なら辺りに反響するのも納得できる。
そしてそれは、メルトの言葉が図星であるのを証明付ける現象だった。
「貴女には豪華ペアプレミアムシートは遠すぎるわ。部屋で寂しく動画観賞でもしてなさい」
「はうっ!」
「あぁ、言っとくけどハクは貸してあげないわよ。どうしても映画が観たいのなら相手は自分で探しなさい」
「ちょっ、何でハクト君の名前が……! ハクト君と一緒だったら何でも面白くなるなんて、思ってないんだから!」
「はいはいテンプレテンプレ。伝統芸能もくどいと見限られるわよ」
凛の反論をのらりくらりと躱しつつ、メルトは確実に心を抉っていく。
メルトが指摘した二つ目のSGは、僕たちが最初に手に入れたSGでもある。
名称はテンプレーション。思ったことと反対のことを言ってしまう、ある意味では強い自我の表れ。
だがなんというか、これで良いのか。
「違うわよ! お約束だのツンデレだのテンプレだの伝統芸能だの、人の事勝手に決め付けないで!」
しかしそれでも凛は屈伏しない。
この舌戦にノリノリなメルト、そして最早ほぼ居るだけな僕。一応二人相手に、果敢に戦っている。
この時点で勝敗が決まっている気がするが。
「私は自分の好きにしてるだけなの。自分で決めて、準備して、自分で責任を取る。それの何がいけないの!?」
確かに、一理ある。
自分自身の支配者である事は人間の義務。
その放棄はただの怠惰だと。凛はそんな信念の下生きてきた。
さぼりたいときもあるさ にんげんだもの
はくと
こうして自分自身を縛ってきたから、凛は対極の自分を隠れた欲として持ってしまった。
自らタブーを望むような願望が生まれてしまった。
「それは凛。最後のSG――隷属願望とは反対だよね」
「う――うるさいうるさいうるさい! そんな事はしちゃいけない、流されちゃいけない事なのよ!」
頭を掻き毟りながら凛は叫ぶ。
バチバチと、空間が悲鳴を上げる。後少し。後少しでこの空間から出られるかもしれない。
「判断も評価も感情も行動も、頭の先から爪の先まで自分のものじゃないなんて……!」
胸を打つ悲痛な叫びに、しかし動かされるわけには行かない。
「どんなに甘美に見えてもそれは人としての尊厳を……でも、そうなったらもう人じゃないんだから、気にする必要なんて……」
彼女は自分に厳しくしすぎるあまり逃げ道を求めている。
それはタブーであり一時の過ちに過ぎない。だが――いや、だからこそ、はっきり言ってやらなければならない。
――この際、普段の性格なんて捨て去らなければ。凛を打ち負かさなければならない、だったら今だけでも……!
「――正気に戻れ、資本主義の犬め!」
「なっ」
「にゃ……! 何よいきなり大きな声出して! しかも犬、犬って言った!?」
「あぁ、言った。でも、正確には“資本主義の
メルトと凛、両者が驚愕に目を丸くしている。
居心地の悪さが一層助長されるが、こうなったら自棄だ。最後までやりきるしかない。
そんな決心を察したのか、メルトは苦笑してぺろりと舌で唇を濡らす。
どうやら参戦してくれるらしい。最早凛が哀れな気もするが、今回ばかりは止められない。
「…………ハクト君? 犬の前に最悪な単語があった気がするんだけど」
「えぇ、私も聞こえたわ。自覚はあるんじゃないの? 牝犬さん?」
「じ、自覚なんてないもん! 私は優雅かつ合理的な拝金主義者なだけで、犬なんかじゃ……」
ぶんぶんと頭を振り、否定しようとする凛。優雅の欠片もない。
「って、何で叱られてホッとしてるの私! こんなの私じゃない……あぁ、でも何だか、すっごく楽になってきた。私、やっぱり犬なの……?」
目に涙を浮かべながら、力なくぐったりと倒れこんだ凛は、すぐさまハッと表情を強気なものに戻す。
「違う、違う! 私なんで納得してるの!? 私は完璧じゃなくちゃいけないの! ただの一度も、弱音を吐くわけには――」
「まるで子ブタの鳴き声ね! 自分で痛々しく思わないのかしら!」
「ひゃっ……!」
言いすぎだとは思うが、完全に打ち負かすのなら今の一撃はさぞ効いたに違いない。
「鳴き声、鳴き声って! 私鳴いてないもん! 当然の主張なのよ! 何でそんな酷いことばかり……何で、誰も本当の私を見てくれないの!?」
「それは甘えだよ、凛。口で言ってることとやってることが違うなんて、伝わらなくても仕方ない」
僕の知ってる遠坂 凛は、そんな弱音は口にしなかった。
心に内にあるそれが甘えだと分かっていて、それを殺していた。
本当の凛なんて、誰にも見えはしない。
凛はそれを承知の上で、他人に嫌われるのも覚悟の上であらゆるものに厳しく接していた。
それが凛の優しさであり、強さだった。
だが、今はどうだ。自分の考えばかり押し付け、反対されたら泣き喚く。
未来を考えてるなんて片腹痛い。
「今の凛は、自分のことしか考えてないじゃないか」
「だって……私だって、たまには楽になりたくて……素直になってみたかったの!」
白状するように話す凛はまだ強気な顔を崩さない。
しかし、辺りを見れば分かる。最早空間は不安定で、もうすぐ外に出られるだろうと判断する。
「それが悪いの!? 自分のこと考えたっていいじゃない! 自分が一番可愛いのは当然でしょ!?」
「だったら最後まで責任を持て!」
「ひゃうううううぅうう――――!」
その一言で、遂に凛は倒れこんだ。
空間が暗闇から反転し、罅の入った硝子が崩れるような音と共に白く変わっていく。
メルトと目配せする。後は僕がやる。メルトは頷くと、一歩下がった。
「やめて……もう、やめて、ください……私、言う事を聞きますから……責任をとるのは嫌なの……」
零れ落ちる涙を手で拭いながら、凛は言う。
「だって、素直になれない……責任なんて持ったら、言いたい事も言えないもの……!」
だが、それでも我を通してきたのが凛だ。
人を指導する責任も、人に憎まれる責任も背負い、それでも胸を張ってきた。
「私は自分が可愛いの。それが自然だって気付いたの。今更何が正しいなんて――」
「それは恥ずかしいことじゃない。本当に恥じる事があるとしたら、それは『自分だけが可愛い』人間なんだよ」
凛が何故人に厳しいのか。
それは、人の可能性を無視できなかったからだ。
「――他人にも自分にも厳しい。それが凛だよ」
「あ――」
心にあった澱みが消えていく。
「そっか……それで、いいんだ……ホントは弱いくせに、最後まで強がってみせる私。そうよね……それが私の一番好きな、私の信念……」
薄く笑った凛。その姿に、もう敵意のようなものは見られない。
「……気持ちいい。でも、恥ずかしい……全部、見られちゃうなんて。これで良いのよね。心の底の自分だけは変えられない……私はこれでいいんだ」
そして、最早ここに居る必要も無くなったといわんばかりに体はどこかへ引っ張られていく。
凛はもう僕たちをここに閉じ込めておく気はない。外の世界へと向かっているのだろう。
「ここを出たら忘れちゃうだろうけど……感謝するわ、ハクト君、メルトリリス。私を解放してくれて」
入る時とは反対に、白く染まっていく視界。それに埋め尽くされる間際。
「――うん、でもこれだけは言わせて。後で一発、思いっきり殴らせて」
そんな恐ろしい声が、最後に聞こえた。
「う――ん、っ、いった……何よこれ、何で私倒れてるの?」
「気がついた? 凛」
凛に駆け寄って、抱き起こす。
あれから暫く時間が経った。心の主である凛が目覚めない以上レリーフからは出られない。
何故かそれを知っていたメルトの言葉に従い、待っていたのだ。
どうやら凛は無事だ。抱き上げた凛の体には温かな熱があり、バイタルを測る術はなくてもそれだけは感じ取れる。
「あれ、ハクト君……? 私、どうして……って、ランサー? え、たしか私、ディーバと契約して……」
混乱している凛に事情を話す。
これまであったこと。――特にあの女王様宣言と二階の件については、はっきりと鮮明に詳細に克明に。
「え、ちょっと待ってよ。待って、待った、待て――!」
「え?」
説明を区切ると、凛が焦った様子で掴みかかってきた。
「なに? それじゃもしかしてさっきまでのアレ夢じゃないの!? 私、なんか凄い事してなかった!?」
「遠坂……マネーイズ……ふふっ」
思い出し笑いをするメルトを見て凛は顔を真っ赤にする。
本来の自分ではないとはいえ、やはり恥だと感じるのだろうか。
「安心しろリン。戦いにおいて考えを偽ったり金銭を搾取するのは有効な手だ。……三つ目のものは、ふむ……弁明が出来んが」
「あ――あぁぁぁぁ……恥、末代までの恥……私、なんだってあんな事をぅおぅ……」
頭を抱え猛省する凛。
ともあれ戦いは終わった。後は凛に心から出してもらい、校舎に戻って皆と共に月の裏側から出るだけだ。
「まぁ、正気に戻ったんだから良いじゃないか」
「うぅ……後で覚えときなさいよハクト君……」
何故か、謂れの無い恨みをもたれてしまった。
「今はそれよりも……重要なことがあるわよね……ランサー」
髪を振り乱しながらも落ち着き、凛はランサーに向かって手を出す。
そこにはいつ使ったのか。残り一画の令呪が刻まれている。
「色々と振り回しちゃってごめん……それでも私と共に戦ってくれるなら――」
「構わない。オレはリンの槍であると誓った身。再度の契約を」
令呪が淡く輝き、ランサーは契約に承諾した。
再契約。これでランサーは、再び正式に凛のサーヴァントになった。
「……これで一件落着かな……メルト?」
「……」
メルトは凛たちに目もくれず、周囲を警戒していた。
辺りには特に何も無い。そもそもここは凛の心の深層だ。
当人である凛が正気に戻った以上、警戒する理由もないと思うのだが……
「一件、落着……って、そうだ! こんな事してる場合じゃないわ、早くアイツを何とかしないと、永久に出られない……いや、もっと酷いことになるわ!」
「凛……?」
「急いで外に出ないと、って、どうやって出るんだっけ――!?」
「何を焦ってるんですか? 時間なんて無限にあるし、錯乱するような事件も起きてないじゃないですか」
天上でも、地下でもない。
どこからともなく響いてくる声には、聞き覚えがあった。
「落ち着きましょう、月の女王様。どんなにあがいても、アナタたちはあらゆる事に間に合わないんですから」
「誰だ!?」
「アイツよ。マスターを月の裏側に引きずり込んで、私を捕まえて迷宮に組み込んだ元凶!」
――そうだ。
黒いノイズに襲われた時に聞いた声。
その主だ。
「そう。私がアナタたちをここに引きずり込んだ元凶。月の裏側を支配する、本当の月の女王。初めまして、憐れな子羊さん、ようこそ、めくるめくサクラ迷宮へ!」
瞬間、凛の心の内部から抜け出していた。
サクラ迷宮の三階。そこに引き戻され何が起きたか確認する前に、その人物を見つけた。
「どうも、センパイ。どうでした? いたいけな女の子の心の底は」
それは、黒いマントを着た少女だった。
マスターなら誰であれ知っている姿。そして、生徒会の仲間である――
「――桜?」
「……は? バカにしないで下さい。頭の天辺からつま先まで違います。この私があんな弱虫で性格ブスな訳ないじゃないですか」
否定した少女は、それでも桜に瓜二つだった。
纏う雰囲気は真反対なれど、あれは同一人物としか言えない……!
「私は桜であって桜でないもの。もう健康管理AIじゃないんです」
「御託は良いわ、BB。さっさと正気に戻りなさい」
そんな少女を鋭い目で見据え、メルトは言った。
「――」
その瞬間初めてメルトをまともに見て、少女は冷たく返す。
「私は至って正常ですが、
「貴女――そう、そういう事……」
「B、B――?」
メルトが呼んだ、少女の名前、BB。
それにどこか聞き覚えがあった。
どこで聞いたのか思い出せない。だが、とても重要な名前だったような――
「はい。不躾なサーヴァントさんのせいで私からお披露目は出来ませんでしたね。私はBB。何の略称かはご想像にお任せします」
桜に似た少女――BB。
彼女が幾人ものマスターを月の裏側に捕え、校舎をノイズで侵食した。
凛をあんな目にあわせた――事件の元凶!
「でも、センパイ? どうしてわざわざ、校舎から出てくるんですかぁ? あの甘やかすだけのいい子ちゃんのところで、ぬるぬるお気楽ラブANDコメディを満喫してればよかったのに」
その妖しげな笑みは異常なほど余裕と自信を持っていた。
理解できる。あの存在にはどうやっても勝ち目はない。規格外――それ以上の存在だと。
「出てきちゃったって事は、まだおしおきが足りてないんですか? セ・ン・パ・イ?」
恐怖や緊張と言った圧迫ではない。物理的に、空間そのものに圧し潰されるような感覚。
ぞわりと背筋が凍りつく。
そんな圧倒的な気配を放つ少女を前にして、体を動かすことすら出来ない。
『――もしもし、ハクトさん? 急にモニターが黒く染まったんですが、そちらで何か――』
「ッ、レオ!? ちょうど良かった、急いで転移を! ここはもう普通のアリーナよ、普通の術式で転移が出来るはず!」
『ミス遠坂……? ――皆さん、ハクトさんとミス遠坂の引き戻しを迅速に』
『分かりました! 生徒会、全リソースを強制退出に回します!』
レオの通信に反応した凛が撤退の術式を組み上げる。しかしBBは小馬鹿にしたような笑みを崩さない。
桜が応え、素早く完成した術式で引き戻されるような感覚が襲う。
しかしそれは感覚だけで、旧校舎には戻れない。
「そんな急ごしらえの術式で迷宮の壁は破れないと思いますけど……でも、判断は大正解です。黄色信号はデッドフラグですからね」
言って、BBは口を窄め、シャボン玉を吹くような動作をした。
瞬間、世界が反転していく。引き戻されるのではなく、吹き飛ばされる。
旧校舎への強制転移を補佐するBBの強大な力。メルトはそれを前にして、警戒と悔しさ――そしてまだ“何か”を含んだ苦い表情をしている。
「これに懲りたら校舎から出ないで、ずっと引き篭もっててくださいね。待ってれば、いつかハッピーエンドは降ってきますから」
手を振るBBはどんどん遠くなっていく。
「だって――どんなに待っても終わりが無いなんて、最高の最終回じゃないですか。連載の引き延ばしとか大好きでしょう?」
くすくすと笑うBB。何も出来なかった結果、見逃される。
圧倒的な力を表して此方の動きを制約する。力の差を見せるという、絶対的な行動制限を科せられた。
あれには勝てない。凛も、そしてランサーまでもが分かっている。
抵抗の姿勢を見せているのは、メルトだけで。
「私をどうにかしたいのなら、そうですね……生徒会の皆さんと力を合わせて頑張ってみてください。無理だとは思いますけど、億分の一に懸ける、とか如何にも人間らしいです」
今回の元凶を知っている自分のサーヴァントは何者なのか。失った記憶を必死で拾おうとするも何一つ手には掠らない。
「それじゃ、ゲームを始めましょう? アナタ達は無慈悲な月の女王の囚人。ひとりひとり、ゆっくり、確実に終わりをあげます」
BBの強制転移による影響か、意識が黒く染められていく。
残酷に宣言するBBは、最後まで冷たい笑いを含めたまま――
「アナタは最後まで生き残ってくださいね、センパイ。精々溺れる夜で――足掻いてください」
溺れる夜を、開始した。
ここです! ここでOP、サクラメイキュウですよ!
何か適当に、Meltout風のムービーを想像して流してやってください。
連載の引き延ばしっていう台詞は当時「オレは少女漫画家」というゲームをプレイした直後だったのもあり、ふざけんなという謎の怒りを覚えました。
Fate/EXTRA CCCが発売して、今日で一年です。
長いようで短いですね。何だかこの一年間があっという間でした。
前日に発売日を知り、近々密林辺りで注文しようと思ってたら当日に所用で行った先の店(買い物する気はありませんでした)で何故か売ってて財布を取りに戻ったのは良い思い出です。
思えばこの日から本作の全てが始まったんですね。
後二ヵ月半で一周年らしいです。別に何をする訳でもないんですけどね。
多分明日頃、一章章末のおまけをうpします。
マトリクスのCCC版+
あぁ、服が剥がされていたかどうかはご想像にお任せします。
今後のパニッシュでも多分一切描写しないかと。