せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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どうも、最後の山が始まりましたよーっと。
それではどうぞ


第四十四話 最終決戦 其之一

 SIDE 百代

 

 私は現役最強と名高いヒューム・ヘルシングの誘いを受けて移動をしている。

 ……それはいいんだが。

 

 「……んで? どこまで行くつもりなんだ?」

 

 「……ふん、退屈か?」

 

 「……まあ、そうだな。場所移すのはいいが、あまり時間がかかるようだと向こうに間に合わないじゃないか」

 

 武神として、戦うべきは戦わなくてはいけない。

 早くしろと、気を高めて挑発してやる。

 

 「ハハハ! いいぞ、百代よ。その覇気、やはり敗北はいい薬になったようだな」

 

 むう、やはり動じないなぁ。

 あー、これだからこのおじいちゃんは面倒だ。

 やる気はあるのだからすぐにでもぶつけに来てくれれば都合がいいのに……。

 まあ、家のじじいにしてみれば、私もせめてこのくらいまではなれと言うことか。

 ……いや、この人の方が手が早いと思うんだけどなぁ?

 

 「まあ、逸るな。どれ、少し昔話でもしてやろうか」

 

 ……まあ、まだまだ急いで戻れば間に合わなくなるってほどでもないか。

 そうは見えないが、どうやらこの人は私をそこそこ買ってくれているようだ。

 取りあえず余裕がある内はこういう会話も悪くはないだろう……

 

 

 

 ―――――

 

 

 決戦日の朝、集合場所は学校。

 ……いや、正直もっと向こう側に投降する人多いと思ってました。

 最初向こう側行こうとしてた僕って……。

 

 「「「「「「「おおおおおお!!!」」」」」」

 

 クリスが演説して学園生の士気はかなり高いようだ。

 

 「へっへーん、城を攻め落とすって響きがいいぜ!」

 

 こっちも盛り上がってるなー。

 てか、昨日スルーしてしまったけど風間はあの化け物の巣窟に殴り込んで大丈夫なのだろうか?

 ……なんとなくだがこいつは無傷で生還しそうな気がする。

 

 「それでは、行動開始!!」

 

 紋ちゃんの号令で動き出す一同。

 杖突でもしっかりついて行けるように石田と島が肩を貸してくれる。

 ……ありがたいけど女の子の方がよかったなー。

 

 

 ――――

 

 

  

 さてさて、お城が近付いてまいりましたよーと。

 竜兵にも場所は教えておいたから多分梁山泊の一人くらいはあの姉弟がどうにかするだろう。

 

 「んじゃ、椎名は与一の場所探りながら牽制よろしくねー」

 

 「ん、任された」

 

 敵さんが出陣するのをみんなで待っている。

 いや、これで葉桜先輩とかも出陣してくれたらすんごく楽なんだけどなー。

 大将先行とかありえないだろうな。

 うーん、集団戦ってそんなに経験ないからなー。

 東西大戦もぶっちゃけスタンドプレーかましてたし。

 いや、暇だ。

 あ、動いたみたいね。

 それじゃあ、行きましょうか。

 椎名が火薬をくくりつけた矢を川神上に向けて放つ。

 が、クラウディオさんに防がれる。

 

 「!! 見つけた!」

 

 まあ、こちらもこちらで成果はあったようだ。

 工場地帯の方を見つめだす椎名。

 ……いや、てか目が良すぎだろう弓兵。

 僕でも言われれば気配で「あ、見つけた」って感じだぞ?

 お互い確認できるって……。

 まあ、そう言うのの相手は専門家に任せよう。

 

 「よっしゃあああ! 突撃だああああ!!」

 

 そして考えなしに突っ込もうとする風間の前に

 

 「……」

 

 義経が立ちふさがる。

 そういえば、もう別にいいけどヒュームさん機会は作るとか言いながら結局義経たちと戦ってなかったなー。

 

 「黛由紀江、お相手します」

 

 そこに相対する由紀江ちゃん。

 おーおー、真剣沙汰とは恐ろしい。

 何気に隣の石田もうずうずしている。

 まあ、同じ剣士として感じるところがあるんだろうなー。

 その二人が睨み合っているうちに駆け抜けていく突入組。

 

 「……」

 

 「……」

 

 「オイ! ボーイ!! てめえ空気読みやがれ! なに残ってるんだよ!?」

 

 うん、松風に暴言放たれた。

 いや、だって駆け抜けるには体きついし?

 ちょっと試したいことあったし?

 

 「あ、僕のことは気にしなくていいよ?」

 

 「う、いや、でも……。ここに居ては危ないぞ?」

 

 「そうです。正直周りを気にして戦う余裕はありません……」

 

 うん、そう言いながら睨み合うだけになっている二人はとってもいい子だと思うんだ。

 まあ、とりあえず試してみますか。

 

 「ふう、……おおおーい!! 葉桜せんぱーい!! あっそびまっしょーーーー!!!!!」

 

 うん、あらん限りの大声で叫んだ。

 

 「……………」

 

 「……………」

 

 「……いや、まゆっち? あいつ馬鹿だぜ?」

 

 シーーーンと静まり返るその場。

 うん、やっぱり無理だったかなー。

 っと思ったのだが。

 

 「クハハハハハ!! お前は馬鹿か!? 馬鹿なのか!!?」

 

 葉桜先輩が叫び返してくれた。

 いや、どうしよう。

 走るのきつかったからやってみたけど本当に返事してくれるとは思わなかった。

 え? これもしかして何とかなる流?

 二人に目線を向けてみると見事に目をそらされた。

 

 「えーーー!? かわいい後輩が遊びに来たんだから玄関くらいには迎えに来てくださいよーーーーーー!!!」

 

 もう自棄だ。

 とりあえず行くところまで行ってやろう。

 

 「ハハハハハハ!! 面白いなお前!! 状況分かって言っているのか!!?」

 

 うん、応じてるアンタも状況分かってる?

 義経ちゃんなんて、自分の大将の行動に顔真っ赤ですぜ?

 

 「せっかくだからちょっとくらいお話しましょーーーよ!! どうせ俺怪我人だし警戒することないでしょ―――!!?」

 

 うん、僕にはね。

 

 「フハハハ!!! いや、こんなすがすがしい馬鹿は初めてだ!! よかろう! 興が乗った! 少し待っていろ!! ……何? 知るか! 最悪落とされても俺がいれば取り返せばよかろう! 無能を晒すな!!」

 

 うわー、あれが大将ですか……。

 

 「……やった僕が言うのもなんだけどさ。義経ちゃんいいの?」

 

 「……さあ、尋常に勝負だ! 黛さん! すぐやろう! 早くやろう!」

 

 そう言ってなんか吹っ切れたような義経につられて戦いながら移動していく二人。

 あ、逃げたな。 

 まあ、うん吹っ切れたようで何よりだ。

 うん、本当に来るとは思わないよ。

 とりあえずお前の相手は僕だからな!

 ってな宣言くらいにはなると思ってやったんだが……。

 葉桜先輩、想像以上に暴君で残念だった。

 まあ、ほとんど才能だけであれじゃあなー。

 しかもまわり持ち上げるし、そりゃあ自信過剰にもなるか。

 あ、飛び降りてきやがったぜ?

 

 「ふう、さて、お前は確か……高坂だな? うむ、あの滑稽な行動と武神を倒したという経歴、……後はこの項羽である俺を変わらず呼び続けるその行動に免じて会いに来てやったぞ?」

 

 ああ、それらしい理由述べてるけど、驚いたことに全部本気で言っているらしい。

 まあ、なんでもやってみるもんだな。

 とりあえず対面できちゃったよ。

 

 「んー? 時間稼ぎがてらちょっとデートしません?」

 

 おお、初めてデートに誘うな。

 なんかドキドキしてきた。

 しかも相手は美少女だぜ!!

 年上の美人なお姉さん……、滾るな!

 口説き落として見せる!!

 

 「クハハ!! 本当にお前は状況が分かっているのか? 俺を誘うにしたって町が戦場になっているこの現状で言い出すとか頭がおかしいだろう?」

 

 よっしゃー、まだ断られているわけじゃないし、何取り結構楽しそうだ。

 これ結構好感触なんじゃね?

 

 「いやー、それはそうですけどね。でもほら、こういう時だからできるデートってあると思いません?」

 

 「……ほう、その様で俺に挑むというのか? だが、どこかに行く必要があるとは思えんが?」

 

 「いや、まあほら、お相手の家が近いとできないことってあるじゃないですか? てか、葉桜先輩が動くとお家壊れますよ?」

 

 よし、がんばれ僕!

 あともうひと押しだ!

 

 「ほう、……その様で、この俺を、本気にさせられるとでも?」

 

 「……試してみるか?」

 

 釣れたかな?

 まあ、場所は移動しなくても目的としては問題ないんだけど人質さんがなぁ……。

 

 「……いいだろう。騅!」

 

 おお、呼ぶだけで来るのかあのバイク!

 高性能すぎだろ!

 

 「場所は?」

 

 「んー、工場地帯に廃工場あるしその辺でいいんじゃないですかね?」

 

 「うむ、距離も大したこともないし、いいだろう。……詰まらん罠など俺には無意味だぞ?」

 

 「いやー、デートにそんなの用意してるわけないじゃないですか」

 

 そんな無粋な。

 

 「クク! そうだったな。光栄に思え。デートだといわれて応えるのはこれが初めてだぞ?」

 

 いやっほーい!

 そいつはうれしーや。

 因みにスイスイ号に乗ったら舌打ちされました。




以上でした。
こっから場面ばらけてるんで――SIDE的な書き方になってしまうと思いますが、嫌いな方はすみません。

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